KURENAI : Kyoto University Research Information Repository Title Author(s) Citation Issue Date URL 量子スピン系の最近の話題(基研短期研究会「格子理論の 進展-素粒子から生物まで-」,研究会報告) 久保, 健 物性研究 (1992), 57(6): 759-760 1992-03-20 http://hdl.handle.net/2433/94881 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 「 格子理論の進展 一素粒子から生物 まで-」 量子 スピン系の最近の話題 筑波大学物理学系 久保 健 1。 はじめに cu++, Ni 十十等の磁性 イオンを含む化合物の磁気的性質は、これ らの磁性イオンを局在スピンとみ な し、それ らの間に交換相互作用が働 くとする有効 スピン- ミル トニア ンで記述できる。それ故 ス ピン 系の問題は現実 との対応 という点で、格子振動の問題 と並んで格子系にとって理想的な対象 と言え るだ 2S+1 )次元 の空間で言改Bされるために問題は分か りやす く相転移及び量子多 ろう。各スピンは有限 ( 体系を研究する格好の模型 として研究 されて きた。本研究会ではこの数年特に関心を集めている低次元 反強磁性体における量子ゆらぎの効果について紹介 した。 話の都合上ハイゼンベルク模型を拡張 した反強磁性 X X Z模型の- ミル トニアンを書いてお くと H - ∑( S ㌻ S , F+S F S , y+△S 8 f S , 4 ) <i J ' > S i Pは格子点 iにある大 きさ S のスピンの x成分を表す。△ -1の場合が反強磁性-イゼ ンベルク ( AFH)模型で、以下断わ らない限 りこの場合を議論するO< i j>としては最近接格子点対をとるO こ の系の平均場近似による基底状態は隣会 うスピンが反対方向を向いている状態 ( N6 e l状態)であ り反強 LRO) を由 っている。 しか しN6 e l 状態は兵の固有状態ではないため必然的にゆらぎが 磁性尉 巨離秘 事( 存在する。 このゆらぎにより基底状態がどう変わるが今の問題である。 2。 Ha lda neギャップ問題 ROは存在 しないとい う結果 ゆらぎの効果をスピン波近似で調べると、一次元系の基底状態では L が得 られる。実際 S -1 / 2鎖には厳密解がありL ROが無い。また基底状態でのスピン相関関数は距離の ベヰ乗別に従 って減衰 しスピン波に似た励起状態が存在する事が知 られていた為、一次元では S≧ 1の 98 3年 に Ha lda neは, Sが整数の時 と S 時 も同 じ様な ものだろうと多 くの人は信 じていた. ところが 1 が半奇数の時 とではまった く異なる基底状態が実現す るという理論を発表 した。それによると、∫-半 奇数の場合励起エネルギー無限小の励起状態が存在 し基底状態でのスピンの相関関数は距離のベキ乗別 に従 うのにたい し、∫-整数の場合は基底状態 と励起状態 との間に有限のエネルギーギャップが存在 し、 基底状態でのスピンの相関 は指数関数的に減衰する。彼の理論 はその後多 くの数値的な研究により確か ∫-整数の場合の基底状態 (Hal da ne められ、証明 こそないものの現在では正 しいと信 じられている。 状態)は Va le nc eBondSo l i d状態と呼ばれる状態に近いものであり、この状態 には反強磁性 L ROと は異なる隠れた L ROがある事 も最近分かってきた。実験的に も NENPという物質で Hal da ne状態 が実現 していると考えられてお り、盛んに研究 されている。 - 7 5 9 - 研 究会報告 3。正方格子上の AFH模型 スピン波近似によれば二次元では基底状態の反強磁性 L ROはゆらぎにより4 0 %ほど減少す るもの の有限に残 る事が知 られていた。 しか し高温超伝導の発現機構が正方格子上の β-1 / 2 AFH模型の基 . W. An d e r s o nが主張 し、かつ彼が この系の基底状態 は反強磁性 底状態の性質 と深 く関係 していると P 的L ROの存在 しない Re s o n a t i n gVa l e n c eBo n d状態であろうと推測 した事により、最近また基底状 ROの有無に関心が集まった.この問題は数値的な方法 と不等式を用いる厳密な方法 により 態に於ける L n f r a r e dBo l l n d sの方法)はスピンのゆ らぎの上限を評価 してそれが LROを壊 調べ られた。後者 (I すほど大 きくない事を厳密に示す方法であり、Dy s o nらにより初めて量子 スピン系にたい し用い られた。 この方法を上の X X Z 模型に通用 し、イジング的な場合 ( △>1 . 6 6 )とXY的な場合 ( 0≦ △ <0 . 2 0 ) にL ROが存在する事が証明 された。残念なが ら肝心の AFH模型ではまだ証明されていない。数値的 2 8×1 2 8の大 きさの系まで調べられていて、その結果は LROが存在するという事ではぼ一致 し には 1 H模型で証明が うまくいっていないのは ておりその大 きさもスピン波近似の結果と良い一致を示す。AF 単に定量的な問題であり、この系での L ROの存在はほぼ間違い無いと思われる。 I n f r a r e dBo un d sの方法を用いる際には鏡映正値性 という性質を用いている。強磁性模型や三角 格子上のスピン系ではこの性質を利用できないため、L ROの存在証明が今のところ困難であり、新 しい 方法論の開発が待たれている。 次近接格子点間にも反強磁性相互作用の働 く正方格子上の AF H模型ではこれまでにない新 しいタ イプの基底状態が実現す るのではないか、との期待の もとに現在盛んに研究が行われているが、 これに ついてはまだよく判 っていない。 低次元 スピン系においては量子効果、及 びそれとフラス トレイションあるいは外場等の干渉 により 多彩な現象が起 こる。 古 くか ら研究 されてきたにもかかわ らず、未だに興味のつきない問題である。 文献を挙げなかったが詳 しくは以下を参照 されたい。 1 ) 久保、岸 :固体物理 V o l ・ 2 6( 1 9 9 1 )1 2 5 2 )E.Ma n o u s a k i s:Re v.Mo d.Ph y s .Vo l . 6 3( 1 9 9 1 )1 - 76 0-
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