特集 日本基準との比較で押さえる IFRS「退職後給付会計」の実務要点 ●翌年次報告期間における制度への 予想拠出額 ●将来の拠出額に影響する可能性の ある制度の積立不足または積立超 過に関する情報 (積立不足または積 立超過を算定するのに使用された 基礎および企業への影響を含む) ●他の加入企業と比較した企業の当 開示のポイント 4つのステップごとの具体的手続とは 確定給付制度の会計処理と と 日 本 基 準 と の 比 較 を 示 す。 な お、 Ⅱ 門田 佳子 関 係 」の 規 定 に 従 い 順 を 追 っ て 説 明 文中意見に係る箇所は私見である。 パート 有限責任監査法人トーマツ 米国公認会計士 パ ー ト Ⅱ で は、 パ ー ト Ⅰ で 比 較、 する。また最後に、確定給付制度の 該制度への加入水準の指標。 例とし 紹介した退職後給付制度のうち、よ 会計処理と開示についてのIFRS て、 次のものが挙げられている。 り複雑な処理と広範な開示が要求さ ・制度への拠出総額に対する企業の ・現役加入者、退職した加入者および れる確定給付制度の具体的な会計処 構成割合 受給権を得ている元加入者の総数 会計処理の4ステップ 経理情報●2016.7.10(No.1451) 号 13 理および開示について、IAS ・数理計算上の差異 ・制度資産に係る収益 ・資産上限額の影響の変 動 14 19 号 以下の要素からなる (ただ しステップ3で純損益に 認識される、 「確定給付負 債 (資産) の純額に係る利 息の純額」に含まれる金 額を除く) 。 「従業員給付」およびIFRIC ステップ4 その他の包括 利益に認識す る確定給付 負債 (資産)の 純額の再測定 (57項⒟) プを伴う。企業が複数の確定給付制 ステップ3 純損益に認識 以下の要素からなる。 する額の算定 (57項⒞) ・当期勤務費用 ・過去勤務費用および清 算損益 ・確定給付負債 (資産) の 純額に係る利息の純額 確定給付制度の会計処理は、図表 ステップ1で算定された 積立不足または積立超過 に、資産上限額の影響を 調整 (資産上限額で制限) することで算定される。 度を有する場合、個々の重要な制度 ステップ2 確定給付負債 (資 産 )の 純 額の算 定 (57 項⒝) 1に要約されるような4つのステッ (具体的ステップ) ・予測単位積増方式を使 用し、 当期・過去の期間 の勤務の対価として従 業員が稼得した給付に つき、企業にとっての最 終的なコストを見積る。 ・DBO、当期勤務費用の 算定のため適切な割引 率で給付を割り引く。 ・DBOか らPAを 控 除 す る。 19 号―確定給付資産の上 ・積立不足=DBO>PA ・積立超過=PA>DBO 「IAS第 ステップ1 積立不足また 「確定給付制度債務の現 は積立超過 在価値 (Present Value の算定 (57項 of Defined Benefit ⒜) Obligation:DBO)- 制 度資産の公正価値 (Plan Assets:PA) 」で算定さ れる。 限、最低積立要件及びそれらの相互 (図表1) 確定給付制度の会計処理に係る4ステップ に対する企業の構成割合 ⑶ パートⅡ参照 石原 宏司 (いしはら・こうじ) 有限責任監査法人トーマツ ディレクター 公認会計士 1994年監査法人トーマツ (現有限責任監査法人トーマ ツ)入社後、金融機関等の監査に従事。2004年から 2010年まで企業会計基準委員会 (ASBJ) に研究員およ び専門研究員として出向し、 主としてIASB対応、 コンバー ジェンス・プロジェクトを含む国際業務を担当。現在、 IFRSセンター・オブ・エクセレンスにおいて、主として IFRSテクニカル業務に従事。 主要著書に 『国際財務報告 基準 (IFRS) 詳説 iGAAP2014』 (共訳、 レクシスネクシス・ ジャパン) 。 日本公認会計士協会 (JICPA)IASB対応専門 委員会・ASAF対応専門委員会専門委員。
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