論文要旨

様式 8
学
位 論
文 要 旨
研究題目
(注:欧文の場合は、括弧書きで和文も記入すること)
A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Study of Rebamipide for Gastric
Mucosal Injury Taking Aspirin With or Without Clopidogrel
(抗血小板薬による胃粘膜傷害に対するレバミピドの有用性)
内科学消化管科(指導教授又は研究科紹介教授 三輪 洋人)
氏 名
戸澤 勝之
高齢化により虚血性心疾患・脳疾患症例が本邦では増加し、抗血栓薬服用症例
が増えている。近年は抗血小板薬を 2 剤以上併用する、Dual antiplatelet
therapy(DAPT)症例が増加している。その中でも Low dose aspirin(LDA) と
clopidogrel(CLO)を併用している症例をよく経験する。
LDA は薬剤性の胃潰瘍の原因である。Hallas らは、LDA の消化管出血のオッズ
比は 2.4 であったが、LDA+CLO は 12.4 だと報告している。つまり、DAPT 症例の
方が有意に上部消化管出血の割合が高い。Casado らは、潰瘍既往歴のある DAPT
症例は出血のリスクが高いと報告している。一方で LDA を服用していて出血性
胃潰瘍を生じた場合、Helicobacter pylori (Hp)陽性ならば除菌をする事で、
再度 LDA を服用しても再出血のリスクはオッズ比で 0.97、酸分泌抑制剤である
プロトンポンプインヒビター(PPI)と LDA を服用した場合、再出血のリスクはオ
ッズ比で 0.74 であったと Chan FK らは述べている。除菌さえすれば LDA 単剤な
らば高価な PPI を使用せずに胃粘膜保護薬でも十分に一次予防になるのではと
考えた。そこで胃粘膜保護薬であるレバミピドの効果を検討すべく、若年健常
者を対象に、LDA もしくは LDA+CLO を服用させ、同時にレバミピド或いはプラ
セボを投与して上部消化管内視鏡検査を施行し、服薬前後の胃粘膜傷害の程度
を検討する事にした。若年健常者を対象に a>プラセボ+LDA 服用群 b>レバミ
ピド+LDA 服用群 C>プラセボ+LDA+CLO 服用群 d>レバミピド+LDA+CLO 服用群
の 4 群に分け、2 週間服用した。服用前後で上部消化管内視鏡検査を行い、胃
粘膜傷害の程度を比較した。レバミピド+LDA 群はプラセボ+LD 群と比較して
有意に胃粘膜傷害の抑制を認めた。またレバミピド+LDA+CLO 群は、プラセボ
+LDA+CLO 群と比較して有意に胃粘膜傷害の抑制を認めた。若年健常者におけ
る LDA 或いは LDA+CLO の DAPT 症例に対する胃粘膜保護薬であるレバミピドの有
効性を示す事ができた。Hp 陰性(未感染)かつ消化管出血/消化管潰瘍の既往歴
がない LDA 単剤若しくは CLO 併用した DAPT 症例では、レバミピドによる1次予
防が可能であると考えた。また、Hp 陽性であっても、除菌成功症例に関しては
LDA 単剤ならばレバミピドによる1次予防が可能であるかもしれない。