日銀短観解説 2014 年 12 月 15 日 日銀短観(2014 年 12 月調査) 経済調査部エコノミスト 坂中弥生 03-3591-1242 [email protected] ○ 大企業の業況判断は、製造業は急激な円安の進行などから素材業種を中心に悪化。非製造業は消費 関連の業種は悪化したものの、企業活動の持ち直しを受けて全体的に回復。 ○ 2014年度の設備投資計画は製造業・非製造業ともに上方修正。中小企業が例年のパターン通り上昇 修正されたほか、大企業では非製造業が投資計画を上積み。 ○ 労働需給のひっ迫は継続。今後は原油安の恩恵が幅広い企業に及ぶことで、中小企業でも賃上げ余 力へ結びつくとみられる。 大企業の業況判断は製造 日銀短観(2014年12月調査)では、大企業・製造業の業況判断DIが+12% 業が悪化した一方、非製 Pt(9月調査:+13%Pt)と悪化した一方、大企業・非製造業が+16%Pt(9 造業は改善 月調査:+13%Pt)と改善した。製造業では、原油安が大幅に進んだことで 石油・石炭製品が大幅に悪化した。非製造業は、消費関連の業種は低下した ものの、設備投資など企業活動の持ち直しを受けて全体的に回復した。先行 きは、製造業・非製造業ともに悪化するなど、慎重な見方となっている。 図表1 業況判断DI (%Pt) 2014年6月調査 (%Pt) 2014年9月調査 30 最近 先行き 最近 先行き 最近 (変化幅) 先行き (変化幅) 20 16 17 13 14 14 1 12 ▲ 2 10 製造業 12 15 13 13 12 ▲ 1 9 ▲ 3 0 非製造業 19 19 13 14 16 3 15 ▲ 1 9 8 6 6 7 1 3 ▲ 4 8 8 5 5 7 2 1 ▲ 6 10 8 7 7 7 0 4 ▲ 3 2 2 0 ▲ 1 0 0 ▲ 4 ▲ 4 製造業 1 3 ▲ 1 0 1 2 ▲ 5 ▲ 6 非製造業 2 0 0 ▲ 1 ▲ 1 ▲ 1 ▲ 4 ▲ 3 大企業 中堅企業 製造業 非製造業 中小企業 先行き 2014年12月調査 (資料)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」よりみずほ総合研究所作成 大企業非製造業 ▲ 10 ▲ 20 大企業製造業 ▲ 30 ▲ 40 ▲ 50 ▲ 60 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (資料)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より みずほ総合研究所作成 1 製造業の業況は小幅の悪 化 大企業・製造業の業況判断DIは 16 業種中、石油・石炭製品、金属製品、 木材・木製品など 9 業種で悪化した(電気機械、窯業・土石製品は横ばい)。 設備投資の回復基調を受け、生産用機械(+19%Pt→+27%Pt)や業務用機 械(+8%Pt→+15%Pt)などで業況が改善した。一方で、急激な円安の進 行から素材業種(+9%Pt→+6%Pt)が悪化した。また、石油・石炭製品 (±0%Pt→▲27%Pt)は、今夏以降進む原油安を背景に業況が大幅に悪化 した。 非製造業は全体的に業況 改善 大企業・非製造業の業況判断DIは12業種中、小売、対個人サービス、物 品賃貸を除く9業種が改善した。ソフトウェア受注が増加している情報サー ビス(+17%Pt→+24%Pt)や通信(+14%Pt→+20%Pt)の改善幅が大き かった。そのほか、企業活動の持ち直しを受け対事務所サービス(+25%Pt →+30%Pt)も改善するなど、全体的に回復した。 中小企業は、製造業の業況判断DIが+1%Pt(9月調査:▲1%Pt)と改 善する一方、非製造業が▲1%Pt(9月調査:±0%Pt)と悪化した。製造業 は、設備投資の回復を受け、業務用機械(+1%Pt→+13%Pt)やはん用機 械(▲2%Pt→+8%Pt)が大きく改善した。非製造業は、建設(+17%Pt →+14%Pt)や不動産(±0%Pt→▲3%Pt)などが悪化した。 先行きは慎重な見方 先行きについては、大企業・製造業が▲3Pt悪化、非製造業が▲1Pt悪化と、 慎重な見方となっている。急激に円安が進むなどマーケットの変動が激しい ことから、円安の恩恵を受ける輸出企業においても警戒感が出たとみられ る。非製造業は、個人消費の回復期待から小売(13Ptの改善)や対個人サー ビス(1Ptの改善)が改善見込みとなっている。 2014年度の収益計画は上 方修正 2014年度の経常利益(全規模・全産業)は前年比▲0.3%と9月調査から 3.8%上方修正された。想定為替レート(大企業・製造業:1ドル=103.36 円)は足元の為替レート(12/15時点:1ドル=118円台)よりも円高水準と なっており、足元の円安水準が続けば、製造業を中心に業績の上方修正要因 となるだろう。 2014年度の設備投資計画 は上方修正 2014年度の設備投資計画(土地含みソフトウェア除く、全規模・全産業) は前年比+5.5%と9月調査から1.2%上方修正された。中小企業は例年のパ ターンに沿った上方修正となった。大企業は製造業で下方修正されたものの 高めの計画が維持された。また、非製造業の投資計画が前回から上積みされ た。 2015年度の新卒採用計画 は上方修正 雇用人員判断DIは製造業で▲5%Pt、非製造業で▲22%Ptと、不足超が 続いた。先行きも製造業・非製造業ともに不足超が続く見通しであり、労働 需給のタイト化が進んでいる。 2 6月・12月に調査される新卒採用計画は、2015年度は全規模・全産業で前 年比+6.5%(修正率+2.5%)と上方修正された。大企業では同+7.5%(修 正率+1.9%)と、大幅な採用増の計画が維持されている。 今回の短観では、景況感 は足踏みとなったもの 今回の短観では、国内売上の回復が鈍いことや、急激に変動した為替相 場に対する警戒感から、企業の景況感は足踏みとなった。 の、設備投資・雇用で前 一方で、GDPベースの設備投資が2四半期連続でマイナスとなるなど低 向きな動きも 調さが指摘されているが、投資計画は上方修正されており、企業の設備投資 意欲は底堅さを維持している。また、雇用人員判断DIをみると、労働需給 のひっ迫が強まっていることが確認された。人手不足感が強まるなかで、原 油安の恩恵が幅広い企業に及べば、中小企業でも賃上げの動きにつながって いくだろう。 図表2 (前年度比、%) 全規模 設備投資計画(土地含みソフトウェア除く) 14年度 3月計画 6月計画 9月計画 (前年比、%) 12月計画 修正率 2012年度 2014年度 8 ▲ 4.2 1.7 4.2 5.5 1.2 1.2 10.1 11.8 12.2 0.3 ▲ 6.9 ▲ 2.4 0.5 2.2 1.7 0.1 7.4 8.6 8.9 0.2 3.6 12.7 13.4 11.4 ▲ 1.8 ▲ 1.6 4.9 6.3 7.6 1.3 ▲ 0.3 2.2 5.1 5.2 0.1 ▲ 2 8.7 15.9 19.2 19.6 0.3 ▲ 5.4 ▲ 5.2 ▲ 2.5 ▲ 2.6 ▲ 0.1 ▲ 24.7 ▲ 19.7 ▲ 12.9 ▲ 6.7 製造業 ▲ 16.0 ▲ 5.4 ▲ 1.6 7.9 9.6 非製造業 ▲ 28.9 ▲ 26.0 ▲ 18.0 ▲ 13.2 5.8 6 製造業 非製造業 大企業 製造業 非製造業 中堅企業 製造業 非製造業 中小企業 4 2013年度 2 0 2011年度 ▲4 7.1 ▲ 6 (注)土地を含みソフトウェアを除く。 (資料) 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」よりみずほ総合研究所作成 3月 6月 9月 12月 見込 実績 (注) 全規模・全産業。土地を含みソフトウェアを除く。 (資料)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」よりみずほ総合研究所作成 ●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに 基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 3
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