日銀短観予測 2015 年 3 月 19 日 日銀短観(2015 年 3 月調査)予測 経済調査部エコノミスト 坂中弥生 03-3591-1242 [email protected] ○ 業況判断DI予測:大企業・製造業 +15%Pt(12月調査から3ポイント改善) 大企業・非製造業 +17%Pt(同1ポイント改善) ○ 2014年度設備投資計画(全規模・全産業)予測:前年比+4.9%(12月調査:同+5.5%) 2015年度設備投資計画(全規模・全産業)予測:前年比▲0.4% 1.短観12月調査をめぐる状況 日本経済は緩やかに回復 10~12月期の実質GDP成長率(2次速報)は前期比+0.4%と3四半期ぶりのプ ラス成長となった(図表1)。また、法人企業統計では10~12月期の経常利益(金 融・保険業を除く、季節調整値)が前期比+10.0%と2四半期連続で増加するなど、 消費増税後の落ち込みからの回復が確認できる内容であった。 円安や原油安が企業業績 回復の追い風に 2015 年入り後、ドル・円相場は 120 円前後の円安基調が続いている(図表 2)。 円安は輸出企業にとって追い風となる一方で、輸入企業にとってはコストの増加 という形で収益を圧迫する。原油価格に目を転じると、足元で値動きがやや荒く なっているものの、2014 年前半までと比較して大幅に低い水準にある。原油安は、 ガソリン代や電気代などのコスト低下という形で幅広い業種にとって恩恵とな る。円安・原油安の影響を総じてみると、収益押し上げにつながると見込まれる。 こうした認識に基づき、4/1 発表の日銀短観(3 月調査)を以下の通り予測した。 図表 1 2014 年 10~12 月期 2 次QE結果 (前期比、%) 3 2 図表 2 民間設備投資 実質GDP 成長率 ドル・円相場と原油価格 (円/ドル) 125 原油価格 (ドバイ、右目盛) 公的需要 (ドル/バレル) 120 110 120 1 0 100 90 115 80 ▲1 ▲2 ▲3 ▲4 外需 110 民間 在庫投資 60 105 50 家計 (消費+住宅) 100 ▲5 40 14/1 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 2012 2013 (資料)内閣府「国民経済計算」 70 円・ドル相場 2014 14/4 14/7 14/10 15/1 (注)日次データ。直近値は2015年3月17日。 (資料)日経NEEDSよりみずほ総合研究所作成 1 2.予測の詳細 大企業・製造業の業況判 断DIは改善を予想 大企業・製造業の業況判断DIは+15%Pt(12 月調査:+12%Pt)と 3 ポイン トの改善を予測する(図表 3)。 円安基調が続くなかで、輸出数量の増加や輸出採算向上などにより、自動車や 一般機械類(はん用・生産用・業務用機械)、電気機械などの業況判断の改善が 見込まれる。素材業種は、石油を原材料とする化学や、国内需要が緩やかに回復 している鉄鋼などの業況判断が改善するとみられる。 先行きは、+2 ポイントの改善を見込んでいる。内外経済の持ち直しや設備投 資の増加を見込んで、加工業種・素材業種ともに改善すると予想する。 大企業・非製造業の業況 判断DIも改善 大企業・非製造業の業況判断DIも+17%Pt(12月調査:+16%Pt)と1ポイ ントの改善を予想する。 個人消費は緩やかな回復基調にあるものの、2015年1月の消費総合指数が気温 上昇による季節商品の不振から前月比▲0.5%となるなど、力強さに欠ける面も みられる。消費関連業種の業況判断は改善するとみられるが、改善幅は小幅にと どまるだろう。そのほかでは、原油安による燃料費低下を受けて、運輸・郵便や 電気・ガスの改善が見込まれる。 先行きは、+3ポイントの改善を見込んでいる。原油安が電気料金などに反映 されることで企業収益が押し上げられることや、昨年を上回るベア実現による消 費回復への期待から、幅広い業種で改善するだろう。 中堅・中小企業の業況判断についても、おおむね大企業に沿った動きとなるだ ろう。 図表3 2014年9月調査 (%Pt) 最近 2014年12月調査 先行き 最近 先行き 業況判断DIの予測 (%Pt) 2015年3月調査(予測) 最近 (変化幅) 先行き (変化幅) 13 14 14 12 16 2 19 3 製造業 13 13 12 9 15 3 17 2 非製造業 13 14 16 15 17 1 20 3 6 6 7 3 8 1 9 1 製造業 5 5 7 1 9 2 9 0 非製造業 7 7 7 4 7 0 8 1 0 ▲ 1 0 ▲ 4 1 1 3 2 ▲ 1 0 1 ▲ 5 3 2 4 1 0 ▲ 1 ▲ 1 ▲ 4 0 1 2 2 大企業 中堅企業 中小企業 製造業 非製造業 30 先行き 大企業非製造業 20 10 0 ▲ 10 ▲ 20 大企業製造業 ▲ 30 ▲ 40 ▲ 50 ▲ 60 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 (年) (注)2015年3月調査はみずほ総合研究所予測値。 (資料)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」より みずほ総合研究所作成 (資料)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」よりみずほ総合研究所作成 2 2014年度設備投資計画は 小幅の下方修正を予想 2014年度の設備投資計画(全規模・全産業)は前年比+4.9%と、12月調査(同 +5.5%)から小幅な下方修正を予想している(図表4)。法人企業景気予測調査 によれば、2014年度の設備投資実績見込みは前年比+5.1%と前回調査からほぼ 横ばいであった。製造業が下方修正(前年比+12.0%→同+9.8%)される一方、 非製造業が上方修正(同+1.3%→同+2.9%)された。設備投資の先行指標をみ ると、製造業の伸びが足元で鈍化しているが、消費増税後低調な推移が続いてい た非製造業がようやく底入れしている。3月短観では、高めの計画となっている 製造業が下方修正される一方、非製造業は上方修正されると予想した。 2015年度の設備投資計画(全規模・全産業)は前年比▲0.4%を予測する。現 時点で詳細な年度計画が定まっていない中小企業が例年のパターン通りマイナ スの計画となるとみられる。大企業では、内外需の緩やかな回復に伴い生産や収 益の増加基調が続くとみられ、製造業・非製造業ともに前年比プラスを予測する。 仕入価格判断DI、販売 価格判断DIにも注目 その他の調査項目では、仕入価格判断DI、販売価格判断DIの結果が注目さ れる。景気ウォッチャー調査では、これまで円安による輸入原材料コスト上昇の 価格転嫁が難しいという声が多かったが、最近では価格転嫁ができるようになっ てきたという声もみられるようになっている。販売価格判断DIの変化から仕入 れ価格判断DIの変化を差し引いた交易条件に改善がみられるのか、業種や企業 規模で差があるのかに注目したい。 図表4 (前年度比、%) 全規模 14年度 6月計画 9月計画 12月計画 設備投資計画の予測 15年度 実績見込 修正率 3月計画 1.7 4.2 5.5 4.9 ▲ 0.5 ▲ 0.4 10.1 11.8 12.2 10.4 ▲ 1.6 ▲ 0.7 ▲ 2.4 0.5 2.2 2.3 0.1 ▲ 0.2 7.4 8.6 8.9 7.4 ▲ 1.3 1.7 12.7 13.4 11.4 9.2 ▲ 2.0 2.1 4.9 6.3 7.6 6.6 ▲ 1.0 1.5 2.2 5.1 5.2 5.3 0.1 ▲ 0.9 15.9 19.2 19.6 16.2 ▲ 2.8 ▲ 3.0 ▲ 5.2 ▲ 2.5 ▲ 2.6 ▲ 0.6 2.0 0.4 ▲ 19.7 ▲ 12.9 ▲ 6.7 ▲ 4.4 2.5 ▲ 8.4 ▲ 5.4 ▲ 1.6 7.9 9.5 1.5 ▲ 9.0 ▲ 26.0 ▲ 18.0 ▲ 13.2 ▲ 10.6 3.0 ▲ 8.0 (前年比、%) 2012年度 2014年度 8 6 製造業 非製造業 大企業 製造業 非製造業 中堅企業 製造業 非製造業 中小企業 製造業 非製造業 4 2013年度 2 2015年度 0 ▲2 ▲4 ▲6 3月 6月 9月 12月 見込 (注) 2015年度3月調査はみずほ総合研究所予測値。 全規模・全産業。土地を含みソフトウェアを除く。 (資料)日本銀行「全国企業短期経済観測調査」よりみずほ総合研究所作成 (注)土地を含みソフトウェアを除く。 (資料) 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」よりみずほ総合研究所作成 ●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに 基づき作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 3 実績
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