新規経 口 糖尿病治療薬 S G L T ︵ Sod iu m /g lu

◎SGLT2阻害薬について
本年、新規糖尿病治療剤として、SGLT
︵ Sodium/glucose co-transporter
︶2阻害薬が出
ました。近位尿細管のSGLTの発見は非常
に素晴らしいと思いますが、尿中の糖の再吸
収を阻害︵わざと糖尿にする︶してまで、治
療する疾患でしょうか?
再吸収は人間が進
化の過程で、飢餓に備えて得た生命維持機能
だと、個人的に思うのですが。
︵茨城県・中山博之、循環器科︶
回答
川崎医科大学
総合内科学1
特任教授
加来浩平
T2の選択的阻害によりグルコース再吸収を抑
制し、尿中へ排泄させることで、血糖低下作用
とともにエネルギーロスに伴う体重減少効果を
発揮する点が大きな特徴といえる。したがって、
この血糖降下作用はインスリン作用に依存する
ものではない点で既存薬とは大きく異なる。糖
尿病状態では、インスリン作用不足による高血
糖が、いわゆる糖毒性を生じ、膵インスリン分
泌能低下、インスリン抵抗性を増大させる。一
方で、腎臓でのグルコース再吸収能の亢進が高
血糖を助長することがわかっている。したがっ
て、腎でのグルコース排泄を促し、血糖低下さ
せることは治療のターゲットとなりうるととも
cose co-transporterナトリウム/グルコース共
輸送体︶2阻害薬が、本邦では、2014年春
亢進がみられるが、糖尿病状態では ∼100
SGLT2活性阻害によりSGLT1活性
に、糖毒性の是正による糖尿病の病態改善が、
新規経口糖尿病治療薬SGLT︵
Sodium/glu本剤に期待される点といえる。
以降、すでに5製剤が臨床応用可能となってい
る。
本剤は、腎尿細管起始部に存在するSGL
g /日の尿糖排泄をみる。一方、SGLT2阻
害によって、速やかなグルカゴン上昇と肝での
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SGLT2阻害薬で想定される利点
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糖防止のため、SU薬、インスリンの減量が求
素︶薬やインスリンとの併用に際しては、低血
リン指導が必要である。SU︵ スルホニル尿
の心血管系イベント防止のための十分なインス
体液量減少︵脱水︶の防止、ひいては脳梗塞等
めのきめ細かい問診や、浸透圧利尿亢進による
尿糖増加に伴う尿路・性器感染症対策のた
期待できる︵図︶
。
ンスリン抵抗性改善と膵β 細胞機能保護効果が
げられる。糖毒性改善と内臓脂肪減少によるイ
等による血圧低下作用、血清尿酸値の低下が挙
脂質改善効果、浸透圧利尿亢進や内臓脂肪減少
脂肪低下、HDLコレステロール増加といった
血糖改善以外の代謝改善効果として、中性
のと考えられる。
ロスを防ぎ、低血糖を防止する役割を果たすも
進とSGLT1活性増加は、過剰なエネルギー
糖新生作用の亢進がみられる。肝糖新生作用亢
1)
2)
められる。また肝糖新生作用亢進によるケトン
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(筆者作成)
Merovci A, et al : Dapagliflozin improves muscle
insulin sensitivity but enhances endogenous glucose
production. J Clin Invest, 124, 509-514 (2014)
Bolinder J, et al : Effects of dapagliflozin on body
weight, total fat mass, and regional adipose tissue
distribution in patients with type 2 diabetes mellitus
with inadequate glycemic control on metformin. J Clin
Endocrinol Metab, 97, 1020-1031 (2012)
2)
3)
体産生増加は、インスリン分泌能が著明に低下
した症例や糖質制限をしている場合には、ケト
アシドーシスなどのリスクにつながる。体重減
少は、投与開始時は主に体液量減少が、その後
はエネルギーロスが寄与すると思われる。体組
成の変化については脂肪だけでなく、除脂肪成
分も減少する。痩せのある患者での筋肉量減少
はリスクとなる。
近年、わが国の2型糖尿病患者の肥満度は
高まっており、半数にBMI 以上の肥満があ
文献
ことが求められる。
努めることで、本剤の役割を明らかにしてゆく
効・薬理上の特徴を十分に理解し、適正使用に
用が期待されると思われるが、そのためにも薬
る。今後、わが国の糖尿病薬物治療において活
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3)
Ferrannini E, et al : Metabolic response to sodiumglucose cotransporter 2 inhibition in type 2 diabetic
patients. J Clin Invest, 124, 499-508 (2014)
1)