中国 - SBI証券

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ピクテ・マーケット・フラッシュ 2016年1月15日
新興国
Pictet Market Flash
中国:年初来の株式市場急落の要因
2016年年初来、中国株式市場の混乱が続いています。一部の経済指標の悪化、人民元の切り下げ、市場の急落
に対する当局の不手際等、複数の要因が相俟って、市場は混迷を深めたものと考えます。株価の割安感は際立ち
ますが、株式市場を取り巻く環境が落ち着きを取り戻し、投資の再開を確信するには、暫く時間がかかりそうです。
図表1:中国A株株式市場の推移
中国株式市場急落の背景
日次、期間:2015年1月5日~2016年1月13日
6,000
中国の株式市場は2016年年初来急落しています。中
国A株株式市場(CSI300株価指数)の下落率が7%に
達した1月4日、7日の両日には、株価急落時に取引を
強制停止する「サーキット・ブレーカー」が発動されまし
た(図表1参照)。もっとも、足元の市場の混乱が中国
経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の悪化に因る
ものとは思われません。複数の要因が相俟って、弱気
心理がもたらされたものと考えます。また、原油安、北
朝鮮の核実験、緊張の続く中東情勢等の国外要因が
状況を一段と悪化させていると考えます。
CSI300株価指数
5,500
5,000
4,500
4,000
3,500
3,000
不安心理を映した、株式市場の急落
年初来の市場の下落は、2016年1月4日、財新・マーク
イットが発表した2015年12月の中国製造業購買担当
者景気指数(PMI)が48.2と、11月の48.6に届かず、
10ヵ月連続で景況感の分かれ目となる50を下回ったこ
とに端を発しますが、これが市場急落の要因だったと
は思われません。当指数に数日先だって中国国家統
計局が発表していた12月の中国製造業購買担当者景
気指数(PMI)は49.7と11月の49.6を僅かながら上
回っていたからです。また、製造業セクターが低迷する
一方で、サービスならびに消費セクターは持ちこたえて
おり、国家統計局発表の12月の非製造業PMIは54.4
と11月の53.6から改善しています。
一方で、1月7日の人民元の切り下げは、株式市場の
下げを加速させた主要な要因だと考えます。中国人民
銀行(中央銀行)が対ドルの人民元の基準値を6.5646
に引き下げたことで、同行がもう一段の人民元安を容
認しているとの思惑が広がったようですが、これも過剰
反応だったと考えます。緩やかな人民元安基調は既に
確立されており、対ドルの人民元レートは、2015年9月
2,500
15年1月
15年4月
15年7月
15年10月
16年1月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
の6.0から12月には6.55に下落しています。2016年
1月7日の1%の元安は、やや大幅だったとはいえ、市
場の年末予想が1ドル=6.8から6.85であることを考え
ると、想定外の元安とは言えません。
また、中国人民銀行が(対ドルの人民元レートではな
く)2015年末に導入した複数の通貨バスケットに対す
る人民元レートを注視していることも注目されます。中
国外 国為 替 取引 システ ム ( CFETS ) 人民元 指 数は
ユーロを構成通貨の一つとしており、対ドルの人民元
レートよりも道理に適っています。(引き締め局面にあ
る)米国と(緩和を続ける)中国との金融政策の方向性
の違いも、対ドルの人民元安を際立たせています。通
貨バスケットに対する人民元安は、対ドルの人民元安
よりも遥かに小幅であり、中国人民銀行も、対通貨バ
スケット人民元レートの安定性を図っていく意向を明確
にしています。
<次ページに続きます>
ピクテ投信投資顧問株式会社
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
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Pictet Market Flash
新興国
市場急落の一因は一貫性に欠ける政府
の対応
図表2:人民元オフショア・レートとオンショア・レート
のギャップ 日次、期間:2015年1月1日~2016年1月13日
中国証券監督管理委員会(CSRC)が2015年夏に導
入した、上場企業の大株主(銘柄の発行済み株式の
5%以上を保有する株主)による株式売却の半年間禁
止措置の期限が2016年1月8日に迫っていたことも、
市場の不安心理を煽っていたようです。CSRCが、
2015年7月、当該禁止令を発動したのは、株式市場暴
落の回避を狙ったためですが、2016年1月7日には、
市場の急落を受けて新たな規制を発表し、大株主によ
る保有株売却は、1月9日以降、3ヵ月毎に発行済み株
式の1%を上限としています。
1.0300
2015 年 8 月 の 株 式 市 場 の 暴 落 に 際 して 検 討され 、
2016年1月4日に導入された「サーキット・ブレーカー」
も市場の混乱を増大させた一因と考えます。サーキッ
ト・ブレーカーは、CSI300株価指数の下落率が前日比
5%に達した場合、トレーダーに落ち着きを取り戻す余
裕を与えるためとして、取引を15分間停止することとし、
下落率が7%に達した場合には、取引を終日停止する
措置です。サーキット・ブレーカーが発動された1月4日、
7日の両日には、取引が15分間停止され、その間に積
み上がった売り注文と追証にからむ売りが取引再開後
に執行されたため下落が進み、終日停止に至りました。
銀行間貸出金利の上昇も市場急落の要
因に
国内市場で取引されるオンショア人民元(CNY)と主に
香港で取引されるオフショア(中国国外)人民元
(CNH)のレートが乖離し、CNHがCNYを大幅に下
回って取引されていたことも、株式市場急落の一因で
す(図表2参照)。国際通貨基金(IMF)は、人民元を特
別引出権(SDR)の準備通貨に採用した際、CNYと
CNHの大幅な乖離を回避するよう要請しています。乖
離幅の拡大を受けたオンショア人民元のもう一段の切
り下げ懸念が、株式市場の不安心理を増幅させたこと
は確かと思われます。
中国政府は、オフショア人民元の流動性引き締めを狙
い、国営銀行の香港支店経由で、元買介入を行ったよ
うです。翌日物のオフショア人民元建て香港銀行間貸
出金利( HIBOR)は、 1月4日の4%から、 11日には
13.4%、12日には66.8%に急騰し、HIBORが導入され
た2013年以降、最高水準に達しましたが、介入の結果、
オフショア・レートとオンショア・レートは、等価(パリ
ティ)近辺に戻っています(図表2参照)。
1.0250
70%
CNYレート/CNHレート(左軸)
CNH建て香港銀行間貸出金利(右軸)
60%
1.0200
50%
1.0150
40%
1.0100
30%
1.0050
20%
1.0000
10%
0.9950
15年1月
0%
15年4月
15年7月
15年10月
16年1月
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
対応のブレと市場との対話の失敗が先
行き不透明感を醸成
国外の情勢は別として、中国国内の経済のファンダメ
ンタルズに大きな変化は認められません。中国は、投
資主導型経済から消費主導型経済への移行期にあり
ますが、製造業セクターには不振が見られるものの、
差し迫った危機を示唆する証拠は見当たりません。中
国政府には国内経済を支える余裕があると見ています。
足元の株式市場の混乱が示唆しているのは、当局の
株式市場監督の不手際です。また、人民元切下げに
際して明らかとなったように、市場との対話にも不慣れ
なことです。とはいえ、中国の金融政策は、概ね、正し
い方向に向かっており、より柔軟な為替レートはその一
例です。
経済成長の鈍化懸念や一貫性に欠ける市場対応は、
当面、市場のセンチメントを悪化させるものと思われま
す。また、2015年10-12月期を通じて、企業の利益予
想の下方修正が続いていることや、金融業界に照準を
定めた腐敗調査の予備報告が2016年2月に発表され
ることも、市場の混迷を深める公算が高いと考えます。
中国株式のバリュエーション(投資価値評価)は割安感
が際立つものの、投資の再開を確信するには、暫く時
間がかかりそうです。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
容が変更される場合があります。
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