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2.2
緒 言
19
年,オランダ Solvay Pharmaceuticals 社 (当時 Philips Duphar 社) は,ノルアドレ
ナリンの再取り込みはほとんど阻害しないが,セロトニンの再取り込みを選択的に阻害
する化合物(選択的セロトニン再取り込み阻害薬; Selective Serotonin Reuptake Inhibitor;
以下 SSRI)としてマレイン酸フルボキサミン(5-methoxy - 4’- trifluoromethylvalerophenone
- (E) -O-2-aminoethyloxime monomaleate,C15H21F3N2O2・C4H4O4,MW 434.41,以下,フ
ルボキサミン)を発見した。
フルボキサミンは,アドレナリン,ムスカリン,ヒスタミンをはじめとする種々の受
容体に対する親和性をほとんど示さず,副作用の軽減された抗うつ薬として,1983 年よ
り欧州諸国で抗うつ薬として承認され,本邦においても,1999 年 4 月に「うつ病及びう
つ状態,強迫性障害」の適応で承認を取得した。
社会不安障害は,米国精神医学会によって作成された『精神疾患の診断統計マニュア
ル第3版(DSM-III)』に初めて記載され,不安障害の 1 つとして分類された。社会不安
障害は,米国で 1990 年から 1992 年に実施された National Comorbidity Survey での生涯有
病率が 13.3%であり,精神疾患の中でも大うつ病の 17.1%,アルコール依存症の 14.1%
に次いで有病率の高い疾患であった。また,不安障害の中に占める割合においても最も
多い疾患であり,認識されずに治療されていない重大な障害として注目されるに至った。
多くの精神疾患と同様に社会不安障害においてもその病因は明らかではないが,SSRI
が臨床的に有効であることからセロトニン神経系が関与していることが示唆されてい
る。
フルボキサミンは,社会不安障害に対して有効性が報告された最初の SSRI で,市販
の製剤(以下速放性製剤)を使用してオランダで実施された 30 例の小規模試験におい
て,社会不安障害患者に対する有効性が,1994 年に初めて報告された。その後,3 つの
プラセボ対照二重盲検比較試験が海外で実施され,いずれの試験においてもフルボキサ
ミンの社会不安障害に対する有効性が示された。
一方,本邦においては,以前から社会不安障害類似の障害として対人恐怖の存在が知
られ,この中に社会不安障害患者が含まれているとの報告があるが,その割合について
は明らかではない。近年,国内で 1664 名の成人を対象に実施された精神障害について
の疫学調査の結果によると,社内不安障害の生涯有病率は 1.6%であり,調査手法等を考
慮すると,本邦においても欧米に匹敵する数の社会不安障害患者が存在することが推察
され,治療薬が必要であると考えられた。
本邦においては,現在までに社会不安障害の治療薬として承認された薬剤が存在しな
いことから,フルボキサミンの社会不安障害に対する効果を勘案し,20
不安障害への適応拡大を決定した。
1
年 月に社会