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薬剤を日常的に服用している傷病者
に対するときの留意点
慢性疾患などがあって傷病者がすでに処方された薬剤を日
常的に服用しており、またこれを常備・携帯していることがある。
救急活動上は、特に服用忘れによる症状の増悪や過剰服用に
よる薬剤反応や副作用による症状の発現に対応する必要が生
じる。
1. その薬剤の適応となる疾患が背景にある。
2. 薬剤の中断、服薬忘れなどによる症状の増悪が出現して
いる場合がある。
3. 薬剤の副作用、とくに過量による症状が出現している場合
がある。
4. 新たに生じた傷病の症状に対して、背景疾患とともに薬剤
が影響することがある。
1
糖尿病の病態による分類と特徴
糖尿病の病態
特徴
臨床指標
治療
インスリン依存型糖尿病(1型)
インスリン非依存型糖尿病(2型)
インスリンが絶対的に欠乏し、 インスリンの絶対的欠乏ではないが、
生命維持のためにインスリン治 相対的に不足している状態で、生命
療が不可欠
維持のためにインスリン治療が必要
ではないが、血糖コントロールを目的
としてインスリン治療が選択される場
合がある
血糖値:高い。 不安定
ケトン体:著増することが多い
血糖値:様々であるが、比較的安定
している
ケトン体:増加するがわずかである
1.インスリン頻回注射
(3~4回/日)
2.食事療法
3.運動療法
1.食事療法
2.運動療法
3.経口薬またはインスリン療法
2
糖尿病治療薬の分類と作用点
1)インスリン依存型(1型)
インスリンの補充療法
2)インスリン非依存型(2型)
食事療法、運動療法を2~
3ヵ月行っても良好な血糖コ
ントロールが得られない場合
は、経口糖尿病治療薬(経口
血糖降下薬)による薬物療法
が行われる。インスリン非依
存状態であっても妊娠、重篤
な感染症などの場合は、イン
スリン治療が行われる。
3
糖尿病治療薬の特徴
4
インスリン
インスリン製剤は、糖尿病において膵臓から
分泌されるインスリンの絶対的(インスリン依存
型糖尿病:1型)または相対的(非インスリン依
存型糖尿病:2型)不足状態に対して血糖値を
降下させ調節する目的で用いられる注射製剤
である。
携帯に容易なペン型の プレフィルド製剤や
カートリッジ製剤が普及しており、定期的に自己
注射(皮下注射)する。
5
カートリッジ装てん型
専用のペン型注射器に、インスリン製剤の入った
カートリッジ(小さな細長いビン)を、万年筆の替え
インクの様に装填して使うタイプ。専用の使い捨て
注射針をとりつけ、注射量を設定し、注入ボタンを
押せば注射できる。
注射量の設定は簡単で、
単位合わせダイアルを
回転させてメモリを合わせ
る。インスリン製剤を使い
きったら、カートリッジだけ
を取り変える。
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インスリン投与中の副作用
• 最も重要な副作用は、低血糖である。対応として
は、すみやかに糖を服用させる。
• その他に、発汗、頻脈、脱力、見当識障害、妄想
がある。
• 重症では、意識障害(低血糖昏睡)、ショックに
陥り、重大な後遺症を残すこともある。
• 逆に治療が不十分で血糖の調節ができない場
合には、高血糖状態になり、高度な糖尿病性ケ
トアシドーシスや高浸透圧性昏睡が発生するこ
ともある。
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注射器と製剤の一体型
最初からインスリン製剤が内蔵された軽いプ
ラスチック製の注射器で、インスリンキット製剤
とも言う。インスリン製剤を使いきったら注射器
全体を使い捨てにする。
使用法はカートリッジ
装てん型とほぼ同じ
であるが、カートリッジ
を取り換える手間が
いらない。
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経口血糖降下薬
経口血糖降下薬は、インスリ
ン分泌が比較的残されている
糖尿病(2型糖尿病)に対して、
食事療法に併用して投与され
る経口用薬剤である。スルホニ
ル尿素薬(SU薬)は、膵臓から
のインスリン分泌を促進させる。
副作用:
経口血糖降下薬も、その過量
投与や食事摂取不足に際して
やはり低血糖症状が起こる。低
血糖昏睡には、糖の服用や医
療機関でのブドウ糖液の静注
などの治療を早急に受けなけ
ればならない。
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脂質異常症
血清中にはコレステロール・中性脂肪・リン脂質・遊離脂肪
酸などの脂質が存在するが、これが一定濃度を越えた場合、
脂質異常症と呼ばれる。
脂質異常症は粥状動脈硬化の成因の一つであり、急性
心筋梗塞や不安定狭心症といった冠動脈疾患や、脳梗塞
などの重要な危険因子となる。
従って脂質異常症治療の最終目的は、冠動脈疾患をは
じめとした動脈硬化性疾患の発症を抑えることにある。
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動脈硬化の発生メカニズム
❶
❷
❹
❺
❸
❻
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脂質異常症治療薬の分類と薬物
分類
薬物名
HMG-CoA還元酵素阻害薬
シンバスタチン、プラバスタチン
フルバスタチン、アトルバスタチン
ピタバスタチン、ロスバスタチン
フィブラート系薬剤
クロフィブラート、ベザフィブラート
フェノフィブラート、クリノフィブラート
ニコチン酸および誘導体
ニコチン酸トコフェロール
ニコモール、ニセリトロール
陰イオン交換樹脂
コレスチラミン、コレスチミド
プロブコール
プロブコール
植物ステロール
ソイステロール、ガンマオリザノール
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬
エゼチミブ
その他
エラスターゼ、イコサペント酸エチル
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HMG-CoA還元酵素阻害薬
シンバスタチン(スタチン系)などのHMG-CoA還元酵素阻害薬は肝臓の内因性コレステ
ロール合成を阻害する機序で強力に血漿LDL濃度を低下させる。また、細胞表面へのLDL
受容体発現を増加させて、LDL取り込みを促進させる。
HMG-CoA
動脈硬化
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HMG-CoA還元酵素阻害薬の副作用
◆重大な副作用
1)横紋筋融解症 (筋肉痛,脱力感,CPK上昇,血中及び尿
中ミオグロビン上昇 を特徴.これに伴って急性腎不全等
の重篤な腎障害)→直ちに中止
2)肝障害〔黄疸,著しいAST(GOT)・ALT(GPT)の上昇を伴う〕
→ 中止し処置
3)血小板減少 → 中止し処置(紫斑,皮下出血等を伴う重篤
な症例も報告)
4)ミオパシー (広範な筋肉痛,筋肉圧痛や著明なCPRの上
昇)
5)末梢神経障害
6)過敏症状 (ループス様症候群,血管炎等)
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狭心症
狭心症とは冠血管血流による酸素の供給と、心
筋による酸素の消費(需要)のバランスの破綻によ
り、心筋の一部が一過性に酸素欠乏(虚血)になっ
たために生ずる臨床症候群である。
治療としてはバランスを
とるため
①酸素の供給を増やす
または
②酸素の需要を減らす
のいずれかを目標とする
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狭心症の分類
労作性狭心症
冠動脈の器質的変化(動脈硬化などによる狭窄)が進み、運動や何らかの動作
(労作)で心臓に負担がかかり起こる狭心症。運動時や、通勤途上の歩行時、駅の
階段をのぼるときなどに出現し、休むと症状がおさまる。狭心症の約90%を占める。
安静時狭心症(異型狭心症ともいう)
冠血管に器質的変化が存在するか否かに係わらず、安静時に冠血管の攣縮(ス
パズム)が生じて心筋への酸素供給が減少する。安静にしていても起こる狭心症。
深夜や明けがたに多く、何回もくりかえすことがある。
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狭心症と心筋梗塞の違い
心臓は休み無く働いており、そのため
酸素や栄養分が多く必要となる。その
心臓に酸素と栄養を送っているのが冠
動脈である。
その冠動脈が攣縮(急激な収縮)や動
脈硬化によって狭くなったりつまってし
まうと血液の流れが減少したり、途絶え
てしまう。そのような状態を虚血といい
狭心症や心筋梗塞のことをまとめて虚
血性心疾患という。
両者の違いについて:
発作の症状はどちらも胸痛ですが、特
に心筋梗塞は詰まった場所から先に血
液が行かないので心臓の筋肉が壊死
を起こし、死に至ることがあり早急な措
置が必要である。
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狭心症治療薬の分類
狭心症の治療薬には、硝酸薬、カルシウム拮抗薬、
β遮断薬がある(下図)。硝酸薬は労作性と安静時狭
心症、不安定狭心症のいずれにも有効。また、β遮断
薬は労作性、カルシウム拮抗薬は安静時狭心症でス
パズムを抑制し酸素供給能力を高める。
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狭心症治療薬の特徴
分類
薬物
特徴
硝酸薬(亜硝酸薬)
ニトログリセリン 静脈を拡張して心臓に戻ってくる還流量(前負
硝酸イソソルビド 荷)を減らし、動脈を拡張して血管低抗(後負荷)
を減らし、冠動脈を拡張して冠血流量を増やし、
酸素供給を増加させる。
カルシウム拮抗薬
ニフェジピン
ジルチアゼム
β受容体遮断薬
プロプラノロール 心収縮力と心拍数の抑制から心臓の仕事量を
アテノロール
減少させ、運動負荷時の血圧上昇と心拍数増加
メトプロロール
を抑制することにより、酸素消費量を抑制する。
労作性狭心症および心筋梗塞後の患者の予後
を改善させる。
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血管平滑筋および心筋のCa2+チャネルを阻害す
ることにより、冠血管が拡張し、心収縮が抑制さ
れる。その結果、冠血管抵抗と心筋酸素消費量
が減少する。特に、冠血管の攣縮(スパズム)を
抑制するため、安静時狭心症に極めて有効であ
る。心収縮力を低下させ心筋酸素消費量を低下
させるため、労作性狭心症にも有効である。
ニトログリセリン
虚血性心疾患の治療薬として、冠血管拡張作用がある。その一種が
硝酸薬として分類されるもので、その代表がニトログリセリンである。
作用機序:冠状動脈を拡張して心筋への酸素供給量を増加させる。
剤形:舌下錠、テープ製剤、スプレー(舌下エアロゾル剤)がある。
胸痛時の使用:すぐに舌下錠一錠を舌の下に入れて溶かし、口腔粘膜
から吸収させる。本来狭心症であれば
1~2分程度で効果は見られる。もし、5分以
上しても症状が軽減しない場合はもう一錠
追加する。これでおさまらない場合は心筋
梗塞を疑い、すぐに医療機関に搬送する。
発作予防:ニトログリセリンの経皮吸収を
目的としたテープ製剤を胸に貼り、発作の
予防を行う。
副作用:血圧低下(起立性低血圧)、頭痛、
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顔面紅潮、めまい、頻脈など
シルデナフィル
シルデナフィル(商品名バイアグラ)は、陰茎勃起不全
(Erectile Dysfunction; ED)を適応とする内服薬である。
シルデナフィルの作用メカニズムは、心臓病の治療に
用いるニトログリセリン等の硝酸薬と同様のものである
ため、副作用として血圧の急激かつ大幅な低下や、心
臓への酸素供給に支障をきたす狭心などがあらわれる
ことがある。特に同薬服用時に狭心発作に見舞われ、
救急病院に搬送された際、服用者が同薬使用を告げず
に硝酸薬を投与され、症状が悪化・最悪の場合には死
亡するケースも見られる。
ニトログリセリン等の硝酸薬との併用は禁忌!
急性冠症候群が疑われる場合には、本剤の服用の有
無について必ず確認しておく必要がある。
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抗血栓薬の使い分け
1. 動脈血栓症(血流が早い環境下での血栓)
血栓形成に血小板の関与が大きい
抗血小板薬(アスピリン、チクロピジン等)を用いる
2.静脈血栓症(血流が遅い環境下での血栓)
血栓形成に凝固因子の関与が大きい
抗凝固薬(ワルファリン等)を用いる
高齢者では、抗血栓薬の併用による上部消化管出
血のリスクが高くなり、例えば2剤併用で2~3倍、3剤
併用で4倍になることが報告されている。
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ワルファリン
抗凝固薬(血栓形成阻止の目的で用いられる)で、すで
に形成された血栓の進行防止、あるいは血栓症や塞栓症
の予防もしくは再発防止に用いられる。
心臓内(心房細動)や冠状動脈、脳動脈、四肢動脈内の
血栓や深部静脈の血栓、また心・血管手術後などの患者
が服用していることが多い。
ビタミンK依存性凝固因子(Ⅱ因子(プロトロンビン)、Ⅶ因
子、Ⅸ因子、Ⅹ因子)の肝における合成を拮抗的に阻害す
る。消化管から吸収されるため経口剤として有効。
胎盤を通過するため、妊婦には禁忌である。過剰投与に
よる出血には、拮抗薬のビタミンKがある。
ビタミンK含有食品(納豆等)は摂取しないように指導する。
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アスピリン
アスピリンは、非ステロイド系抗炎症薬の一つである。抗炎症作用のほかに解熱鎮痛作
用もあり、各種原因による痛みや発熱の対処療法として用いられる。また、その少量(10
0mg)が血小板の血管壁への粘着と凝集を抑制する効果があり、抗血小板薬に分類され
る。血栓症の予防のために、狭心症や脳虚血発作、心筋梗塞、脳梗塞の二次予防などに
おいて長期連用している患者がある。
抗血小板薬:
血小板は刺激を受けると、細胞膜リン
脂質からアラキドン酸を遊離し、シクロオ
キシゲナーゼなど一連の酵素反応を経
て、血小板凝集作用を有するトロンボキ
サンA2を生成します。
血小板
アスピリンは、シクロオキシゲナーゼを
不活化することによって、トロンボキサン
A2の生成を抑制します。その結果、血小
板凝集が抑制されます。アスピリンは、
血小板の機能を抑制し、血栓の形成を
予防することにより、脳梗塞・心筋梗塞
の再発リスクを低下させます。
血小板凝集作用
24
高血圧症の分類
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二次性高血圧症
10%
本態性高血圧症
90%
◆ 原因疾患が明らかなもの
褐色細胞腫
(副腎髄質細胞の腫瘍→NE, Epi分泌)
◆ 原因疾患に対する治療
◆ 原因が不明
◆ 抗高血圧薬による治療
[ 血圧 ] = [ 心拍出量 ] × [ 末梢血管抵抗 ]
高血圧症では、一般に心拍出量は変わらないが、末梢血管
抵抗が高い。
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降圧薬
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カルシウム拮抗薬
作用機序: 血管平滑筋および心筋のL型電位依存性カルシウムチャ
ネルを遮断しCa2+流入を抑制
↓
細胞内Ca2+濃度増加によりミオシン軽鎖が活性化されアクチン/ミオ
シンが相互作用(スライディング)を起こし収縮する系を抑制。
特徴:
高齢者の場合、第一選択薬。β遮断薬, ACE阻害薬, 利尿薬との併用
で有用
糖、脂質代謝に悪影響なし。尿酸代謝は改善効果 → 糖尿病や高脂
血症に適
脳循環改善作用を有する(ニカルジピン、ニルバジピン)
有害作用:
徐脈、房室ブロック、心不全(ジルチアゼム)、顔面紅潮(ニフェジピン、
ニカルジピン、ニルバジピン)妊婦への投与は禁忌
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レニン・アンジオテンシン・アルドステ
ロン 系に作用する薬物
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アンジオテンシン変換酵素阻害薬
昇 圧 物 質 の ア ン ジ オ テ ン シ ン II の 合 成 酵 素 ( Angiotensin
Converting Enzyme: ACE)を阻害し、同時に降圧物質のブラジ
キニンの分解酵素(ACE)を阻害し両面から血圧低下に寄与する。
有害作用:咳(ブラジキニン作用の増強による)腎障害のある患
者では腎機能が悪化する場合がある。カプトプリルなど
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アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬
アンジオテンシンII受容体を遮断して、血管平
滑筋を拡張したり、副腎皮質からのアルドステ
ロン分泌を抑制して降圧作用を示す。
ACE阻害薬とは異なりブラジキニンの分解阻止
する作用がないので咳、発疹が少ない。
尿酸低下作用を有している。
動脈硬化、心肥大の予防効果が期待される。
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利尿薬
利尿薬は、水および
電解質の 尿から の
排泄を促す薬剤で、
うっ血性心不全にほ
か、腎疾患や肝疾
患における浮腫に
対して用いられる。
その作用機序や尿
細管への作用部位
によってさまざまな
種類がある。降圧作
用を伴うものもある。
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降圧利尿薬の分類
利尿薬は主として腎臓に働き、尿細管や集合管から電解質(Na+, Cl -など)や水分の再
吸収を抑制し尿の排泄(利尿)を促し、体液量(血液量)を減らす事によって血圧を下げる。
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β受容体遮断薬
心臓のβ1受容体を遮断して心拍数と心収縮力の
減少による降圧作用(心拍出量を減少させる)
β1選択性の薬物:
気管支収縮が弱い/気管支喘息を悪化させない
(β1選択性でも気管支喘息には禁忌)
四肢末梢動脈の血行障害が少ない
β1選択性なしの薬物:
気管支喘息を悪化させる(β2刺激で気管支拡張)
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気管支喘息
気管支喘息は、気管支の慢性的な炎症がもとになっている。慢性的な炎症がもとになり、
少しの刺激で気管支平滑筋の収縮、気道粘膜のむくみ、喀痰の過剰産生などが生じること
により(気道過敏性の亢進)気道が狭くなる病気である。気道が狭くなると、呼吸をするたび
にゼーゼー、ヒューヒューという気管、気管支の音(喘鳴)を伴った呼吸困難が起こる。
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気管支喘息治療薬
吸入ステロイド:
喘息の治療薬として吸入ステロイドは第一選択薬として挙げられている。
ステロイドの吸入によって「気道の炎症」が抑制され喘息の症状が改善する。
吸入ステロイドの副作用は、口腔内カンジダなどの局所のものを除けば全
身性の副作用はほとんど認められない。
β2刺激薬:
吸入ステロイドと併用することで効果が増大する。 吸入薬、貼付薬、経口薬
がある。長時間作動型はコントローラー、短時間作動型は発作時に使用。
テオフィリン徐放製剤:
気管支を拡張する作用によって気管支喘息の症状を改善する。長期にわ
たって内服する場合、定期的に血液中の薬の濃度を測定する。
抗アレルギー薬(予防的使用):
①ロイコトリエン拮抗薬
ステロイドとは別の機序で気道の炎症を抑制し、喘息の症状を改善する。
②その他の抗アレルギー薬
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気管支喘息治療薬
気管支喘息は、従来気道狭窄(喘息発作)に対する治療が中心でしたが、
発作を起こさないよう炎症をコントロールする管理薬(コントローラー)が重
要であるとされている。
コントローラー:吸入ステロイド
薬と長時間作働型β 2刺激薬
がある。これらの薬は発作の
予防だけではなく、長期予後
(肺や気管支の不可逆的変
化)の改善にもつながる。 ステ
ロイドと気管支拡張薬の合剤
も発売されている。
発作時:短時間作働型β 2刺
激薬を使用する。発作頻度が
多くなれば、吸入ステロイド薬
増量、長時間作働型気管支拡
張剤の併用、抗アレルギー剤、
除放性テオフィリン剤を追加。
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重症度に対応した段階的薬物治療法
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うつ病の症状
精神症状
意欲・興味の減退
知的活動性の低下
判断力、記憶力の減退
仕事の能率の低下
憂うつ気分・悲哀感
自信がない
とりこし苦労
罪責感
自殺念慮(自殺を考える)
自殺企図(自殺を実行する)
身体症状
睡眠障害
(不眠、早朝覚醒)
頭痛・肩こり
倦怠感・疲労感
(だるい、重い)など
食欲不振
性欲減退
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うつ病の疫学
• 有病率: 約1〜4.9% (平均:2.8%)
• 日本にはうつ病、うつ状態が約500万人いる
• 生涯罹患率:
-男性: 7〜12%
- 女性: 20〜25% (男性:女性=1:2)
• 一般外来診療患者:25%がうつ状態
• うつ病患者の40〜70%の高い率で自殺念慮
• うつ病は、自殺の主要な原因の一つである
• 2020年には全ての疾患の中で最も経済的打撃を与え
ると予想されている(WHOによる)
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パニック障害
パニック障害とは、繰り返し起こる「パニック発作」と、発作が起こることへの「不安」、およ
びそれに伴う「回避行動」がみられるもので「不安障害」と呼ばれる。パニック障害には
「パニック発作」・「予期不安」・「広場恐怖」という3つの特徴的な症候がある。
強迫性障害
強迫性障害とは、不快な考えが頭に何度も浮かぶため、その不安を振り払う目的から同
じ行動をくり返してしまう病気である。
手を何度も洗わずにはいられないとか、戸締まりを何度も確認しなくては気がすまない
など、誰でもたまには経験する行動が習慣的かつ非常にエスカレートして生活に支障を
きたすほどの状態が強迫性障害である。
そして、自分の不快な考えについて「こだわりすぎだ」と判断できるにも関わらず、こだわ
らずにいられないことが特徴である。
社会不安障害(対人恐怖)
人前で話をする際にあがってしまい言いたいことが十分に言えなくなる。
初対面の人と接していて何を話したらよいのかわからず気まずい思いをする。
目上の人の前に出たとたん緊張して言いたいことの半分くらいしか話せなくなる。
この社会不安が高じて、治療を要するほど本人が苦しくて生活上にも深刻な影響が現
われるようになったものが社会恐怖である。
自殺者の年次推移
1998年以降、全
国の自殺死亡者
が毎年3万人を超
える状況が14年
間続いている。
41
自殺の原因
42
うつ病の病因
モノアミン仮説
降圧薬のレセルピンで高齢者にうつ状態と自殺の副作用が多発
(レセルピンは中枢モノアミンを枯渇させる作用がある)
モノアミン取り込み阻害作用を有する薬物が効果を発揮する
↓
中枢モノアミン神経系の機能低下が病因
(セロトニンおよびノルアドレナリン放出量の低下)
モノアミン仮説の限界
抗うつ薬投不でシナプス間隙には短時間で遊離モノアミンは増加
するが、臨床効果が発揮されるには数週間かかる。
二次的な作用により、抗うつ効果が出現していることが考えられる。
43
抗うつ薬
主な抗うつ薬は、セロトニントランスポーターやノルエピネフリントラ
ンスポーターを阻害してモノアミンの神経終末への取り込みを抑制し、
シナプス間隙中のモノアミン量を増やす
三環系抗うつ薬
(TCA)
選択的
セロトニン
取り込み阻害薬
(SSRI)
選択的セロトニン
・ノルエピネフリン
取り込み阻害薬(SNRI)
非三環系
抗うつ薬
(non-TCA)
抗うつ薬
の分類
TCA: Tricyclic antidepressant
SSRI: Selective Serotonin Reuptake Inhibitor
SNRI: Serotonin-Norepinephrine Reuptake Inhibitor
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各種抗うつ薬の特徴
分類
三環系
非三環系
(四環系)
SSRI
選択的セロト
ニン取り込み
阻害薬
SNRI
選択的セロト
ニン・ノルアド
レナリン取り
込み阻害薬
特徴
効果
副作用
問題点
•QOLに問題となりうる
•過量服薬にて致死的とな
りうる
•効果は強いが副
作用が多い
•強力な抗うつ効果
•抗コリン、抗α1作
用、キニジン様作用
(QT延長)等が強い
•三環系をいくら
かマイルドに
•マイルドな抗うつ効
果
•一部の薬は催眠効
果にすぐれる
•三環系よりマイルド、 •抗うつ効果に物足りなさが
眠気
ある
•選択的にセロト
ニン取り込みを
阻害
•抗コリン、抗α1
作用が弱い
•マイルドな抗うつ効
果
•脅迫性障害、パニッ
ク障害、社会不安障
害にも有効
•吐き気、頭痛、性機
能障害
•意欲にあまり効かない
•CYPを阻害するため相互
作用に注意
•若年層への投与は慎重に
(自殺のリスクが高まる)
•選択的にセロト
ニンとノルアドレ
ナリン取り込みを
阻害
•抗コリン、抗α1
作用が弱い
•マイルドな抗うつ効
果
•SSRIよりも意欲に効
果
•血圧上昇、頻脈、頭
痛、閉尿(前立腺疾
患等)の患者には禁
忌
•循環器系疾患には投与を
慎重にする必要あり
•若年層への投与は慎重に
(自殺のリスクが高まる)
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