ご参考資料 ピクテ・グローバル・マーケット・ウォッチ 2015年12月29日 グローバル Pictet Global Market Watch 商品市況の足元の状況と2015年の振り返り 2015年11月の商品市況は米国の年内利上げへの警戒感から下落しました。2015年の商品市況の値動きを振り 返ってみると、原油の供給過剰と米国の利上げに大きく影響される展開となりました。今後も、米国の利上げペース やドルの動きに影響される展開が続く可能性があるため、注視が必要と考えます。 図表1: CRB指数と原油・金先物価格の推移 11月の市場概観 日次、米ドルベース 期間:2000年11月末~2015年11月末 2015年11月、商品市況の動向を表す代表的な指数で あるCRB指数は前月末比-6.7%となり、2015年8月の 安値を割り込む展開となりました(図表1参照)。特に原 油価格は同-10%を超える下落となり、主要商品である 原油価格の下落を受けて商品市況全体に対する下落 圧力が強まりました(図表2参照) 。商品市況の下落の 背景としては、米国の利上げ期待によるドル高や原油 の供給過剰が長期化するとの懸念が広がったことなど があげられます。また、8月の人民元切り下げ以降、中 国経済の減速懸念も依然として商品市況の下落圧力 となっていると考えられます。 800 2000年11月末=100として指数化 700 CRB指数 原油 金 600 500 400 300 200 100 0 00年11月 03年11月 06年11月 09年11月 12年11月 15年11月 2015年の振り返り 図表2: 主な商品価格の騰落率と為替レート 2015年の商品市況は米国の利上げ、原油の供給過 剰、中国経済の減速懸念の3つの要因に大きく左右さ 2015年11月末現在 れる展開となりました。2015年前半は、原油の生産設 過去1ヵ月 過去3ヵ月 過去6ヵ月 過去1年 備の縮小や米経済統計の結果が市場予想を下回るな CRB指数 -6.7% -9.7% -18.2% -28.2% どして米国の利上げ期待が後退したことによって、一 原油 -10.6% -15.3% -30.9% -37.0% 時的に原油価格や金価格が上昇する場面もありました。 金 -6.6% -5.8% -10.4% -9.3% しかし、米国で原油在庫が大幅に増加したことや、根 ドル指数 3.3% 4.5% 3.4% 13.4% 強い米国の利上げ期待でドル高が進んだことによって ドル円レート 120.4 121.24 123.87 118.21 再度下落に転じ、結果的にCRB指数は上下しながらも 過去3年 過去5年 過去7年 過去10年 一定の範囲で推移しました。 CRB指数 -38.9% -39.4% -25.5% -41.9% 7月以降は下落が本格化しました。米国の利上げ期待 原油 -53.2% -50.5% -23.5% -27.3% によるドル高で金が売られたほか、原油の供給過剰が 金 -37.7% -23.0% 30.6% 115.5% 解消される見通しが立たないことなどから下落圧力が ドル指数 25.0% 23.4% 15.8% 9.4% 強まりました。また、今まで大量の資源を消費してきた ドル円レート 82.66 83.81 95.28 119.51 中国経済の減速懸念が高まったことが市場を動揺させ、 商品市況は更に急落しました。その結果、2015年8月 ※原油:WTI原油先物、金:CMX金先物、ドル指数:ドル・インデックス、 ドル円為替レートは各月末の東京時間の終値を使用 にはリーマンショック後の安値を割り込み、11月におい 出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成 ては約15年ぶりの安値水準で推移しています。 2015年の商品市況は年間を通じて下落する展開が目 (※将来の市場環境の変動等により、上記の内容が 立つ動きとなり、リーマンショック後の安値を割り込む 変更される場合があります。) など、大きな節目の年となりました。 <次ページに続きます> ピクテ投信投資顧問株式会社 記載のデータは、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありま せん。 巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。 1 4 ご参考資料 Pictet Global Market Watch グローバル 原油需給の動向 図表3:米国の石油掘削装置稼動数と原油在庫の推移 原油先物価格は2014年11月末から2015年11月末の 週次、期間:2010年11月26日~2015年11月27日 1年間で-37%下落しています。 2,000 550 基 百万バレル 原油価格の下落を受けて、米国では石油掘削装置(リ グ)の稼動数が急激に減少しています(図表3参照)。 1,700 500 しかし、リグの稼動数が減少しているにも関わらず、米 石油掘削装置の稼動数(左軸) 原油在庫(右軸) 国の原油在庫は大幅に増加しており、原油価格下落 1,400 450 の大きな要因となりました。この背景としては、採掘コ ストが高く採算割れしている油井の生産を停止する一 1,100 400 方で、採掘コストが低い油井での生産を増加させてい ることや、掘削技術の進歩によりリグ1基あたりからの 800 350 生産量が増加していることなどがあげられます。 需給面を見てみると、2013年から2015年前半までは 500 300 非OPEC諸国の原油供給量の伸びが原油消費量の伸 びを上回っており(図表4参照)、原油の在庫増加と価 格の下落要因となっていました。ただ、米国エネルギー 省情報局(EIA)によると、2016年以降は原油供給量 図表4:原油の需給動向と原油価格の推移 は減少に転じると予想されているうえに、米国の景気 四半期、期間:2012年1-3月期~2016年10-12月期(予想含む) 回復により原油消費の増加が期待されることから、原 油需給が改善する可能性もあります。 百万バレル/日 米ドル/バレル 3 110 2.5 100 予想 主要産油国の採算ライン 産油国の財政は原油価格の動向に大きな影響を受け ます。主要産油国が財政収支を均衡に保つために必 要な原油価格は一番低いクウェートでも1バレルあたり 49ドル、サウジアラビアは106ドルとなっています(図表 5参照)。現在の原油価格の水準は主要産油国が財政 維持に必要な価格を大きく割り込んでおり、主要産油 国の財政に大きな影響を及ぼしていると考えられます。 このような状態にも関わらず、主要産油国はいまだに 減産に踏み切っておらず、チキンレースの様相を呈し ています。背景には、原油生産のシェア維持などがあ げられますが、このまま原油価格の低迷が続けば産油 国の財政にとって大きなマイナス要因になると考えら れます。 <次ページに続きます> (※将来の市場環境の変動等により、上記の内容が 変更される場合があります。) 2 90 1.5 80 1 70 0.5 60 0 50 -0.5 40 -1 30 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 非OPEC諸国の原油供給量の伸び(前年同期比、左軸) 世界の原油消費量の伸び(前年同期比、左軸) WTI原油先物価格(右軸) 図表5:主要産油国の財政均衡に必要な原油価格 産油国のデータは2015年時点、 シェールオイルの採算ラインは2014年時点のデータを使用 サウジアラビア 106 イラン 87 米国シェールオイル採算ライン(平均値) 85 イラク 81 アラブ首長国連邦 73 クウェート 49 米国シェールオイル採算ライン(最低値) 米ドル/バレル 40 0 20 40 60 80 100 120 出所:国際エネルギー機関(IEA)、ブルームバーグ、IMF、米国エネル ギー省情報局(EIA)のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成 記載のデータは、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありま せん。 ピクテ投信投資顧問株式会社 巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。 2 4 ご参考資料 Pictet Global Market Watch グローバル 図表6:サウジアラビア財政の原油の割合と財政収支 (上)および原油価格の推移(下) 産油国の財政と原油価格 年次、期間:2000年~2014年(上) 世界最大の原油生産量を誇るサウジアラビアでは、原 月次、期間:2000年12月末~2014年12月末(下) 油価格の低迷による財政赤字に対応するために今年8 14,000 月に2007年以降初めて国債を発行しました。サウジア 億サウジアラビア・リヤル 12,000 ラビアの国家財政を見てみると、歳入の約9割を原油 歳入(その他・左軸) 10,000 関連が占めており、原油への依存度が非常に高いこと 歳入(原油関連・左軸) 財政収支対GDP比(右軸) 8,000 がわかります(図表6参照)。 6,000 そのため、サウジアラビアの財政収支は原油価格に大 きく左右されるという特徴があります。原油価格が大き 4,000 く上昇し始めた2004年から2007年は多額の財政黒字 2,000 を計上する一方、原油価格が下落すると財政赤字に 0 転落する傾向が見られます。 -2,000 現在は外貨準備高を取り崩すなどして財政赤字を補っ -4,000 2000年 2002年 2004年 2006年 2008年 2010年 2012年 ている状態ですが、このまま原油価格の低迷が続けば 160 財政悪化が更に進む可能性もあります。また、サウジ 米ドル/バレル 140 アラビアは隣国イエメンへの軍事介入で軍事費が増加 120 していることも財政圧迫の要因となっています。 原油価格 100 世界最大の原油生産国であるサウジアラビアの動向 80 は原油価格に大きな影響を与えるため、今後も注視が 60 必要です。 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% -5% -10% 2014年 40 <次ページに続きます> 20 (※将来の市場環境の変動等により、上記の内容が 変更される場合があります。) 0 2000年 2002年 2004年 2006年 2008年 2010年 2012年 2014年 ※原油価格:WTI原油先物 出所:CEIC、ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成 記載のデータは、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありま せん。 ピクテ投信投資顧問株式会社 巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。 3 4 ご参考資料 Pictet Global Market Watch グローバル 金価格の動向と米国の利上げ 金先物価格は2014年11月末から2015年11月末まで の1年間で-9.3%下落しました。 金が下落した主な背景は米国の利上げ期待によるド ル高があげられます。金とドルの値動きは逆相関にな る傾向があり、ドルが上昇すると金は売られやすくなり ます(図表7参照)。実際、金が下落した一方、ドルの価 値を表す代表的な指数であるドル指数は同期間で 13.4%上昇しています。 その理由として、金をはじめとする商品は多くの場合ド ル建てで取引されており、ドル高になると他通貨から見 て割高感が出て金が売られやすくなるということがあげ られます。逆に、ドル安になると割安感が出て金が買 われやすくなります。 2015年に入ってからの金の動きを振り返ってみると、1 月はギリシャの政局不安などによって上昇しましたが、 2月に入るとギリシャ情勢に対する懸念の緩和や好調 な米雇用統計によるドルの上昇を受けて下落に転じま した。その後、一定の範囲でもみ合う展開になりました が、7月になるとFOMCが年内利上げの姿勢を見せた ことから再度下落する流れとなりました。8月には中国 経済の減速懸念からリスク回避需要で金価格が上昇 に転じましたが、11月に入ると年内利上げへの警戒感 から再び下落する展開となりました。 金をめぐる投資家の動き 金をめぐる資金動向を見てみると、世界最大規模の金 上場投資信託であるSPDRゴールド・シェアは2013年 1月以降、資金流出が目立ちます(図表8参照)。2015 年に入っても資金流出の流れは止まらず、金価格も下 落が続いている状況です。米国の利上げ観測が台頭 する中で、金に対する投資家心理が悪化していたこと がうかがえます。 今後も、金価格はドルや米国金利の影響を受ける可能 性が高いため、米国の利上げのペースやドルおよび金 利の推移に注視する必要があると考えます。 (※将来の市場環境の変動等により、上記の内容が 変更される場合があります。) 図表7:ドル指数と金価格の推移 月次、期間:2010年11月末~2015年11月末 140 60 2010年11月末=100として指数化 130 70 120 80 110 90 100 100 90 ドル安 110 金価格(左軸) 80 120 ドル高 ドル指数(右軸・逆目盛り) 70 130 60 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 140 2015年 図表8:金価格と金上場投資信託の資金流入状況 月次、期間:2010年11月末~2015年11月末 140 4,000 金価格は2010年11月末=100として指数化 130 資金流出入額(右軸) 3,000 120 金価格(左軸) 2,000 110 1,000 100 0 90 -1,000 80 -2,000 70 -3,000 60 -4,000 50 -5,000 40 -6,000 30 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 -7,000 2015年 ※金:CMX金先物、ドル指数:ドル・インデックス 金上場投資信託:SPDRゴールド・シェア 出所:CEIC、ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成 記載のデータは、将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありま せん。 当資料をご利用にあたっての注意事項等 ●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場 の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。●当資料に記載された過去の実績は、将 来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません。●当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが、その正確性、完全性、使用 目的への適合性を保証するものではありません。●当資料中に示された情報等は、作成日現在のものであり、事前の連絡なしに変更されることがあります。 ●投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません。●投資信託は、預金や保険契約と異なり、預金保険機構・保険契約者保護機構の対象 ではありません。●登録金融機関でご購入いただいた投資信託は、投資者保護基金の対象とはなりません。●当資料に掲載されているいかなる情報も、法務、 会計、税務、経営、投資その他に係る助言を構成するものではありません。 44 44
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