Pictet Market Monthly

ご参考資料
ピクテ・マーケット・マンスリー 2015年1月発行
欧州・米国市場
Pictet Market Monthly
2014年12月発行の欧州・米国市場ニュース
12月の欧米市場ニュース
ユーロ圏の主要経済指標
タイトル
頁
ユーロ圏消費者物価指数:量的緩和を正当化
2
欧州委員会:ユンケル新委員長の投資計画案
欧
州
米
国
指標名
時点
前回値
市場
予想
公表値
次回
発表
次回
予想
サービス業購買担当
14年12月
者景気指数(PMI)
51.1
51.9
51.9
1月6日
51.9
失業率(%)
14年10月
11.5
11.5
11.5
1月7日
11.5
小売売上高
(前月比,%)
14年10月
0.5
0.2
1.4
1月8日
0.2
鉱工業生産
(前月比,%)
14年10月
0.5
0.2
0.1
1月14日
--
4
10月ドイツ鉱工業生産:10-12月期GDPの小幅改善を
示唆
6
ユーロ圏ならびに日本の小型株:楽観的な見通しの
根拠
8
消費者物価指数(前
年同月比,%)
14年11月
0.4
0.3
0.3
1月16日
--
米ISM景況指数: 11月は製造業、非製造業指数とも
に堅調
10
製造業購買担当者
景気指数(PMI)
14年12月
50.1
50.8
50.6
1月22日
--
実質GDP
(前期比,%)
14年9月
0.1
0.2
0.2
2月13日
--
米国個人消費:11月の小売売上高は市場予想を上
回る
11
米国経済:2014年の振り返りと2015年の展望
12
米国ハイイールド債市場:原油安がエネルギー・セク
ターに及ぼす影響
14
※2015年1月5日時点の発表データと予想
※予想はブルームバーグ集計市場予想
出所:ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
ピクテ投信投資顧問株式会社
米国の主要経済指標
前回値
市場
予想
指標名
時点
ISM非製造業景況指
数
14年11月
失業率(%)
14年11月
非農業部門雇用者
数(前月比,千人)
14年11月
243
240
小売売上高
(前月比,%)
14年11月
0.5
消費者物価指数
(前月比,%)
14年11月
実質GDP
(前期比,%,年率)
ISM製造業景況指数
57.1
次回
予想
58.0
1月9日
5.7
321
1月9日
240.0
0.1
0.7
1月14日
0.1
0
-0.3
-0.26
1月16日
-0.3
14年9月
4.6
4.3
5
1月30日
--
14年12月
58.7
57.5
55.5
2月3日
--
5.7
59.3
次回
発表
1月7日
5.8
58
公表値
5.8
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
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先進国
2014年12月1日発行ニュース
ユーロ圏消費者物価指数:量的緩和を正当化
2014年11月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)は、原油価格の急落を受け、前月からプラス幅を縮小しました。域
内経済の停滞と信用の伸び悩みを背景に、一段の低下の可能性も否めません。欧州中央銀行(ECB)は、2015年
初めにも、国債の購入を通じた量的緩和に踏み切る公算が高いと考えます。
CPIはプラス幅を縮小
図表1:ユーロ圏インフレ率の推移
(月次、期間:1995年1月~2014年11月)
2014年11月のユーロ圏消費者物価指数(総合インフレ
率、CPI)は、前月から小幅の低下となり、再びデフレが
懸念される水域に近づきました。国際商品価格の下落、
低成長GDP(域内総生産)、マネーサプライの伸び悩
み等を背景に、一段の低下の可能性も否めません。欧
州中央銀行(ECB)ならびに各国政府には、金融・財政
刺激策の拡大を求める圧力が強まっています。
%、前年同月比
4
3
2
総合インフレ率
2%
(ECB目標)
1
コア・インフレ率
0
-1
コアCPIは横ばい
95年 97年 99年 01年 03年 05年 07年
欧州連合統計局(ユーロスタット)が発表した2014年11
月のユーロ圏CPI(速報値)は、市場の予想通り前月の
数値を0.1ポイント下回って前年同月比+0.3%と9月の水
準に落ち込みました。また、エネルギー、食品、アル
コール飲料・タバコを除く11月のコア・インフレ率は、前
月比では-0.1%、前年同月比では+0.7%となりました(図
表1参照)。
09年 11年 13年
出所:ピクテグループのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
期待インフレは一段の低下
非エネルギー財価格は下げ止まり
CPIの主要項目では、11月のサービス価格が前年同月
比+1.1%、非エネルギー関連の工業品価格が同±0%
だったのに対し、エネルギー工業品価格は同-2.5%と10
月の同-2.0%から下げ幅が拡大しました。また、食料品
価格は同+0.5%でした。
石油輸出国機構(OPEC)が先週木曜日、減産見送りを
決定したことから、原油(北海ブレント)価格は2010年8
月以来の水準に急落しました。エネルギー価格が物価
を下押す状況は今後数ヵ月続きそうですが、食品価格
のベース効果がこれを一部相殺するものと考えます。
足元の原油価格の急落が期待インフレを低下させ、
ECBに対する圧力を強めていることが注目されます。
<次ページに続きます>
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先進国
マネーサプライの伸びは予想に届かず
インフレが低位に留まったことに加え、2014年10月の
ユーロ圏M3(広義のマネーサプライ指標)の伸び率は
前年同月比+2.5%と予想の同+2.6%を僅かに下回りまし
た。また、10月の民間向け銀行融資は前年同月比
-1.1%となり、9月の同-1.2%から減少率は縮小したもの
の、30ヵ月連続で減少しました。
企業向け融資は引き続き減少
2014年10月の非金融機関向け融資は、9月と同様、30
億ユーロの減少となりました。一方、家計向け融資は
住宅ローンが40億ユーロ、消費者信用が20億ユーロと、
いずれも増加しました。
銀行融資は安定推移しているものの、伸びは小幅に留
まり、ペースも緩慢です。
量的緩和はクリスマス・プレゼントとなるか?
域内主要行を対象とした資産査定とストレステストの終
了、資産担保証券(ABS)と債権担保付社債(カバード
ボンド)の買入開始ならびに中小企業向け融資に目標
を定めた長期性資金供給オペ(TLTRO)の実施に加え、
量的金融緩和が決定される可能性が高いことから、マ
ネーサプライは2015年を通じて伸びを加速させるもの
と考えます。一方、域内経済の低成長と地政学的緊張
を巡る不透明感が、信用の需要と供給を共に下押し続
ける可能性は否めません。
インフレ率は2015年を通じて低位に留まるものと予想
され、デフレ対策が喫緊の課題となっています。ECBは、
公約を行動に移し、2015年初めにも国債の買入れを通
じた量的緩和に踏み切る公算が高いと考えます。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
容が変更される場合があります。
ピクテ投信投資顧問株式会社
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先進国
2014年12月3日発行ニュース
欧州委員会:ユンケル新委員長の投資計画案
2014年11月26日、欧州委員会のユンケル委員長は、欧州連合の景気対策の柱となる官民投資計画の具体案を発
表しました。EUの政策金融機関である欧州投資銀行(EIB)の融資に対してEUがリスクを一部保証することで、従
来よりも高リスク案件への投資が可能となりそうです。EUは正しい方向に歩を進めており、進展が注目されます。
ユンケル委員長の官民投資計画案
欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会のジャン
=クロード・ユンケル新委員長は、2014年11月26日、
3,150億ユーロ規模の官民投資計画を欧州議会で発表
しました。
EUの従来の投資計画案は、規模は大きいものの資金
不足のため計画倒れに終わり、期待を裏切る結果と
なっていました。直近の計画である2012年の「成長と雇
用のための協定」は、EUの政策金融機関である欧州
投資銀行(EIB)の資本を100億ユーロ増強することで、
1,800億ユーロの追加投資をもたらすはずでした。
これに対し、ユンケル委員長が提示した新しい投資計
画案は、欧州戦略投資基金(後述)の使途を示すもの
となっています。今回は、EIBの融資に対してリスクを一
部保証するために資金が使われることとなり、民間投
資を呼び込んで行き詰った投資案件を軌道に乗せると
いう最終目的のため、EIBに「一次損失の保証」(劣後
持分による保証)を提供するものとなっています。
3,150億ユーロは、EU全体のGDP(域内総生産)の2.1%
に相当する巨額の資金ですが、2016年から2018年に
かけての3年計画であることから、最初の効果の確認
には2016年を待たなければなりません。
官民投資計画案の仕組み
今回の投資計画案では、当初資金を210億ユーロとす
る「欧州戦略投資基金(EFSI)」が新たに創設されるこ
ととなっています。EFSIにはEUの一般予算から160億
ユーロを支出し、EIBが50億ユーロを拠出する他、EU
加盟国ならびにドイツ復興金融公庫(KFW)やフランス
預金供託公庫(CDC)等の公的金融機関に任意の拠
出が要請されます。また、ユーロ圏加盟国の拠出は、
EUの財政規律遵守の評価には含まれません。
210億ユーロは、EIBが債券発行により600億ユーロを
調達するために用いられます。調達された資金は、EIB
のトリプルA格付けを維持するため、「一次損失の保証
」に充てられ、EIBの融資に対してリスクを一部保証す
ることとなります。このことは、ユンケル委員長の投資
計画案の核心となっています。過去の提案では、EIBの
最高格付けを断固維持するとの強い意志が、同行のリ
スク資産に対する投資を制限する結果となったからで
す。今回の計画案の枠組みでは、投資案件の失敗に
よる一次的な損失は、EUの予算で負担されることとな
ります。
また、新たに設置される特別委員会が投資案件の選
定にあたることとなっており、既に、エネルギー、輸送、
高速ブロードバンド、教育、研究、イノベーション等の分
野が優先分野に指定されています。
官民投資計画案の効果
3,150億ユーロ規模の投資計画が実行されれば、EUの
GDPは大きく押し上げられることとなります。3,150億ユ
ーロはEUのGDPの2.1%に相当するからです。また、当
投資計画案はユーロ圏に限定されるものではなく、EU
全体に適用されます。したがって、EU加盟の全28ヵ国
が投資の効果を享受し得ることとなります。ユーロ圏の
GDPは、EUのGDPの70%を占めることから、ユーロ圏は
3,150億ユーロの70%に相当する2,200億ユーロ相当の
恩恵を期待できることとなります。当計画は2016年から
2018年にかけての3年計画であり、対GDPの直接の効
果は年間0.7%に上ります。
<次ページに続きます>
ピクテ投信投資顧問株式会社
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先進国
GDPの乗数効果も期待されます。国際通貨基金(IMF)
によれば、GDPの1%に相当する投資は、投資が実行さ
れた年のGDPの水準を約0.4%押し上げるだけでなく、4
年後のGDPを1.5%押し上げるとのことです(注1)。です
から、各国政府による追加融資を除いたとしても3,150
億ユーロにのぼる今回の投資計画は、短期で1%、中期
で2%程度のGDP押上げ効果を持つこととなります。
図表1:ユーロ圏投資の推移
(期間:1970年~2014年)
GDP比、%
31
29
27
25
2015年の効果はごくわずか
ドイツ
フランス
23
21
投資計画案の直接的な効果は2015年の段階では殆ど
期待できそうにありませんが、将来の投資に関する経
済見通しの改善等といった間接的な効果や最初の投
資案件の効果は期待できそうです。もっとも、現時点で
は、このような効果はごく僅かに過ぎないと考えます。
19
17
イタリア
15
70年 74年 78年 82年 86年 90年 94年 98年 02年 06年 10年 14年
出所:ピクテグループのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
正しい方向への一歩
投資計画の最終的なネットの効果がどれほどのものと
なるかは、今後の進展次第です。次のステップは、12
月18日から19日のEU首脳会議における協議と採択で
すが、これが採択されれば、2015年6月には投資計画
案に効力が生じることとなります。それまでの間は、各
国政府の拠出により210億ユーロの当初資金が集まる
かどうか、また、投資案件の選択が順調に進むかどう
かを見定める必要があります。
欧州委員会が正しい方向に歩を進めたことは明らかで
す。ユーロ圏が経済の停滞とデフレの環境からいつか
は抜け出せるとの希望を持ち続けるためにも、ユンケ
ル委員長の投資計画案は大いに歓迎されてよいと考
えます。
注1 :2014年10月発行 IMF世界経済見通しレポートより
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
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2014年12月10日発行ニュース
10月ドイツ鉱工業生産:10-12月期GDPの小幅改善を示唆
2014年10月のドイツ鉱工業生産指数は前月比小幅の上昇に留まりました。一方、製造業受注指数は大幅反発とな
りました。製造業セクターは、2四半期連続の停滞局面を脱し、回復に転じることが予想されます。ドイツ経済は、
10-12月期以降、2015年に入ってからも緩やかな成長を続けるものと見ています。
図表1:ドイツ鉱工業生産指数、製造業受注指数
ならびにIfo企業景況指数の推移
製造業は回復の兆し
2014年10月のドイツの経済指標は、7-9月期の指標と
は対照的に先行きを期待させるものとなりました。鉱工
業生産指数や製造業受注指数等の産業活動を表す指
標が、先に発表されていたドイツIfo企業景況指数やド
イツZEW景況指数等の景況指数が示唆していた以上
の回復力を示したからです。10-12月期のGDP(国内総
生産)成長率はピクテの予想通り、穏やかな水準に留
まる公算が高いとみており、2015年に入ってからも、回
復基調が維持されるものと考えます。ドイツ経済の先
行きは明るいと見ています。
(月次、期間:2002年1月~2014年11月)
130
120
ドイツIfo企業
景況指数(右軸)
120
110
110
105
100
100
ドイツ鉱工業生産指数
(右軸)
90
80
95
90
85
ドイツ製造業受注指数
70
80
02年
10月の鉱工業生産指数は低調
115
04年
06年
08年
10年
12年
14年
出所:ピクテグループのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
2014年10月のドイツ鉱工業生産指数(建設を含む)は
前月比+0.2%となり、市場予想の同+0.4%を下回りました
(図表1参照)。また、9月改定値は、当初発表の同
+1.4%から同+1.1% に下方修正されました。建設業が同
+1.4%と堅調だった一方で、製造業は同+0.2%に留まりま
した。
業種別内訳は、全業種が総じて低調だったことを確認
するものとなりました。中間財(前月比+0.8%)ならびに
消費財(同+0.5%)が増加した一方で、資本財(同-0.4%)
ならびにエネルギー(同-1.1%)は減少しました。
10月の鉱工業生産は、7-9月期平均を0.2%上回りまし
た。
10月の製造業受注指数は反発
2014年10月のドイツ製造業受注指数は前月比+2.5%と
なり、市場予想の同+0.5%を大きく上回りました。また、
9月改定値は同+1.1% と、当初発表の数値から0.3ポイ
ント上方修正されました。地域別内訳では、内需が前
月比+5.3%と反発し、最も大きく指数に寄与しました。
これに対し、外需は同+0.6%と穏やかな伸びに留まりま
した。外需の内訳では、ユーロ圏からの新規受注が同
+0.3%、非ユーロ圏からの新規受注が同+0.8%でした。
この結果、10月の製造業受注は、7-9月期比+1.8%とな
りました。
輸出入ともに低調
2014年10月のドイツの経済指標のうち最も低調だった
のが貿易統計です。輸出は、市場予想の前月比-1.7%
に対し、同-0.5%となりました。10月の輸出動向には、9
月の反動(同+5.5%)が現れた可能性もあり得ます。一
方、 10月の輸入は同-3.1%と、予想の同-1.7%を下回り
ました。この結果、10月の貿易黒字額は219億ユーロと
なり、9月の221億ユーロとほぼ変わりませんでした。
10月の輸出は7-9月期平均比+1.1%となり、7-9月期の
前期比+2.8%に届きませんでした。
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ピクテ投信投資顧問株式会社
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先進国
10-12月期は緩やかな成長
2014年10-12月期のドイツ鉱工業生産は、2四半期連
続の縮小の後、拡大に転じる兆しが現れています。現
状は引き続き力強さに欠けるものの、足元発表の経済
指標は景況指数が示唆する内容を上回るものとなって
います。
10月の鉱工業生産は、7-9月期は前期比+0.1%に留
まったGDP成長率が、10-12月期には小幅ながらも改
善するのではという期待を抱かせるものでした。
2015年のドイツ経済は良好
2015年のドイツ経済見通しは良好と言ってよいと考え
ます。労働市場の逼迫と、低インフレや原油価格の下
落を背景とした購買力の改善が消費を押し上げること
となりそうです。一方、輸出の先行きは不透明です。国
内の輸出業者はユーロ安の恩恵を享受しますが、原
油価格の急落は、原油輸入国では需要を増やし、産油
国においては景気鈍化による需要減少を引き起こす
公算が高いためです。また、地政学的状況を巡る不透
明感が続く場合には、国内企業の設備投資が引き続
き手控えられる可能性も否めません。
ピクテの2015年ドイツGDP成長率予想は従来と変わり
ません。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
容が変更される場合があります。
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2014年12月26日発行ニュース
ユーロ圏ならびに日本の小型株:楽観的な見通しの根拠
日本経済ならびにユーロ圏経済はいずれも低調ですが、2015年中の回復を示唆する兆しが散見されます。ピク
テ・アセット・マネジメント、EAFE(北米を除く先進国)小型株式チーム、シニア・インベストメント・マネジャーのジャス
ティン・ヒルが楽観論の背景と注目銘柄について解説します。
Q:日本経済は定義上のリセッションに
陥っていますが、日本銀行の追加金融緩
和と消費増税の先送りを受け、2015年中
にも回復を予想する楽観的な見方が増え
ています。日本経済の先行きをどう見て
いますか?
2014年10月末の日本銀行(日銀)による追加金融緩和
と年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による株
式配分見直しの発表が消費増税先送りの決定と相
俟って、株式市場を下支えるものと見ています。
自己資本利益率の改善を改めて促す政府の要請に応
えて、企業側は、余剰の手元資金を活用し、企業統治
の改善と株主価値の最大化に取り組むものと思われ
ます。
ピクテでは、安倍政権のリフレ策の恩恵が期待される
金融セクターに注目しています。首相は、金融ならびに
財政刺激策を通じた経済の活性化とデフレ脱却を公約
としています。また、何年にもわたって低迷していた中
小企業向け銀行融資が漸く増加に転じており、企業が
成長を見据えた投資に意欲的であることが示唆されて
います (図表1参照) 。
対米ドルの円レートは、2014年末の104円台から足元、
1ドル=120円台(2014年12月25日現在)と7年ぶりの水
準を付けています。円安は、産業ロボット用部品製造
のナブテスコ等、輸出型企業の追い風となっています。
同社は、競争力の改善と海外事業部門の増益という円
安の恩恵を享受しています。
総選挙での勝利を受け、安倍政権には構造改革を推
進するため4年間の猶予期間が与えられました。政権
を巡る不透明感が後退していることも好材料です。
記載されている個別の銘柄・企業については、あくまでも参考情報であり、
その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。
ピクテ投信投資顧問株式会社
図表1:日本の中小企業向け融資の伸びの推移
(期間:2002年1月~2014年10月)
8 %、前年同月比
6
4
2
0
-2
-4
-6
-8
-10
-12
02年
04年
06年
08年
10年
12年
14年
出所:日本銀行のデータ(2014年10月29日現在)を使用しピクテ投信
投資顧問作成
Q:ユーロ圏経済も、景気停滞と低インフ
レに苦慮する状況です。来年の状況に
ついてはどう見ていますか?
ユーロ圏経済は、確かに、総じて減速基調です。ドイツ
経済は大幅な減速、フランス経済は横這い、イタリア経
済はリセッションに逆戻りの状況です。また、3ヵ国以外
のユーロ圏構成国も好調とはいえません。このことは、
スイスの旅行会社クオニ・ライゼン・ホールディングを
含む多数の企業が、年央以降、業績の悪化に苦しん
でいることからも明らかです。
<次ページに続きます>
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
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先進国
一段の減速リスクを背景に、欧州中央銀行(ECB)が
ユーロ圏のデフレ回避と成長のテコ入れのため、より
大胆な施策を導入する確率が高まっています。より潤
沢な流動性は、ユーロ圏企業を取り巻く環境に総じて
プラスだと考えます。
足元のユーロ安も好材料です。対米ドルのユーロ・
レートは年初来で10%程度下落しており、輸出型企業に
恩恵をもたらしています。ユーロ安は大幅な増収につ
ながる傾向が強いことは過去のデータから確認されて
います。また、ピクテの分析では、ユーロの実効為替
レートが下がるほど、事前予想を上回る売上を計上す
る企業数が増えることが確認されています。
日本と同様、原油の純輸入地域であるユーロ圏は原
油価格急落の追い風に助けられています。もっとも、エ
ネルギー銘柄には慎重な見方をしています。6月以降、
40%超の下落をみた原油価格が、短期間のうちに回復
する公算は小さいと考えるためです。
スペインならびにポルトガル経済には、過去2年間の構
造改革の成果が徐々に現れ始めています。フランスや
イタリア等、その他のユーロ圏構成国についても、構造
改革を通じた競争力の改善と経済活動の活性化が求
められます。
強弱交錯のユーロ圏経済を想定し、注目
企業を教えていただけますか?
まず、ユーロ安の恩恵に与る輸出型企業に注目してい
ます。フィンランドのバルメットはその好例です。同社は、
紙パルプおよびエネルギー・セクター向けの技術開発
に携わっており、総売り上げの40%強を新興国で計上し
ています。
競合相手に先んじて研究・開発投資を行い、増益基調
を維持する企業にも注目です、代表例としてドイツのダ
イアログ・セミコンダクターが挙げられます。フランクフ
ルト証券取引所上場の同社は携帯電話向け機器の開
発に従事しており、アップルやサムソンを含む顧客に
新製品を提供するため、研究開発費を増額しています。
2014年第3四半期の決算も好調な数字となっています。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
容が変更される場合があります。
記載されている個別の銘柄・企業については、あくまでも参考情報であり、
その銘柄・企業の売買を推奨するものではありません。
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先進国
2014年12月4日発行ニュース
米ISM景況指数: 11月は製造業、非製造業指数ともに堅調
2014年11月の米ISM景況指数は、製造業指数、非製造業指数ともに市場予想を上回りました。製造業指数は前月
値を下回ったものの、両指数ともに高水準を維持しており、10-12月期GDP(国内総生産)の高成長を示唆するもの
となっています。米国経済の先行きは明るいと見ています。
図表1:米ISM景況指数の推移
製造業指数は小幅の低下
(月次、期間: 2004年1月~2014年11月)
2014年11月のISM景況指数は、製造業指数が前月から
小幅ながら低下する一方で、非製造業指数は大幅な上
昇となりました。両指数ともに高水準を維持しており、米
国経済の先行きを期待させます。
12月1日発表の11月の米ISM製造業景況指数(総合指
数)は58.7と10月の59.0を下回りました。もっとも、10月
の数値は2011年2月以来最も高い数値であり、11月の
実績値は市場予想の58.0を上回っていることに注目し
ています(図表1参照)。
当指数を構成するサブ指数では、11月の新規受注指数
が66.0 と10月の65.8を上回り、8月の66.7を除くと2009年
8月以来の高水準を回復しました。一方、雇用指数と生
産指数はやや低下しました。11月の生産指数は64.4と
なり、他の経済指標が示す状況とは相容れないものと
なっています。生産指数は10~11月の製造業セクター
が10%強拡大したことを示唆しているのに対し、その他
の指標は10月の製造業生産が、7-9月期比で年率僅か
+0.7%程度の伸びに留まると示唆しているためです。
非製造業指数は大幅に上昇
12月3日発表の2014年11月の米ISM非製造業景況指数
は59.3となり、製造業指数とは対照的に、10月の57.1、
市場予想の57.5の双方を大きく上回りました。 また、8
月の59.6を除くと9年強ぶりの高水準を回復しました。
サブ指数では、新規受注指数ならびに企業活動指数が
上昇した一方で、雇用指数は低下しましたが、10月の
雇用指数はほぼ10年ぶりの高水準を回復していたこと
には留意が必要です。
2014年11月の米ISM製造業景況指数ならびに非製造
業景況指数は10-12月期の米国経済が堅調に推移して
いることを示唆しています。両指数を用いてGDP(国内
62
製造業景況指数
58
54
50
46
非製造業景況指数
分岐点
42
38
34
04年
06年
08年
10年
12年
14年
出所:ピクテグループのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
総生産)成長率を予測するピクテの自社開発モデルは、
10-11月のGDP成長率を、7-9月期の+4.4%とほぼ変わ
らずの+4.3% としています。
10月ならびに11月の米ISM景況指数は、10-12月期の
米国経済が7-9月期同様、好調であることを明確に示
唆しています。当該指数は、米国経済の強さを測るタイ
ムリーで有用な指数ですが、短期のGDP(国内総生産)
の予測に際しては、信頼に足る数値とはいえません。
10-12月期のGDP成長率は、経済の実態よりも弱めに
でる可能性が高いと考えます。7-9月期は、四半期毎の
振れの大きい国防関連支出が大幅に増加し、おそらく
0.5%程度GDPを押し上げたものと思われます。この支出
が10-12月期には正常な水準に戻るとすると、7-9月期
分と同程度、GDPを押し下げることが予想されますが、
ピクテではこのマイナス分を上回る成長率を見込んで
おり、10-12月期の従来予想を維持します。
2015年予想も従来通りです。米国経済の先行きは総じ
て明るいとみています。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更さ
れる場合があります。
ピクテ投信投資顧問株式会社
巻末の「当資料をご利用にあたっての注意事項等」を必ずお読みください。
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Pictet Market Monthly
先進国
2014年12月12日発行ニュース
米国個人消費:11月の小売売上高は市場予想を上回る
米国の2014年11月の小売売上高は、名目売上、コア売上ともに、市場予想を大きく上回りました。ガソリン価格の
急落が年末商戦の消費を後押ししたものと考えます。個人消費の先行きは良好です。米国経済は、ドル高の負の
影響をこなし、2015年を通じて拡大基調を維持するものとみています。
図表1:米国コア小売売上高伸び率の推移
11月の名目小売売上高は好調
(3ヵ月移動平均、年率、期間:2005年1月~2014年11月)
米国の2014年11月の小売売上高統計は先行きを期待
させる良好な内容となりました。雇用の順調な回復、ガ
ソリン価格の下落と相まって、10-12月期の個人消費を
3%強押し上げることが予想されます。堅調な地合いは
2015年を通じて維持されるとみています。
11月の名目小売売上高は、前月比+0.7%となり、市場
予想の同+0.4%を大きく上回りました。また、10月改定
値は速報値の同+0.3%から同+0.5%に上方修正されまし
た。11月のガソリンスタンド売上は同-0.8%と落ち込み
ましたが、ガソリン価格の下落を反映した数値であり意
外感はありませんでした。一方、名目自動車販売は同
+1.7%となり、自動車販売台数統計から想定されていた
数値には届きませんでした。建設資材及び園芸関連売
上は同+1.4%と好調でした。
11月のコア小売売上高も好調
名目小売売上高から最も変動の大きい項目を除いた
コア小売売上高の2014年11月の数値は、市場予想の
前月比+0.5%を僅かに上回る同+0.6%となりました。また、
9月改定値は同0.0%から同+0.1%に上方修正されました。
10-11月の平均値は7-9月期比年率+6.5%となり、4-6月
期の前期比年率+6.3%、7-9月期の同+4.3%と同様、好
調でした(図表1参照)。
ガソリン価格の下落が消費を下支え
2014年11月の小売売上高統計は、10-12月期の個人
消費を占う力強い数値となりました。雇用、所得、消費
者信頼感等の消費関連指標も、10月、11月ともに好調
です。したがって、10-12月期の個人消費については、
従来予想を小幅に上方修正しました。一方、GDP(国
内総生産)成長率予想は、従来予想と変わりません。
ピクテでは、米国の個人消費が2015年も総じて堅調に
ピクテ投信投資顧問株式会社
%
8
4
0
-4
-8
-12
05年 06年 07年 08年 09年 10年 11年 12年 13年 14年
出所:ピクテグループのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成
推移するとみています。雇用の創出ならびに個人所得
の伸びが勢いを増しつつあり、足元の貯蓄率は予想以
上の高水準を保っています。また消費者信頼感指数も
明確な上昇トレンドを辿っています。
更に、原油価格ひいてはガソリン価格の下落が実質個
人所得を大きく押し上げており、実質個人消費支出にも
恩恵が及んでいるようです。季節要因調整後のガソリン
価格は、6月から10月にかけて8.3%下落していますが、
10月から2015年1月にかけては更に21%の下落が予想
されます。このような状況下、2015年の家計の支出は
3%を超える伸びもあり得ると考えます。
もっとも、米国経済成長にマイナスの影響を及ぼし得る
要因がないわけではありません。足元の米ドルの実効
為替レートは、昨年平均を6%超上回っています。
為替の予測は容易ではありませんが、ピクテでは、原
油価格の下落によるプラスの影響が、ドル高によるマイ
ナスの影響を相殺することになると考えます。
米国の消費の先行きは良好です。2015年のGDP成長
率は3%程度に達するとの見方は変わりません。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内容が変更され
る場合があります。
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Pictet Market Monthly
先進国
2014年12月18日発行ニュース
米国経済:2014年の振り返りと2015年の展望
米国の景気回復は2014年4-6月期以降、加速度を増しています。ドル高による若干の負の影響は避けられそうに
ありませんが、原油価格の下落による恩恵がこれを相殺すると考えます。米国経済の基盤は盤石であり、拡大の持
続が見込まれます。2015年のGDP成長率は、10年ぶりの高水準を回復する可能性もあり得ると見ています。
2014年の先進国経済
中国経済は失速、日本経済は景気後退(リセッション)、
ユーロ圏経済はデフレの脅威にさらされるという厳しい
状況下、「卵は一つの籠に盛るな」との格言に反し、景
気回復の期待がこめられたすべての卵が米国という
たった一つの籠に盛られる状況となっています。米国
経済がより力強さを増し、自立的な成長を遂げるだろう
との予想は、ピクテの2015年の世界経済見通しの基盤
となっています。
米国の2014年のGDP(国内総生産)成長率は、四半期
ベースでは強弱交錯となり、通年平均は2.3%程度と際
立った成長とは程遠い水準に留まりそうですが、平均
成長率には、厳冬の影響で大幅なマイナス成長を余儀
なくされた1-3月期を除けば、4-6月期以降は景気回復
が加速度を増しているという実態が隠されてしまってい
ます。ISM景況指数や雇用統計等の労働市場関連指
標も、年初の状況からの改善が顕著です。
順調な雇用の改善
直近数ヵ月の雇用の伸びは年率2.0%に達し、過去の長
期平均と比べても堅調です。力強い雇用の伸びは、波
及効果を通じ、先行きを大いに期待させるものとなって
おり、需要サイドの主要項目の分析に重要な役割を果
たすものと考えます。
本稿では、現時点での米国経済の強みと弱みを特定し
た上で、原油安とドル高進行の影響を考察します。ま
た、分析結果の解釈をより容易にするため、GDPの主
要項目の現状と見通しに照らして、分析を行います。
輸出動向:影響は軽微
世界経済の減速とドル高の進行が2015年の米国の輸
出を縮小させ、経済の足かせとなることは疑いようがな
く、経済下振れの主要なリスク要因になり得ると考えま
す。ドルの実効為替レートは2013年の平均レートを5%
以上も上回っており、今後数ヵ月、一段のドル高も見込
まれます。GDPに占める輸出比率が13%程度に留まる
米国経済は、他国の経済の影響を比較的受けにくいと
はいえ、急激なドル高は2015年のGDP成長率を0.2~
0.3%程度押し下げる公算が高く、影響を軽視することは
出来ません。とはいえ、ピクテでは米国の輸出動向の
先行きをさほど懸念していません。世界の複数の主要
地域については見通しが明るいわけではありませんが、
2015年のグローバル経済が2014年以上に減速するこ
とは考え難いためです。また、米国の輸出先の40%程
度を占めるカナダ、メキシコ、中国(香港を含む)の先
行きは、相対的に良好です。
個人消費支出:成長の要
家計の消費は、2015年の米国の経済成長をけん引す
る要になるものと考えます。力強い雇用の伸びが消費
を支え、緩やかな賃金上昇と貯蓄比率の低下がこれを
支えるものと見込まれます。とりわけ、貯蓄比率の低下
は米国経済の成長に貢献するでしょう。2014年は家計
所得の伸びが予想外の貯蓄比率上昇で相殺され、個
人消費の伸び悩みの主因となっていたからです。個人
の貯蓄比率は2013年10-12月期の4.4%から2014年7-9
月期には5.0%に上昇していました。家計の富の急増と
改善基調の消費者心理を反映して、貯蓄比率は今後
数ヵ月、低下に転じる公算が高いと考えます。
米国経済に大きな恩恵をもたらすことが予想され、そ
の効果が顕在化しつつあるのが原油安です。ピクテで
は、季節要因調整後の米国のガソリン価格が、6月か
ら12月にかけて20%程度下落したものと試算しています。
ガソリン価格の大幅な下落は家計の実質購買力を0.7%
程度押し上げることが予想されます。また、ガソリン価
格の下落は、2015年に入って原油価格が上昇に転じ
たとしても、個人消費の伸びを0.4-0.6%程度(GDPを
0.3-0.4%程度)押し上げる公算が高いと考えます。2015
年の家計消費の伸びは、3%を上回ることもあり得ると
いうことになります。
<次ページに続きます>
ピクテ投信投資顧問株式会社
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Pictet Market Monthly
先進国
固定資産投資:拡大基調
住宅投資以外の投資には、2015年の大幅な伸びを支
える要因が揃っています。1点目は、名目ベースの投
資の伸び率が過去との比較で低位に留まっているとい
うことです。2点目は、内需の伸びが加速度を増し、製
造業の設備稼働率が長期平均の水準近くに戻り、企
業心理が改善されつつあることです。 3点目は、企業
のバランスシートが総じて健全であり、利益が好水準を
維持しており、金利は低位に留まり、融資基準、とりわ
け中小企業を対象とした基準が大幅に改善しているこ
とです。
一方、考慮しておかなければいけないのが原油安の負
の影響です。米国の産油企業に影響が及ぶには時間
がかかるかもしれませんが、原油掘削セクター投資の
手控えは早晩起こり得るということです。もっとも、当該
セクターに係る投資は近年急増したとはいえ、非住宅
投資の6.5%、GDPの0.8%に留まっており、経済全体に占
める比率が高いわけではありません。このことは、原油
掘削セクターが10~15%縮小しても、GDPを僅か0.1%縮
小させるに過ぎないということです。以上をすべて勘案
すると、非住宅投資は2015年を通じて6~7%の拡大が
見込まれると考えます。
建設ならびに住宅市場の先行きの分析は容易ではあ
りません。2013年の金利上昇と住宅価格の大幅上昇
に2014年1-3月期の厳しい寒波が相まって、住宅市場
が大幅な調整に見舞われたことは周知の通りです。こ
こ数ヵ月は明らかな改善が見られるものの、改善の
ペースは予想以上に緩慢です。また、住宅ローンの融
資基準は依然として厳格です。
このことが需要を抑制する一方、売家や一部地域での
住宅建設用地の不足が供給を限定しています。とはい
え、住宅市場の先行きは総じて明るいと見ています。
雇用の伸び、所得の伸び、雇用保障の改善、消費者
心理の改善、賃貸用住宅市場の活況等が住宅市場を
下支えると考えるからです。また、先般の政府決定が、
融資基準緩和の手続きの迅速化を促すものと考えま
す。時間はかかりそうですが、供給側の積極的な対応
も期待されます。住宅着工は、2009年春の底入れ以降、
100%を超える伸びを記録しているものの、過去との比
較では極めて低位に留まります。
また、売家の在庫はここ2年、増加基調を維持している
とはいえ、新築住宅ならびに中古住宅のいずれについ
ても、低水準に留まっています。住宅投資は、足元数ヵ
月間、一時的に落ち込んでいるものの、2015年につい
ては前年を上回る伸びが期待されます。もっとも、住宅
ローン金利が徐々に上昇することがあれば、2015年後
半の投資は抑制されることになりそうです。
政府支出:緩やかな回復
米国の財政政策は、政府支出の削減と増税により、
2013年から2014年1-3月期に至る期間を通じて米国経
済を下押す結果となりました。一方、緊縮財政と景気
回復の波及効果が相まって、連邦政府の対GDP比の
財政赤字は、直近のピークを付けた2009会計年度の
9.8% 、 2013 会 計 年 度 の 4.1% に 対 し 、 2014 会 計 年 度 (
2014年9月末までの12ヵ月)は2.8%に低下しています。
もっとも、財政赤字の一段の削減を目指すとの決議案
は、事実上立ち消えの状況です。ここ数ヵ月の財政政
策は中立的色彩を帯びており、連邦政府ならびに地方
政府の双方で、支出の趨勢が拡大に転じ始めたことが
確認されます。2015年の歳出は、歳入増に伴って着実
に拡大することが予想されます。ピクテでは、2015年の
公共部門の支出は小幅の伸びに留まると見ています
が、2013年から2014年初めの期間とは明らかに対照
的な状況が予想されます。
2015年の米国経済は拡大基調
前述の通り、ドル高が米国経済に及ぼす負の影響は、
原油安の恩恵により相殺されると考えます。また、足元
の経済の好転に加え、ファンダメンタルズ(基礎的条
件)は良好であり、金融政策は引き続き極めて緩和的
です。好調な融資の伸び、家計の資産の増加、高水準
の企業利益等に加え、緊縮財政の下押し効果の剥落、
雇用の伸びの波及効果が、世界経済の不透明な見通
しに伴う各種のリスク要因をもってしても、米国経済の
先行きを楽観する根拠となっています。ピクテでは、米
国の2015年のGDP成長率は3%程度と、2005年以来の
水準を実現するものとみています。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
容が変更される場合があります。
ピクテ投信投資顧問株式会社
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Pictet Market Monthly
先進国
2014年12月22日発行ニュース
米国ハイイールド債市場:原油安がエネルギー・セクターに及ぼす影響
原油価格の急落を受け、主にハイイールド債市場で資金を調達する米国エネルギー企業の苦境が伝えられてい
ます。ピクテのクレジット・リサーチ・チームを率いるジェイミー・ファーナムが、米国ハイイールド債市場の現状と先
行きを解説します。
米国ハイイールド債市場の足元の動向
図表1:世界の原油需給予想
(期間:2014年7-9月期~2016年)
ハイイールド債市場、とりわけ、ハイイールド債の発行
により資金調達を行うエネルギー・セクターの変動性の
上昇が目立ちます。足元の原油価格は1バレル当たり
60ドルを割り込んでいます。さほど重要とは思われな
い「新しい」ニュースが、市場心理に大きな影響を及ぼ
していることには留意が必要です。専門家の挙げる注
目点は以下の通りです。
・新興国経済の減速予想と需要の伸びの鈍化
・米国の原油増産の継続、とりわけ、バッケンやウティ
カ等におけるシェールオイル・ガス生産の拡大。当該
地域における増産は、主に、ハイイールド債の発行に
よる資金調達に依存していることには留意が必要です。
・石油輸出国機構(OPEC)の増産を巡る交渉。イラク
(日量290万バレルから370万バレル)やリビアが増産
を検討しているとされ、増産あるいは供給過剰の拡大
が予想されます。
・OPECの生産目標据え置きの決定。減産が見送られ
たことから、原油価格は下支えを欠いた状況です。
(百万バレル/日)
2014年
2015年
2016年
7-9月期 10-12月期 1-3月期
4-6月期
7-9月期 10-12月期
93
93
92
93
94
94
94
OECD加盟国
46
46
45
45
46
46
45
OECD非加盟国
47
47
46
48
48
48
49
93
94
93
93
94
94
94
OPEC産
36
36
36
35
36
36
36
非OPEC産
54
55
55
55
55
56
56
3
3
1
1
2
2
2
0
1
1
0
-1
0
0
総需要
総供給量
その他
供給-需要(在庫)
※数値はすべて予想(出所:ピクテグループのデータを元にピクテ投信投資
顧問作成)
※その他にはプロセッシングゲイン(精製に伴う量的変化)を含みます。
エネルギー・セクター
図表1は、調査会社による原油需給予測です。2014年
10-12月期ならびに2015年1-3月期の累積在庫予測が
注目されます。
足元の商品価格下落の中でとりわけ顕著なのが原油
価格です。原油価格の影響が各セクターに及ぼす影
響は以下の通りです。
世界の原油生産(原油供給)が予想を上回る一方で、
需要の伸びが見られない場合には、在庫が積み上が
り、原油安が継続することとなります。需要が増えるの
か、あるいは供給が削減されるのかは、必然的に、市
場の力に委ねられることとなります。需要が増えるかど
うかの予測は容易ではありませんが、一方、供給側の
動向は、利益の減少を受けた、将来の増産のための
設備投資の大幅削減から予測可能です。
【石油・ガス探査・開発セクター】
兆候は既に現れています。ハイイールド債の発行で資
金調達を行っている探査・開発企業の中に、前年比
-25%もの設備投資の削減を発表するところが出てきて
いるからです。
ピクテ投信投資顧問株式会社
探査・開発の権利を有する企業は、原油価格下落の直
接的かつ甚大な影響を被ります。原油価格が下落する
一方で、生産コストが変わらなければ、利益率が圧縮
されるからです。米国の原油生産の伸びは、バッケン
やウティカ等の地域でシェールオイル生産に特化し、
ハイイールド債の発行で資金を調達する企業によって
もたらされています。当該企業は、キャッシュフローを
確実なものとするため、通常、6ヵ月から24ヵ月先まで
の将来の生産分をヘッジしていますが、従来、費用が
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Pictet Market Monthly
先進国
営業キャッシュフローを上回っており、差額を社債市場
での借入に頼るという傾向がみられます。当該セクタ
ーの低迷と一段の原油安を想定して、2015年の設備
投資計画の減額が散見されます。設備投資計画の減
額が直ちに減産につながることはないとしても、装置・
サービス・セクターに対する需要は短期間で減少しま
す。原油の減産は1年程度で明らかになると思われま
す。当該企業の先行きはコスト次第ですが、生産コスト
が高く、かつ設備投資の大きい企業は特にぜい弱です。
【ミッドストリーム・セクター、パイプライン・セクター】
ミッドストリーム・セクターならびにパイプライン・セク
ターは、原油・ガスの輸送動向の影響は受けても、通
常、原油価格の推移に影響されることはありません。
高コスト製品の輸送に係るセクターは、探査・開発セク
ターの低迷あるいは生産停止の影響を被る結果となり
ます。現時点で想定される状況では、事業を幅広く分
散した総合ミッドストリーム企業あるいはパイプライン
企業が、大きな影響を被る公算は低いと考えます。
【装置・サービス・セクター、掘削セクター】
装置・サービス関連企業ならびに掘削企業の売上は、
探査・開発企業の設備投資に依存しています。探査・
開発企業の設備投資の削減は、装置・サービス関連
企業ならびに掘削企業の減収に直結します。装置・
サービス需要の減少は、生産コストの低下につながり、
探査・開発企業に僅かながら恩恵をもたらします。当該
セクターの一部の企業は、原油安が長引く環境で、最
も大きな影響を被ります。影響の度合いは、事業内容
で異なります。
装置・サービス・セクター:装置・サービス事業に携わる
企業は、探査・開発企業に、掘削用パイプ、フラッキン
グ・サービス、地震探査機器等を提供しており、エネル
ギー市場の動向に最も敏感です。また、長期契約を結
んでいないことから、設備投資の削減の影響は、短期
間のうちに現れます。
掘削セクター:掘削企業は、掘削リグを所有し、探査・
開発企業が所有する油井から、原油を生産します。当
該セクターの中では、操業コストの高い企業が最もぜ
い弱で、短期間のうちに操業停止に迫られる可能性が
あります。また、地上あるいは地表付近の油井が、最
初に操業停止となる可能性が高いと考えます。これは、
リグ市場の正常化のため、ジャッキアップ・リグが恐らく
恒久的に使用停止となるためです。意外なことですが、
当初の設備投資が嵩むものの操業コストが低い地中
深くの油井は、信用格付けが相対的に高い総合型多
国籍企業あるいは国営企業との間で、最新鋭リグの複
数年契約を結んでいるのが通例です。売上の透明性
は、最新鋭リグを所有する企業のキャッシュフローの
確実性にもつながるため、社債の信用力を安定的なも
のにしています。
公益セクターならびに独立系発電事業者
原油安の公益セクターへの影響は軽微です。これは
ディーゼル・オイル等の原油製品が発電源に占める比
率が極めて小さいからです。一方、天然ガスの価格の
趨勢は、電力価格に大きな影響を及ぼします。天然ガ
ス在庫と余剰電力が独立系発電事業者に及ぼす影響
は、2年前よりも強まっています。
1)天然ガス在庫は暖房用需要の増える冬季に入って
過去の水準を大きく下回っており、1年前との比較では
乖離幅が特に際立ちます。
2)余剰電力は既に減少傾向ですが、環境規制による
石炭火力発電の停止等を背景に、一段の減少が予想
されます。電力先渡し(先物)市場では、余剰電力価格
を中心に、価格が上昇しています。
鉱物資源、石炭
供給面では、原油安が石炭価格に及ぼす直接的な影
響は、鉄鋼生産に使われる冶金用価格についても、発
電の燃料源となる原料炭価格についても、無いと思わ
れます。一方、需要面では、原油安が負の影響を及ぼ
すことがあり得ます。原油の主要な消費者が、石炭等、
鉱物資源の需要の伸びも左右するからです。
※将来の市場環境の変動等により、当資料記載の内
容が変更される場合があります。
当資料をご利用にあたっての注意事項等
●当資料はピクテ投信投資顧問株式会社が作成した資料であり、特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく、また特定の銘柄および市場
の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません。●運用による損益は、すべて投資者の皆さまに帰属します。●当資料に記載された過去の実績は、将
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