NEDO 省エネルギー技術フォーラム 2015 未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発 国立研究開発法人 産業技術総合研究所 小原 春彦 1.研究開発の背景、目的、目標 2 1.1.背景 日本における一次エネルギー供給から最終消費に至るエネルギーフロー 25 一次エネルギー国内供給 1018 J 15 10 5 水力等1.5EJ 原子力0.1EJ 天然ガス 5.1EJ 最終エネルギー消費 運輸分野 3.3EJ 石炭 4.9EJ 変換 輸送 貯蔵 石油 9.2EJ エネルギーロス 未利用熱エネルギー 20 民生分野 4.9EJ 変換 産業分野 6.1EJ 動力 電力 熱 光 0 一次エネルギーの約6割が有効利用されずに未利用熱として環境に排出 資源エネルギー庁平成24年度エネルギー需給実績(速報) 最終エネルギー消費と実質GDPの推移 資源エネルギー庁資料 http://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2013html/2-1-1.html 3 1.研究開発の背景、目的、目標 1.2.従来の課題、目的、目標 4 産業界(工場)での熱マネージメントのニーズ 100℃以下 ~150℃ ~183℃ 183℃以上 食料・たばこ産業 2.5 62.3 16.9 18.6 繊維工業 0.4 50.3 49.3 0 木材・木製品製造 1.1 9.3 6.6 83 パルプ紙加工業 0 85.9 4.1 0 化学工業 4.8 26.9 50 18.8 ゴム製品製造 0 26.3 53.4 20.4 革製品製造 0 100 0 0 窯業土石製造 0 85.6 14.4 0 全業種 1.1 55.8 24.3 17.6 これらの熱供給に適した 熱源の最適配置が重要 ・150℃以上をカバーするヒートポンプがない(ボイラー 代替) ・単なるヒートポンプの導入ではなく、工場全体の熱フ ローから見たシステム設計が必須 高温域(150℃以上)ヒートポンプ開 発による適用範囲拡大 経済産業省資料 10年後の姿 現在 ボイラー → ヒートポンプ 一次エネルギー削減量48% 熱の需給ミスマッチを解消し、無駄な熱を減らす3つの方向 5 • 熱の3Rによる熱マネージメントが重要 Recycle Reduce Reuse • 長い研究開発の歴史 ブレークスルーは容 易ではない 熱を変換して 利用する技術 熱の使用量を 減らす技術 熱電変換・排熱発電 蓄熱・遮熱・断熱 熱を 再利用する技術 ヒートポンプ →複数の技術を合わせた熱マネージメント技術が必要 2.研究開発体制、研究開発内容 6 経済産業省と文部科学省の連携による未来開拓研究 ■ リスクは高く10~20年後を見据えて企業が戦略的に取組むべき「革新技術」の研究開発を支援 長期研究に対し、国が強力にコミット 複数年予算を確保/責任と権限の明確化(PLの任命) 成果の事業化重視のプロジェクト運営 情報管理の徹底/事業化ベースの知財ルール/柔軟な計画見直し/PJ期間中の事業化推奨 基礎研究との密接な連携 文科省プロジェクト(大学等中心の基礎研究)とガバニングボードで連結 →技術移転、人材設備共有など 体制の例 経産省 ガバニング・ボード 文科省 基礎研究から実用化まで一体的に推進 立地補助制度等で事業化を支援 PL(任命) 一部事業化 文科省PJ 事業化 PJから離脱 技術研究組合 壁 大学 個別テーマ 2 国内企業 壁 個別テーマ 3 国内企業 国内企業 各個別テーマ 個別テーマ 1 目標の 見直し 事業化 事業化 技術連携 事業化 新規目標 中止 基盤研究(テーマ間横断) 公的研究機関 ドリームチーム (護送船団的発想は排除) 基盤研究 外国企業 (国益確保を前提) 公的研究機関 文科省PJから 企業主体による研究開発 のシーズ移行 事業化 随時各個別テーマと連携 3年 6年 10年 2.研究開発体制、研究開発内容 7 平成25年度から開始した未来開拓研究のテーマ 経産省・文科省が連携する技術の三要素 我が国経済社会に大きな インパクトを与える リスクが高く、実用化・ 事 業 化 ま で 長 期 の 取 組 が 必 要 我が国が強みを持ち、世 界への貢献が期待される 1.次世代蓄電池 池 池 生 池 電気自動車やスマートグリッドの本格的な普及を控え、二次電 のコスト低減、エネルギー密度向上には大きな 期待。我が国が有する二次電 技術の強みを かし、次世代蓄電 を開発する。 用 用 3.未利用熱エネルギー 可能エネルギーの利 用 再 可能エネルギーの時間・空間的な偏在を補完し、我が国において安価・安定な再 を可能とするため、水素等のエネルギー貯蔵・輸送に関する技術を開発する。 生 生 2.エネルギー貯蔵・輸送 用 我々が有効に活 できていない熱エネルギーの利 を促進し、膨大なエネルギー損失を回収して一次エネルギ ーの需要を抑制するため、熱エネルギーを有効活 する革新的な要素技術やシステム技術を開発する。 獲 4.革新的構造材料 異 次世代の航空機や自動車等の競争力 得のため、軽量化による燃費向上・高速化等が最重要課題。 チタンや炭素繊維複合材料等の高性能材料や 種材料接合技術等を開発する。 6 未利用熱エネルギーの活用技術開発の研究開発体制 民生 自動車 遮熱技術 ビル・車内空調の高効率化 ・革新的次世代遮熱材料の開発 ・透明性(明るさ)と遮熱性の両立 東レ(株) 蓄熱技術 排熱を熱エネルギーとして再利用 ・温度ステージの拡大(低温~高温) ・表面修飾による高密度化 パナソニック(株) 排熱発電技術 排熱を電気エネルギーとして回収 ・小型高効率ランキンサイクルの開発 ・余剰蒸気利用発電技術の開発 パナソニック(株) トヨタ自動車(株) 三菱樹脂 (株) 熱電変換技術 排熱を電気エネルギーとして回収 ・高効率熱電材料・モジュール開発 古河機械金属(株) 古河電気工業(株) (株)日立製作所 日本サーモスタット(株) 安永(株) 富士フイルム(株) 熱マネージメント技術 連携 車両における熱エネルギー効率の向上 マツダ(株) アイシン精機(株) 高温炉の高効率化 ボイラー排熱の低減 局所排熱による発電 断熱技術 排熱エネルギーの削減 ・気孔率・サイズ・形状を制御 ・高強度化かつ低熱伝導化 美濃窯業(株) ヒートポンプ技術 排熱エネルギーの有効活用 ・高熱・冷熱生成用新冷媒の開発 (株)日立製作所 ジョンソンコントロー ルズ日立空調(株) (株)前川製作所 三菱重工業(株) セントラル硝子(株) 調査・基盤技術 ・熱関連調査研究・物性DB作成・評価技術開発 ・車載用熱マネージメント部素材・システム開発 トヨタ自動車(株) 産業 暖気エネルギー低減 空調の高効率化 エンジン排熱等による発電 空調の高効率化 熱需要変動の平均化 8 カルソニックカンセイ(株) 未利用熱エネルギー活用技術開発センター(産総研・JRCM) 連携 早稲田大・東京工業大・名古屋大・東北大・岡山大・大阪大・東京大・山口東京理科大・東京理科大・物質材料研究機構・広島大・ 九州大・佐賀大・八戸工業大・宇都宮大・建築研究所・北陸先端科学技術大学院大・長岡科学技術大・北海道大・豊田理化学研究所 NEDO委託のもと未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合(TherMAT )が実施 2.研究開発体制、研究開発内容 9 • • 技術研究組合は、産業 活動において利用され る技術に関して、組合 員が自らのために共同 研究を行う相互扶助組 織(非営利共益法人) です。各組合員は、研 究者、研究費、設備等 を出しあって共同研究 を行い、その成果を共 同で管理し、組合員相 互で活用します。 平成21年の改正によ り、研究開発終了後に 会社化して研究成果の 円滑な事業化が可能 になるなど、従来よりも 使いやすい制度になり ました。今後は、大企 業、中小ベンチャー企 業、大学・公的研究機 関等により幅広く活用 されることが期待され ます。 経済産業省資料 2.研究開発体制、研究開発内容 2.1.研究開発体制 10 熱の3Rがプロジェクトのコンセプト Reduce 蓄熱:パナソニック トヨタ自動車、三菱樹脂 遮熱:東レ 断熱:美濃窯業 熱マネージメント トヨタ自動車 マツダ カルソニックカンセイ Reuse Recycle アイシン精機 排熱発電:パナソニック 高温ヒートポンプ:前川製作所 有機熱電変換:富士フィルム 三菱重工業、セントラル硝子 無機熱電変換 低温ヒートポンプ 安永、日本サーモスタット 日立製作所、日立アプライアンス 古河機械金属 日立製作所 古河電気工業 早稲田大・東京工業大・名古屋大・東北大・岡山大・大阪大・東京大・山口東京理科大・東京理科大・物材機構・広島大・九州大・ 佐賀大・八戸工業大・宇都宮大・建築研究所・北陸先端科学技術大学院大・長岡科学技術大・北海道大・豊田理化学研究所 2.研究開発体制、研究開発内容 11 • Reduce 熱を逃さず、ためる(蓄熱・遮熱・断熱) – 車載用の蓄熱材料・技術の研究開発(高密度化と低コスト化、 新材料開発) トヨタ 三菱樹脂 – 自動車、ビル、産業用途の蓄熱材料の研究開発(高付加価値 化と蓄熱温度ステージの拡大) パナソニック – 次世代遮熱フィルムの研究開発(明るさと高い遮熱性の両立 、遮熱窓材開発) 東レ – 工業炉用の断熱材料の研究開発(高強度と高い断熱特性の 両立、炉システム開発) 美濃窯業 2.研究開発体制、研究開発内容 12 • Recycle 排熱から電気エネルギーを回収(熱電変換・排熱発電) – 熱電変換モジュール技術の研究開発(高効率で耐久性のある熱電変換モ ジュール技術・量産化技術) 古河機械金属 – 熱電変換による排熱活用の研究開発(高性能な熱電変換材料開発、ガスコ ージェネ等への応用) 日立製作所 – フレキシブル有機熱電材料・モジュールの研究開発(曲面に適用可能、軽 量な熱電変換モジュール) 富士フイルム – 高性能なクラスレート熱電変換材料の研究開発(高効率で資源性に優れた カゴ状熱電変換材料) 古河電工 – シリサイド熱電変換材料の研究開発(耐久性、環境性に優れた熱電変換材 料・車載用モジュール) 日本サーモスタット 安永 – 排熱発電技術の研究開発(高い発電効率の排熱発電、排熱や蒸気の有効 利用) パナソニック 13 • Reuse 低品位の熱を高品位の熱へ(ヒートポンプ) – 産業用高効率高温ヒートポンプの研究開発(遷臨界サイ クルによる高温ヒートポンプシステム) 前川製作所 – 機械・化学産業を中心とする産業用ヒートポンプシステム の研究開発(高温熱供給に適した冷媒とサイクル・システ ム) 三菱重工 セントラル硝子 – 低温駆動・低温発生機の研究開発(排熱を利用し一般冷 房用/産業用冷水発生) 日立製作所 ジョンソンコントロ ールズ日立空調 2.研究開発体制、研究開発内容 14 • System 技術の統合、システム化(熱マネージメント・基盤技術 ) – 車載用熱輸送システムの研究開発(ループ式ヒートパイプによる高 効率熱輸送) トヨタ – 次世代電気駆動システムの研究開発(モータ/インバータの熱マネ ージメントによる高効率化) マツダ – 小型吸収冷凍機の研究開発(車載可能な排熱利用吸収冷凍システ ム) アイシン精機 – 高効率排熱利用・冷房用ヒートポンプの研究開発(車両の排熱利用 吸着式冷凍システム) カルソニックカンセイ • 技術開発を支える横断的基盤技術 – 排熱実態調査、性能評価、計算シミュレーション、データベース構築 産総研 2.研究開発体制、研究開発内容 15 2.2.研究開発内容(抜粋) (1)蓄熱技術の研究開発 高密度蓄熱材料(低温) クラスレートハイドレートによる高密度化 再生温度の低減 無機多孔質の蓄熱材料の細孔内に、感温分 子(PNIPAM)を修飾 ゲスト物質 目標: 0.3MJ/kg (@10℃) 蓄冷 放冷 ホスト(水) クラスレート ハイドレート 高密度蓄熱材料(中/高温) 化学反応熱の活用による高蓄熱密度化 被吸着 被吸着 被吸着 物質 物質 物質 官能基 R R R R R R <120℃ 蓄 放 熱 熱 吸着剤 目標: 0.5~1.0MJ/kg (@120℃以下) ■出口イメージ (a)高密度蓄熱(低温)技術 アイドリング ストップシステム 放冷 エンジン (b)長期蓄熱技術 & 高密度蓄熱 (中/高温)技術 エアコンOFF 蓄熱 送風ファン 蓄冷モジュール 吹出し口 蓄熱モジュール 排熱回収 エンジン 暖機システ ム 2.研究開発体制、研究開発内容 2.2.研究開発内容(抜粋) 16 (2)遮熱技術、断熱技術の研究開発 【コンセプト】 高透明 積層フィルム 近赤外線を反射 トレードオフ コーティング層 高遮熱 可視光線 高透過 外観 可視光透過・遮熱性の 制御 開発中の断熱材料 ■出口イメージ:省エネに貢献する革新的遮熱窓材 高性能ファイバーレス 断熱材料の開発 可視光:高透過 ■出口イメージ高効率産業/工業炉(目標:排熱削減率50%以上) 近赤外線 :高反射 2.研究開発体制、研究開発内容 17 2.2.研究開発内容(抜粋) (3)熱電変換、排熱発電の研究開発 180℃ 電力 膨張機 熱源 100% 200℃~ G 10% 発電機 放熱 90% 冷媒 蒸発器 クラスレート材料 材料探索 導電性高分子 M 外気 35℃ 凝縮器 冷媒ポンプ 材料高性能化 30℃ 高効率小型排熱発電 ■出口イメージ 工業炉の排熱発電システム(例) 発電素子、発電モジュール開発 排熱回収器 (蒸発器) ■出口イメージ 製品 200℃ 排気 低GWP&不燃冷媒 排熱発電 空冷ユニット(1~10kWe) 発電 焼成炉 自動車用・工場用熱電発電 ハーベスティング応用 注) GWP:地球温暖化係数 (水冷方式も可能) 2.研究開発体制、研究開発内容 18 2.2.研究開発内容(抜粋) (4)ヒートポンプの研究開発 温水系 凝縮器 高圧再生器 高圧吸収器 低圧再生器 低圧吸収器 蒸発器 冷水系 冷 却 水 系 試作ターボ圧縮機 新型冷媒の開発 ■出口イメージ 低温駆動・低温発生機 ■出口イメージ ボイラー代替産業用高温ヒートポンプ 太陽熱 産業排熱 (工場・発電所) 200℃ 100℃ 一般空調 低温駆動・低温発生ヒートポンプ 冷凍・冷蔵 2.研究開発体制、研究開発内容 19 2.2.研究開発内容(抜粋) (5)熱マネージメントの研究開発 原理確認用吸着冷凍システム 、 ■出口イメージ 吸収冷凍器 冷風 排気 自動車内の高効率熱輸送に資す るループヒートパイプ エンジン 排熱回収器 吸収冷凍機エアコン 共通基盤技術 2.研究開発体制、研究開発内容 20 2.2.研究開発内容(抜粋) (6)共通基盤技術 500~ 1. 食料 3. 化学 5. 窯業 7. 非鉄 9. 輸送 排ガス温度 [oC] 450~499 400~449 350 ~399 2. 紙パ 4. 石油 6. 鉄鋼 8. 機械 熱マネジメント材料・システム の導入シナリオ検討 300~349 排熱実態調査、計算シミュレーショ ン、データベース 250~300 200 ~250 150 ~199 100~149 産総研の役割 シーズ技術 ~99 0 1 2 3 4 5 6 7 熱電変換材料・断熱材料 排ガス熱量 [PJ/y] 排熱実態の調査 温度帯別の未利用排ガスの熱量 リアルな排熱実態調査 材料・システム研究 開発支援 材料・デバイス性能評価 導電性高分子 熱電材料 高温断熱材料 熱電モジュール評価装置 ■出口イメージ 排熱の大規模な実態調査 各種熱マネージメントシステムの導入シナリオ 標準化、規格化 新型冷媒候補等のISO燃焼性等級 計算論的機能デザイン 冷媒燃焼性評価 3.成果、実績、展望等 21 NEDO省エネルギー技術フォーラム2015での展示 展示物 3.成果、実績、展望等 22 3.3.今後の展望 運輸分野(次世代自動車の例) 熱の3R Reduce HV自動車の冬場の熱の課題 熱の使用量を 減らす技術 エンジン暖気 蓄熱・遮熱・断熱 Reuse 熱 マネージ メント 熱を 再利用する技術 ヒートポンプ ニーズ ボディ放熱 走行エネルギー 排気 換気熱損失 Recycle 熱を変換して 利用する技術 熱電変換・排熱発電 民生分野 産業分野 ●ニーズプル型の研究開発(運輸・産業・民生分野) 明確な実用化シナリオ ●大きなリスク課題(高いスペック部素材)へのチャレンジ 10年を見据えた研究開発 ●垂直連携による研究開発、異業種企業からなる組合 迅速な事業化、シナジー効果 日本が強みを持つエネルギー効率の高い素材、製品へ
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