NEDO 省エネルギー技術フォーラム 2015 戦略的省エネルギー技術革新プログラム フェーズ名:実用化開発 <業務用ビル液冷空調システムの開発> 事業実施法人名:(株)日建設計総合研究所/大成建設(株)/(株)朝日工業社 共同研究先:東京大学 生産技術研究所/神奈川大学/山口大学 委 託 先 :ダイキン工業(株)、MDI(株) 研究開発期間:平成25年2月~平成27年2月 2 1.研究開発の背景、目的、目標 1.1.背景 ◆ZEBへの取り組みが喫緊の課題 ◆空調設備はZEB実現の最大眼目の一つ その他 3% 1.07 運輸部門 0.94 23% 日本の最終エネ ルギー消費量 1.39 9 15×10 GJ/年 業務他部門 産業部門 44% 空調熱源 27% 照明コンセント 37% (2010年度) 動力(空調・換気 ファン等) 30% 19% 対1990年度比 家庭部門 14% 1.30 出典) 経済産業省「エネルギー白書2011」を元に、 日建設計総合研究所作成 熱搬送(ポンプ) 3% 出典) 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構「住宅・建築物高 効率エネルギーシステム導入促進事業(建築物に係るもの)・(BEMS導 入支援事業)平成11~21年度補助事業における成果の総合的分析成果 報告書」(平成24年2月)を元に、日建設計総合研究所作成 液冷空調システム ZEB空調の一つのプロトタイプ 快適性の向上と一層の省エネルギーを実現できる技術 3 1.研究開発の背景、目的、目標 1.2.従来の課題、目的、目標 液冷空調システムのキーコンセプト① 「内部発熱を室内に拡散前に処理」 従来システム 液冷空調システム 19℃ 26℃ 20℃ 22℃ chilled water 7℃ 12℃ 24℃ 26℃ Uniform Temp. of 26℃ Cold Draft 28℃ 30℃ Liquid Cooling 32℃ Heating element 26℃ Too Warm 1kW 26℃ Too Cold 33℃ Heating element Comfort 1kW Comfort 33℃ Chilled water 21℃ 23℃ Generated Heat disperses into Room Exhausting Heat of 1kW Generated Heat is removed at Source ~ (33-26)℃×1.2kJ/m ℃×120m /h 低温冷水(7℃)が必要 3 3 ~ (26-19)℃×1.2kJ/m3℃×120m3/h 温度分布ができ室内温熱環境にばらつき ~ (12-7)℃×4.2kJ/L℃×48L/h 高温冷水(21℃)で処理が可能 温度分布が少なく室内温熱環境向上 Exhausting Heat of 1kW ~ (23-21)℃×4.2kJ/L℃×120L/h 空調用エネルギーの大幅な削減と室内温熱環境の飛躍的向上が可能 液冷空調システムのキーコンセプト② 「システム連携によるZEB促進」 熱負荷 空調機 熱搬送機器 負荷抑制 潜顕分離処理 高効率熱搬送 内部負荷 抑制 液冷空調 外気負荷 抑制 デシカント 外調機 高効率熱製造 自然エネルギー 20℃ 20℃ 使用エネルギー 非化石 エネルギー活用 熱源機器 ポンプ 低揚程 液冷配水 排熱 液冷HP 排熱 再生可能 吸着 冷凍機 冷水の高温化を実現 高COP熱源の活用促進 再生可能・未利用エネルギーの利用拡大 空気熱源 HP 4 フリー クーリング 液冷HP 排熱 太陽熱 再生可能 PV 購入電力 ZEBエネルギー管理 システム全体の統合監視 5 開発システム概念図と開発課題①~⑥ ⑥ZEBエネルギー 管理システム ②ヒートポンプ熱源デシカントによる 外気潜熱負荷処理システム デシカント 空調機 太陽熱 冷水 20℃ チルド ビーム 温水 55℃ LED照明 液冷熱交換 ユニット ③室内の顕熱処理を液冷で行う冷房システム クーリング タワー ①内部負荷液冷システム 空気熱源 ヒートポンプ 放射 パネル パソコン 液冷熱交換 ユニット 回収熱利用 吸着冷凍機 高効率液冷 ヒートポン プ 冷水 中温水 21℃ (回収温熱) 液冷 コンセント 漏水 ブレーカー ⑤内部発熱回収温熱を 有効利用する熱源システム ④建物内液冷配水・接続システム ZEB実現のための空調システムの要素技術、統合化技術を開発し、 標準的なビルの空調エネルギー消費量の55%削減を目指す。 6 2.研究開発体制、研究開発内容 2.1.研究開発体制 技術開発責任者 日建設計総合研究所 日建設計総合研究所 大成建設(株) (株)朝日工業社 ⑤内部発熱回収温熱を有効利 用する熱源システムの開発 ⑥ZEBエネルギー管理システ ムの開発 ①内部負荷液冷システムの開 発 ③室内の顕熱処理を液冷で行 う放射冷房システムの開発 ②ヒートポンプ熱源デシカント による外気潜熱負荷処理シス テムの開発 ④建物内液冷配水、接続シス テムの開発 共同研究 山口大学 ・回収熱利用 吸着冷凍機 の開発 委託(※1) ダイキン工業 ・高効率液冷 用ヒートポン プの開発 共同研究 東京大学 ・室内液冷空 調システム の開発 委託(※2) MDI(株) ・液冷熱回 収ユニット の開発 共同研究 神奈川大学 ・建物内設 備結露リス ク評価法の 開発 ※1:平成25・26年度の参画、※2:平成24・25年度の参画、※3:平成27年1月より責任者変更 7 2.研究開発体制、研究開発内容 2.2.研究開発内容 各要素技術を開発し、それらを統合した実証試験により 性能を検証した。 (1)内部負荷液冷システムの開発 LED照明、パソコン、複合機などの発熱機器に適し た液冷熱交換ユニットを開発 (2)ヒートポンプ熱源デシカントによる外気潜熱負荷処 理システムの開発 ヒートポンプを熱源とした定格システムCOP 2以上 のデシカント空調機を開発 (3)室内の顕熱処理を液冷で行う放射冷房システムの 開発 省エネで快適性(PMV±0.5以内)を考慮した全水 方式の空調システムを開発 2.研究開発体制、研究開発内容 8 2.2.研究開発内容 (4)建物内液冷配水、接続システムの開発 低揚程配水システム、ノンリークで脱着可能な液冷 コンセント、漏水検知・遮断システムを開発 (5)内部発熱回収温熱を有効利用する熱源システムの 開発 高効率液冷用ヒートポンプ、回収熱利用吸着冷凍 機を開発 (6)ZEBエネルギー管理システムの開発 エネルギーシミュレーターによるシステム性能の検 証・運転支援機能を搭載したエネルギー管理システ ムを開発 3.成果、実績、展望等 3.1.成果 「実証試験による効果確認」 9 開発した要素技術を統合した実証試験を実施し、省エネ効果 を確認 ※熱源は機器容量の関係で実証試験から除外 ③ 前室 机 3 デスクトップ PC 机 4 ノートPC 机 2 デスクトップ PC 机 5 ノートPC 机 6 デスクトップ PC ノートPC ① ② ③ 机 7 デスクトップ PC 机 8 ノートPC ① ④ ② (a)平面図(天井・床) 実験室の状況 机 9 ノートPC 机 10 デスクトップ PC ③ チルドビーム 4 チルドビーム 2 ② LED ④ 6400 ④ ② 机 1 チルドビーム 3 700 チルドビーム 1 3200 ① ④ 3200 ③ ① 700 複合機 3.成果、実績、展望等 3.1.成果 「実証試験による効果確認」 10 天井:LED照明液冷ユニット、アクティブチルドビーム デスク:パソコン液冷熱回収ユニット、パーティション放射パネル φ25 冷水管(還) φ25 冷水管(往) 一次空気 液冷熱 (デシカント空調機から) 回収ユニット チルドビーム LED照明 一次空気 (デシカント空調機から) 液冷熱 回収ユニット チルドビーム LED照明 天井 PMVセンサー バルブ開閉信号 室内温湿度センサー パーティション(1400×450×35) デスクトップパソコン 液晶ディスプレイ 液冷熱 回収ユニット 液冷コンセント(机) φ6 チューブ プレートコイル (500×210) φ8 チューブ 液冷コンセント(机) ワークスペース (W:1400×D:700×h:720) 液冷コンセント(床) φ10 冷水管(還) φ10 冷水管(往) プレートコイル (500×210) 液冷コンセント(床) 床 パーティションとプレートコイル 11 3.1.成果 「(1)内部負荷液冷システムの開発」 発熱機器に適した液冷熱交換ユニットを開発 単体および実証試験で熱回収効率90%以上を確認 機器 LED照明 デスクトップパソコン ノートパソコン 複合機 水冷プレート 気-液 熱交換器 LEDモジュール 気‐液 熱交換器 ファン 気‐液熱交換器 金属性冷却プレート 気‐液 熱交換器 液冷 熱回収 ユニット 熱回収 効率 ノートPC ブース内設置 金属性冷却 プレート LEDを直接水冷 プレートに設置 CPUホルダに 熱交換器設置 47%(単体) 70~90%(実証) 56%(単体)※1 39~57%(実証) 上部:気‐液熱交換器 フードタイプ 94%(単体) 30~80%(実証)※2 48%(単体) 97%(実証) ※1:H26年度開発中止。熱回収効率向上のためには、パソコン筐体と液晶ディスプレイからの熱回収が必要である。 ※2:インテグレーション試験では、圧損増大でポンプ動力が増加。システム全体効率を優先し、金属製冷却プレートのみで熱回収したため効率が低下。 3.1.成果 「(2)ヒートポンプ熱源デシカントによる外 気潜熱負荷処理システムの開発」 12 ヒートポンプを熱源としたデシカント空調を開発 実証試験にてシステムCOP2.2を確認 設計 条件 運用 条件 人員 密度 人/m3 処理 風量 m3/h 外気 温度 ℃ 外気 湿度 g/kg’ システ ムCOP 0.2 300 (100%) 33.5 18.9 2.20 0.1 150 (50%) 32.0 19.2 2.67 0.07 105 (35%) 31.2 17.5 2.47 0.05 75 (25%) 29.4 17.4 2.28 3.1.成果 「(3)室内の顕熱処理を液冷で行う放射 冷房システムの開発 」 13 液冷空調システムに適した二次側空調方式の開発 (アクティブチルドビーム+パーティション放射パネル) 実証試験とシミュレーションで居住域の快適性を確認 (-0.5≦PMV≦0.5) 室内気流分布(シミュレーション結果) 室内温度分布(シミュレーション結果) 3.1.成果 「(4)建物内液冷配水、接続システム の開発 」 14 低揚程配水システムの開発 搬送動力が熱回収量の10%以下(2.85~4.12%)のシステム構築 液冷コンセントの開発 ノンリークカプラ(リーク量0.03ml)を利用した液冷コンセントの開発 漏水検知・遮断システムの開発 最小流量差30mL/minの漏水を検知し、遮断するシステムを開発 汎用サイズ90×90 大型サイズ110×140 液冷コンセント 3.1.成果 「(5)内部発熱回収温熱を有効利用する 熱源システムの開発」 15 高効率液冷用ヒートポンプの開発 20℃冷水、55℃温水同時取り出しの高効率液冷用ヒートポンプを開 発、冷温同時COP=7.2(冷水のみのCOP3.28) 回収熱利用吸着冷凍機の開発 回収熱、太陽熱を活用し、温水温度55℃以下でも冷水製造が可能 な小型の吸着冷凍機を開発 ※蒸発器 ※凝縮器 プレート熱交 ※室外機 仕様検討結果 ユニット 高効率液冷用ヒートポンプ試作機 回収熱利用吸着式冷凍機試作機 3.1.成果 「(6)ZEBエネルギー管理システムの開発」 16 エネルギーシミュレーターの開発 6階建ての事務所建物全体の液冷空調システムのシミュレーション 構築。年間エネルギー消費量を計算。 ZEBエネルギー管理システムの開発 機器の運転状況をリアルタイムで監視、実績値と計算値を比較し、 運転状況の確認、最適な運転方法を決定できる。 エネルギー収支、快適性表示画面 ZEBエネルギー管理システムの画面例 最適運転検討画面 3.1.成果 「年間エネルギー消費量計算結果」 17 液冷空調システムは、従来システムに比べ、年間空調用電力消費 量を83%削減された。 液冷空調システムは、ZEBの空調システムとなりうることを確認 従来システムとの電力消費量比較 3.成果、実績、展望等 18 3.2.実績等 学会発表等 46件(うち審査論文5本) 「液冷空調システムにおける液冷熱回収装置の熱回収性能」 他 (日本建築学会大会、2013年度~2015年度) 業務用ビルを対象とする液冷空調システムの開発(第1報)~(第29報) (空気調和・衛生工学、2013年度~2015年度) 業務用ビルを対象とした結露リスク評価に関する研究 (日本建築学会環境系論文集) 低温再生型吸着材を用いた吸着式冷凍機の開発 (空気調和・衛生工学会) Performance Assessment of an Adsorption Refrigerator Driven by LowTemperature Wasted Heat (ISTP(International Symposium on Transport Phenomena)) Desiccant Air-Conditioning System Consisting of Heat Pump and Solar Heat Collector (ICOPE-15(International Conference on Power Engineering)) 19 3.成果、実績、展望等 3.3.今後の展望 日建設計総合研究所 大成建設 朝日工業社 【共同事業展開】 液冷空調システムに係わる ◆コンサル ◆設計/施工 ◆機器販売/据え付け ◆コミッショニング(性能検証) 【個別事業展開】 液冷空調システムに係わる ◆コンサル ◆コミッショニング (性能検証) 液冷空調システムに係わる ◆コンサル ◆設計/施工 ◆機器販売/据え付け 2020年頃を目指して開発システ ムを組み込んだZEB実現を推進 事務所建物だけでなくデータセン ターや産業分野への展開を検討 液冷空調システムに係わる ◆コンサル ◆設計/施工 ◆機器販売/据え付け ZEB実証棟 技術センター本館 20 3.成果、実績、展望等 3.4.原油換算省エネ効果 2020年時点: 41,046kL/年(累計:61,639kL ) 2030年時点:303,924kL/年(累計:1,251,620kL ) 2020年 国内 2030年 国外 国内 国外 指標A(効果量) (L/(年・㎡)) 18.6 - 18.6 - 指標B(導入量) (千㎡) 2,207 - 16,340 - 省エネルギー効果量(kL/年) 41,046 - 303,924 -
© Copyright 2024 ExpyDoc