1.73MB - 新エネルギー・産業技術総合開発機構

NEDO 省エネルギー技術フォーラム 2014
省エネルギー革新技術開発事業
先導研究
快適・省エネヒューマンファクターに基づく
個別適合型冷暖房システムの研究開発
(特非) ウェアラブル環境情報ネット推進機構
東京大学
(株) 竹中工務店
研究開発期間:平成23年12月~平成26年2月
1.研究開発の背景、目的、目標
1.1.背景
<社会的必要性等>
エアコンを超える超省エネの快適ヒューマンファクター製品は現われていない。
本開発品は新しい市場を創る可能性を秘めている。
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3
<技術的状況等>
1.国内外で、身につけるウェアラブル機器の開発が活発になってきた。
首につけるウェアラブル機器が注目されている。
2.部屋全体の空気を冷やす従来の空調に対して、身体のみを冷暖房する本ウェアラブル装置は
消費電力が1/10以下。ただし、装置の携帯が必要。
3.本装置は温度制御されるため過度の冷熱がない。ただし、従来の携帯型商品の冷凍パッドや
カイロに対して、装置はやや高価で大型。
脳波センサ
4
直接冷暖房のイメージ
省エネ
1/10
頸動脈
従来のエアコン(空気を介して冷暖房)
本開発のウェアコン(人体に直接冷暖房)
1.研究開発の背景、目的、目標
1.2.従来の課題、目的、目標
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 課題
 ヒューマンファクターを定量化す
る指標としての快適性は、深部
体温により決まる
 深部体温を適性値に設定すれ
ば,生理的障害の発生を抑制し、
労働生産性低下などのリスクを
回避できる
 目的
 各種生体センサで推定した最適
深部体温に深部体温が一致す
るように動脈血を冷却・加温す
る、個別電子体温調節システム
を開発
 集中空調システムの消費電力
を最小としながら、快適・健康な
執務室環境を一人一人に提供
できることを実地試験により実
証する
帯状回
快不快
温度感覚(情動)
深部体温
空調システム
温度計
環境
変動
環境
温度
視床
視床下部
下垂体
末梢温度受容体
熱流入
外部 内部
環境 環境
冷却(給熱)
排熱
随意筋運動
血管・筋
運動
褐色脂肪
細胞
熱産生
自律性調節
行動調節
行動
深部体温の恒常性を確保する生理機構
個別空調
ヒューマンファクター研究における各項目の関連性
機能 実装
(1)深部体温制御
装置の開発
評価機
・アルゴリズムの実装
・最適化(回路、意匠)
試作機
機器仕様の
最適化
(2)深部体温最適制御
アルゴリズムの開発
・耐暑・耐寒状態識別技術
・快不快評価技術
臨床
試験
生体リスク
評価
(3)モデル空間構築による
実地 検証
・省エネルギー効果の可視化
・ヒューマンファクタに基づく
集中空調システムの最適駆動法
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2.研究開発体制、研究開発内容
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2.1.研究開発体制
研究開発責任者
ウェアラブル環境情報
ネット推進機構
特定非営利活動法人
ウェアラブル環境情報ネット推進機構
国立大学法人
東京大学
株式会社
竹中工務店
学校法人放送大学学園
独立行政法人情報通信研究機構
コガソフトウェア株式会社
2.研究開発体制、研究開発内容
2.2.研究開発内容
(1)深部体温制御装置の開発
(2)深部体温最適制御アルゴリズムの開発
(3)モデル空間構築による実地検証
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(1)深部体温制御装置の開発
頸動脈流を冷媒とする超省エネ携帯冷房の具体化
頸動脈で血流を冷やし,脳を冷やす.
熱流
チューブ
※暖房時は冷却水不用
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熱伝達モデルによる設計
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ペルチェ素子効率が全体性能を支配.
⇒ペルチェを高効率品に交換すれば,
消費電力低減の可能性あり.
(2)深部体温最適制御アルゴリズムの開発
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高温高湿環境下の発汗量と快不快感の関係
頸部冷却あり
20
-3
PMV
B 発汗
被験者A 快不快
0
10
PMV
C 快不快
B 快不快
不快
C 発汗
3
0
0.5
1
1.5
A 発汗
発汗 g/m2/min
快
0
時間(h)
すべての被験者で,快適性低下後に発汗
発汗量に個人差あり
→ 発汗量により快不快の推定可能.個人ごとの補正必要.
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脳波による快不快感の計測
快
主観評価
不快
35
35℃
基幹脳活動指数(脳波)
気温
25℃
0
15
経過時間(分)
10
主観評価と快不快指数は係数0.7以上で相関.ただし脳波は安静時のみ測定可能
→ 快不快の検出可能だが,日常生活での温度制御には利用不可能
(3)モデル空間構築による実地検証
恒温恒湿実験室(モデル空間)における実地検証を実施
実験室
竹中工務店技術研究所 温熱環境実験室
被験者数
日本人16名(男性8名・女性8名,20~35歳)
実験条件
Case1
Case2
Case3
32℃60%RH
32℃60%RH
28℃60%RH
実験タイムスケジュール
頸部冷却あり
頸部冷却なし
頸部冷却なし
1日1条件(環境曝露120分)、平日午後に実施
:実験室環境測定機器
(温湿度・グローブ温度・風速・鉛直温度分布)
被験者席③
被験者席④
被験者席①
被験者席②
4,900
2,450
出入口
1,900
5,700
実験室レイアウト
実験の様子
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頸部冷却の有無による快不快度の違い
実施したVAS (Visual Analog Scale) アンケート
(回答例)
体全体(着用感含む)の快不快度
不快
快適
実験中4回のVAS評価の平均
各回VAS評価
p < 0.05
8
被01
被03
被05
被07
被09
被11
被13
被15
平均
6
不快
4
2
0
頸部冷却なし
頸部冷却あり
頸部冷却により16人中11人(約69%)の
快適性が増加
被02
被04
被06
被08
被10
被12
被14
被16
快適
10
10
8
6
4
不快
快適
p < 0.01
2
0
頸部冷却なし
頸部冷却あり
頸部冷却により延べ64人中39人
(約61%)の快適性が増加
3.成果、実績、展望等
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3.1.成果
本研究から、温度環境のヒューマンファクターを生理学的に解明し、
下図のように整理しました。すなわち、外界温湿度が上がると、体表
温度が上がり、血流を介して深部温が上がる。一方、生命活動の維持
に最適な温度は37℃であり、セット温度として脳内で設定されている。
深部温とセット温度の差が扁桃体で測定され、その差に比例して、脳
幹部でドーパミンが消費され、交感神経が活動し、発汗する。それに
より体表温度が下がる。このループにより、深部温はセット温度
±0.1℃に保たれることになる。
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省エネ快適機器に絞った場合の個別冷暖房システムの構成
デスクワーク
TYPE I
環境
センサ
TYPE II
環境
センサ
(最も安価に提供できる)
ラジエータ
・制御部
冷却・
加温部
(どのハードでも個人適合
酷暑日はエアコンと連動)
ラジエータ
制御部
冷却・
加温部
家庭生活・屋外作業
TYPE III
(移動可能)
環境
センサ
冷却・
加温部
バッテリ
TYPE IV
環境
センサ
生体
センサ
エアコン
ラジエータ
・制御部
(究極のシステム)
ラジエータ
制御部
冷却・
加温部
バッテリ
クラウド
エアコン
クラウド
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暑熱感による不快感と作業能率低下のメカニズム
3.成果、実績、展望等
3.2.実績等
学会発表・論文等 45件
精密工学会、人間情報学会 他
特許出願等 5件
招待講演等 10件
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3.成果、実績、展望等
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3.3.今後の展望
今回開発したウェアコン技術とエアコンと連携したシステムを2016年を目標に実
用化を予定しています。また、本技術は、省エネ分野だけでなく、健康・スポー
ツ・医療・作業分野へも応用可能です。さらに、国外においても、高温多湿モン
スーン地域を中心に展開を考えています。
開発した技術の応用範囲
3.成果、実績、展望等
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3.4.原油換算省エネ効果
省エネルギー効果を解析した結果、消費電力は冷却時は28 W以下、加温時は
10 W以下でした。利用者一人あたりの原油換算年間省エネ効果量は43.6リッ
トルであり、本課題の目標値を上回りました。
省エネ効果算定式
指標A : 単位あたりの省エネルギー効果量:43.6 L/年
指標B : 市場規模(導入量)
2025年: 3,065,400 台
2030年: 6,130,800 台
省エネ効果量 : A X B =
134,000 kL/年(2025年)
267,000 kL/年(2030年)
原油換算省エネ効果
2025年時点: 134,000 kL/年(累計:748,000 kL )
2030年時点: 267,000 kL/年(累計:1,811,000 kL )
*原油削減量(kL/年)
= 消費エネルギー[kWh/年] * 9.63 [MJ/kWh] / 38200 [MJ/kL]