第157号 - 尾鷲市

共創・共育・共感
尾鷲市教育長だより
2015.12.25.(金)
第157号
夢をもち実現する生き方
も う す ぐ 2015年 も 終 わ り で す 。 今 年 の 最 終 号 は 、 新 年 に 向 け 、 夢 を も つ こ
と、そして実現しよう努力する生き方について話題にします。
一般に、大きな夢(目標)を実現する人は特別な能力をもった、選ばれた
人だと思っている人が多いようですが、それは違います。人間にはその人な
りに夢(目標)をもつことも、実現することもできるような力(潜在能力)
があるのです。
これまで、自分の夢を実現してきた多くの人たちの話を整理してみると、
夢の実現には、学力やテストの成績で示されるような能力よりも、むしろ夢
を実現したいと「思う」気持ちや自分にも夢が実現できるんだという自己を
肯 定 す る ( 評 価 す る )「 考 え 方 」 の ほ う が は る か に 重 要 だ と い う こ と に 気 づ き
ます。自分には能力がないと思っている人も、実は能力がないのではなく、
そのように思っていること自体が、能力が発揮されるのを妨げていることを
知らずに、勝手にそう思っているにすぎないのです。
12月7日の新聞で、指揮者の小澤征爾さんが米国の文化に貢献した人に
贈られるケネディ・センター名誉賞を受賞したという記事をみて、以前、N
HKBSハイビジョンプレミアム8“人物100年インタビュー・小澤征爾
▽指揮者とは”という番組での話を思い出しました。
小澤さんを教え指導してくれた斉藤秀雄先生の
「 基 礎 ・ 基 本 は 100% 完 璧 で な け れ ば な ら な い 」 と い う 考 え と そ の 徹 底 ぶ り 。
「一番できない人がわかる授業をする」という先生のモットー。
「君たちが今やっていることは、どこへ行っても通じるはずだ。イタリア人
はイタリアの音楽文化の伝統の影響を受けている。ドイツ人はドイツの音楽
文化の伝統の影響を受けている。しかし、日本人の君たちは、西欧のさまざ
まな音楽文化の伝統の影響を受けていない、まったくの白紙状態だ。だから、
その国に行けば、その国の音楽文化をすぐに吸収できるはずだ。そこで、今
やっている基礎・基本を土台にしながら、その吸収したことを、さらに自分
なりに創り出し、生かしていけるはずだ」といった前向きな考え。
こういう斉藤先生のすぐれた授業を受けた教え子たちが、一年に一度世界
中 か ら 自 分 の ポ ケ ッ ト マ ネ ー で 集 ま っ て 、「 サ イ ト ウ キ ネ ン オ ー ケ ス ト ラ 」 を
結成し、長野県松本市でサイトウキネンフェスティバルを開いてきました。
ところで、世界的名指揮者として活躍されている音楽家の小澤征爾さんも、
「何であれ、まずやりたいと思うこと、それが才能を開花させていく原点だ」
そ し て 、 小 澤 さ ん が 指 揮 者 と し て 大 成 し た の も 、「 指 揮 者 に な り た い ! 」 と 強
く思い、その実現に邁進したからだと語っていました。
人 間 の 潜 在 能 力 と い う も の は 、“ 気 持 ち 次 第 ” で 発 揮 の さ れ 方 が ず い ぶ ん 違
ってきます。夢を実現したいという熱意のもち方、考え方、努力次第で、思
いもよらない成果を生み出すのです。
ですから、子どもたちが今から、自分がしたいことを見つけ、その実現に
向け本気になって努力してみることは大事なことなのです。夢をもち、実現
のために努力する人は、天才や特別な能力をもった人でなくても、やがては
夢に近づき、実現することができるのです。
これまで、全盲のピアニスト辻井伸行さんの話にもすごく感動しましたが、
村松珠美さんの話にも心を動かされました。村松さんは、ウィーンの国際音
楽コンクールで最優秀演奏賞を受賞した女性ピアニストです。
彼女が、本気でピアニストへの道を歩むきっかけになったのは、オースト
リア・ザルツブルグで「ウィーン・フィル・オーケストラ」の演奏を聴き、
衝撃を受けたときだといいます。
ピ ア ノ を 始 め た 4 歳 か ら 大 学 を 卒 業 す る 22歳 ま で は 、 不 完 全 燃 焼 の 時 期 だ
ったそうです。しかし、この演奏を聴いたときは「心の底から激しく突き上
げてくる感動を知り、涙が止まらなかった」といいます。
そして、この感動を奏でようと一念発起、大学卒業から2年たった平成3
年、ウィーン国立音楽大学に入学、そこで5年間、自分のこれまで足りなか
ったものを徹底的に追い求めたといいます。遅咲きのピアニスト村松さんは、
こうして、眠り続けていた才能を「音楽の都」ウィーンでようやく開花させ
たのです。
将来の夢を描き、それを求める姿勢をもち続ける。そして、やるべきこと
を一つ一つ着実にこなしていくことが、夢を実現する生き方なのです。こう
した生き方を、私たちも子どもたちも、心の栄養にしたいものです。
それではみなさん、よいお年をお迎えください。