第1回講義資料

システム制御工学Ⅰ
電気電子工学科
2014年度
今日の講義内容
• 自動化
• システム
– 因果性,時不変性,線形性
– ブロック線図
• 開ループ制御と閉ループ制御
• フィードバック制御系
– フィードバック制御系の構成
– ブロック線図の簡単化
– フィードバックの効果
– フィード縛制御系の性能
2
自動化の夢
機械を自動で動かす⇒古代からの人間の夢
アレクサンドリアのヘロン
(紀元前後頃)
ヘロンの蒸気機関
(画像の出典はWikipedia)
3
オートメーションとロボット
現代の産業は自動機械抜きには考えられない
ロボットの名付け親:
カレル・チャペク
(1890-1938)
産業用ロボットとオートメーション
二束歩行ロボット
ロボットは産業用から人間型へ展開
(画像の出典はWikipedia)
4
自動制御理論
• 古典制御理論
– 伝達関数に基づく解析・設計
– 主として1入力1出力の制御
• 現代制御理論
– 状態空間モデルに基づく解析・設計
– 多入力多出力の制御
• ポスト現代制御理論
– ロバスト(頑健)制御,適応制御,非線形制御など
現代制御理論の拡張
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システム
• 複数の要素
が相互作用
で結ばれる
• システムの
外側が環境
• システムと
環境の境目
は相対的
• システムの
一部をサブ
システムと
みることもで
きる
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因果的な線形時不変システム
• 因果性
𝑥 𝑡 = 0, 𝑡 < 0
𝑦 𝑡 = 0, (𝑡 < 0)
原因より先に結果は生じない
• 時不変性
𝑥 𝑡−𝜏
𝑦(𝑡 − 𝜏)
入力信号の時間をずらすと出力信号も同じよう
にずれる
• 線形性
𝑎𝑥1 𝑡 + 𝑏𝑥2 𝑡
𝑎𝑦1 𝑡 + 𝑏𝑦2 (𝑡)
入力を定数倍すると出力も定数倍になる.また,
重ね合わせが成り立つ.
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ブロック線図
入力に対して変化を
与えるもの
入力
中を流れているのは
“信号や情報”
システム
または
要素
倍率を変える
時間遅れを持たせる
などなど・・・
出力(応答)
中を流れているのは
“信号や情報”
システムまたは要素を箱(ブロック)で表し,信号・情報の
流れを矢印で表す.通常は,左に入力,右に出力を描く
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ブロック線図の構成要素
基本単位
説明
図
矢印が付いた線分 信号の流れる方向を表す
ブロック
システム内の要素(サブシス
テム)を表す.要素の伝達関
数を 𝐺(𝑠),入力信号のラプラ
ス変換を 𝐴(𝑠) とすると,その
出力は 𝐺 𝑠 𝐴(𝑠) となる.
加え合わせ点
2つの信号の和,又は,差を
生成
引き出し点
信号の分岐を表す.分岐によ
り信号の値は変化しないこと
に注意.
入力
𝐴(𝑠)
𝐺(𝑠)
𝐴(𝑠) +
±
𝐴(𝑠)
(注) 伝達関数とラプラス変換については後で詳しく説明する
出力
𝐵 𝑠 = 𝐺 𝑠 𝐴(𝑠)
𝐴(𝑠) ± 𝐵(𝑠)
𝐵(𝑠)
𝐴(𝑠)
𝐴(𝑠)
9
開ループ制御と閉ループ制御
• 開ループ制御(フィードフォワード制御)
– 結果(出力)が目標の値となるように原因(入力)を与
える
• 閉ループ制御(フィードバック制御)
– 結果(出力)を原因(入力)に戻し,出力がずれたら自
動的に目標に戻るようにする
原因
制御系
開ループ制御
結果
原因
制御系
結果
閉ループ制御
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フィードバック制御系(1)
外乱
目標値
調節部
操作部
制御対象
制御量
検出部
コントローラ
• フィードバック制御系のハードウェア構成
–
–
–
–
–
制御対象(プラント)
制御量 : 制御しようとする量
目標値 : 希望する制御量
制御装置(コントローラ)
制御対象には外乱 d が加わるのが普通
11
フィードバック制御系(2)
制御動
作信号
基準入
力信号
目標値
v
基準入力要素
r
+
外乱 d
e
-
操作量
制御要素
制御対象
m
b
制御量
c
フィードバック要素
• フィードバック制御系の一般的表現
– 目標値 v を基準入力信号 r に変換
– r とフィードバック信号 b との偏差(制御動作信
号) e=r-b に応じて操作量 m を求めて,制御対象
に入力
12
ブロック線図の等価変換(1)
操作
引き出し点の交換
変換前
変換後
𝐴
𝐴
𝐴
𝐴
𝐴
𝐴
𝐴
加え合わせ点の交換
引き出し点とブロック
の交換
𝐴
𝐴±𝐵 𝐴±𝐵±𝐶
+
+
±
±
𝐵
𝐶
𝐴
𝐵
𝐺
𝐴
𝐴
𝐴±𝐶 𝐴±𝐶±𝐵
+
+
±
±
𝐶
𝐵
𝐴
𝐵
加え合わせ点とブロッ
クの交換
𝐴
𝐶
+
𝐺
±
𝐵
𝐴
𝐶
𝐺
𝐺
𝐺
𝐵
𝐺
𝐵
+
𝐵
±
13
ブロック線図の等価変換(2)
操作
変換前
𝐴
引き出し点の移動
変換後
𝐵
𝐺
𝐴
𝐵
𝐺
𝐶
加え合わせ点の移動
𝐴
𝐺
𝐵
ブロックの交換
𝐴
𝐺1
+
±
𝐺2
1/𝐺
𝐶 𝐴
+
𝐶
𝐵
1/𝐺
𝐴
𝐺2
𝐺
𝐶
𝐵
±
𝐺1
𝐵
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ブロック線図の等価変換(3)
操作
変換前
ブロックの縦続結合
𝐴
ブロックの並列結合
𝐴
𝐺1
𝐺1 +
𝐺
±
𝐵
𝐺2
𝐺2
ブロックのフィードバック 𝑈
+
結合
変換後
𝐻
𝐴
𝐵 𝐴
±
𝑋
𝑈
𝐺2 𝐺1
𝐵
𝐺1 ± 𝐺2
𝐵
𝐺
1 ∓ 𝐺𝐻
𝑋
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ブロック線図の等価変換(3)
通常,代表的なフィードバック
制御システムは右図のように
なる.このとき,基準入力から
出力までの伝達関数,
基準入力 𝑈
𝐺
1 ∓ 𝐺𝐻
𝑈
+
𝐸
±
𝐺
𝑋
𝐻
この機能を1つにまとめると・・・
𝑋 出力
を閉ループ伝達関数,偏差から偏差までの伝達関数 GH を開ルー
プ伝達関数と呼ぶ.
閉ループ伝達関数の導出 : 偏差を E と置くと
𝑋 = 𝐺𝐸,
𝐸 = 𝑈 − 𝐻𝑋
E を消去すると
𝐺
𝑋=
𝑈
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1 + 𝐺𝐻
問
• G=1000, H=0.1 とすると,フィードバック後の
伝達要素(閉ループ伝達関数) A はいくらに
なるか?
17
ブロック線図の簡単化(1)
こんなものも,単純なブロック図に変換することができる.
𝑈(𝑠)
+
−
𝑈(𝑠)
𝐺1 (𝑠)
−
+
𝐺2 (𝑠)
???
𝑌(𝑠)
𝐺3 (𝑠)
𝑌(𝑠)
さて,四角の中にはどのような要素が入っているだろうか・・・
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ブロック線図の簡単化(2)
式で考える場合
𝑈(𝑠)
+
𝑋
−
𝐺1 (𝑠)
−
+
𝑍
𝐺2 (𝑠)
𝐺3 (𝑠)
𝑌(𝑠)
ブロック線図の各箇所の信号に名前を付ける( この例では,𝑋 と 𝑍
).次に,これらの信号を式で記述する.
𝑋 = 𝑈 𝑠 − 𝐺2 𝑠 𝑍, 𝑍 = 𝐺1 𝑠 𝑋 − 𝑌(𝑠), 𝑌 𝑠 = 𝐺2 (𝑠)𝐺3 (𝑠)𝑍
これらの式から,𝑋 及び 𝑍 を消去し, Y(s) / U(s) を求めれば,
𝑈(𝑠)
𝐺1 (𝑠)𝐺2 (𝑠)𝐺3 (𝑠)
1 + 𝐺1 𝑠 𝐺2 𝑠 + 𝐺2 (𝑠)𝐺3 (𝑠)
𝑌(𝑠)
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ブロック線図の簡単化(3)
ブロック線図の等価変換を用いる方法
𝑈(𝑠)
+
−
𝐺1 (𝑠)
−
+
𝐺2 (𝑠)
𝐺3 (𝑠)
フィードバックが入
れ子になっている
𝑌(𝑠)
𝐺3 (𝑠)
𝑈(𝑠)
+
−
𝑈(𝑠)
+
−
𝐺1 (𝑠)
𝐺1 (𝑠)
−
+
𝐺2 (𝑠)
𝐺2 (𝑠)
1 + 𝐺2 (𝑠)𝐺3 (𝑠)
𝐺3 (𝑠)
𝐺3 (𝑠)
𝑌(𝑠)
𝑌(𝑠)
引
き
出
し
点
の
変
更
フ
ィ
ー
ド
バ
ッ
ク
結
合
20
ブロック線図の簡単化(4)
縦
続
接
続
𝑈(𝑠)
+
𝑈(𝑠)
−
𝐺1 (𝑠)𝐺2 (𝑠)
1 + 𝐺2 (𝑠)𝐺3 (𝑠)
𝐺1 (𝑠)𝐺2 (𝑠)
1 + 𝐺1 (𝑠)𝐺2 (𝑠) + 𝐺2 (𝑠)𝐺3 (𝑠)
𝑈(𝑠)
𝐺1 𝑠 𝐺2 (𝑠)𝐺3 (𝑠)
1 + 𝐺1 (𝑠)𝐺2 (𝑠) + 𝐺2 (𝑠)𝐺3 (𝑠)
𝐺3 (𝑠)
𝐺3 (𝑠)
𝑌(𝑠)
𝑌(𝑠)
𝑌(𝑠)
フ
ィ
ー
ド
バ
ッ
ク
結
合
縦
続
接
続
21
問
以下のブロック線図を簡単化せよ.

R(s)
入力
Y (s)
K1

出力
K
Ts  1
R(s) 
入力

K1
s


K2


K3
s
Y (s)
K4
出力
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フィードバックの効果(1)
伝達要素 G にフィードバック要素 H でフィード
バックをかけると,閉ループの伝達要素は
𝐺
𝐴=
1 + 𝐺𝐻
G が ΔG だけ変化したとすると
𝐺 + ∆𝐺
𝐺
∆𝐴 =
−
1 + 𝐺 + ∆𝐺 𝐻 1 + 𝐺𝐻
∆𝐺
𝐺
=
𝐺 1 + 𝐺 + ∆𝐺 𝐻 1 + 𝐺𝐻
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フィードバックの効果(2)
∆𝐺
𝐺
フィードバック無しの変化率 𝛿 =
フィードバック後の変化率
∆𝐴
∆𝐺
′
𝛿 =
=
𝐴
𝐺 1 + 𝐺 + ∆𝐺 𝐻
∆𝐺
1
1
=
=𝛿
𝐺 1 + 𝐺 + ∆𝐺 𝐻
1 + 𝐺 + ∆𝐺 𝐻
GH が1より十分大きければ 𝛿 ′ < 𝛿 ,つまり伝達要
素の変化率は減少する
フィードバックは,伝達要素の変化の影響を軽減
する
24
問
• G=1000,H=0.1,ΔG=100 とする.フィードバッ
ク無しの場合の伝達要素の変化率 δ とフィー
ドバック後の変化率 δ’ を求めよ.
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フィードバックの効果(3)
フィードバック要素 H が ΔH だけ変化した場合を同
様に計算すると
∆𝐴
∆𝐻
𝐺𝐻
∆𝐻
′
𝛿 =
=−
≅−
𝐴
𝐻 1 + 𝐺 𝐻 + ∆𝐻
𝐻
つまり フィードバック要素の変化はそのまま伝達
要素の変化となって現れる.
フィードバックは,フィードバック要素の変化の影響
を軽減できない
⇒ フィードバック要素には安定な素子を用いる必
要がある
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フィードバックの効果(4)
• 外乱 d が偏差 e の位置に加わる場合
𝑦 =𝐺 𝑒+𝑑 ,
𝑒 = 𝑥 − 𝐻𝑦
𝐺
𝐺
∴𝑦=
𝑥+
𝑑
1 + 𝐺𝐻
1 + 𝐺𝐻
外乱は入力と同様に増幅される
• 外乱 d が出力 y の位置に加わる場合
𝑦 = 𝐺𝑒 + 𝑑,
𝑒 = 𝑥 − 𝐻𝑦
𝐺
1
∴𝑦=
𝑥+
𝑑
1 + 𝐺𝐻
1 + 𝐺𝐻
外乱の影響は 1/G に減少する
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r(t)
c(t)
フィードバック制御系の性能
応答は速いが振
動の減衰が遅い
制御系
c(t)
t
そこそこ応答が
速く,振動の減
衰もそれなり
t
c(t)
良い制御系
• 定常偏差が無い
• 応答が速い(速応性)
• 振動の減衰が速い
(減衰性,安定性)
t
t
応答が遅く,定
常状態でも目標
に達しない(定
常偏差が残る)
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練習問題
以下のブロック線図を単一の伝達要素に書き
換えよ.
G1
x
+
−
G2
+
+
−
G3
G4
y
H1
H2
29