制御工学(2, 3系) Control Engineering 担当:福村 直博(3系) Naohiro Fukumura 部屋:F-408 電話:0532-44-6884 E-Mail: [email protected] HP: http://www.bmcs.cs.tut.ac.jp/~fukumura/Control/ 制御理論 Control theory • 制御とは: – ある変量をある目的に適合するように対象と なっているものに所要の操作を加えること • 対象=制御対象 – 例:航空機、ロボット、空調、車のエンジン、 電力、ハードディスク、化学プロセス、工作 機械など • 目的 – ある変量を希望の値(目標値)あるいはある 軌道(目標軌道)に近づけること 1 物理学 Physics • あるシステムに何らかの入力を加えた場 合に、どのように出力(変化)するかを 予測する ダンパ・質量・ばね系 (spring-mass-damper system) d2 x(t) dx(t) f (t) = M +B + Kx(t) 2 dt dt f(t)が与えられた時の x(t)の解を求める • システムのモデル(数式表現)の推定を含む 2 制御 Control • システムが所望の出力値になるような入力、 もしくはその入力の決定方法を求める ダンパ・質量・ばね系 (spring-mass-damper system) d2 x(t) dx(t) f (t) = M +B + Kx(t) 2 dt dt x(t)をある位置に静止させる ある軌道に沿って移動させる どのようなf(t)を与え なければならないか 3 制御工学 Control Engineering • 物理学(Physics) – あるシステムにある入力を加えたらどのような 出力が得られるか 入力 x システムg(x) 出力 y • 制御工学(Control engineering) – システムがある与えられた目標値を出力する ためにどのような入力が必要か 入力 x システムg(x) 出力 y 目標値 yd 工学においては、後者の問題の方が多い 4 制御の変量と目的の例 Controlled variable and objective • ロボットアーム(Manipulator) – 手先位置をある位置に移動する – 手先位置を障害物を避ける軌道に沿って移動する • 同じ問題は例えば移動ロボットにも当てはまる • 航空機(Airplane) – ある高度を維持する – ある経路を通る • 電力(electric power) – 電圧を○○[V]にする • 空調(air conditioner) – 部屋の温度を〇〇度にする 5 制御の種類 Kinds of control • サーボ制御(Servo control):機械的な位置を 出力として、それを制御する。希望値の 変化に出力を追従させる。追値制御 (Variable value control) • プロセス制御(Process control):炉内の温度を 制御するような場合。希望値は一定。定 置制御 (Constant value control) 6 制御理論 Control theory • 制御目標には共通性が有する • 制御対象は様々だが、その特性を微分 方程式などの数式モデルで表すことに よって、一般的な記述が可能 • 制御対象の違いに関わらず、一般的な 方法論が成立する=制御理論 7 水位系のモデル Water level model 断面積Aで流量係数(出口抵抗)がRである タンクにqi(t)だけ水が流入したときの水位 h(t)との関係。ただしqo(t)を流出量とする。 dh(t) qi (t) qo (t) = A dt h(t) = Rqo (t) より qi(t) R dh(t) 1 A + h(t) = qi (t) dt R h(t) qo(t) 8 機械振動系 Mechanical vibration system バネとダンパでつながれた物体の動きをモデル化 ダンパ・質量・ばね系 (Spring-mass-damper system) 運動方程式 (Motion equation) d2 x(t) dx(t) f (t) = M +B + Kx(t) 2 dt dt 9 電気回路システム Electric circuit system 抵抗、コンデンサ、コイルによる回路システム 直列RLC回路 R ei (t) キルヒホッフの電圧則(Kirchhoff's law) L i(t) C di(t) 1 ei (t) = L + Ri(t) + i(t)dt dt C 1 eo (t) = i(t)dt C eo (t) d2 eo (t) deo (t) ei (t) = LC + RC + eo (t) 2 dt dt 2次の微分方程式=ダンパ・質量・バネ系と同じ 同じ制御則が使える 10 システム(系) System 様々な機能を有する複数の要素が何らか の相互作用で結合されている集合 ロボットなどの機械、電気回路だけでなく、 社会経済システム、生物システム、情報シ ステムなど 11 システムの性質 Characteristics of system • 因果性 (Causality) x(t)=0, t<0である限り出力はt<0ではy(t)=0である • 入力が0の間は必ず出力は0である • 原因より先に結果が生じない • 時不変性 (Time-invariance) – 時刻0から、x(t)という入力をシステムに与え たときにy(t)という出力が得られるとき、時刻 τからx(t-τ)という入力をシステムに与えたとき にはy(t-τ)という出力が得られる • システムの性質が時間原点の選び方に無関係 • 厳密にはなりたたないケースが多い →成り立つと仮定 12 システムの性質 Characteristics of system • 線形性 (Linearity) 入力x1(t)に対する出力をy1(t)、入力x2(t)に対 する出力をy2(t)であるとき、任意の実数a,bに ついてax1(t)+bx2(t)を入力とすると、出力は ay1(t)+by2(t)になる • 重ね合わせの原理 • 実際のシステムでは真に線形なシステムはない →ある範囲に限って線形に近似して考える 13 システムの性質 Characteristics of system • これらの3つの条件をもつシステムを 扱う – 数学的な取扱が容易 – 特に後の2つを合わせて線形時不変システ ム(linear time-invariant system) LTIシステ ムと呼ぶ 14 閉ループ制御と開ループ制御 Closed-loop and open-loop control systems • 制御とはシステムが所望の出力値にな るような入力、もしくはその入力の決 定方法を求めること • 例題:室温制御 – ストーブなど • スイッチを入れれば暖める。一定時間後に停止 すると仮定 • 熱量で設定 15 ストーブによる室温制御 Room temperature control by a heater • どの程度の熱量(u)で暖めれば温度(T)にな るか、事前に調べておく ⇒ストーブの熱量(入力u)と室温(出力T)の 関係が予測可能 =システムの特性を表す関数Gがわかる 入力u システム 出力 T=G(u) G(u) これをうまく使う方法は? 16 ストーブによる室温制御 Room temperature control by a heater システムの特性を表す関数Gの逆関数を用いる 入力u システム 出力 T=G(u) G(u) 入力と出力の関係を 反転したものを使う 入力T 出力 u = G 1 (T ) 17 開ループ制御 Open-loop control 対象であるシステムの特性がy=G(u)で表され、 u=G−1(y)が存在するならば、それをコントロー ラとして利用 入力 y 出力 u=G−1(y) 目標値 操作量 システム コントローラ y = G(u) = G(G 1 制御量 (y d )) = y d なので必ず y = y d になる 開ループ制御 18 開ループ制御 Open-Loop Control 目標値 コントローラ 操作量 制御量 制御対象 • 逆関数の有無に関わらず、あらかじめ計算された 入力に従い、システムの出力とは独立した制御 • 信号が一方向 ⇒ フィードフォワード制御 (Feed Forward Control)ともいう • センサが不要で低コスト • システムの関数G(u)が正確なら、望ましい出力を する入力uの計算が容易 19 開ループ制御の条件 Requirement for open-loop control • システムの動作特性G(u)が – 完全に把握されていること – 動作中にそれらの特性が変化しないこと • 外乱(disturbance)が無い – 外乱:システムに加わる、入力以外の操作不能な入力 • システムの特性G(u)が完全に把握されているこ とはほとんどない • 外乱が無いという状況もない 制御理論とはこのような条件下で、入力を適切に操作 して目標値に近づけるコントローラを設計する理論 20 開ループ制御の欠点 Defects of open-loop control • ストーブの例 – 目標温度に達しなくても、ストーブがオフ になれば終わり。 – 部屋にいる人数などの条件によって、温度 変化が変わる可能性(正確な関数を求める ことが難しい場合がある) – 途中で誰かが外へ出るためにドアを開ける と、温度が変わり、最終的に適温に達しな い(外乱に対して修正動作ができない) 21 人が調整するならば、どうするか? How do you control the system? 室温に応じて、ストーブの熱量を調節する。寒く 感じれば強くし、暑くなれば弱くしたり止める 暑い? 寒い? 脳 熱量 手 ストーブ 温度Tr 部屋 皮膚の受容器 22 自動化するには How to automate this process • 現在の温度Trを温度センサで計測 • 目標温度Tdとの偏差eに応じて熱量を決定 閉ループ制御 (closed loop control) フィードバック制御 (feedback control) 設定温度Td 偏差e コントローラ + - 熱量 ストーブ 温度Tr 部屋 温度センサ エアコン 23 フィードバック制御 Feedback control 閉ループ制御 Open-loop control • 制御機能が出力にいくらか依存する特性を 有する制御 • 制御量を測定して、それを目標値と比較して 偏差に応じて制御入力を修正 目標値 偏差 コントローラ + - 制御対象 制御量 センサ 24 制御工学 Control engineering フィードバック制御で制御するときのコントローラを どのようにすれば良いか – なぜフィードバック制御が良いのか – 制御対象やコントローラの数学的な記述方法 • ラプラス変換を利用したシステム表現→古典制御 • 状態変数を使ったシステム表現→現代制御 – システムの伝達関数の概念 • システムの特性の表示方法 – システムの基本的な要素の性質 – システムの安定判別法 – 望ましい結果をもたらすコントローラーの設計法 25 ブロック線図 block diagrams システムの内部やシステムと環境の間に 信号が伝達する。この構造を表現するた めに図を使う。 – 要素をブロック – 信号(伝わる向き)を矢印 で表す。 システムの入出力関係 入力 システム あるいは 要素 出力(応答) 26 ブロック線図の基礎 Fundamentals of block diagrams a. 加え合わせ点 Summing point x1± x2 x1 b. 引き出し点 Takeoff point Transfer element x x x + ± x Gx G G(jw), G(s)などと表す … x2 c. 伝達要素 x 27 ブロック線図の簡単化 Block Diagram Simplification • 上述のシステムは要素をなるべく簡略化し たもの – 実際にはもっと多くの要素が入り組んで構成 • ブロック線図を簡単な形に等価変換するこ とが必要 – 前向き要素をG、フィードバック要素をHと表す – 入力xに対してGx,Hxを出力 28 (1)縦続結合 Associative and commutative properties x y G1 x G2 G1・G2 y (2)並列結合 Blocks in parallel G1 x +y ± x G1±G2 y G2 29 (3)フィードバック結合 Feedback loop x + e G y x y H 30 (4)重ね合わせ点の移動 Displacement of summing point + G ± + ± G 31 (5)引き出し点の移動 Displacement of takeoff point G G 32 例題 Example G3 + − G2 + + G1 移動で影響するブロックの出力が等しくなることを確認する (制御工学 例題4-4) 33 例題 G3 X + − G2 + + G2 (X G1 Y Y) 重ね合わせ点の移動 34 例題 G3 X G2 (X + + G2 + − Y ) + G3 X G1 Y G2 G2 X G2 Y = G2 (X Y) 35 例題 G3 G2 G2 (X + + + − Y ) + G3 X G1 G2 G2 + G3 G1 (G2 + G3 ) G= 1 + G1 G2 G1 1 + G1 G2 36 例題 式変形版 Alternative solution G3 + − G2 + + G1 中間の適当な信号に一時的な記号(E)をつけて、 各ブロックの入出力を順に求める E=X Y Y = G1 (G2 E + G3 X) 37 例題 式変形版 E=X Y Y = G1 {G2 E + G3 X} Eを消去して整理する Y = G1 {G2 (X Y ) + G3 X} (1 + G1 G2 ) Y = G1 {G2 + G3 } X G1 {G2 + G3 } Y = X 1 + G1 G2 G1 (G2 + G3 ) G= 1 + G1 G2 38
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