制御システム設計 第12回 ~ゲイン余裕と位相余裕~ 東京都市大学 工学部 機械システム工学科 野中謙一郎 http://www.cl.mse.tcu.ac.jp/lab/edu/dcs/ ゲイン余裕GMと位相余裕PMはフィードバック系の安定性の余裕を表す 第12回 制御システム設計 1 前回課題 ステップ応答との関係(解答) 下記のフィードバック制御系と制御対象 について,P制御のゲイン を変化させた場合の 点 1,0 付近のベクトル軌跡を描き,安定な の範囲を求めなさい. さらに,幾つかの に対してステップ応答を描き,収束・安定限界・発散を確認しなさい. ナイキストの安定判別法は,周波数入力に限らずフィードバック制御系の安定性を判別できる. 一巡伝達関数 制御器 誤差 目標値 操作量 制御対象 制御対象 制御量 1 1 2 フィードバック制御系 8 1 12 12 発散 6 Im 0 6 4 持続振動 収束 -2 3 -2 3 -1 2 0 Re 不安定 安定 限界 安定 6 -3 -4 -6 0 2 4 6 8 10 課題のステップ応答のグラフ 第12回 制御システム設計 -4 -4 -3 課題の -2 -1 0 1 のベクトル軌跡 2 ナイキストの安定判別法(p.119 ナイキストの安定判別法 一巡伝達関数 のベクトル軌跡から閉ループ伝達関数 が安定) の安定性を判別 1 ナイキストの安定判別法( が安定な場合) 一巡伝達関数(開ループ伝達関数) のベクトル軌跡が 点 1,0 を常に左に見るように動くなら安定で, 右に見るように動くならば不安定 Im 0.5 不安定 0 Re 1 200.0 40.0 -0.5 150.0 12 30.0 100.0 0.0 -1 -50.0 20.0 -100.0 12 -150.0 10.0 -200.0 -10.0 200 400 600 800 1000 -1.5 7.95の応答 十分時間経過後に 一定振幅に収束 一定振幅 に収束 0.0 0 -2 4 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 600.0 / 1 のベクトル軌跡の拡大図 4は 1,0 を常に左に見るので安定 8は 1,0 を通るので安定限界 12は 1,0 を常に右に見るので不安定 400.0 200.0 -30.0 0.0 4 -40.0 -50.0 8 -2 -2.5 800.0 -20.0 安定 安定 限界 50.0 0 5 8 10 -200.0 振幅→∞で 発散 15 20 -400.0 -600.0 -800.0 0 200 400 600 800 1000 8では直線的に 制御システム設計 振幅が増加 第12回 3 安定余裕 フィードバック制御系の制御対象 が変化する場合に,安定性が保たれるために や位相∠ に許される変化の余裕 ゲイン 目標値 制御器 誤差 操作量 制御対象 制御量 フィードバック制御系 1.5 0.5 Im 9 8 Re sin 3 1.0 4 0.5 2 1 0 0.0 -0.5 -0.5 1 7 -1.0 -1.5 -1 4 -1.5 -1.5 -1 -0.5 2 0 0.5 / 1 のベクトル軌跡 7は安定限界に近く,安定余裕が小さい. ベクトル軌跡が負の実軸と交わる点 1 ベクトル軌跡の距離が1になる点の偏角 180° 第12回 50 40 30 20 10 0 -10 -20 -30 -40 -50 0 5 10 15 20 25 30 35 40 9は振幅が加速して増加 7は 一定振幅に 収束する 8は振幅が一定速度で増加 0 制御システム設計 5 10 15 20 25 30 のステップ応答のグラフ 35 40 4 6.3 ゲイン余裕・位相余裕(p.122) ゲイン交差角周波数 (gain crossover frequency) 1となる点Gにおける で,この時の位相∠ が, ∠ 180°なら安定, ∠ 180°なら不安定 Im 1.0 1 GM 0.5 位相交差角周波数 (phase crossover frequency) ∠ 180°となる点Pにおける で,この時のゲイン 1なら安定, 1なら不安定 が, 1 0.0 PM 0.4 0.5より 0.2 1 P Re 計算 2.0 GM 0.0 0.5 O 0.5 1.0 G 0.94, 0.34 より -0.2 PM 0.34 -0.4 G 0.94, 0.34 PM tan 0.94 計算 -0.6 -1.6 -1.4 -1.2 -1.0 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 20° -1.5 -1.0 GMとPMの計算例 3/ 制御システム設計 1 2 第12回 -0.5 0.0 0.5 1.0 安定な場合のPとG Im G P 0.0 Re が増加 0.5 Im OP ∞ O G -0.5 ゲイン余裕 GM (gain margin) ∠ 180°となる点Pにおけるゲイン OPについて,-1.0 OP GM 1 -1.5 すなわち, OPが何倍されたら不安定になるかを表す値で -2.0 1 -2.0 GM OP 位相余裕 PM (phase margin) 1となる点Gにおける位相∠ が 180°まで 1.0 何度の余裕があるかを表す. P Re ∞ 1 O -0.5 -1.0 -1.5 -2.0 -2.0 -1.5 -1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0 不安定な場合のPとG 5 演習 ゲイン余裕・位相余裕の計算 下記のフィードバック制御系と制御対象 について,P制御のゲインが 2と 場合の点 1,0 付近のベクトル軌跡を描き,ゲイン余裕と位相余裕を求めなさい. 4の 一巡伝達関数 誤差 目標値 制御器 操作量 制御対象 制御対象 制御量 1 1 2 フィードバック制御系 Im 0.5 Re D 0 B C -0.5 A A(‐0.842252,‐0.539084) B(‐0.333333,0) C(‐0.980074,‐0.198374) D(‐0.666667,0) 2 計算ゲイン余裕GM . -1 2 4 -1.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 位相余裕PM tan 4 ゲイン余裕GM . . tan . . . 位相余裕PM 第12回 3.00 制御システム設計 32.6° 1.50 11.4° 6 課題 ゲイン余裕・位相余裕の確認 フィードバック制御系の制御対象 が変化する場合に,安定性が保たれるために や位相∠ に許される変化の範囲が安定余裕 ゲイン 誤差 目標値 制御器 操作量 制御対象 制御対象 制御量 公称モデル 1 1 実際の制御対象(未知) , フィードバック制御系 2 ? 問題 から に変化した場合について考える. 制御対象が 2,4のそれぞれについて,未知の部分 が 1 2 の場合のステップ応答をシミュレーションで確認し,ゲイン余裕の観点から考察し, Wordのレポートに纏めて提出しなさい. 2 4 1 2 第12回 制御システム設計 7 期末試験について 期末試験 授業最終回の7月23日(木)の3時限目に実施 重要ポイント:シラバスの「達成目標」を参照 配布資料のPDFは授業HPに掲載 小テストを中心に勉強しておく(解答はWebClassの解説に PDF) 持込み用紙:手書きのみ可 成績の60%(シラバス参照) 第12回 制御システム設計 8
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