βクリプトキサンチンの機能性 - ヘルシーパス

(No.7146)
発行日:2014.12.12
Nutrients for preventive medicine
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キーワード
βクリプトキサンチン,
カロテノイド,
抗肥満,
脂肪肝,
温州ミカン
今 が旬 の温 州 ミカン。食 べすぎで手 が黄 色 くなった方 もおられるでしょう。これは、温 州 ミカン に特 有 の
β クリプ トキサンチンの色 です が、今 回 はこ のβ クリプ トキサンチンの機 能 性 についてご紹 介 いた します 。
βクリプトキサンチンの機能性
■βクリプトキサンチンとは
あまり聞きなれない成分名ですが、このβ(ベータ)
クリプトキサンチンは、みなさんが良くご存じの温州
ミカンに特異的に多く含まれている変わったカロテノ
イドです。同じカンキツ類のオレンジにはほとんど含ま
れていません。温州ミカンの他には、パパイヤや柿、
赤ピーマン(唐辛子)にも含まれていますが、やはり
温州ミカンに圧倒的にたくさん含まれています。
【構造式】
βクリプトキサンチンは、上記のような構造をして
いるカロテノイドの仲間で、βカロテンのような CH3 基
が両サイドにあるものと、アスタキサンチンのような OH
基が両サイドにあるキサントフィルと呼ばれる仲間の
両方の性質を持っている唯一のカロテノイドです。
たとえば、細胞膜では膜内に疎水性の CH3 基の部分が
入り込み、OH 基のある部分だけが膜外に出ているのでは
ないかと推測されており、この構造の特異性が機能性に
大きく関わっているといわれています。
【プロビタミン A】
ヒトでは温州ミカンの摂取により体内で蓄積され、プロ
ビタミン A として必要に応じてビタミン A に変換されま
す。温州ミカンを食べすぎると手のひらが黄色くなるの
はβクリプトキサンチンが吸収され、皮下脂肪に蓄積す
るためです。血中濃度の半減期は 1~2 か月と長く、ミカ
ンがたくさん流通する時期(11 月~2 月)に多く食べた
人は、春から秋にかけても比較的血中濃度が高いことが
わかっていますが、蓄積による毒性はありません。
また、食前よりも食後に食べたほうが血中濃度は 3 倍
程度も高くなることがわかっています。
■疫学調査
これまで、βクリプトキサンチンについては、ミカンの
産地である静岡県三ヶ日町で疫学調査が行われており、
シーズン中に温州ミカンをよく食べる人ほど、血清中の
βクリプトキサンチン濃度が著しく高く、HDL コレステ
ロールが年間を通じて高い傾向があり、脂質代謝に好影響
を及ぼすことがわかっています。また、酸化ストレスや
血清脂質等の疾患マーカーが、あまり食べない人に比べ
て有意に改善されることも明らかになっています。
以上のような過去の研究は、血中のβクリプトキサンチ
ン濃度と疾患リスクとの関係を調べており、直接の因果
関係ははっきりしていませんでした。
■作用メカニズム
βクリプトキサンチンがどのように働いているかを
確かめた結果、核内受容体に作用し、直接的に脂質代謝
や糖代謝に働きかけていることが解りました。
【動物での評価】
具体的には、核内受容体 PPARγに作用し、脂肪細胞が
中性脂肪をためることに対して抑制的に働きます(アン
タゴニスト作用)
。その結果、脂肪細胞の肥大化(肥満)
が抑制されるとともに、脂肪合成も抑制されます。その
結果、更にインスリン抵抗性が改善され、血糖上昇を
抑制し、糖代謝も改善されます。
これらの働きは、βクリプトキサンチンが脂肪細胞に
直接働きかけるとともに、レプチンやアディポネクチン
の分泌が増加することによる作用も関与しています。
また、肝臓や骨格筋の中性脂肪はレプチンやアディポネ
クチンにより、燃焼側に傾き中性脂肪は減少しました。
(2008 年 第 29 回日本肥満学会 京都大学農学部発表)
【ヒトでの効果】
βクリプトキサンチンを 1 日に 1 ㎎(温州ミカン1 個程度)
になるように飲料に加工して摂取した時、約 3 か月後に
は腹囲が約 2 ㎝、LDL コレステロールが 10 ㎎/dL、体重
が 1.5 ㎏、BMI が 0.6 減少し、いずれも有意差がありまし
た。
(2008 年 第 62 回日本栄養・食糧学会 アークレイ株式
会社発表)
この結果から、人においてもβクリプトキサンチンを
摂取することで抗肥満およびメタボリックシンドローム
の予防、改善効果が確認されました。このほか、非アル
コール性脂肪肝(NASH)に対しても有効性があること
が金沢大学医学部により報告されています。
そのメカニズムは、肝臓での過酸化脂質蓄積抑制と抗炎
症作用および線維化の抑制作用であることが動物実験
で確認され、ヒトでも同様の働きがあると期待されてい
ます。(2014 年 第 35 回肥満学会 金沢大学医学部発表)
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