(No.7146) 発行日:2014.12.12 Nutrients for preventive medicine ® 株式会社ヘルシーパス 情 報 提 供 静岡県静岡市葵区栄町 2-10 1192 ビル 8F TEL:054-255-1200 FAX:054-255-1188 http://www.healthy-pass.co.jp キーワード βクリプトキサンチン, カロテノイド, 抗肥満, 脂肪肝, 温州ミカン 今 が旬 の温 州 ミカン。食 べすぎで手 が黄 色 くなった方 もおられるでしょう。これは、温 州 ミカン に特 有 の β クリプ トキサンチンの色 です が、今 回 はこ のβ クリプ トキサンチンの機 能 性 についてご紹 介 いた します 。 βクリプトキサンチンの機能性 ■βクリプトキサンチンとは あまり聞きなれない成分名ですが、このβ(ベータ) クリプトキサンチンは、みなさんが良くご存じの温州 ミカンに特異的に多く含まれている変わったカロテノ イドです。同じカンキツ類のオレンジにはほとんど含ま れていません。温州ミカンの他には、パパイヤや柿、 赤ピーマン(唐辛子)にも含まれていますが、やはり 温州ミカンに圧倒的にたくさん含まれています。 【構造式】 βクリプトキサンチンは、上記のような構造をして いるカロテノイドの仲間で、βカロテンのような CH3 基 が両サイドにあるものと、アスタキサンチンのような OH 基が両サイドにあるキサントフィルと呼ばれる仲間の 両方の性質を持っている唯一のカロテノイドです。 たとえば、細胞膜では膜内に疎水性の CH3 基の部分が 入り込み、OH 基のある部分だけが膜外に出ているのでは ないかと推測されており、この構造の特異性が機能性に 大きく関わっているといわれています。 【プロビタミン A】 ヒトでは温州ミカンの摂取により体内で蓄積され、プロ ビタミン A として必要に応じてビタミン A に変換されま す。温州ミカンを食べすぎると手のひらが黄色くなるの はβクリプトキサンチンが吸収され、皮下脂肪に蓄積す るためです。血中濃度の半減期は 1~2 か月と長く、ミカ ンがたくさん流通する時期(11 月~2 月)に多く食べた 人は、春から秋にかけても比較的血中濃度が高いことが わかっていますが、蓄積による毒性はありません。 また、食前よりも食後に食べたほうが血中濃度は 3 倍 程度も高くなることがわかっています。 ■疫学調査 これまで、βクリプトキサンチンについては、ミカンの 産地である静岡県三ヶ日町で疫学調査が行われており、 シーズン中に温州ミカンをよく食べる人ほど、血清中の βクリプトキサンチン濃度が著しく高く、HDL コレステ ロールが年間を通じて高い傾向があり、脂質代謝に好影響 を及ぼすことがわかっています。また、酸化ストレスや 血清脂質等の疾患マーカーが、あまり食べない人に比べ て有意に改善されることも明らかになっています。 以上のような過去の研究は、血中のβクリプトキサンチ ン濃度と疾患リスクとの関係を調べており、直接の因果 関係ははっきりしていませんでした。 ■作用メカニズム βクリプトキサンチンがどのように働いているかを 確かめた結果、核内受容体に作用し、直接的に脂質代謝 や糖代謝に働きかけていることが解りました。 【動物での評価】 具体的には、核内受容体 PPARγに作用し、脂肪細胞が 中性脂肪をためることに対して抑制的に働きます(アン タゴニスト作用) 。その結果、脂肪細胞の肥大化(肥満) が抑制されるとともに、脂肪合成も抑制されます。その 結果、更にインスリン抵抗性が改善され、血糖上昇を 抑制し、糖代謝も改善されます。 これらの働きは、βクリプトキサンチンが脂肪細胞に 直接働きかけるとともに、レプチンやアディポネクチン の分泌が増加することによる作用も関与しています。 また、肝臓や骨格筋の中性脂肪はレプチンやアディポネ クチンにより、燃焼側に傾き中性脂肪は減少しました。 (2008 年 第 29 回日本肥満学会 京都大学農学部発表) 【ヒトでの効果】 βクリプトキサンチンを 1 日に 1 ㎎(温州ミカン1 個程度) になるように飲料に加工して摂取した時、約 3 か月後に は腹囲が約 2 ㎝、LDL コレステロールが 10 ㎎/dL、体重 が 1.5 ㎏、BMI が 0.6 減少し、いずれも有意差がありまし た。 (2008 年 第 62 回日本栄養・食糧学会 アークレイ株式 会社発表) この結果から、人においてもβクリプトキサンチンを 摂取することで抗肥満およびメタボリックシンドローム の予防、改善効果が確認されました。このほか、非アル コール性脂肪肝(NASH)に対しても有効性があること が金沢大学医学部により報告されています。 そのメカニズムは、肝臓での過酸化脂質蓄積抑制と抗炎 症作用および線維化の抑制作用であることが動物実験 で確認され、ヒトでも同様の働きがあると期待されてい ます。(2014 年 第 35 回肥満学会 金沢大学医学部発表) Copyright HEALTHY PASS. All Rights Reserved.
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