演題1 担癌患者におけるカテーテル留置時の静脈血栓に関する検討 原 文彦1、原田 昌彦2、五十嵐 裕美1、八鍬 恒芳2、丸山 憲一2、桝谷 直司2、 宮坂 匠2、池田 隆徳1 1東邦大学医療センター大森病院 内科学講座循環器内科学分野 2東邦大学医療センター大森病院 臨床生理機能検査部 【目的】 近年、化学療法に伴って、長期間にわたるカテーテルやポート留置を行う機会が増えて いる。悪性疾患の存在自体が血栓形成の誘因といわれているが、長期間のカテーテル留 置も血栓形成をひきおこす可能性があるとともに、カテーテル抜去に伴って遊離した血 栓が致命的な肺血栓塞栓症を誘発することもありうる。今回、担癌患者のカテーテル留 置症例における血栓形成の影響について検討を行った。 【対象・方法】 2013 年 1 月から 12 月にかけて、当院にて中心静脈カテーテルを留置している担癌患者 で、初回の血管エコーを施行した 26 例を対象とした。対象の平均年齢は 64±13 歳、 男性 15 例、女性 11 例であった。血栓あり群(Thrombus:T群)と血栓なし群(No thrombus:N群)に分類し、患者背景や凝固線溶系マーカーなどについて比較検討を 行った。超音波診断装置は東芝メディカルシステムズのAplioXG・500を主に 使用した。 【結果】 対象 26 例中、7 例に頸静脈血栓を認めた。T群とN群では、年齢、性別、CRP、BMI、 D ダイマー、FDP において有意差を認めなかった。T群での血栓の性状は、低輝度で 新鮮血栓と考えられるものはなく、全例が高輝度で時間が経過した血栓と考えられた。 【まとめ】 カテーテル長期留置の担癌患者に関しては、定期的な血管エコー検査により血栓の早期 発見・治療に努めることが重要である。今回の検討においては、担癌患者におけるカテ ーテル留置症例での血栓診断に凝固線溶系マーカーのみでは評価が困難である可能性 が示唆された。凝固線溶系マーカーに有意差を認めなかった理由として、カテーテル留 置から検査までの期間が長かった影響も考えられる。今後の課題として、観察期間の調 整やさらに多数の症例での評価が望ましいと思われる。 1 演題2 僧帽弁置換術後の人工弁(生体弁)機能不全に対し 経皮的僧帽弁裂開術が有効であった一例 橋本 剛、鈴木真事、原 英彦、飯島雷輔、諸井雅男、中村正人、杉 薫 東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科 60 代男性、維持透析患者。重症大動脈弁狭窄症、僧帽弁閉鎖不全症に対し両弁置換 術(生体弁)施行 2 年後に透析時血圧低下を認め、心エコーによる精査で重症僧帽弁狭 窄症を認めた。再手術が高リスクとなることを考慮し、経皮的僧帽弁裂開術を施行した。 経静脈的に順行性アプローチで井上バルーンにて僧帽弁(生体弁)を拡張した。最大 25 ㎜まで段階的にサイズアップした。カテーテル法による圧所見は左房左室圧較差 13 →1mmHg、左房圧 30→14mmHg、平均肺動脈圧 37→29mmHg、心係数 4.40→5.03 l/min/m2、弁口面積 1.02→1.35 cm2(Gorlin)であった。心エコー図検査所見は PHT 法で 0.95→1.12cm2 と改善を示した。術後は安定した透析をすることができるように なった。生体弁に対する PTMC が有効であった一例を報告する。 2 演題3 下肢動脈の逆流波形の検討 東京都市大学 矢内紫織,仁木清美 東京大学 大島まり 姫路獨協大学 菅原基晃 【背景と目的】筋性動脈である四肢動脈は弾性動脈である大動脈と異なり,その主たる 働きは末梢への潅流である.しかし,実測では多くの場合,駆出早期の順流の後に逆流 波形を認め,この発生源と臨床的意義は不明である.我々は血管弾性と末梢抵抗を考慮 して作成された循環モデルと実測値より得た wave intensity を比較し,逆流波形につ いて検討した. 【対象と方法】Wave intensity 計測システム(日立アロカ社製 SSD6500)を用いて健 常者成人男性 3 名(年齢 25 歳)の上腕動脈,橈骨動脈,膝窩動脈において血管径変化波 形と血流速度波形を同時測定した.さらに,上腕動脈で求めた最大,最少血圧を用いて 血管径変化波形を較正し,wave intensity を得た.シミュレーションモデルは Entire cardiovascular system(東京大学大学院 情報学環・学際情報学府で開発)を用いた. このシミュレーションは 83 本の動脈血管と Lumped parameter model(0 次元解析) で 表わされる末梢血管からなる全身循環モデルである.動脈血管は流れに旋回がなく軸対 称な弾性体の円管を仮定しており,血管壁の弾性から生じる圧力脈波の伝播の影響を考 慮した軸方向の流れ解析(1 次元解析)で計算される.シミュレーションにより得られ た圧と流速データはそれぞれ 1ms 毎のテキストデータとして保存し.超音波計測データ 波形と比較検討を行った. 【結果】全例で膝窩動脈に逆流波形を認めた.上腕動脈,橈骨動脈には逆流波は認めな かったが上肢拳上にて橈骨動脈の逆流波を認めた.同時相の wave intensity 解析では 膨張波を認め,心臓の発生する膨張波によって逆流が生じるものと考えられた.一方, 膨張波の伝搬を考慮していない全身循環シミュレーションでは膨張波は発生せず,血流 波形も順流のみであった.【結論】心臓の発生する膨張波は下肢で増幅されて駆出末期 の逆流波を発生する.この波形は中枢側である大動脈では顕著ではなく,駆出末期から 拡張期の冠動脈を含めた体幹部の潅流の補助となっていることが推測される. 3 演題4 今さらきけないことをここできいちゃおう! 菅原基晃先生に教えていただく僧帽弁流入波形(TMF)の基本 生徒: 宇野漢成(東京大学) 先生: 菅原基晃(姫路獨協大学) たかが TMF、されど TMF。今さらですが、敢えてききます! 1) 僧帽弁流入血流 E 波の速度 peak はどこにあるのか?最大 LA-LV 圧較差 の時か、LA-LV 圧交差の時か? 2) 左室充満圧によって E 波の peak 位置は変化するのか?もし変化するな ら、その原因は何が考えられるか? その他、どんな素朴な質問も受け付けます(時間が許す限り)。 4
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