42. 国道 228 号福島町松浦海岸における礫を伴う越波の再現実験

42.
国道 228 号福島町松浦海岸における礫を伴う越波の再現実験
Hydraulic Experiments of Gravel Run-up by Wave Overtopping on Route228 at Matsuura Coast
中村
大希(Taiki Nakamura)
ABSTRACT : Wave patterns on Matsuura coast were analyzed by using the Boussinesq model, and it was shown that
the overlapping of the diffracted and refracted wave induced wave concentration. The characteristics of gravel run-up
by wave overtopping were reproduced by wave tests under 1/20 scale and bore tests under 1/8 scale. Based on the test
results, gravel size of about 5.0cm was hauled up to 80% of the wave run-up height. As the countermeasures for the
safety traffic, the height of the fence was required to be 2.5m from on the road.
1.はじめに
N
国道 228 号福島町松浦海岸は越波対策が整備され
上ノ国
町
ていないため,高波浪時には図-1 に示すように高さ
越波発生地点
波浪観測地点
解析対象領域
知内町
福島町
知内火力発電所
4m 以上の越波が頻繁に確認されている.この際,沿
松前町
岸に堆積した直径 5cm 程度の礫 40 個が越波に連行
松前波浪観測施設
福島町
津軽海峡
0
白神岬
5km
される形で道路上に打上がり,道路交通の安全性を
著しく低下させるため対策工の検討が急務である
.
1)
本研究は礫の打上げを伴う越波対策の実施に際し
て,松浦海岸を対象にブシネスクモデルを適用する
図-1
ことにより,礫の打上げが確認された当時の波浪場
を再現する.さらに越波による礫の連行特性を造波
表-1
実験および段波実験により解明し,対策工の提案を
2.ブシネスクモデルによる波浪場の再現
表-1 に波浪解析条件を示す.解析は,前出の図-1
に示したハッチング部分(沿岸×岸沖方向に
2495m×2025m)を計算領域とし,計算格子間隔を 5m
とした.図-2 に数値解析で得られた有義波高の平面
分布を示す.同図左側の境界から南南西方向に入射
岬部からの回折波と直角入射する屈折波が重複する
ことにより波高が局所的に増大する.これにより前
面の波高は 3.0m 程度となることが確認された.なお,
越波発生地点前面の反射率を 0.7 とした場合,換算
沖波波高は 2.0m となる.後述する水理模型実験では
この値を基準に実験条件を決定した.
3.越波の再現実験
3.1 実験概要
設定値
4.2
11.0
SSW
25
T.P.+1.1(H.W.L)
0.01
400波
2495×2025
5.0
400
375
350
325
300
275
250
225
200
175
150
125
越波発生地点
mesh size = 5.0m
100
2 次元造波水路(長さ 24.0m,幅 0.6m,深さ 1.0m)
75
に,図-3 に示す天端高さ hc の堤体模型を設置し,不
25
規則波を用いた造波実験を行った.実験縮尺は 1/20
ブシネスクモデルによる波浪解析条件
項目
有義波高 H 1/3 (m)
入射波 有義波周期 T 1/3 (sec)
波向き
方向集中度パラメータ Smax
潮位 (m)
計算時間間隔
計算終了時間
計算領域 (沿岸×岸沖) (m)
計算メッシュ (Δx =Δy ) (m)
行うことを目的とする.
した波は,図中の○印の越波発生地点前面において,
松浦海岸における越波被害状況
N
50
0
0
25 50 75 100 125 150 175 200 225 250 275 300 325 350 375 400 425 450 475 500
とし,波浪条件は周期 T=11.00s,換算沖波波高 H0’
=1.5,2.0,2.5,3.0 および 3.5m の全 5 ケースとし
た.堤体前面には直径 d =1.5cm(現地換算 30cm),
0.0
図-2
7.0
[m]
有義波高の平面分布
比重 2.5 の玉石を 40 個配置した.玉石の打上げ率 D
を用いて読定した.
は,配置個数に対する打上げ個数の割合で評価した.
3.2 越波の再現性に関する検証
また,越波の水塊高さ R は,水路側面から撮影した
図-4 は,横軸に換算沖波波高 H0’をとり,縦軸に
越波の動画を静止画像に変換した後,デジタイザー
打上げ率 D および無次元打上げ高さ R/hc を示してい
る.波高の増大に伴って無次元打上げ高さは増大す
換算沖波波高 H0’=2.0m の場合,R/hc =1.8 となり,対
hc
消
波
工
R
消
波
工
70
100
る傾向がある.数値解析で得られた周期 T=11.00s,
造波機
[単位:cm]
象地点の天端高さ hc が 5.0m であることから R=9.0m
となり前出した図-1 の右側の写真における越波の
40
水塊高さとほぼ一致した.一方,礫の打上げ率は D
打上げ率 D (n/N×100)
(%)
(n/N×100)(%)
打上げ率
し,前章の再現実験と同様に打上げ高さおよび打上
6.00
打ち上げ被害率
打上げ率
D (%) (%)
9.00
げ被害率を測定した.また,同図中の表に示すよう
に,段波貯留水深 h’を 4 種類,堤体の天端高さ hc
8.00
4.50
hc
6.00
3.50
4.00
3.00
3.00
2.50
2.00
2.00
1.00
1.50
0.00
1.00
0.00
0.50
図-4
1.00
1.50
4.2 越波再現実験との整合性
40
とき打上げ率 D=5%となることから,越波再現実験
40
h’
(%) (%)
(n/N×100)
打上げ率 D D
(n/N×100)
打上げ被害率
250
370
50
可傾斜式開水路による段波実験概要
実験値
回帰曲線
1.0
図-6
10.0
粒径
粒径dd5050 (cm)
(cm)
(R/hc)max
無次元最大打上げ高さ
打上げ高さ h (R/hc)
100.0
玉石の粒径と打上げ率の関係
h c (cm)
5.結論
[単位:cm]
0.0
4.50
実験値 回帰曲線
10.00
R
4.00
11.25
12.50
3.50
hc
13.75
15.00
3.00
2.50
2.00
1.50
1.00
1.0
本研究で得られた結論は,以下のとおりである.
(1) ブシネスクモデルを用いて被害当時の波浪場を
段波ゲート
10.0
d=5.0cm の玉石は(R/hc)max=1.3 になることから,越波
高さを有するフェンスの設置が必要と考えられる.
10.0
11.25
12.5
13.75
15.0
20.0
5.00
ことから,越波対策工としては天端から 2.5m 程度の
5.00
30.0
図-7 は粒径 d と(R/hc)max の関係を示す.同図より
ら 9m(天端高さ hc=5.0m)程度の越波を確認している
25.0
30.0
35.0
40.0
40.0
用いて,
無次元最大打上げ高さ(R/hc)max と定義する.
ある.これより,前出した図-1 において,静水面か
4.50
50.0
ができる.ここで,その高さを越波の水塊高さ R を
水塊高さ R の 80%程度まで礫が連行される可能性が
天端高さ
h c (cm)
30
図-5
で得られた同一条件に対する打上げ率 D=1%に近い
玉石が連行される天端高さ hc の最大値を求めること
4.00
10
い打上げ率が増加する傾向がある.
粒径 d=30.0cm の
玉石の粒径と段波貯留水深を固定した場合,その
段波貯留水深
h' (cm)
0.6
0.8
1.5
2.0
3.0
hc
換算値)と打上げ率の関係を示す.粒径の減少に伴
4.3 礫を伴う越波に対する対策工
3.50
玉石直径
d (cm)
R
図-6 は R/hc =1.8 の場合における玉石の粒径(現地
一致する.
2.00
2.50
3.00
換算沖波波高 H
換算沖波波高
H0o’'(m)
(m)
打上げ率と無次元打上げ高さの関係
径の玉石 50 個を堤体前面に配置した.
た図-1 の左側の写真に示す礫の打上げ個数にほぼ
4.00
5.00
径 d=0.6,0.8,1.5,2.0,3.0cm の 5 種類とし,各粒
14 個)となり,波の継続時間を考慮すると,前出し
5.00
7.00
を 5 種類に変化させた.使用した玉石は比重 2.5,直
値が得られた.また,d=5.0cm のとき D=28%(実数
5.50
無次元打上げ高さ
打ち上げ高さ n R/hc
R
無次元打上げ高さ R/h
R/h
無次元打上げ高さ
c c
幅 0.6m,深さ 0.4m)に,図-5 に示す堤体模型を設置
600
900
2300
10.00
4.粒径の異なる玉石を用いた段波実験
実験は,
縮尺 1/8 のもと,
可傾斜式開水路(長さ 13m,
100
図-3 2 次元造波水路における堤体模型
=1%になることを確認した.
4.1 実験概要
30
10.0
粒径
(cm)
粒径 d50
50 (cm)
100.0
図-7 玉石の粒径と無次元最大打上げ高さの関係
再現した結果,回折波と屈折波が重複することで
波高が局所的に増大する.
(2) 礫を伴う越波現象を造波実験と段波実験により
再現し,礫の打ち上げ特性を検討した.
(3) 越波対策としてフェンスの必要高さを検討した.
参考文献
1)
阿部翔太,宮武 誠 : 国道 228 号福島町松浦海岸にお
ける越波発生要因に関する検討,土木学会北海道支
部論文報告集,第 69 号,B49,2013.