早稲田大学 商学部 世界史 講評

早稲田大学
商学部
世界史
講評
〔総合分析〕
出題形式
マーク・記述併用
試験時間
60分
特徴・その他
昨年は記号問題34・記述問題13だったが、今年は記号問題36・記述問題13でほぼ同じ。
論述問題(100字)も同じ。難易度は昨年よりやや軟化。論述のテーマは今年も米国史だ
った。
〔大問別講評〕
番号
Ⅰ
出題内容
古代・中世のキリスト教
コメント
難易度
問A-4はスレイマン1世ではなくメフメト2
標準
世が駄々しい。問C-3は大戦中に独軍はエジプ
トに到達していないので誤り。問D-4は「ゲル
マン布教」がキーワード。問F-3のクリュニー
修道院は教育学部でも出題されていた。問I-2
のシャルトル大聖堂はコシック式が正しい。問J
-4は1~3が明らかな誤りなので消去法で答
えられる。問L-1のサレルノ大学は南イタリア
が正しい。正誤判定文でのイタリアの南北逆転は
意外に多い。
Ⅱ
13・14世紀の東アジアと海上交易圏
問A-3は16世紀の後期倭寇に該当する。問D-
標準
4は消去法で解答する。問F-4は「キンザイ」
から一本釣りする。2や3の内容は考えても無駄
である。問G-2のアンカラの戦いで滅ぼされた
のはオスマン朝が正しい。問Iの五行とは「信仰
告白・礼拝・断食・喜捨・巡礼」である。問L-
3は事実無根の内容だが消去法でも対処できる。
Ⅲ
宗教改革と三十年戦争の時代
問A-3の羅針盤は中国起源。問D-3のコンス
タンツ公会議は教会分裂の収拾には成功したも
のの文章後半の内容に該当する教会改革には失
敗した。問E-4は「消滅」が誤り。神聖ローマ
帝国が消滅したのは1806年である。問Hのドイツ
三十年戦争と仏王・宰相の関係は政経学部でも出
題された。問J-1は「イギリスに先んじて」が
誤り。英東インド会社設立は1600年である。問K
-1のデカルトが傭兵として三十年戦争に従軍
した件は意外と有名。
一部難
番号
Ⅳ
出題内容
1960年代の米国と黒人差別問題
コメント
難易度
記述式の空欄補充には米大統領のスローガンを
やや難
中心に「 」つきの成句が目立つ。
「偉大な社会」
「貧困との戦争」はいいとしても冒頭の「豊かな
社会」は文脈から連想するしかなく難しい。全体
としてどこかの教科書の文章のような印象だが、
6の「道路」を空欄にするのはいただけない。は
っきり言って「交通インフラ」とか「ハイウェイ」
でもなんでも×にはできないのではないか。もっ
と特定できる語句を解答に選ぶべきであろう。公
民権法についての内容と意義100字は、内容は書
きやすいが意義はまとめにくいといわざるを得
ない。多少は個人的見解を含めて思い切って書い
たほうがメリハリが利いてまとめやすいとおも
う。
〔総合コメント〕
マーク式問題のうち正誤判定は得点しやすいものが大半である。ただ問題文があまり丁寧でないので読
み違いには十分注意し、思い込みによる誤答を犯さないようにした。年代配列問題には取り組みにくい
ものが目立つが、一つでも二つでも確実に知っている年代があれば一気に正答に近づけるものが多い。
年間を通じて年代のストックを積み上げてきた受験生は確実に得点できるに違いない。大問Ⅳの記述式
のうち空欄補充は、固有名詞でないものをしっかり答えるにはそれなりのセンスが必要で、ある意味で
現代文の問題に通じるところがある。今年のテーマだと戦後の米歴代大統領をしっかりおさえておいた
受験生には楽な問題だったと思う。最後の100字論述は米国史がすっかり定着した観がある。この傾向
が続く保障はないが、米国史は徹底的にやりこんでおくべきである。世界一「ゆたかな国」のかかえる
「貧困」と「差別」
、そしてそれに対する政治の対応といったテーマ設定は極めて時事性が強い。1960
年代の米国が直面していたこの問題は未だに解決されてはいない。短い論述だが、現代につながる書き
方ができれば大成功である。