使える文法を目指して:3タイプの文法練習の効果

55
使える文法を目指して : 3タイプの文法練習の効果
河 内 千栄子
本論文は、3タイプの文法練習方法を用いて、文法規則の産出における
学習効果を調査したものである。語彙の先行研究を基に、リーディング(対
象となる文法ルールが埋め込まれた例文をたくさん読む)、ライティング(対
象となる文法ルールを使って文を作成する)
、穴埋め練習(対象となる文法
ルールを使用して空欄を埋める)の指導を半期実施した。対象となる文法
は英語中級コアの共通教科書に従って、“see/hear/make”“have ( 使役 )”
“want/let”である。事前テストでは、ほとんどの学生がこの動詞の使い方
を習得していない事が判明した。3クラスからなる 74 名の学生がそれぞれ
のタイプの指導を受け、その直後の学習効果、及び 1 週間後の遅延効果を
調べた。また、学期末には、アンケートによって3タイプの練習方法につ
いて「有効性」
「難易度」
「楽しさ」を調査した。直後のテスト結果を見る
と、穴埋め練習が他の2タイプに比べて有意に高い産出がみられ、学習効
果が高いことが判明した。しかし 1 週間後では、3タイプに有意な差がな
く、穴埋め練習の効果が維持されなかった。使用した文法ルールの難易に
ついては、リーディング、ライティングとも使役の“have”が最も困難で
あったが、穴埋め練習では文法ルールの難易度の差が見られなかった。こ
のことから、少なくとも練習直後の効果としては、穴埋めタイプは難しい
文法ルールでも学習効果があることが示唆された。アンケート結果を見る
と、ライティングが他の2タイプに比べて、難易度、楽しさが有意に低い
が、有効性については3タイプに有意な順位差がなく、学生は他の2タイ
プと同様に役に立つと回答した。使える文法によって、語彙のレベルから
文のレベル、最終的にはコミュニケーション能力の育成へ向けて、特に EFL
環境でいかに指導していくかが今後の課題となろう。