NST通信第3号

今回は栄養不良についてです
栄養不良の 2 つの原因
1・飢餓:絶対的栄養不良・・・・・慢性栄養不良(Marasumus)
→糖・脂肪・蛋白の順に分解(異化)して必要なエネルギーを得る
→貯蔵脂肪(皮下脂肪・内臓脂肪)は減少し、筋は萎縮する。
るいそう状態。筋力は低下するが、循環機能・免疫機能は比較的
保たれる。言い方を変えればバランスよく痩せる。
2・侵襲:相対的栄養不良・・・・急性栄養不良(Kwashiorkor)
→様々な疾患・手術により代謝が亢進し栄養必要量が増加した状態
→全体のエネルギー必要量が増大するが、特に免疫・組織修復に多く
のタンパクを必要とし、タンパク不足が主体となる
→血清タンパク・免疫タンパクが減少し、浮腫・腹水・免疫能低下・
心不全が出現する。
「医原性栄養不良」はこの型が多い
生体の構成成分
脂肪体重(FBM)
エネルギー貯蔵組織
大きく喪失しても
生体機能への影響は
少ない
脂肪
100%
骨格筋
90%
内臓蛋白
80%
70%
血清蛋白
60%
50%
徐脂肪体重(LBM)
生体機能維持組織
少しの喪失でも生体
機能への影響が大きい
細胞外液
40%
平滑筋
30%
20%
10%
0%
1
lbmの求め方(計算式)
lbm=体重―(体重×{体脂肪率÷100})
例)Aさん
身長 160cm
体重 50kg
体脂肪率 32%
lbm=50-(50×0.32)→50-16・・・・lbm=34kg
LBMの減少と合併症・死亡率
LBM減少率(%)
合併症
死亡率(%)
1段階:10
免疫力減少・感染リスク増加
10
2 段階:20
治癒遅延・衰弱・感染
30
3 段階:30
寝たきり・創傷治癒不能・褥瘡・肺炎
50
4 段階:40
死亡(主に肺炎が原因)
100
* lbmは男性では 15%、女性では 25%が標準だといわれています。それ以下は何
らかの合併症が起こりやすいといえます。当院の患者様は高齢であり、予備力も落
ち、栄養不良から1~3 段階が同時に発症するケースも少なくありません。同時で
HELP
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はなくても、坂を転
げるように 3 段階まで落ちます。
低栄養の自然経過を上の表に示していますが、lbmの 15%減少が続くと細胞免疫能
の低下が生じ、30%減少すると歩行困難となり、40%減少すると座位保持困難とな
ります。さらに45%減少では褥瘡が生じ、50%以上では生命の危険性があります。
思い当たる経過を辿った患者さんがいませんか?早期に関わる事が何よりも大事なん
です。早期に関わることで、治療費の削減・早期退院・ベッド稼働率のアップにつなが
ります。今年は介入基準を見直して、早期に関われるよう考えています。そして、栄養
不良は死に至ることもあることを認識しましょう。医原性栄養不良を作らない、そんな
気持でNST活動に取り組んでいます。
NST委員会