「数学的な見方や考え方」と

2007.12.25
観点別評価「数学的な見方や考え方」と「数学的な表現・処理」の一考察
評定を総合的な評価とすると,観点別評価は分析的な評価ということになります。ここ
で気をつけなければならないのは,4つの観点別評価はそれぞれに独立しているのではな
く,それぞれが関連し合っているということです。これは,別の言い方をすれば,子ども
の学習場面における様々な姿を複数の観点で評価することもできるということです。ここ
で取り上げた「数学的な見方や考え方」と「数学的な表現・処理」についてもこのことが
いえます。
前回「思考力と表現力の切っても切れない関係」について,述べましたが,思考力を思
考力=考える力と捉えれば,「考える力と表現力の切っても切れない関係」が存在するこ
とになります。さて,子どものある学習活動に対する評価を「数学的な見方や考え方」の
観点で行う時にはこの観点に「表現」の部分がないことにより,多少の評価のしづらさと
でもいうものが感じられます。では,どのように考えればよいかを以下に記します。
まず,上記2つの評価の観点についての趣旨を確認します。
(教育課程研究センター資
料より)
○
数学的な見方や考え方 → 数学的活動を通して,数学的な見方や考え方を身につ
け,事象を数学的にとらえ,論理的に考えるとともに思考の過程を振り替えり考えを
深める。
○
数学的な表現・処理
→ 事象を数量,図形などで数学的に表現し処理する仕方や
推論の方法を身に付けている。
「数学的な見方や考え方」の趣旨の冒頭に”数学的活動を通して”という文言が入って
いることに注目すれば,この観点を正当に評価するには数学的活動という表現活動を通す
中で評価をしていくということになります。そのことを考慮すれば,「数学的な見方や考
え方」と「数学的な表現・処理」の「考え方」と「表現」が別個の観点別評価の中に入っ
ているのは「考え方」と「表現」が「考える力と表現力は切っても切れない関係」の中で,
論じられるものということを前提にすれば,文言上やや不都合なこととなります。図示す
れば以下のようになります。
「数学的な見方や考え方」 「数学的な表現・処理」
思考(考え方)
・表現の部分が2つの評価の観点の中に入っている
このように考えれば,「数学的な見方や考え方」の評価は「数学的な見方や考え方・表
現」というように解釈した方が評価がしやすくなりそうです。そうすると文言上では「数
学的な表現・処理」は「数学的な処理」となるわけですが,処理は計算や測定,作図をあ
る一定の手順(アルゴリズム)に従って操作・完結することですから,評価がこの部分に
偏ることは好ましいことではありません。しかしながら,これまでも「数学的な表現・処
理」はペーパーテスト等の性格上「数学的な処理」にウエイトが置かれた形で評価される
ことが多かったように思います。
では,なぜ「数学的な表現・処理」である必要があるかというと,大きな理由はいきな
り処理から始まる指導・評価は,子どもの特質を考えれば意欲的に取り組めないという点
において不適切だからだと思います。趣旨にもあるように「表現し処理する」一連の流れ
の中で子どもにとって意味のある(なぜ,この計算等をするかの必然性を子どもが分かっ
ている)計算等の処理を行わせることが大切なのです。したがって,例として「数と計
算」領域では計算の意味を理解させることや仕方を考えさせることなく,単に計算の習熟
や活用のみに力を入れた指導・評価は良い指導・評価とはいえません。指導は連続してお
り,子どもの学習も連続しているということです。
これまで述べたことを図示すると以下のようになります。
「数学的な見方や考え方・表現」 「数学的な表現・処理」
2つの観点別評価のクロスした部分
まとめると,「数学的な見方や考え方」を評価するときには「数学的な見方や考え方・
表現」と見なして評価すると,子どもの活動を見取る視点も具体的に明確になるというこ
とです。なお,当然のことですが,ある観点について評価すると言うことは前提としてそ
の観点に関わる指導がなされているということです。