小学校 1年 1組 図画工作科 ゆれて ひか る ふし ぎな かたち 指導者 新潟大学教育学部附属長岡小学校 佐藤 昌弘 1 子 どもと単 元 1学期の「ビニール袋の不思議な生き物づくり」では,自分がつくりたい動きや色,形を生み 出すためにビニール袋のつなぎ方や装飾の仕方を工夫しようとしていた子どもたちである。自分 の表現のよさを生かしたり,よくなりそうな視点が明らかになったりしてくると表現にさらにか かわっていこうと意欲を見せてきた。また,願いのふくらみにふさわしい表し方を見出すための 試しづくりを通して複数の表し方の可能性に気づき,自分の願いのふくらみにふさわしい方法を 選択・決定する姿も見られるようになってきた。 本単元では起き上がりこぼしの原理で揺れて戻る性質を利用した形に,キラキラ光る素材を主 材 料 と し て 装 飾 し た り ,揺 れ る 動 き を 生 か し た 装 飾 を 施 し た り す る こ と で , 「 自 分 な ら で は 」の 揺 れる動きと美しさを追求していく。これはカリキュラム改善の「つくりたいものをつくる」単元 の重点化を受けている。前後や左右への揺れ方や多様な形の揺れる仕組みは造形化への願いをふ くらませやすく, 「 自 分 な ら で は 」の 形 や 意 味 の 造 形 化 を 促 す 。さ ら に ,揺 れ る 仕 組 み と 装 飾 と の 構造的なバランスを考えながらつくったり,揺れる動きと光り方の表現効果を確かめたりしなが らつくることができるため,こだわりをもって表現を練り上げていく姿が期待される。 そこで本単元の中核となる学習内容を「揺れが強調される形や装飾を工夫することで,自分な ら で は の 『 揺 れ て 光 る 不 思 議 な 形 』 を つ く れ る こ と 。」 と お さ え た 。 2 子どもに期待する「感性,科学的な感性,科学的なものの見方・考え方」を働かせる学び 経験や仲間とのかかわりの中で,願いをふくらませたり,表し方を考えたりして表現する子ど もや,材料や題材から,直感的に願いをふくらませたり,表し方を考えたりして表現する子ども がいる。 本単元では,揺れや光り方を生かした表現のよさや新たな可能性を見出す場を設定することに より,感性「自分の作品や表現対象のよさと可能性に目を向けながらとらえ直す力」を働かせ, 揺れる形やストーリーに対する願いをふくらませてくる。願いがふくらんだ状況で,揺れる動き が強調される形や装飾の仕方,素材の使い方を試しにつくる場を設定したり,表し方を仲間と交 流したりする活動を組織することにより,科学的な感性「願いのふくらみに基づいて,多様な材 料や表現方法を見出そうとする力」を働かせて,自分の願いのふくらみにふさわしい材料や表現 方法を選択し造形化の見通しをもつ。造形化の見通しがもてた状況で,表現効果を確かめながら 造形化する場を設定することにより,科学的なものの見方・考え方「願いのふくらみにふさわし い 表 し 方 を 選 択 ・ 決 定 し て い く 力 」を 働 か せ , 揺 れ や 光 り 方 を 生 か す に は オ ブ ジ ェ の 形 を 横 や 上 に広げたり,飾りが動くような仕組みをつくったりすればいいことを見出してくる。 このような学習過程を通し,他人やこれまでの自分とは違う見方や考え方で表し方を工夫した り,表したい造形表現を創りあげることができた喜びや価値を実感したりしていくことを期待す る。 3 単 元 の目 標 揺れや光り方を生かしたオブジェとなるように材料の加工法や取り付け方を確かめながらつく る中で,自分の願う揺れて光る不思議な形を表すには,バランスをとりながら揺れる動きがはっ き り と 表 れ る 形 に し た り ,光 を 反 射 す る 装 飾 を 工 夫 し た り す れ ば よ い こ と に 気 づ き , 「自分ならで は」の「揺れて光る不思議な形」を想像豊かにつくることができる。 4 「 科 学 的 な感 性 ,科 学 的 なもの の見 方 ・考 え方 」の評 価 方 法 ○どのような揺れや光り方を生かした材料や表現方法を見出しているか, 「 表 し 方 発 見 カ ー ド 」と 「構想カード」の記述から評価する。 ○自分の願いのふくらみにふさわしい揺れる動きや光を生かした表現となっているかどうか,表 現効果を確かめながら造形化している様子と表し方の選択・決定の理由から評価する。 5 単 元 の追 求 構 想 (全 7 時 間 本 時 6/7) <観察対象児> 経験や仲間とのかかわりの中 で,願いをふくらませたり,表し 方を考えたりして表現する子ども 1次 <観察対象児> 材料や題材から,直感的に願い をふくらませたり,表し方を考え たりして表現する子ども 〈教 師 の働 きかけ〉 揺 れる不 思 議 な形 をつくろう。(3時 間 ) ① ・ゆらゆら揺れる形をつくって遊ぶ。 ゆらゆら揺れる,下 が円い形。 おもりのつけ方で 変わる動き。 円の大きさで変わ る揺れ方。 ② ◎ わたしだけのゆらゆらゆれるふしぎなかたちをつくろう。 ③ 円いゆらゆらの上に円い形を乗 お茶碗みたいな形はいろんな方 せ た ら ゆ っ く り 動 い た よ 。馬 が 走 向 に 動 く よ 。上 に い ろ い ろ 付 け る っているみたい。 と不思議な町になりそう。 ・つくった形を互いに動かしながら見合い,動きや形のよさ,飾りの よさなど,さらによくなりそうな可能性を話し合う。 ○○さんはキラキラした材料で 動く飾りがキラキラしていると 飾 っ て い て き れ い 。も っ と 私 だ け い い な 。動 い て キ ラ キ ラ す る 私 だ の不思議な馬にしていきたいな。 けの不思議な町を表したいな。 ④ 2次 ○互いに動かしなが ら見合い,動きや かたち,装飾のよ さや可能性につい て話し合う活動の 組 織 【「 感 性 」】 飾 りや形 を工 夫 してもっと不 思 議 な形 をつくろう。(2時 間 ) ・自分ならではの揺れる不思議な形にしていくための,表し方を試してつくる。 キラキラ光る材料を付 けて揺らした時の効 果。 飾りを付ける位置を変 えて揺らした時の効 果。 動く部品を付けて揺ら した時の効果。 ⑤ ⑥本時 ◎ ア ル ミ ホ イ ル を つ か っ た り ,揺 ◎ ア ル ミ ホ イ ル や き ら き ら し た れ る 部 分 を 増 や し た り し て ,き れ 材 料 を た く さ ん 使 い ,に ぎ や か な いな馬をつくろう。 海の町を表そう。 ・願いのふくらみにふさわしい表し方を選択・決定してつくる。 仕 組 み を 取 り 付 け る 場 所 や 形 ,飾 海 の 生 き 物 を も っ と た く さ ん 取 り に 使 う 色 や 形 ,材 料 を 工 夫 し な り 付 け て 動 く よ う に ,つ な げ 方 や がら動くきれいな馬をつくろう。 形を工夫してつくろう。 ↓ ↓ 背 中 に 翼 の 形 を つ く り ,光 る シ ー バ ラ ン ス を 考 え て 形 を 広 げ た り , ト が ひ ら ひ ら す る よ う に し た ら モ ー ル を 使 っ た り し た ら ,た く さ 天馬みたいになってきたよ。 んの海の生き物をつなげたよ。 ⑦ 3次 ○揺れる形や動きか ら想像したことを 話し合う活動の組 織 ○表し方を工夫して 自分の想像したか たちをつくる場の 設定 ○揺れを生かした材 料や表現方法を話 し合ったり,試し につくったりして 造形化の見通しを 明らかにする場の 設定 【「 科 学 的 な 感 性 」】 ○揺れ方や光り方を 確かめながら,表 し方を選択・決定 し造形化していく 場の設定 【「 科 学 的 な も の の 見 方 ・ 考 え 方 」】 つくった不 思 議 な形 を紹 介 し合 おう。(1時 間 ) ・つくった形の動きや光る特徴を紹介し合う。 揺 れ る 仕 組 み を 増 や し た り ,材 料 バ ラ ン ス を 考 え て い ろ い ろ な 形 を 工 夫 し た り し た ら ,私 だ け の き を つ け た ら ,私 だ け の に ぎ や か な れいな馬になってよかった。 海になってうれしい。 ○互いの表現を見合 い,話し合う活動 の組織 6 研 究 会 公 開 授 業 の展 開 〈「 科 学 的 な も の の 見 方 ・ 考 え 方 」 を 働 か せ て , 材 料 や 表 現 方 法 を 比 較 ・ 選 択 し 表 し て い く 〉 主な学習活動 教師の働きかけ ① 自分の表したいイメージや試しにつくったものを発表 ○表したいことを造形化するための し合う。 構想を話し合う活動の組織。 ② 取り付ける飾りと揺れる動きのバランスを考えたり, ○表現効果を確かめながら表し方を 装飾の形や色,取り付け方について表現効果を比較した 選択・決定し,造形化していく場 りしながらつくる。 の設定。
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