基本計画(155KB) - 新エネルギー・産業技術総合開発機構

P02041
(生物機能活用型循環産業システム創造プログラム)
「生分解・処理メカニズムの解析と制御技術開発」基本計画
バイオテクノロジー・医療技術開発部
1.研究開発の目的・目標・内容
(1) 研究開発の目的
生物機能活用型循環産業システム創造プログラム」は、工業プロセスや環境関連分野への
バイオテクノロジーの利用を促進すべく、バイオマスの利用による再生可能資源への転換、
バイオプロセスの利用による環境負荷の少ない工業プロセスへの変革、廃棄物、汚染物質等
の生分解・処理の研究開発を行い、もって循環型産業システムの創造を図るものである。本
プロジェクトは上記プログラムの一環として、嫌気性微生物による有機性廃棄物処理お
よび難分解性物質分解のための基盤技術を構築するものである。
微生物を利用したバイオプロセスは、循環型の産業システムを実現する上で極めて重
要であると考えられている。平成13 年9 月に取りまとめられた総合科学技術会議の分
野別推進戦略においても、「近年急速に蓄積されつつあるゲノム情報や目覚しい進展を
見せているゲノム関連技術を活用し、生物の持つ多様な機能を高度に活用することによ
って、有用物質の効率的な生産技術や環境汚染物質の分解を行うなど環境対応型の産業
技術を開発する」ことの重要性が指摘されている。このうち、物質生産システムにおい
ては、これまで主に、好気性微生物が用いられてきたが、廃棄物処理、環境修復等の環
境対応技術を高度化するためには、主として嫌気性微生物の機能を活用する必要がある
と考えられている。しかしながら、嫌気性微生物の研究は、歴史が浅く、遺伝子レベル
の手法を取り入れた基礎機能の解明等に関して、積極的な研究を継続して展開している
欧米の後塵を拝するという状況にある。
本プロジェクトでは、有機性廃棄物の嫌気処理や土壌中の難分解性物質の分解を対象
に、嫌気性微生物を中心とした微生物群の構成や機能を解析し、主要な微生物をモニタ
リングしつつ、それら微生物を制御する手法を開発することにより、生分解に関する微
生物研究の基盤を強化することを目的とする。
本技術の確立により、環境対応技術分野を中心に、微生物機能活用に関する共通基盤
技術の形成が見込まれるとともに、バイオマス利用の拡大による大幅な省エネルギー効
果が期待される。
(2) 研究開発の目標
(最終目標)
有機性廃棄物のメタン発酵と土壌中の難分解性物質の分解をテーマに、嫌気性微生物
を主とする微生物や微生物群の機能解明と、プロセス制御に資するモニタリング技術の
開発、これらを利用したプロセスの高効率化等のための技術、さらには、嫌気性微生物
の研究開発基盤強化のための技術を開発する。
メタン発酵に関連しては、プロセスをブラックボックスとして制御する現在の技術水
準を脱し、分解等に関わる主要微生物や微生物群の機能を解明し、プロセスの制御に関
連する因子をリアルタイムでモニタリングする技術を開発し、科学的な知見をベースに、
微生物群の形成や崩壊を含め、プロセスの制御を可能とする技術を開発する。
土壌中の難分解性物質の分解に関しては、分解機能を有する微生物や微生物群を探
索・特定し、機能や生育条件を解明し、これらをモニタリングする技術を開発すること
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により、分解・処理プロセスを律速する因子等を解明し、プロセスを高効率化するため
の基盤技術を開発する。
嫌気性微生物の研究基盤強化に関しては、遺伝子レベルで特定の微生物のPCE等ハロ
ゲン化化合物の脱ハロゲン化、芳香環分解及びエネルギー生成系に関連する代謝機能等
を解明し、この知見を基に、微生物を探索、解析するためのゲノム解析、遺伝子組換え
技術を開発するとともに、微生物による分解・代謝機能強化の手法を開発する。
(中間目標)
平成16年度に中間評価を実施する。
メタン発酵に関しては、分解等に関わる主要微生物や微生物群を特定し、その主要な
機能が解明されているとともに、複数の微生物を同時にモニタリングするための要素技
術が開発されていること。
土壌中の難分解性物質の分解に関しては、既存の微生物を用いる場合には、その機能
が解明されていること、土壌中での微生物をモニタリングする技術が開発されているこ
と、微生物叢の消長や活性に関与する因子が解明されていること。新規の微生物や微生
物群を対象とする場合は、その探索が終了していること。
嫌気性微生物の研究基盤強化に関しては、遺伝子レベルで特定の微生物の代謝機能等
が解明されていること。
(3) 研究開発の内容
上記目標を達成するために、以下の研究開発項目について、別紙の研究開発計画に
基づき研究開発を実施する。
①メタン発酵プロセスの高効率化に必要な技術の開発
②土壌中難分解性物質等の生分解・処理技術の開発
③生分解を目的とした嫌気性微生物の機能解明、育種等基盤技術の開発
2.研究開発の実施方式
(1) 研究開発実施体制
本研究開発は、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、「NED
O技術開発機構」という。)が選定する企業、研究組合、公益法人、独立行政法人、大
学等が、NEDO技術開発機構が指名した研究開発責任者(プロジェクトリーダー)東
京大学大学院農学生命科学研究科教授 五十嵐 泰夫氏の下で、それぞれの研究テーマ
の達成目標を実現すべく研究開発を実施する方式を採用する。
この場合において、各委託先は、企業、研究組合、公益法人、独立行政法人、大学等
の単位であることを原則とする(以下、「企業単位等」という)。ただし、複数の企業
単位等が結集して研究体を構成し、集中的な管理体制を構築する場合も、当該研究体を
委託先として認めるものとする。
(2) 研究開発の運営管理
研究開発全体の管理・執行に責任を有するNEDO技術開発機構は、経済産業省及び
研究開発責任者と密接な関係を維持しつつ、プログラムの目的及び目標、並びに本研究
開発の目的及び目標に照らして適切な運営管理を実施する。具体的には、必要に応じて、
NEDO技術開発機構に設置する技術審議委員会及び技術検討会等、外部有識者の意見
を運営管理に反映させる他、四半期に一回程度プロジェクトリーダー等を通じてプロジ
ェクトの進捗について報告を受けること等を行う。
3.研究開発の実施期間
本研究開発の実施期間は、平成14年度から平成18年度までの5年間とする。
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4.評価に関する事項
NEDO技術開発機構は、技術的及び政策的観点から、研究開発の意義、目標達成度、
成果の技術的意義ならびに将来の産業への波及効果等について、外部有識者による研究
開発の中間評価を平成16年度、事後評価を平成19年度に実施する。なお、評価の時
期については、当該研究開発に係る技術動向、政策動向や当該研究開発の進捗状況に応
じて、前倒しする等、適宜見直すものとする。
5.その他重要事項
(1) 研究開発成果の取扱い
①共通基盤技術の形成に資する成果の普及
得られた研究開発のうち、下記共通基盤技術に係る成果については、NEDO技術
開発機構、実施者とも普及に努めるものとする。
・遺伝子を活用した微生物の探索・解析技術
・微生物モニタリング技術
・嫌気性微生物の遺伝子レベルでの機能改変技術
②知的基盤整備事業又は標準化等との連携
得られた研究開発の成果については、知的基盤整備または標準化等との連携を図る
ため、データベースへのデータの提供、標準情報(TR)制度への提案等を積極的に行
う。
③知的財産権の所属
委託研究開発の成果に関わる知的財産権については、
「独立行政法人新エネルギー・
産業技術総合開発機構新エネルギー・産業技術業務方法書」第26条の規定等に基づ
き、原則として、すべて受託者に帰属させることとする。
(2) 基本計画の変更
NEDO技術開発機構は、研究開発内容の妥当性を確保するため、社会・経済的状況、
内外の研究開発動向、産業技術政策動向、プログラム基本計画の変更、第三者の視点か
らの評価結果、研究開発費の確保状況、当該研究開発の進捗状況等を総合的に勘案し、
達成目標、実施期間、研究開発体制等、基本計画の見直しを弾力的に行うものとする。
(3) プロジェクトの根拠法
本プロジェクトは、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構法第15条第
1項第1号ハに基づき実施する。
6.基本計画の改訂履歴
(1)平成14年3月、制定。
(2)平成15年3月、達成目標、研究開発項目①の最終目標を具体化するため改訂。
(3)平成16年3月、独立行政法人移行に伴い、法人名、略称、根拠法等に関する記述
を改訂。
(4)平成17年3月、達成目標、研究開発項目②の最終目標を具体化するため改訂。
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(別紙) 研究開発計画
研究開発項目①メタン発酵プロセスの高効率化、安定化に必要な技術の開発
1.研究開発の必要性
メタン発酵プロセスを高効率化し、安定的な運転のためには、現在、未解明な微生物
群による反応プロセスを解明し、微生物群の制御手法を開発することが必要である。こ
のため反応に関与する主要な微生物を特定し、機能解析を行うとともに主要な微生物を
モニタリングしつつ微生物群の制御因子を解明することにより、制御技術を開発してい
くことが必要である。
2.研究開発の具体的内容
(1)微生物の特定と機能解析
嫌気的処理を担う微生物群や主要微生物の特定と機能解析を効率的に行うための基
盤技術の開発と、これを用いた解析を行う。
(2)微生物・関連物質リアルタイムモニタリング技術の開発
微生物群の変調等を制御し、また、プロセス効率の向上を目的とした制御を可能と
するため、主要な微生物、複数の微生物種、消費・生成されるメタン、水素等をリア
ルタイムでモニタリングする技術の開発を行う。
さらに上記モニタリング技術を活用した、微生物群の消長や活性に関る因子を解明
する。
(3)微生物群の制御技術の開発
微生物群の構成、温度等の条件、栄養塩濃度等を制御し、プロセス全体を高効率に
運転するための技術、プロセスの適用範囲の拡大のための技術の開発を行う。
3.達成目標
メタン発酵プロセス関わる主要微生物や微生物群の機能を解明し、それら複数種の微
生物や低級脂肪酸等を同時にモニタリングする技術(数時間以内)、およびメタン、水
素等のプロセスの制御に関連する因子をリアルタイムでモニタリングする技術を開発
する。さらに、微生物群の制御による効率的かつ安定的なプロセス運転を可能とする技
術を開発し、これを検証する。最終的には、既存の各種メタン発酵プロセスに対して、
発酵の効率化、高速化、安定化等の点について、トータルとして20%以上の向上を図
る。
(中間目標)
メタン発酵プロセスに係わる主要微生物や微生物群を特定し、代謝機能などの主要な機
能を解明するとともに、複数の微生物を同時にモニタリングするための要素技術を開発す
る。
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研究開発項目②土壌中難分解性物質等の生分解・処理技術の開発
1.研究開発の必要性
嫌気性の微生物や微生物群が、土壌中の難分解性物質を徐々に分解することが報告さ
れているが、現状では、実用レベルには達していない。この状況を打開するためには、
土壌中の難分解性物質を分解する微生物や微生物群を特定し、機能を解析するとともに、
微生物をモニタリングしつつ、反応を効率的に進めるための方法を開発することにより
実用化のための基礎技術を確立する必要がある。
2.研究開発の具体的内容
(1)難分解性物質分解する微生物や微生物群の特定と機能解析
主として嫌気条件において土壌汚染等の有機塩素系化合物、重質油、多環芳香族等
の難分解性物質を分解する微生物や微生物群の特定と機能の解析を行う。
(2)微生物モニタリング技術の開発
土壌という固相系における分解プロセス中で微生物種や微生物群、関連する遺伝子、
プロセスの進行や効率に影響を及ぼす因子をモニタリングする技術の開発を行う。
(3)物質分解プロセスの高効率化技術の開発
分解・処理プロセスを律速する要因を解明し、これを解決するため、電子供与体や
栄養塩等の補給、分解に関連する微生物の制御、並びに物理的手法等によるプロセス
の高効率化のための技術の開発を行う。
3.達成目標
主として嫌気条件において土壌汚染等の有機塩素系化合物、重質油、多環芳香族等の
難分解性物質を分解する分解機能を有する微生物や微生物群を探索・特定し、機能や生
育条件を解明する。また、土壌中においてこれら微生物の消長や活性等をモニタリング
する技術を開発するとともに、これを用いて分解・処理プロセスを律速する因子等を解
明する。さらに、分解プロセスを高効率化するための制御手法を開発する。さらに微生
物を用いた難分解性物質分解のための総合的基盤技術を構築する。
(中間目標)
新規の微生物や微生物群を対象とする場合は、その探索が終了していること、また既
知の微生物を活用する場合は、その機能解明が終了していること、さらには、土壌中に
おける微生物のモニタリング技術が開発されていること。
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研究開発項目③生分解を目的とした嫌気性微生物の機能解明、育種等基盤技術の開発
1.研究開発の必要性
難分解物質の生分解プロセスにおいて重要な役割を果たしていると考えられている嫌
気性微生物の研究は、好気性微生物に比べて大きく遅れている。嫌気性微生物の研究を大
きく進展させるためには、嫌気性微生物の遺伝子レベルでの解析を行い、その成果に基づ
き新規の微生物を探索、機能解析する手法を開発するとともに、遺伝子の改変および育種
技術の開発が必要である。
2.研究開発の具体的内容
(1)生分解遺伝子の解析
難分解物質を分解する能力を有する嫌気性微生物の代謝系等を解析し、分解に関
与する酵素等やこれらの制御機構の遺伝子レベルでの解析を行う。
(2)遺伝子を活用した微生物の探索・解析技術の開発
上記の成果を基に、自然界の中から生分解に関与する遺伝子を有する嫌気性微生
物や微生物群を効率的に探索、解析する技術の開発を行う。
(3)遺伝子レベルでの機能改変技術の開発
嫌気性微生物における宿主-ベクター系を開発し、進化工学的手法等による遺伝
子の機能改変技術を開発する。
3.達成目標
難分解性物質を分解する能力を有する嫌気性微生物の分解に関与する酵素や遺伝子
を特定し、これを活用した微生物解析技術を開発する。また、嫌気性微生物の新規取得
法および遺伝子の改変を可能とする技術を開発する。
(中間目標)
遺伝子レベルで特定の嫌気性微生物の代謝機能が解明されていること。
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