再生医療実現拠点ネットワークプログラム キックオフシンポジウム 重症高アンモニア血症を生じる先天性代謝異常症に対する ヒト胚性幹(ES)細胞製剤に関する臨床研究 ~再生医療の実現化ハイウェイ(課題B) ~ 【概要】 【代表研究者】 (独)国立成育 医療研究センター 再生医療センター センター長 梅澤 明弘 ES細胞はからだの中のすべての細胞になれる能力を持っています。そこで、ヒトES 細胞から肝臓の細胞を作り出し、生まれつき肝臓の一部の働きが損なわれた患者 さんの治療を行うことを計画しました。対象は高アンモニア血症を生じる小児先天性 代謝異常症です。この病気の赤ちゃんは、そのままでは脳をはじめとする神経の障 害を受けてしまうので肝臓移植によって治療がなされます。しかし、低体重や肝臓ド ナー適応者がみつからない等の理由により肝移植手術が困難な場合があります。そ うした場合の橋渡し的治療法としてES細胞から作製した肝細胞の移植治療に着目 いたしました。現在まで様々な有効性・安全性の検証を行なっており、臨床研究へ の到達を目指しています。 肝実質細胞索 類洞内皮 門脈 本製剤 SEES 肝類洞 SEES 原材料としての未分化ヒトES細胞 既存の治療法 問 題 点 食事療法 軽症の高アンモニア血症に対して有効な場合もあるが、先天代謝異常症による重症高アン モニア血症の場合の効果は限定的であり、血液浄化療法や肝移植手術が必要となる場合 が多い。 内科的治療 同上 血液浄化法 新生時期に施行する場合、患者に対する侵襲が強い。感染症を併発するリスクが高い。 肝移植 6kg以下の患児では手術のリスクが極めて高く、体重が6kg以上になってから手術を行う方 が手術の成功率は高いとされている。肝移植手術ができるようになるまで重度高アンモニア 血症の発症を予防しながら良好な全身状態の管理を行うことが重要な課題となっている。 細胞製剤とは ヒトES細胞を、必要とする細胞に成長させ、病気で損われた患 者さんの機能を補助する「細胞医療薬」として投与しようとする ものです。既存治療法が効果を示さない場合や臓器移植が困 難な場合に、合併症や病状の悪化を防ぐ薬をめざしています。 アンモニア(NH3)は、尿素サイクルで除去される。 尿素サイクル異常症では、アンモニアが除去できない。 高アンモニア血症を生じる先天代謝異常症とは 肝臓に存在するアンモニアを尿素に解毒する機能が先天的 に働かない病気です。遺伝病であり、現在有効な治療は肝移 植のみとなっています。 【今後の展望について】 ES細胞製剤の有効性・安全性に関する検討を継続し、データの蓄積に努めます。薬事法、医師法双 方の指針を順守し、本プロジェクトの期間中に少なくとも一例の患者様への移植を目指します。現在まで に行なっている試験項目は、基本的に医薬品の製造に準じたものです。すなわち原材料及び製造関連 物質、製造工程、加工した細胞の特性解析、感染性物質の安全性評価、最終製品の品質管理法、細 胞・組織加工医薬品の非臨床安全性試験、疾患モデル動物を用いた細胞・組織加工医薬品等の効 力又は性能を裏付ける試験、細胞・組織加工医薬品等の体内動態に関する事項等です。 研究開発項目 23年度 24年度 25年度 26年度 27年度 28年度以降 ヒト幹細胞加工医薬品等の製造 細胞の特性解析(細胞生存率、細胞増殖特性、核型等) ヒト幹細胞加工医薬品等の安全 管理 純度試験、不純物試験、無菌試験、ウイルス試験、効能試験等 非臨床試験 安全性試験、効力又は性能を裏付ける試験、体内動態、投与法) First in Man 臨床試験 薬事戦略相談 PMDA事前面談 細胞 バンク 培 養 細胞 製造 下腸間膜静脈からカテーテル挿管 対面助言 門脈からES細胞を注入 移植 安全性評価 アレイCGH解析法 培養細胞(過継代)のDNA に微細ゲノム異常が生じて いないかを評価し、安定性 を担保する技術 感染症検査 →ウイルス・細菌の有無 造腫瘍否定試験 →造腫瘍性評価 他 プロジェクト全体のロードマップ 有効性・安全性評価にしっかりと取り組み、臨床応用を目指し ます。 肝細胞索内にとどまり 酵素の補充を行う 臨床応用に向けた取り組み 本プロジェクト期間中に少なくとも一例の患者様の移植を目指 します。
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