3年生国語科学習指導案

3年生国語科学習指導案
日 時:平成19年9月28日
場 所:3年生教室
1,単元名 場面の様子をそうぞうしながら読もう
教材名 「ちいちゃんのかげおくり」
2,指導の立場
(1) 教材観
この教材は、ちいちゃんという少女を主人公に戦争の悲惨さを描き恒久平和への願いを訴える作品である。
家族で行った幸せなかげおくりの対極に、戦火でひとりぼっちになってしまったちいちゃんひとりのかげおく
りを置くことで、戦争の悲惨さを家族を失う悲しさとしてより強調している。また、戦争の終わった日本の平
和な様子を描き、ちいちゃんを一般化することで、作者の平和への強い願いを感じることができる。
3 年生の子どもたちにとって、戦争を、教材として学ぶ初めての出会いである。児童は、戦争に対しての知
識も乏しく、知っているとしても個人差が大きい。そこで、当時の様子やたくさんの「ちいちゃん」がいたと
いうことを知ることは、これからの平和な社会を築いていく子どもたちにとって、大変意義あるものと考える。
この作品は、大きく五つの場面から成り立っている。最初の場面では、お墓参りの帰り道に家族四人で行っ
たかげおくりのしあわせな様子が描かれている。2・3場面では、戦火が激しくなりひとりぼっちになってし
まったちいちゃんの様子が描かれている。4場面では、ひとりぼっちで行うかげおくりからちいちゃんの死が
描かれており、戦後の平和な公園の様子を描いた最後の場面へ対比的に描かれていく。
作品を読み解くためには、かげを送る対象としての空の様子をふまえながら、ちいちゃんの心情を叙述に即
して丁寧に読み取っていくことが大切だと考える。
(2) 児童観
3年生(男子17名 女子17名)は、物語に対する興味関心は高く、
「三年とうげ」では挿絵や歌も含め
て楽しく読み取っていく姿が見られた。
国語
好きまたはまあまあ好き
85.3%
読書傾向
読書のうち9分類
69.1%
楽しく学習できた
88.2%
「三年とうげ」
つけたい力にかかわっての実態は以下のようである。
A 場面の様子や気持ちについて、前の場面とつなげたり情景からも読み取っている。
B 場面の様子や気持ちについて、叙述に即して読み取っている。
4人
13人
C 場面の様子や気持ちについて、叙述を根拠にする力は弱いが想像しながら読んでいる。 17人
(指導書レディネステストより 2007.8.28実施)
「きつつきの商売」や「三年とうげ」の読み取りの様子をみると、場面の様子や登場人物の心情について、
大まかなには読み取っているが、その根拠となる叙述を文章から考えることができる力は弱い。また、自分の
考えを他の児童の読み取りと比べて、その違いや同じ点を聞き分け話し合う中で、自分の考えを深めていく姿
勢にも弱さがある。
以上のような、実態をふまえ、この教材では叙述に即して読み取る力や友達との違いを感じながら読み取っ
ていく力をつけたいと考える。
また、戦争にかかわっての知識や理解の状況は以下の通りである。
戦争に関係する用語の理解
31%
戦争についての話を聞いたことがない
17人(50%)
世界ではまだ戦争があるか→「ない」との回答
9人(26%)
この点からも、まず戦争というものの悲惨さを知ることが平和への第一歩だと考え、指導にあたりたい。
そこで、本単元でつけたい力を以下のように考えた。
何を
叙述に即して読み取る力を
何のために
記述を基に読み取ることでいろんな本の楽しさを知るために
どんな視点で
会話文や様子を表す言葉を基にして、ちいちゃんの気持ちを読み取っているか
3,研究テーマにかかわって
研究主題
仲間と共に学び合う子の育成
~ 進んで伝え、学びを高める授業をめざして ~
(1) 研究内容1 「学習過程の工夫」
①学び合いの土台をつくる学習過程
仲間と共に学び合うためには、まず自分の意見をしっかりと持たなければならない。本学級の児童は、積極
的に発表できる子とそうでない子が両極端で、ともすると一時間の授業の中で一度も挙手さえしない子もいる。
学級の児童の中には、完黙児(場面完黙)もおり、全員発表が困難な状況もあるが、昨年度より、挙手できる
子が増えてきており、この傾向を大切にして継続して指導することを心がけている。
自分の意見を持つためには、自分の意見をノートに書くことが有効な手立てとして、本校では取り組んでい
おり、継続して指導に当たっている。また、発表にあたっては、自分の意見に自信がなくて発表できない側面
もあり、ペア交流や自由交流の場を作ることが有効と考え指導している。
②学びを高める学習過程
学びを高めるには、他の意見と交流することが有効な手立てになることが多い。交流追究の学習過程には、
交流しつつ課題を焦点化していく段階と、焦点化した課題についてさらに深めていく段階があると考えている。
交流して高まったり読みが深まったりするためには、話し合いを焦点化し、さらに一段階深める話し合いがで
きる後半を大切にしたいと考えている。
そのために、以下の2点について指導を重ねてきた。
1つ目は、焦点化する課題(切り返しの発問)を用意し、話し合いを焦点化することである。
2つ目は、聞く力をつけることである。まず、自分意見を友だちの意見と比べ、共通点や相違点を聞き分け
る力が必要になってくる。
2については4月以来指導してきているが、なかなかうまくいかない状況にある。
(2) 研究内容2 「適切な教師の指導・援助の工夫」
①進んで伝える意欲を養う指導援助
児童は何のためにどんな学習をするのかを単元を通して意識していくことが、主体的意欲的な学びになる。
そのためには、五つの言語意識を明確にし、教師側についてもつけたい力を明確にしておきたい。この単元に
おいては、以下のように設定する。
相手意識・・・家族の人に
目的意識・・・戦争への関心をもってもらうと共に、平和への願いを喚起するために
場面意識・・・廊下に「平和ギャラリー」を作り、家族の感想を書いてもらう
方法意識・・・記述の即して読むという学習を生かし、
「平和ギャラリーをつくろう」のもと、戦争に関す
る本などを読み、絵と文章でまとめる
評価意識・・・平和を願う気持ちを伝えたいという思いで本の記述に即して文から絵にまとめたものが、家
族に伝わったか
貫く課題を「戦争に関する本を読んで、絵と文にまとめ、平和を願う「平和ギャラリー」を作ろう」とし、
この意識を継続させていくことで、児童の主体的な学びを創出していきたい。
②学びを高めるための指導援助
物語的文章の読み取りとして、様子や気持ちの分かる部分に線を引き、そこから読みを広める方法をとっ
てきた。この教材では、ちいちゃんの気持ちを記述に基づいて読み取っていくが、<言葉に着目する技>や<
想像を広げる技>として、次のようなものがあると考える。
<言葉に着目する技>
技1 気持ちの直接現れている部分に着目する
技2 会話文に着目する
技3 様子を表す言葉に着目する
技4 他の言葉や場面とつながりの深い言葉に着目する
技5 情景描写に着目する
技6 擬音語に着目する
技7 ダッシュなどに着目する
技8 色彩語に着目する
技9 表現技法(倒置法や反復法など)に着目する
技 10 文章構成(クライマックスなど)に着目する
<想像を広げる技>
技1 頭のテレビに映し出してみる
技2 音読してみる
技3 動作化してみる
技4 セリフや吹き出しにしてみる
技5 体験とつなげてみる
技6 辞書で調べてみる
技7 文末表現から考える
技8 呼称から考える
技9 その言葉を抜いてみる
技 10 対比類比させてみる
技 11 他の類義語に置き換えてみる
先に述べたように児童の実態をみると、児童は記述に着目するためにの<言葉に着目する技>技1か2の辺
りで読み取っている。ここでは、その読み取り方法をより意識するために線種を変えて傍線を引かせたい。さ
らに、すでに B 段階にある児童には技4や技5についても使えるように指導していきたい。特に、この教材
は、空に対する記述や「手をつなぐ」
「きらきらわらう」など、くりかえし出てくる同じ表現が場面や気持ち
の移り変わりを読み取ることにも大きな手がかりになっており、そうした読み取りの方法も身につけてほしい
ものと考えている。
(3) 研究内容3 「学習環境づくりの工夫」
①聞くこと話すこと学習姿勢づくり
本校は、学び合う土台として、どの学級も「話す力・聞く力」を学校経営の柱にそえている。国語科を中心
として使って欲しい話形として、どの学級も教室掲示にして指導を重ねてきた。
今回は、記述の着目させるために、次のような話形指導を行いたい。
「○ページの○行目を見てください。
・・・・」
②学びを高めるための環境づくり
本単元は、初めて出てくる戦時下文学として、戦争について知ると同時に平和を願う思いが醸成されること
を願っている。
児童は、テレビや本などで少しは知っているが、アンケート結果のように、理解度は低く個人差も大きい。
そこで、戦争についての展示を行い、作品の理解を助けたい。