10/19配布資料 - 地域デザイン研究室

2015 年冬学期 月曜 1 限 8:30-10:15 空間計画設計論
「復興デザインと地域デザイン」
窪田亜矢 地域デザイン研究室 [email protected]
第三回
Chirstopher, Alexander. 1977 Pattern Language
アレグザンダーは、まちづくりに地域社会の住民が関わっていないのはおかしいと考えた。
そのための、The Timeless Way of Builiding(理論)であり Pattern Language(辞書、事例)であった。
The Timeless Way of Building describes the fundamental nature of the task of making towns and buildings.
It is shown there, that towns and buildings will not be able to become alive, unless they are made by all the
people in society, and unless these people share a common pattern language, within which to make these
buildings, and unless this common pattern language is alive itself.
You can use it to work with your neighbors, to improve your town and neighborhood. You can use it to
design a house for yourself, with your family; or to work with other people to design an office or a
workshop or a public building like a school. And you can use it to guide you in the actual process of
construction.
The elements of this language are entities called patterns. Each pattern describes a problem which occurs
over and over again in our environment, and then describes the core of the solution to that problem, in
such a way that you can use this solution a million times over, without ever doing it the same way twice.
→川越のパタン・ランゲージ型まちづくり
町づくり規範=パタン
町づくり規範を動かすシステムとしての町並み委員会(行政とコミュニティと専門家による協働組織)
暮らしに基づいた建物、空地、敷地、町並みの使い方=地域の環境でこそ展開される固有の暮らしの継承
生業(なりわい)の変容:在郷町から観光地へ
重要伝統的建造物群保存地区選定による法的拘束力と財源の確保
行政と地域社会の緊張関係、法律と法律以外の相互のやりとり、空間の何を継承するのか?
国の制度の適用は、どういう「公共性」を帯びるのか?
・ダイアグラム化、モデル化
同心円モデル:発達していったが、非常に単純なものでしかない。危険ではある一方で、ムラ・ノラ・ヤマの理
解によって、集落構造が深く理解できる。
コモンズ・コモンズ(共有財)の性質に着目した研究・資源管理の仕組みや制度、共同体に着目した研究
→コモンズとは、単位資源+資源システム
オストロムは、国家や市場ではなく、
「共同管理」が最善と示した。
→1)長期への信頼とコミットメント、2)モニタリングコストなし、3)不測の事態への対応
共有地の悲劇は、コモンズにおける個人的合理性と社会的合理性の乖離
「地域にある資源をどうやったらうまく分配できるのか?」
→デザインとは何か?
「どうやったら価値を生み出せるのか?」
<だれにとっての価値か?公共>
デザインの対象:空間と時間
(1)その地域が最も栄えた「とき」に着目する:なぜ栄えたのか。
(2)その地域が定常状態になっている「期間」に着目する:なぜうまく廻っていたのか。
(3)その地域が有する特性が始まった「時点」に着目する:なぜ始まったのか。
(4)その地域が変化したこと、
「変化」そのものに着目する:なぜ変化が起こったか。
(5)その地域が直面した危機の「前後」に着目する:どうやって乗り越えたのか。
価値=「公共の福祉」に照らし合わせたうえでの価値
都市計画法 1968(二箇所のみ)
(目的)
第一条 この法律は、都市計画の内容及びその決定手続、都市計画制限、都市計画事業その他都市計画に関し必
要な事項を定めることにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もつて国土の均衡ある発展と公共の福
祉の増進に寄与することを目的とする。
(開発審査会)
第七十八条 第五十条第一項に規定する審査請求に対する裁決その他この法律によりその権限に属させられた
事項を行わせるため、都道府県及び指定都市等に、開発審査会を置く。
2 開発審査会は、委員五人以上をもつて組織する。
3 委員は、法律、経済、都市計画、建築、公衆衛生又は行政に関しすぐれた経験と知識を有し、公共の福祉
に関し公正な判断をすることができる者のうちから、都道府県知事又は指定都市等の長が任命する。
土地基本法(バブル後の反省)によって、土地の利用は公共の福祉による制限を受けることを確認したはず。
日本の文脈における「公共性」の三つの特徴
Official:国家関連、法や政策などを通じて国民に活動→公共事業、公的資金、公安(強制、権力、義務など)
Common:共通のもの(すべての人(公益)→特定の人(共益)
(受忍、不特定多数の圧力)
Open:誰に対しても開かれているという状態→公然、情報公開、公園
公
共
私:deprived「見られる、聞かれる」という状態が奪われている状態→結びつきによる「リアリティ」の欠如
ハンナ・アーレント 1958/1994「人間の条件」ちくま学芸文庫
山本理顧 2015「権力の空間/空間の権力 ‒ 個人と国家の<あいだ>を設計せよ」講談社選書メチエ
- 公的領域=ポリス(新たな共同体としての都市国家、平等を体現したグリッド・パターン、広場や市場となる
アゴラやストア(列柱空間)
)
- 私的領域=オイコス(家、家長によって支配された範囲)
- 閾(アンドロン、アンドロニティス)=どちらにも属さない場所、主食堂兼娯楽室
労働者住宅:1)1 住宅=1 家族、排他性・独立性の高いユニット、2)平等、均質→ミュルーズ 1853-55
→改良型へ考えたのが、シャルル・フーリエ、その影響を受けたゴダンによるファランステール 1860-71
→社会主義的なものとしての誤解
公的領域を失うと何が悪いのか?
→ポリスという空間があって、人々の政治的自由そして平等が実現されるのであって、逆ではない。
・閾という外部空間が家の中にある。外部空間にアクセスすることが「自由」であって、プライバシーを保護す
ることによって自由が得られるものではない。
・建築空間、都市空間は、単なる機能ではない。政治性や共同/協働を可能にする場である。公的領域がない人
間は均一なものとして管理される。
----------------------------------------------------------------------------------------------------10 月 26 日にご講義いただく森川真樹先生(都市工学科、博士課程修了、JICA)より下記の宿題です。
・概観(少なくとも 1.和文要約だけは、必ずざっと読んでくる)
ヤンゴン都市圏開発プログラムのファイナルレポート
http://www.jica.go.jp/myanmar/office/activities/fs/01/seminar/20130321.html
・推薦図書
エドワード・ホール(1970)『かくれた次元』みすず書房
イー・フー・トゥアン(1988)『空間の経験−−身体から都市へ』筑摩書房(ちくま学芸文庫)
以 上