70 特別支援学級の取組 生活単元学習「もっと知ろう ぼく

特別支援学級の取組
生活単元学習「もっと知ろう
ぼくたちの岩国~岩国小学校校歌の学習を通して~」
1 はじめに
本学校の特別支援学級の児童は、なかよし学級(知的障害学級)1 年生女児1名、2 年生
男児 1 名、4 年生男子 1 名、おおぞら学級(自閉症・情緒障害学級)1 年生男児 1 名、2 年生
男児 2 名、4 年生男児 1 名、6 年生男児 3 名、ひまわり学級(肢体不自由学級)6 年生男児
1 名の計 11 名で、毎日元気に過ごしている。
本校の校歌には、歌詞の中にお城山、鐘つき堂、錦川、錦帯橋などの言葉があり、校
区の豊かな自然や歴史を誇りに思う気持ちが込められている。児童は、いつも校歌を元
気に歌っているが、校歌の歌詞の中には理解の難しい言葉も多く、児童は校歌に込めら
れた思いを知らずに歌っていると思われる。そこで、校歌の歌詞の意味を知ることによ
り、児童に岩国小学校や岩国のまちに誇りをもち、より好きになってほしいと考え、こ
の単元を設定した。
2
単元のねらい
○(低・高)岩国小学校や岩国のまちを好きになったり、(高)誇りに思ったりできるように
する。
○実際に校庭や校区に出て、校歌に出てくる自然や建造物を主体的に見つけることがで
きるようにする。
○友達の思いや考えを聞き合い、協力して学習のまとめの掲示物を作ることができるよ
うにする。
3
次
指導と評価の計画(全 6 時間)
時
1
主な学習活動
主な評価基準
校歌を一人ずつ歌う。
・校歌を正しく一生懸命歌おうとして
いる。
校歌の意味を知り、正しく歌う。
1
(2)
・教師や友達の話を一生懸命聞こうと
している。
・岩国について考え、自分の思いや考
2
えを友達や保護者に伝えようとして
いる。
・校歌を正しく歌おうとしている。
2
1
(3)
校庭や岩国学校へ行き、校歌の歌詞に
・建造物や自然を探そうとしている。
出てきた場所や建造物などを実際に見
る。
2
錦帯橋や吉香公園へ行き、校歌の歌詞
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・建造物や自然を探そうとしている。
3
に出てきた場所や建造物などを実際に
見つける。
校歌の歌詞について分かったことをま
3
1
(2)
2
とめ、掲示物をつくる。
・今までの学習を振り返ろうとしてい
る。
・発見したもの、考えたことなどを話
している。
4
指導の実際
(1)校歌の実態調査
(第一次
1/2 時)
一人一人個別に校歌を歌わせ、歌詞を間違えて覚えているところや、歌詞の意味が
分かっていないところを確認した。何度も歌っている校歌であったが、正しく歌うこ
とができている児童はおらず、正確な言葉でなかったり、1番~3番の歌詞の混同が
見られたりした。
(2)校歌の意味を知り、正しく歌う。 (第一次 2/2 時)
①校歌の歌詞の意味を考える。
歌詞をたどりながら意味を考えた。児童
が考えやすいよう、歌詞に出てくる建造物
や自然の写真を用い、選択肢によるクイズ
形式にして出したり、
「さわやかな」
「もみ
じいろどる」などの様子の分かりにくい言
葉を写真で提示したりした。
校歌の歌詞の意味を考える
②自分が考えたNo.1 を考え、発表する。
低学年は、3 番の歌詞の「ふるさと」について考えた。児童のふるさとである「岩
国」の好きな場所や残したいと思うところを、選択肢(錦帯橋、花火大会、錦帯橋祭
り、岩国城、錦川、お城山)の中から選び、ホワイトボードに書いて発表した。字を
書いて発表することが難しい児童は、写真を貼って発表するなど工夫した。また、
発表後には高学年から感想をもらった。
高学年は、
「明るい社会」について考えた。自分で作りたい明るい社会はどんな社
会かを考え、ホワイトボードに書いて発表した。理由を考えることができた児童は、
理由も含めて発表した。
参観日での授業であったため、発表のあとに保護者から感想を言ってもらったと
ころ、嬉しかったようでみんな真剣に聞いていた。
【高学年児童が書いた「明るい社会」
】
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4年Y児…もめごとのないにこにこしている社会
6年H児…犯罪のない世の中です
6年S児…錦帯橋などの伝とうを残す社会
6年D児…自然(城山や横山)をずっと残したい
6年G児…みんなが元気で安心できる社会 みんなが長生きできる社会
【保護者の感想】
「上手に発表ができました。」「もう少し大きな声で言えると良かったね。」
「花火大会一緒に行けて楽しかったね。来年もまた行こうね。」
「よく一緒に登っているので、○○君が岩国城を選んだ理由がよくわかりました。」
好きな場所を考える低学年
「花火大会です!」
ホワイトボードで発表する児童
ぼくの「明るい社会」を発表
保護者の方からの感想
③めくり型校歌を見ながら、校歌を歌う。
校歌の歌詞と写真を見てイメージしながら、正しく校歌を歌った。
めくり型校歌
めくり型校歌を見る児童
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(3)校庭や岩国学校へ行き、校歌の歌詞に出てきた場所や建造物などを実際に見る。
(第二次 1/3 時)
校庭で校歌を歌いながら、歌詞に出てきた建造物や木などを実際に見た。「かねつき堂
(鐘つき堂)」「このまなびや(この学び舎)」「けやき(欅)」など、前回の授業では写真を見
ていたが、実物を見ることで身近にあることを感じることができた。
また、岩国学校内を見学し、岩国出身の偉人の写真やその人の発明品を見ることで、
「す
ぐれた人をうみだした」の歌詞の意味を知った。また、岩国学校の職員の方から説明を
聞いたり、質問をしたりして学習を深めた。
ケヤキの幹の太さを体感する低学年
校内のケヤキを高学年3人で
岩国学校前で記念撮影
校歌を歌いながら確認
(4)錦帯橋や吉香公園へ行き、校歌の歌詞に出てきた場所や建造物などを実際に見つける。
(第二次 2/3 時~3/3 時)
校歌の歌詞に出てくる建造物や場所などを校外に見に行った。「もみじいろどるお城
山」
「錦帯橋のすがたまで錦の川はうつします」などの歌詞では、言葉の意味を確かめな
がら、紅葉した城山や錦帯橋が錦川に映っている様子を実際に見た。めくり型校歌を見
ながら、校歌の歌詞について考えたことを思い出しながら学習した。
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佐々木小次郎像前でポーズ
錦川に映る錦帯橋を見ながら学習
紅葉谷公園のモミジ
黄色く色づいたイチョウ
(5)校歌の歌詞について分かったことをまとめ、掲示物を作る。(第三次 1/2 時~2/2 時)
実際に見たり触れたりした活動を振り
返り、低学年は気に入ったところや感じ
たことを教師に伝えたり、絵に描いたり
した。高学年は、作文としてまとめた。
掲示物は、校歌の歌詞を主にして写真
や作文、絵を貼って作った。
掲示物「ぼくたちの岩国小校歌」
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児童の作文
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おわりに
児童は、昨年度、季節ごとに錦帯橋・吉香公園へ訪れる活動の中で、自然の変化や美し
さに触れたり、古くから伝わる建造物を見学したりすることで地元のよさに気付くこと
ができた。そして地域に興味や関心をもち始めるきっかけとなった。
今年度の取組では、児童にとって身近な校歌の歌詞を取り上げ、普段児童が何気なく
歌っている校歌の歌詞の中にも、地域の伝統や自然のすばらしさを伝える言葉や、岩国
小学校の児童への未来への願いが込められていることなどを学習した。言葉だけでの説
明では理解することが難しいので、写真を用いたり、実際に見に行ったりする活動を取
り入れた。児童は、イメージを広げることができたようで、実物を見て納得したり、気
づいたことや分かったことを教師に伝えたりするなど、学習に意欲的に取り組んでいた。
また、6年の児童は、交流学習「ちびっ子ガイド」の学習を通して学んだ吉川家に興
味をもち、校歌の歌詞にはなかったが、墓所に行ってみたいと学習意欲を示した。低学
年を巻き込んで初代藩主吉川広家の墓探しに熱中し、墓前で学習を振り返ったり自分の
思いを伝えたりするなどの様子が見られた。
1 年間の活動を通して、1年生、2年生、4年生、6年生の児童の発達段階に配慮して
内容の難易度を変えて課題を提示し、それぞれが自分の思いをまとめようとしたり考え
たりする機会になったことが良かった。しかし、自分が発表したいことや伝えたいこと
を表現する力、まとめる力の弱さも改めて感じた。今後も、児童個別のねらいに照らし
合わせ、言葉や絵で伝え合う活動を、普段の生活や学習にも意図的・計画的に取り入れて
いきたい。
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