通し番号 3810 分類番号 13-14-13-04 (成果情報名)水稲育苗箱窒素全量施肥技術 [要約] 水稲栽培における追肥作業の省力化として、必要窒素肥料の全量を播種時に 施す「水稲育苗箱全量施肥技術」は、慣行施肥窒素量の3割程度を減肥することが可 能であり、また、玄米中のタンパク質含有率が低下する傾向が認められる。 (実施機関・部名)神奈川県農業総合研究所 生産技術部 連絡先 0463-58-0333 [背景・ねらい] 水稲栽培において、本田施肥作業の省力化を図り、また、窒素施用量を減らす環境保全 型農業を推進するために、育苗箱床土中に緩効性肥料を混入し、移植と同時に施肥を行う 「水稲育苗箱全量施肥技術」について実用性を検討する。また、同技術はリン酸とカリを 含まないため、リン酸、カリ成分無施肥の影響についても併せて調査する。 [成果の内容・特徴] 1 緩効性肥料は、窒素溶出が100日程度まで持続する苗箱施肥専用肥料(N40%、シグモイドタ イプ)を使用し、層状施肥[1)床土2)肥料3)種籾4)覆土]で行う。 2 育苗箱全量施肥は、育苗期間中の肥料の溶出が若干あるが、慣行の育苗と同等の苗が得 られる(表1)。 3 慣行施肥法の30%減の窒素量で、慣行施肥並みの玄米収量が得られる(表2、4)。 4 リン酸・カリ無施肥では、2年目で玄米収量が減少する傾向があるため(表3、4)、 別途施用する必要がある。 5 食味指標の玄米中のタンパク質含有率が、慣行栽培よりも低下するため、食味の向上が期 待される(表5)。 [成果の活用面・留意点] 1 育苗時に乾燥しやすいため、特に育苗後期の水管理には注意が必要である。 2 リン酸およびカリは、別途秋耕または春耕時に施用する必要がある。特に相模川流域で は、リン酸が不足しやすいので必ず施用する必要がある。 3 本試験は平塚市の 沖積壌土 で実施した結果である。 [具体的データ] 表1 水稲育苗箱全量施肥が移植苗に 及ぼす影響(平成13年度調査) 草丈 (cm) 育苗箱施肥 16.5 慣行 15.9 表2 育苗箱全量施肥の減肥効果(平成11年度調査) 葉色 葉齢 (SPAD-502) 32.3 2.6 28.5 2.4 育苗箱施肥 慣行 窒素量(kg/10a) 元肥 追肥 合計(%) 3.9 − 3.9( 70) 4.0 1.6 5.6(100) 稈長 穂数 玄米重 (cm) (本 /株) (kg/a) 78 17.1 49.3 83 20.5 49.7 Z 千粒重 (g) 22.8 22.3 注)Z、Y:網目1.8mm以上。水分含量を15%に補正。 表3 区 1 2 3 水稲育苗箱全量施肥及びリン酸・カリの施用が水稲収量に及ぼす影響(1年目) 施肥量 (kg/10a) N P2O 5 K 2O 3.9 8 6 3.9 0 6 3.9 0 0 稈長 (cm) 79.9 80.1 81.5 穂長 (cm) 16.9 17.0 17.8 穂数 2 (/m ) 348 330 352 玄米重 (kg/a) 48.5 49.5 53.3 Z Y X 千粒重 登熟 (g) 歩合(%) 22.5 90 22.7 91 22.7 90 注)リン酸、カリについては本圃施肥。Z、Y:網目1.8mm以上。水分含量を15%に補正。X:比重1.06選別。 表4 区 1 2 3 4 水稲育苗箱全量施肥及びリン酸・カリの施用が水稲収量に及ぼす影響(2年目) 施肥量 (kg/10a) N P2 O5 K 2O 3.9 8 6 3.9 0 6 3.9 0 0 4.5 6 7 稈長 (cm) 76.2 76.6 79.1 77.4 穂長 (cm) 17.5 17.0 17.8 18.3 Z Y X 穂数 玄米重 千粒重 登熟 2 (/m ) (kg/a) (g) 歩合(%) 334 51.7 23.0 81 361 52.0 22.7 81 353 48.6 22.9 81 342 51.0 23.0 82 注)リン酸、カリについては本圃施肥。4はN:K2 O=1.6:1.6(kg/10a)の追肥を含む慣行施肥。 Z、Y:網目1.8mm以上。水分含量を15%に補正。X:比重1.06選別。 表5 水稲育苗箱全量施肥が玄米品質に及ぼす影響(平成13年度調査) 整粒 (%) 71.5 74.6 育苗箱全量施肥 慣行施肥 X 未熟粒 (%) 19.9 19.5 着色米 死米 胴割れ (%) (%) (%) 0.9 3.3 4.4 0.8 2.8 2.2 Y タンパク質含率 (%) 7.3 8.4 注)X:乳白米を含む。Y:窒素量×5.95 [資料名] 平成11∼13年度試験研究成績書(作物) [研究課題名] 作物の生理・生態特性の解明に基づく栽培技術の確立 (1)水田の高度利用のための栽培技術の確立 ア [研究期間] [研究者担当名] 奨励品種の安定生産技術 平成11年度∼平成13年度 久保深雪 上原義彦 Y
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