従来の「CDU タマゴ化成」や「IB 化成」、近年の「ハイパーCDU」は緩効性

平成26年 10 月 22 日発行
文責:美里農業改良普及センター 先進技術班
従来の「CDU タマゴ化成」や「IB 化成」、近年の「ハイパーCDU」は緩効性肥料とよ
ばれ、ゆっくり溶け出す特性があります。一方、「LP コート」、「ロング」は「被覆肥料」とよば
れ、肥料成分が膜でコーティングされており、作物の生育期間に合わせ複数の日数タイプから選択
できます。いずれも基肥に適しています。土壌診断でリン酸・カリが過剰と診断された場合、表1
で示した施肥体系が有効で JA みどりの管内で実証されています。
例えば「LP コート」は、通常は表示期間で7~8割程度が溶けますが、地温が低下し、かん水
が少ない冬季は溶け方が遅く肥効が低下します。冬季で無加温栽培の場合は、従来のタマゴ化成等
を用い、追肥は液肥や速効性の燐硝安カリや尿素等を使います。夏季でも土壌が乾燥すると肥効が
低下するので、葉色を見ながら追肥しましょう。
密植で生育期間が短めの小ねぎやホウレンソウ、水菜などは慣行量を全層施肥とします。トマト
やキュウリなどの果菜類、長ネギ、キャベツ等の露地野菜はうね内施用とすることで、慣行の2~
3割施肥量を削減できます(図1)。また、果菜類は作付け前の残存窒素が 10kg/10a 以下の場
合、基肥のうち5kg/10a 程度をスターターとして速効性肥料(燐硝安カリ S604 や尿素、硫安
等)を施用すると初期の肥効が安定します。はじめは施肥の全量を肥効調節型肥料で施用するより、
生育状況を見ながら速効性肥料を併用すると生産安定に結びつきます。
表1
緩効性肥料および被覆肥料を用いた基肥施用例
基肥
窒素量
成分(%)
作目
使用肥料
窒素 リン酸
カリ
現物
施用量
kg/10a kg/10a
(300坪) (300坪)
備考
A
LPコート40日
42
0
0
15
35
全層施肥:春~秋期
B
ハイパーCDU(短期)
32
0
0
15
50
全層施肥:春~秋期
C
タマゴ化成S588
15
8
8
15
100
ホウレン
ソウ
A
LPコート40日
42
0
0
10
25
全層施肥:春~秋期
B
タマゴ化成S588
15
8
8
10
70
全層施肥:全期間
水菜
A
LPコート40日
42
0
0
12
30
全層施肥:春~秋期
キュウリ
(施設)
尿素
46
0
0
LPコート40日
42
0
0
キュウリ
(露地)
LPコート40日
42
0
0
LPコート100日
42
0
0
LPコート40日
42
42
0
0
0
0
小ねぎ
イチゴ
LPコート180日
28
17
23
20
45
10
30
20
35
全層施肥:全期間
全層施肥:半促成
全層施肥:夏秋
全層施肥:促成
図2
施肥法の違い
表2
他県の全量一括施肥の事例
成分(%)
作目
使用肥料
窒素
リン酸
カリ
基肥
窒素量
kg/10a
(300坪)
現物
施用量
kg/10a
(300坪)
備考
キャベツ
(秋田県)
LPコート30日
硫安
42
21
0
0
0
0
20
36
24
ネギ
(山形県)
ロング424 100日
CDUタマゴ化成S555
14
15
12
15
14
15
20
107
33
うね内条施肥:10月どり
ブロッコリー
(長崎県)
LPコート40日S
硫安
42
21
0
0
0
0
17.5
21
42
うね内条施肥:秋冬どり
うね内条施肥:夏どり
※キャベツ・ブロッコリーの事例について、
リン酸やカリは別途施用しています
昨年に引き続き、管内でトマトの無リン酸施肥を試験しました。ここでは、その結果をご紹介し
ます。土壌診断の結果は下記の通りで、窒素とカリのみ不足していました。そこで、試験区では二
種類の無リン酸肥料(NK 化成 C68 号、NK エコロング 203-70)を組み合わせて施用しました。
慣行区には 3 要素入り有機肥料を施用しました。なお、各区の面積は 75 坪(畝面積 45 坪)であり、
肥料は全て畝内施用しました。
試験区の様子
○慣行区(3 要素入り有機肥料)
収量:4939kg/10a
○試験区(無リン酸施肥)
収量:5363kg/10a
※5 月 5 日に定植を行い、6 月 23 日から
8 月 3 日までの収量を累計しました。
※秀品率は両区で同等でした。
※台木がグリーンガード、穂木が桃太郎
CF ファイトの接ぎ木栽培です。
図:累計収量の推移(1 ケースは収量およそ 15kg に相当)
上の結果が示す通り、試験区(無リン酸施肥)では慣行区(3 要素施肥)より 1 割程度の増収となり、
圃場に十分量のリン酸が蓄積した圃場では、無リン酸施肥でも全く問題はありませんでした。圃
場に 100mg/100g 以上のリン酸を貯めている方は、是非無リン酸栽培に挑戦してみましょう!
本通信に関するご意見・ご感想は、美里農業改良普及センター(0229-32-3115)または、JA みどりの園芸課(0229-87-3345)までお願い致します