「さといも畝内部分施肥法による施肥量の削減」

「さといも畝内部分施肥法による施肥量の削減」
さといも等の土地利用型露地野菜生産では一般的に全面全層施肥が行われています。近
年の研究で、主要根域部分のみに施肥する畝内部分施肥により施肥利用率が向上し、施肥
量を削減できることがわかってきました。
そこで、さといも栽培における畝内部分施肥法による施肥量削減技術の成果をお知らせ
します。
1
畝内部分施肥とは
ほ場全面に施肥し耕耘後に畝を作る全面全層施肥に対し、畝内部分施肥は畝を作る際
に畝内部分施肥機により畝内の中央部分にのみ施肥する方法です(図1)。
全面 全層 施肥(慣 行)
畝内 部分 施肥
約25㎝
約50㎝
約25㎝
図1 全面全層施肥と畝内部分施肥の肥料施用域の違い
2500
2500
2000
2000
可販収量 (kg/10a)
可販収量 (kg/10a)
2 園芸研究センターの研究成果の内容
(1)畝内部分施肥により、施肥量を慣行量の 50 ~ 75 %としても、慣行施肥(全面全層
施肥)と同等の収量が得られ、階級別収量やA品率には差はありませんでした(図2、
表1)。
1500
1000
全面全層
500
畝内部分
0
0
25
50
75
施肥量 (%)
1500
1000
全面全層
500
畝内部分
0
100
0
20
40 60 80
施肥量 (%)
100
図2 施肥法・施肥量の違いが可販収量に及ぼす影響(左図:平 21、右図:平 22)
表1 施肥法・施肥量の違いが階級別収量及びA品率に及ぼす影響
階級別収量(kg/10a)
施肥法・慣行量比
全面全層・100%
平21 畝内部分・75%
畝内部分・50%
全面全層・100%
平22 畝内部分・60%
畝内部分・40%
2L
L
M
S
≧100g ≧70g ≧40g ≧20g
1065
641
548
125
1133
613
444
191
1027
624
461
108
963
718
422
92
904
671
454
111
763
621
428
95
A品率
(%)
67
70
70
72
72
66
慣行施肥量は、窒素:リン酸:カリ= 25:20:25 ㎏/10 a
全量基肥で施用、施肥量は慣行量対比
-1-
(2)窒素及びリン酸の養分収支は、慣行施肥では過度の蓄積傾向となりましたが、施肥
量を 60 %とする畝内部分施肥では僅かな蓄積傾向となりました。カリについては養
分要求量が多いため土壌からの収奪傾向となりました(表2)。
表2 施肥法・施肥量の違いが養分持出量及び養分収支に及ぼす影響
施肥法・慣行量比
窒素
リン酸
Z
施肥量 持出量
カリ
Y
施肥量
持出量
14
20
9
収支
収支
施肥量
持出量
収支
11
25
28
-3
全面全層・100%
25
11
畝内部分・60%
15
12
3
12
10
2
15
27
-12
畝内部分・40%
10
12
-2
8
10
-2
10
26
-16
Z:茎葉部を除く.Y:施肥量-持出量.値が+値なら蓄積傾向を,-値なら収奪傾向を示す.(単位:kg/10a)
2 現地における技術実証の結果
(1)五泉市における普通掘り作型で、慣行施肥(窒素成分 32.4 ㎏/10a)に対し窒素成分3
割削減施肥(23.4 ㎏/10a)で実証しました。
(2)地上部の生育は実証区、慣行区で差は認められませんでした(データ略)。実証区の
等級別収量及び階級別収量は慣行区と同等となりました(図3)。
秀品
セミ
ナガ
優品
3L
キズ
実証
実証
慣行
慣行
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
0
500
等級別収量(g/株)
図3
2L
L
1,000
M
S
1,500
2,000
2,500
階級別収量(g/株)
施肥法の違いが規格別収量に及ぼす影響
(3)肥料利用率は実証区で高くなり、現地においても効率的な施肥法であることが確認
されました(データ略)。
(4)窒素成分3割削減で栽培しましたが、肥料費はカリの追肥を行わなければならない
ので約 15 %の削減となりました(表3)。
表3
実証区
慣行区
10 aあたり肥料費
肥料費
円/10a
慣行比(%)
28,615
85
33,636
100
3 まとめ
(1)さといも栽培では、畝内部分施肥することにより肥料利用率が高まるため、窒素成
分とリン酸成分の3割程度の削減が可能です。ただし、カリは養分要求量が多いため
慣行量を施す必要があります。
(2)施肥量は、土壌診断に基づいて決めます。
(3)畝内部分施肥が可能な専用機が、農業機械メーカーから販売されています。
【経営普及課
-2-
農業革新支援担当
大箭隆一】