登米地域の稲作通信 第 1 号 - 宮城県

登米地域の稲作通信 第 1 号
平成 26年 3 月7日発行
宮城県米づくり推進登米地方本部,登米農業改良普及センター Tel:0220-22-6127
1
平成 26 年産稲作のポイント
平成 25 年産の宮城県北部の作況指数は「104」のやや良でした。登米管内では,田植・
活着期の低温により初期生育が緩慢となったものの,6 月第 2 半旬から 7 月第 2 半旬ま
での高温傾向により穂数は平年並みに確保しました。総籾数は平年並~やや多く確保しま
したが,千粒重が小さく,収量は平年並となりました。1等米比率は 94.6%と玄米品質は
良好でしたが,主な落等要因は着色粒(カメムシ類)や充実不足,胴割れでした。
平成 26 年産では,地力低下や肥切れによる葉色低下,早期落水などの営農環境を改善
し,登熟期間の高温や日照不足による収量・品質への影響を軽減できるよう基本技術を徹
底するとともに,病害虫の発生状況に対応した適期防除にも注意しましょう。
(1)土づくりと適正施肥
堆肥や珪酸質肥料等の土づくり肥料を施用して地力の維持・向上に努め,十分な耕深
を確保し,稲体や根の活力を高めましょう。また,土壌条件や生育状況に応じた施肥(追
肥等)を行いましょう。復元田では,ほ場条件に応じて減肥等の対策を行いましょう。
(2)健苗育成
田植えを遅らせる場合は,老化苗にならないよう,は種時期も遅らせ,健全な苗の育
苗に努めましょう。
(3)適期田植え,栽植密度の最適化
高温登熟(乳白や心白,胴割等)や冷害(不稔や割籾,いもち病等)を回避するため,
4月下旬(4 月 20 日頃)は種・5月中旬(5 月 10~20 日頃)田植えを実施し,8月
中旬出穂を目指しましょう。また,田植えを遅らせる場合は,やや栽植密度を上げ(60
~70 株/坪)茎数の確保に努めましょう。
(4)病害虫の防除対策
①ばか苗病 → 再汚染を防止するため温湯消毒後の保管時の管理や催芽・出芽時の温度
管理に細心の注意を払いましょう。例年発生が多い場合は,微生物農薬
を使用するか一般栽培にして薬剤防除を行うことも検討しましょう。
②斑点米カメムシ類→JA 等の情報を確認し,発生状況に対応した一斉草刈や広域一斉防除
に合わせて作業を行いましょう。
③いもち病 → 25 年産では葉いもちの発生が多くのほ場で見られたので,よくほ場を
観察し,必要があれば JA 等に相談して防除を検討しましょう。
④紋枯病
→ 25 年産で多発したほ場では,病原菌の菌核が多く残留し,26 年産で
の多発が予想されるので,一般栽培にして薬剤防除(7 月上中旬頃の粒
剤散布が効果的)を行うことも検討しましょう。
⑤稲こうじ病→ 窒素の多施用は発生を助長するので注意しましょう。
⑥水田雑草 → 除草剤の散布方法を守り,適期に散布しましょう。25 年産で難防除雑
草が多発生した場合は,効果のある剤での体系防除を検討しましょう。
(5)適期収穫
当年の出穂時期から起算する出穂後積算気温 1000℃を収穫の目安とし,籾の熟色や
籾水分,玄米品質や天候等から総合的に判断しましょう。
1
2
育苗管理のポイント
(1)適期栽培の実施(4月 20 日頃は種,5月 10~20 日頃田植え)
5 月の連休田植えでは,出穂時期が 7 月末から 8 月初めとなり,7 月中下旬の低温によ
る障害不稔や 8 月上中旬の登熟初期の高温により品質低下を招く危険性が高くなります。
出穂期が 8 月 10~12 日頃となるよう,は種を 4 月 20 日頃に実施し,田植えは 5 月
10~20 日頃に行いましょう!
(2)は種前の準備
<ハウスの準備>
<種籾の準備>
・床土量:4 ㍑/箱
・目標 pH:4.5~5.5
・肥料:育苗専用肥料
・排水対策:床面平に!
・強風対策:支柱の補強
や防風ネット等設置
20 ㌘かロング入育苗
肥料 60 ㌘を床土混和
・消毒:タチガレン粉剤の土
壌混和又はタチガレン液剤
のは種時かん注※
・野菜跡地はラブシート
等を置床に敷く
☆プール育苗にチャレンジ
してみよう!!(かん水が
楽,病害発生が少ない)
・保管:直射日光の当たら
ない風通しの良い場所
で直接地面に置かない
・浸種:積算水温の目安
<床土準備>
ひとめぼれ 120℃,
ササニシキ 100℃
(水交換は1日おき)
・催芽:28~30℃で 24
時間程度
注)資材は JA みやぎ登米環境保全米 C タイプに採用されているもの。※環境保全米 C タイ
プの育苗期使用農薬は,タチガレン粉剤または液剤のどちらか 1 回のみ。
《ばか苗病対策》
①
②
③
④
⑤
~育苗期・本田生育期の発生が年々増加しています~
塩水選:温湯消毒後に実施しましょう。
保管:処理した種子は十分に乾燥させ,再汚染の無いようにしましょう。
浸漬:水交換はこまめに行い,低い温度でじっくり・ゆっくりと。
催芽:適切な温度(30℃付近)でムラ無く催芽する。
出芽:加温出芽・適切な被覆資材等により出芽時の温度低下を軽減しましょう。
(3)苗の種類別目標値
項目
稚苗
中苗
成型ポット苗
は種量(乾籾g/箱)
160~180
100
45
は種量(催芽籾g/箱)
200~250
125
55
標準育苗日数(日)
20~25
30~35
35~40
必要箱数(箱/10a)
20~25
25~30
25~30
草丈(cm)
10~15
13~18
15~20
3~4
2~3
2~3
葉数(枚)
2.1~2.5
3.5~4.0
3.5~5.0
茎葉乾物重(g/100本)
1.2以上
2.1以上
3.0~5.0
充実度(乾物重/草丈)
1.0以上
1.5~2.0
2.0以上
第1葉鞘高(cm)
2
図 田植え適期の中苗
(4)育苗期間中の栽培管理
~病害予防のため,出芽・緑化期間でも高温時は十分な換気をしましょう~
※プール育苗では,苗が徒長しやすくなるので,低めの温度管理に努めましょう!
(5)育苗期間中の主な病害と対応策
~病害が発生してしまったら,感染苗の除去とハウスの換気をしましょう~
①育苗期の病害は,発生してからの防除は効果が低いので,予防防除や育苗環境の良化
に努めてください。
②苗立枯病はカビの発生が原因。発生した場合は感染苗を処分し,ハウス内を換気して
湿度を下げ,かん水も控えめにしてカビが増えにくい環境にしてください。
③常時湛水状態にしたプール育苗は,苗立枯病,苗立枯細菌病,もみ枯細菌病の発生を
抑える効果があります。
<育苗期病害の予防・対策の考え方(環境保全米 C タイプ等)>
3
3
土づくりと施肥
~
土壌タイプに応じた堆肥・施肥を!
~
(1)土壌タイプに応じた堆肥・土づくり肥料の施用目安
土壌タイプ
泥炭・黒泥土
強グライ・グライ土
灰色低地土
完熟堆肥(t/10a)
土づくり肥料(kg/10a)
有機センター 自家製 ケイカル ヨウリンケイカ とれ太郎
堆肥
堆肥
(砂状)
ル13号(砂状)
0.3~0.5 0.8~1.0 120~160
200
0.3~0.5 1.0~1.2 80~100
160
60~80
0.3~0.5 1.0~1.5 60~100
140
※完熟堆肥は
4 月中旬頃まで
施用できる。
(2)基肥の施用目安
4
放射能汚染対策
一般食品における放射性物質の規制値は 100Bq/kg です。平成 25 年登米市産の玄
米は,23 年産・24 年産に引き続き,全調査サンプル(92 点)で不検出の結果でした。
平成 26 年産でも不検出に向けて,
放射性物質の吸収低減対策を確実に実施しましょう。
(1)土づくり
堆肥や土壌改良資材の施用,稲わらのほ場還元は土づくりの基本技術ですが,カリ
ウムの補給源ともなるので,放射性セシウムの吸収抑制対策として有効です。
(2)耕起
耕深 15~20cm を目標に深耕する。土壌中の放射性物質濃度を拡散・希釈する効
果が期待出来ます。
(3)カリ肥料の施用
カリウムと放射性セシウムは物理的・化学的性質が似ているため,土壌中のカリウ
ム濃度が低いほ場では,放射性セシウムの吸収が多くなる可能性があります。
放射性セシウムの吸収抑制のためには,ほ場のカリウム濃度が低すぎないことが重
要です。土壌中のカリウム含量目標(25kg/10a)を確保できるよう,たい肥や稲わ
ら,土づくり肥料,カリ肥料等により調整しましょう。
※カリ肥料の効果は基肥での施用が最も効果的です。追肥で施用する場合は,分げつ
期の早い時期に実施しましょう。
※水稲でカリ成分を増肥する場合は,窒素成分が多くなりすぎないよう,塩化加里等
の単肥施用やカリウム配合の多い化成肥料を使用しましょう。
※復元田等で基肥(窒素)を減肥する場合は,別途カリ肥料を施用しましょう。
4