水稲乾田直播における播種直後入水法 - 佐賀県

佐賀県研究成果情報
(作成
平 成 25年 2月 )
水稲乾田直播における播種直後入水法
[要約]乾田直播における播種直後入水法は、乾籾に等倍量のカルパー粉衣した種子を畦
立て播種し、播種直後に入水する。入水3日後に除草剤を散布し、出芽期前から畦溝のみに水
を保つ状態で管理すると、スクミノンを使用することなく、慣 行 移 植 と 同 等 の 収 量・品 質 を
得ることができる。
佐賀県農業試験研究センター・・・
連絡先
作物部・作物研究担当
部会名
普通・特用作物
専門
0952-45-8807
[email protected]
栽培
対象
水稲
[背景・ねらい]
現行の湛水直播技術では、落水が十分にできない場合にスクミリンゴガイの被害が大き
く 、そ の 対 策 の た め 掛 か り 増 し 経 費 が 生 じ 、低 コ ス ト 化 が 困 難 と な っ て い る 。ま た 、通 常
の 乾 田 直 播 栽 培 で は 漏 水 が 激 し く 、雑 草 や 地 力 低 下 が 問 題 と な っ て 普 及 の 妨 げ と な っ て い
る 。そ こ で 、既 存 の 麦 播 種 機 を 用 い て 、ス ク ミ リ ン ゴ ガ イ 対 策 資 材 を 使 わ ず 、除 草 効 果 や
肥料効率を低下させない乾田直播栽培を開発する。
[成果の内容・特徴]
1.種子は乾籾にカルパー粉粒剤16を乾籾等倍量粉衣する(図1)。
2.既存の麦播種機と サイドリッジャ を取り付けて、10cm程度の畦を立てながら播種する (図1)。
3.播種直後に入水することで、3日後には減水深が小さくなる(表1)ので、サンバード粒(3kg/10a)
を散布する(図1)。
4.除草剤散布後は、自然落水で3日間は湛水状態を保ち、出芽直前から水稲6葉期まで畦溝のみ
に水が保たれる状態(写真1)で維持することでスクミリンゴガイの被害が軽減でき(表2)、水稲
6葉以降には慣行の湛水管理に移行する(図1)。
5.雑草発生が多い場合には、直播に登録のある水稲の初中期除草剤かクリンチャーバスME液剤
で除草剤の体系防除を行う(表3)。
6.施肥は慣行移植栽培と同様の施肥体系(「ヒノヒカリ」の窒素施肥量:基肥4kg/10a、追肥
2kg/10a、穂肥3kg/10a)とする(表2)。
7.以上の乾田直播における播種直後入水法により、スクミノンを使用しなくても、慣行移植栽
培と同等の収量・品質が得られる(表2)。
[成果の活用面・留意点]
1.有明海沿岸平坦重粘土地帯に適用し、畦畔からの漏水が懸念される圃場では、入水後に額縁代か
きを行う。
2.播種時期は、おおむね 6 月上中旬を想定しており、梅雨時期の降雨により乾田直播が困難な場合
は、簡易代かき同時直播(H10 年成果情報)に切り替えて播種する。
3.苗立ち数を確保するためには、播種深度は 1cm(種子が 1 割程度露出する)程度が望ましい。
4.本栽培法では、湛水直播に比べてスクミリンゴガイの忌避剤が削減でき、除草剤散布回数を乾田
直播の 3 回に比べ 2 回に削減できる。
[具体的なデータ]
(
3
日
程
度
湛
水
)
、
ド
粒
剤
散
布
(
)
3
㎏
)
・
入
水
3
日
程
度
稲
6
葉
期
以
降
は
湛
水
管
理
(
(
鎮
圧
ー
)
1
日
カ乾
ル籾
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ー
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種
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態
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理
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ン
バ
ー
耕
起
・
播
種
・
麦
収
穫
除
草
剤
体
系
処
理
)
図1 播種前後の作業体系
表 1 日 減 水 深 (mm)の推 移
播種後日数
2009年
2010年
2011年
2012年
1
25
64
65
31
3
20
31
31
25
4
16
34
12
19
5
29
6
13
30
12
9
21
26
13
22
14
16
写 真 1 出 芽 前 から6葉 期 までの水 管 理
表 2 乾 田 直 播 直 後 入 水 栽 培 と移 植 栽 培 との比 較
播種法 出穂期 成熟期 稈長
(月/日) (月/日) (cm)
乾田直播 9/1 10/14 83
慣行移植 8/30 10/8 82
穂長 穂数 倒伏 ワラ重 玄米重 千粒重 玄米 検査 スクミリンゴ
(cm) (本/㎡) 程度 (kg/10a) (kg/10a) (g) タンパク 等級 ガイ被害
19.8 359
0.3
853
513
21.8
6.7
3.7
無
19.0 399
0
849
531
22.2
6.6
4.3
無
注)供試品種「ヒノヒカリ」を3カ年試験した結果の平均値で、乾田直播の播種期6/5~30、移植栽培の移植期は6/23~27
10a当たり窒素施肥量は乾田直播と移植ともに、基肥4kg、追肥2kg、穂肥3kg
乾田直播区はスクミノン無処理、移植区はスクミノンによる防除有
玄米重、千粒重は1.8mm篩、玄米タンパクは水分14.5%換算、検査等級はJAさが調べで1(1等上)~9(3等下)
表 3 除 草 剤 体 系 別 の除 草 効 果
区名
無処理 ノビエ
(g/㎡)
102
(本/㎡) 34
(%) 0
サンバード
サンバード+
(%)
クリンチャーバス体系
サンバード+
(%)
リボルバー体系
2010年
カヤツリ ミソハギ
その
アゼナ
グサ
類
他
377
27
147
1
514 104 798
8
0
84
30 2202
合計
ノビエ
653
1458
12
885
68
41
2011年
カヤツリ ミソハギ
その
アゼナ
グサ
類
他
70
38
4
19
104
92
60
132
0
3
15
22
合計
1016
456
36
0
0
2
0
18
0
22
0
0
1
0
19
0
0
20
16
203
5
3
0
0
16
3
3
注)無処理区は上段:乾物重(g/㎡)、下段:本数( /㎡)、その他は無処理区対比(%)で示す
2011年の処理時期はサンバード粒剤6/14、リボルバー1kg粒剤7/1、クリンチャーバスME7/29、雑草調査日8月17日
2011年の処理時期はサンバード粒剤6/18、リボルバー1kg粒剤7/2、クリンチャーバスME7/12、雑草調査日8月9日
[その他]
研究課題名:水稲直播、麦大豆不耕起平畦栽培による低コスト安定生産新技術の開発
予算区分 :県単
研 究 期 間 : 平 成 21年 度 ∼ 23年 度
研究担当者:牧山繁生、市丸喜久、秀島好知、森 敬亮、浅川将暁