切除不能・再発膵内分泌腫瘍症例に対する放射線療法・肝動脈塞栓療法

パネルディスカッション2
91:253
PD2−9 切除不能・再発膵内分泌腫瘍症例に対する
PD2−10肝転移を来たした膵消化管内分泌腫瘍の治
放射線療法・肝動脈塞栓療法の有効性の検討
療経験
大阪府立成人病センター消化器外科1,大阪府立成人病
大阪府済生会野江病院外科し,京都大学肝胆膵・移植外
センター消化器検診科2,大阪府立成人病センター消化
科2
器内科3
河本 泉1,土井隆一郎2,太田 秀J,
江口
英利1,大東
弘明1,石川
治1,
山田
晃正1,後藤
邦仁’,中泉
明彦2,
上原
宏之3,井岡
達也2,高倉
麗奈2,
石田
哲士2,田中
幸子2,今岡
真義1
壷井 邦彦1,藤澤 憲良1,原田 富嘉1,
足立 幸人1,平井 潔1,今村 正之1
【背景】ガストリノーマ(Goma)など膵消化管内分
泌腫瘍(GEPNET)は悪性腫瘍としての性質を持って
【はじめに】膵内分泌腫瘍は通常型膵癌に比しSIOW
おり,診断時に肝転移・リンパ節転移を来たしている
growingであることが多く,切除不能・再発症例では病
ことが多い.特に肝転移は重要な予後因子であり,そ
勢をコントロールしつつ長期的にQOLを保つ治療法を
のコントロールは予後を左右する.しかし,その治療
選択する必要がある.今回我々は,切除不能・再発症
法は確立されていない.我々はGENPET肝転移巣の治
例に対する放射線療法(RT)や肝動脈塞栓療法(TAE)
療に化学療法,ラジオ波焼灼術(RFA)などを用いた
の有効性を検討した.
集学的治療法を積極的に導入しており,その現状につ
【対象】1983年∼2006年に当センターで治療を施行し
き報告する.【患者・方法】1985年から2006年までの
た膵内分泌腫瘍症例55例(男:女=24:31,年齢52.9±
間に治療を行ったGEPNETの83患者のうち肝転移を
砿7歳,観察期間590±49.3ヶ月)を対象とした.
伴った19患者(Gomal1患者,インスリノーマ2患者,
【結果】55例中50例に膵切除(膵頭十二指腸切除15
グルカゴノーマ2患者,VIPoma1患者,ソマトスタチ
例,体尾部切除25例,中央切除6例,全摘4例)がな
ノーマ1患者,非機能性腫瘍2患者)について検討を
され,5例は非切除であった.同時性肝転移は10例で,
行った.このうち3患者は生体肝移植を含む手術療法
6例は原発巣のみ切除4例は原発巣も肝転移巣も非切
除で,膵・肝同時切除例はなかった.一方,手術時に
肝転移(一)で原発巣を切除した44例中3例に再発を
療を行った.治療法の内訳は,ストレプトゾトシン
(STZ)+5FU3患者,STZ+5FU+ソマトスタチンアナ
のみを行い,16患者に化学療法を中心とする集学的治
認め(3例とも肝再発,うち1例は肝・局所再発),再
ログ(SA)またはSTZ+SA4患者,STZ+RFA3
発までの期間は56.5±6生4ヶ月であった.肝転移13
患者,SA1患者,ダカルバジン(DTIC)など他の化学
例(同時性10例,異時性3例)に対する治療(観察期
間は61.9±43.3ヶ月)はTAEが11例で,平均3.4±2.0
療法5患者であった.STZは2001年以降に導入した.
腫瘍はRECISTガイドラインに従い評価した.【結果】
回(1回∼7回)施行されていた.また肝動注療法が3
化学療法を行った16患者のうち7患者が腫瘍の増悪に
例,全身化学療法が2例,RTが2例,肝切除が1例に
より死亡,1患者は他病死した.STZを用いた10患者
施行されていた.初回治療からの5年生存率は肝転移
のうちPRは2患者,SDは3患者,PDは4患者(う
(一)症例94.7%,同時性肝転移例62.5%,異時性肝転
ち死亡3患者)であった.STZ単剤で化学療法を開始
移例66.7%であった.一方膵原発巣の非切除・再発例
して腫瘍の増悪を認めた4患者では,5FUなど他の化
は6例(非切除4例,再発1例)で,うち4例はRT
で治療が可能であった.初回治療からの5年生存率は
学療法剤やSAやRFAなど他の治療法を併用すること
でSDが得られた.DTICによる治療を行った5患者で
はSDは1患者,死亡は4患者であった.SAによる治
局所無再発例86.5%,局所非切除・再発例75.0%であっ
療を行っている1患者はSDの状態である.【考察】我々
が,2例は全身化学療法が施行され,いずれも外来通院
た.
は化学療法・RFA・SAなど様々な治療法を用い,GEP−
【まとめ】膵内分泌腫瘍症例における肝転移に対しては
NETの肝転移巣に対して集学的治療を行うことで,腫
TAEやRTにより,また非切除・再発の原発巣に対し
瘍コントロールの改善を認めている.稀な疾患である
てはRTや全身化学療法により,比較的長期間にわたっ
が,積極的な治療を行うことでより良好な結果が期待
てQOLを損なわずに病勢コントロールが可能であり,
できるものと考える.
有効な治療法として考慮すべきと考えられた.