RVS の進歩と最新の 3D Sim-Navigator を用いた RFA

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RVS の進歩と最新の
3D Sim-Navigator を用いた RFA
大﨑 往夫
大阪赤十字病院消化器内科
本講演では,肝がんに対するラジオ波焼
腫瘍を直接穿刺せずに焼灼することも可
および 3 D 透過画像(3 D image)の表
灼療法(RFA)の最新動向として,日本初
能であるなど,多くの有用性が期待される。
示や,各電極針間の距離も表示される
のバイポーラ RFA システムの有用性と課
ただし,電極針の先端の視認性が悪い,
ため(図 1),電極針相互の位置関係の
題について,また,その課題の解決に役立
電極針の意図しない移動が起きやすい,
把握を容易にする。また,同シミュレー
つ日立アロカメディカル社の“Real-time
といった課題もあり,なかでも複数本穿
ション画像と穿刺のシミュレーションラ
Virtual Sonography(RVS)”の進歩
刺では電極針の配置やどのように穿刺す
インをナビゲータとして,リアルタイム
として,
“3 D Sim-Navigator”を用い
るかをモニターするのが困難な点が最大
に電極針の穿刺が可能である。
た RFA について述べる。
の課題と言える。特に,3 本穿刺の場合,
バイポーラ RFA システムの
有用性と課題
同一肋間から穿刺した 2 本間は超音波
症例提示
画像上で針間距離を把握できるが,3 本
症例 1 は,70 歳,女性。肝 S 6 に 3 . 4 cm
目を他肋間から穿刺すると,3 本目と
の肝細胞がんの再発が認められ,肝動
わが国においては従来,モノポーラ電
1,2 本目との距離を把握するのは困難
脈化学塞栓療法(TACE)併用にてバイ
極針による肝がん RFA が行われてきた
である。
ポーラ 4 cm 針 3 本による RFA を施行し
RVS の革新的な進歩:
3 D Sim-Navigator
を正 三 角 形 状に設 定すると,それが
こうした課題を解決するための RVS
像および 3 D image 上に黄色,赤,青の
対極板を左右の大腿部などに貼る必要
の革新的な進歩が,複数電極針穿刺の
ラインで表示される(図 2)。これにより,
があるため,体内に電流が流れてうつ熱
シミュレーションとナビゲーションが可
電極針相互の位置関係を容易に把握可
が,2012 年にバイポーラ RFA システム
による治療が保険収載されて以降,本シ
ステムの普及が急速に進んでいる。
モノポーラ電極針による RFA では,
た。C-plane 画像にて電極針の穿刺位置
CT-MPR 画像(Virtual US)
,超音波画
状態となり発汗するなど,患者に不必要
能な 3 D Sim-Navigator である。RVS
能であった。治療後の CT では十分な
な負荷がかかる。また,電極と対極板と
は,CT や MRI などのボリュームデータ
マージンが確認できた。
の距離が大きいためエネルギー効率が悪
を取り込んで,観察中の超音波画面と
症例2は,82歳,男性。肝 S 5 に 4 . 5 cm
く焼灼に時間がかかる,モノポーラ電極
同一断面の MPR 画像をリアルタイムに
の肝細胞がんが認められ,TACE 併用に
針の穿刺では腫瘍の大きさや形状によっ
同期表示する技術で,2004 年の登場以
てバイポーラ 4 cm 針 3 本による RFA を
ては複数回穿刺により重ね焼きが必要,
降,複数画像の同時参照や,マーキング,
施行した。3 本の電極針は,いずれも
などの問題もあった。
シンプル・アジャスト,レジストレーショ
異なる肋間から穿刺して焼灼可能であり
(図 3)
,治療後の CT にて十分なマージ
一方,バイポーラ電極針には,1 本の
ンなどの機能を順次搭載し,進歩を続
針に絶縁体を挟んで 2 つの電極が搭載さ
けてきた。しかし,3 D Sim-Navigator
れているため,電流は局所で還流し,患
は,これらの進
者の体内には流れない。その結果,対極
歩をはるかにし
板が不要,熱効率が良い,患者のうつ熱
のぐ画期的な技
が避けられるというメリットがある。また,
術である。
複数本穿刺(マルチポーラ)が可能で,
具 体 的には,
3 本穿刺による焼灼では 6 つの電極の間
超音波画像と同
で組織が凝固するためムラのないきれい
期させた CT や
な焼灼が可能となる。また,電極の露出
MRI の MPR 画
部は 2 cm,3 cm,4 cm の 3 種類があり,
像上に複数の電
4 c m 針 3 本で焼 灼すると最 大で直 径
極 針 穿 刺 のシ
6 cm の領域の凝固が得られる。さらに,
ミュレーションを
電極針の本数が多いほど凝固範囲は広く,
可能とし,
C-plane
逆に凝固時間は短くなるため,腫瘍径の
画像(穿刺方向
大きな肝がんにはきわめて有用であり,
と直交する断面)
96 INNERVISION (30・9) 2015
CT-MPR
Virtual US
ンが確認できた。
シミュレーションライン
シミュレーションライン
C-plane
CT-MPR
C-plane
US
おのおのの電極
針間の距離を
表示
黄×赤 16 mm
赤×青 19 mm
青×黄 19 mm
3D image
図 1 3 D Sim-Navigator の表示画面
〈0913 - 8919 / 15 /¥300 / 論文 /JCOPY〉
Ultrasonic Week 2015 ランチョンセミナー 16
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Report
CT-MPR
Virtual US
US
3D image
C-plane
CT-MPR
C-plane
3D image
図 2 症例 1:肝細胞がん再発症例へのバイポーラ RFA
CT-MPR
Virtual US
図 3 症例 2:肝細胞がん症例への TACE 併用バイポーラ RFA
US
CT-MPR
Virtual US
C-plane
C-plane
CT-MPR
C-plane
3D image
図 4 症例 3:肝細胞がん症例へのダブルトライアングル法での
バイポーラ RFA
CT-MPR
C-plane
症例 3 は,84 歳,女性。肝 S 7 に 4 . 5 cm
検証した。2 cm 針 2 本,
3 c m 針 2 本,4 c m 針
にて,ダブルトライアングル法を用いて
2 本,3 cm 針 3 本,4 cm
RFA を施行した。本法は,まず腫瘍に
針 3 本での焼灼体積を,
3 本の電極針を二等辺三角形に配置し
それぞれワークステーショ
てシミュレーションを行い(図 4),その
ン( 富 士フイルム社 製
後,三角形の頂点に当たる電極針(黄色)
SYNAPSE VINCENT)
を逆三角形の頂点となる位置に再配置
を用いて抽出し測定し
してシミュレーションを行ってから焼灼
たところ,実際の焼灼
する(図 5)。治療後の CT にて十分なマー
体積はドジメトリテーブ
ジンが確認でき,再発も認められていない。
ルの予測凝固体積を大
2014 年 5 月〜 2015 年 4 月に当院で
3D image
図 5 図 4 と同症例における逆三角形での電極針の
配置シミュレーション
の肝細胞がんが認められ,TACE 併用
3 D Sim-Navigator を用いた
バイポーラ RFA の凝固体積の
検証
US
きく上回っていた(図 6)。
3cm 2本
3cm 3本
4cm 3本
11.0
16.5
33.5
予測凝固体積
(cm2)
RFA 後凝固体積
15.6±2.0 28.3±10.3 63.0±36.4
VINCENT にて抽出(cm2)
図 6 3 D Sim-Navigator を用いたバイポーラ RFA の凝固体積
まとめ
で確実な RFA を施行可能であり,複数
フュージョンイメージング技術として
電極針を用いたバイポーラ RFA におい
開発された RVS は,近年大きく進歩し,
ては,きわめて有用と考えている。
RFAを施行した206 症例304 結節のうち,
3 D Sim-Navigator という革新的な技術
3 D Sim-Navigator とバイポーラ RFA
の開発により,複数電極針穿刺のシミュ
システムを使用し複数本穿刺を行った
レーションがリアルタイムに行えるよう
2 5 症 例 2 7 結 節( 平 均 腫 瘍 径 2 6 . 1 ±
になった。また,シミュレーション画像
10 . 8 mm)を対象に,実際の凝固体積を
をナビゲータとして用いることで,安全
大﨑 往夫 (Osaki Yukio)
1979 年 神戸大学医学部卒業。同年 大阪赤十字病院内科
研修医。1993 年 同院内科副部長。2003 年 同院内科部
長。2004 年 同院消化器科部長を経て,2013 年〜同院消
化器内科統括部長。
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