症例:76歳女性 【主訴】胃癌術後のCT異常所見 【現病歴】食道胃接合部腺癌(tub2)に対する 胃全摘術+経裂孔的下部食道部分切除術+ R-‐Y再建後。再発転移検索のための1年後の follow-‐up CTを施行した。 【既往歴・家族歴】特記事項なし 【1年後血液検査】WBC 5,200/μL,Hb 10.5g/dL, PLT 33.9×104/μL,T-‐Bil 0.5mg/dL,AST 26U/L, ALT 22U/L,LDH 163U/L,CRE 0.62mg/dL,Na 143mEq/L,K 3.9mEq/L,CRP 0.1mg/dL, CEA 3.1ng/mL,CA19-‐9 19U/mL :異常値なし 肝の低吸収域の経時的変化 術前 術後半年 術後1年 所見:内部に血管が走行する 限局性低吸収腫瘤 鑑別診断: • 悪性リンパ腫 • 胆管細胞癌 • 限局性脂肪肝 • 悪性黒色腫の転移 • びまん性肝細胞癌 内部に血管が走行する 限局性低吸収腫瘤:悪性リンパ腫 内部に血管が走行する 限局性低吸収腫瘤:胆管細胞癌 内部に血管が走行する 限局性低吸収腫瘤:悪性黒色腫の転移 診断:肝S4領域の限局性脂肪肝 肝右葉後区域の胃癌転移 不均一な脂肪肝:inhomogeneous faUy liver ①lobar type:片葉のみ、片葉に強い ②faUy island type:島状の脂肪浸潤 ③normal island type:部分的に正常部位が残存 限局性脂肪肝の一因:門脈外血流 ①胆嚢静脈(胆嚢床近傍に分布) ②sappy傍臍静脈(横隔膜や腹壁の 静脈から肝鎌状間膜を通り、肝に流入 する) ③右胃静脈の破格(肝S4に流入する) ④PBP:peribiliary venous plexus 門脈の血液内容(ホルモン、血糖、酸素) により脂肪肝の程度が異なる。 PBP:peribiliary venous plexus ① • 肝十二指腸間膜内で、門脈本幹の前方に存 在する。 • 右胃静脈、膵十二指腸静脈、胆嚢静脈の血 流からなる。 • ほとんどは門脈本幹やその枝に流入する。 • 一部は肝門部のS4背側の肝実質に直接流入 する。 PBP:peribiliary venous plexus 正常門脈 ① 胃 ③ ② 胃摘出 ①胆嚢静脈、②右胃静脈、③膵十二指腸静脈 PBP:peribiliary venous plexus② S4領域の限局性脂肪肝と門脈外血流、胃 癌術後の関係性: 原因として胃癌術後に肝S4領域に流入 する血中インスリン濃度が高値となること で同領域に限局性脂肪肝が生じると考え られている。 PBP:peribiliary venous plexus ④ ④ 胃癌 ④ 胃摘出 ④ ①胆嚢静脈、②右胃静脈、③膵十二指腸静脈 ④インスリン濃度 この症例での PBP:peribiliary venous plexus ① PBP:peribiliary venous plexus 肝S4流入部 ②門脈 ③胆嚢静脈 take home message • PBP(peribiliary venous plexus)の存在。 • 胃遠位部を含む胃切除後(胃全摘、胃噴 門部亜全摘)で肝S4領域の限局性の脂 肪肝を来すことがある。
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