教師の行動変容が知的障害児の離席行動に及ぼす効果 一丁・T(ティーム・ティーチング)に対する行動コンサルテーションー 学校教育学専攻 臨床心理学コース M09082G高畑英樹 1.問題とβ的 ①副担当者が行動変容(肯定的な関わり方へ変 行動コンサルテーションは、応用行動分析学 容)することにより児童の離席行動は減少する。 などを背景に持ち、学校を含む対人援助サービ ②肯定的な関わり方へ行動変容が生じた教師の スー 応用行動分析に関する知識は増加する。 フ領域において適用されている。それは、① 問題の同定、②行動の分析、③指導介入の実施、 ③教師集団への行動コンサルテーションは、教 ④指導介入の評価といった4段階を通して行わ 師にとって、望ましい結果(他の教師からの称 れる。 賛や児童の離席行動の減少)が生じれば、教師 複数指導のティーム・ティーチング方式(以 の行動は継続・維持される。 後、T・下方式と略)における行動コンサルテー 3.研究方法 ションでは、<主担当と副担当の役割><対応 1)対象:A県B特別支援学校小学部1年生 を共通理解した指導の一貫性〉<副担当者の個 学級担任教師4名と知的障害児童3名 別的関わり>が重要であると考えられる。 2)実施時期: そこで、本研究では、各教師が担当児童への 2010年5月∼2010年7月(全7回) 個別的対応を分析することが可能である特別支 3)内容: 援学校のT・下方式の朝の会を対象とした。児童 Table1に示したように、主な行動コン への個別の関わりを各教師に行動コンサルテー サルテーションは、第2回から第5回に、 ションするのではなく、教師集団に対して、同 設定し、ビデオ記録をもとにして、毎回、 時に行い、各教師の行動変容が担当児童への離 討議をもとに、テーマを決めたコンサルテ 席行動に及ぼす効果と行動コンサルテーション ーションを行った。教師の児童への関り方 の効果を明らかにする。具体的には、T・下方 の振り返りは、ビデオ記録をもとに行動記 式での教師一人一人の行動を分析し、主担当と 銀で行った。 副担当の役割、指導の一貫性につながる共通の 4)実験デザイン: 対応、副担当者の行動変容をコンサルテーショ 実験デザインは、対象児童の離席行動に、 ンすることが、T・下方式での知的障害児の離 対する対象教師の関わりへのコンサルデー 席行動の減少につながるということを検証する。 ションの介入時期をずらして行う個体間マ 2.研究仮説 ルチベースラインデザインで実施した。 一ユ62一 また、応用行動分析チェックリスト正答数の Tab1e1 研修プログラムの概要 変化(Fig.2)をみると、4人共に、第1回(実 目程 概要 第1回 (5/11) 施前)よりも第6回(実施後)の方が、正答数 ①研修内容説明と進め方の討議 ②応用行動分析チェックシート記入 が増えた。 第2回 ①ビデオ記録をもとに行動記録 ②X児の離席行動前後と教師(ST1)の関わり方 (5/12) ③まとめ(背走的な関わりと否定的な関わり・環境調整) 第3回 (5/2正) 第4回 (6/1) ④振り返りアンケート記入 ①ビデオ記録をもとに行動記録 ②X児の離席行動前後と教師(ST1)の関わり方の評価 ③Y児の離席行動前後の教師(ST2)の関わり方 ④まとめ(r注意集中」に対する関わり方・機能分析) ⑤振り返りアンケート証人 ①ビデオ記録をもとに行動記録 ②Y児の離席行動前後と教師(ST2)の関わり方の評価 ③Z児の離席行動前後の教師(ST3)の関わり方 ④まとめ(「注目」と『無視」、バースト) 第5回 (6/21) 第6回 (6/25) 第7回 {7/16〕 ⑤振り返りアンケート記入 ①ビデオ記録をもとに行動記録 ②Z児の離席行動前後と教師(ST3)の関わり方の評価 ③振り返りアンケート記入 ①ビデオ記録をもとに行動記録 ②他の授業時間での教師の行動変容の聞き取り ③応用行動分析チェックシート記入 フォローアツブ 教師間で正答が一致する問題も増え、4人と もが正答が一致した割合を正答一致率とすると、 32%(8間一致)から68%(17間一致)になっ た。 25 − 20 一 新ユト 絶 肖■o一 一山 ‘後 置 一 〇 一 一血丁 9T■ 8丁壇 sT宮 徴竈 Fig.2 応用行動分析チェックシート正答数の変化 4.結果 5.考察 対象教師の肯定的な関わり方の割合と対象児 丁・Tの長所を生かすためには、個別に担当教 童の離席行動回数の推移を同時にFig.1で示 師が支援を考えるのではなく、他の教師への行 した。教師の関わり方と、児童の離席行動回数 動コンサルテーションを一緒に聞いて、共通理 の関係をみると、教師の肯定的な関わり方の割 解して協働で児童への支援にあたるということ 合が増えるにつれて、児童の離席行動回数の減 が重要であろう。 少が見られる。 また、行動コンサルテーション後の聞き取り 結果では、他の授業においても、教師が肯定的 奏峯} 1” ’ ㎜ 11. な行動を意識したり、授業中の児童の行動の意 111ふ; 111 書 ■二」.., 」 ≡.. 」o 味をティームで一緒に討議して支援を考えたり セ,シ●:’ ということが、行われていた。このことは、行 Fig.1−a ST1の肯定的な関わり方の割合とX児の離席回数 讐’ } 墲P矩。o」 ○ 帖τo;な。o! 1□筍。一 = 動コンサルテーションを通して教師の行動変容 11’ 11里 10 に対する教師問の称賛や児童の離席行動の減少 @● 8一 v個1回 量’ ?1戸へ肌冒ω■o. 。1コ。.一_..一。一一一一一一一一一一一。一台 1目O一曲■■珀珊”■OO■盟珊躬的 1 里 という結果が教師の行動変容を強化した結果と i ・o 捉えていいであろう。 セ,シ●ン Fエg1−b ST2の肯 的な関わり の割合とY児の 1001 ?骰ヌ刊1一価 ● ● 1 ・ ・ ● = ●ユ 綜ッ カ目。i ○里。1 } ● ; 、ヘノギ 回 一1’ 11里 r川. ’8口 ・o回 業1一’ 主任指導教員 市井 雅哉 =自 驕p o{一一・・1・・ 一■’皿,一 ■一 ’ 一■ .一■I一 τ一 ・o 1317011−3岨1−19珊蝿蝸珊酌 セ,シロン 指導教員 嶋崎まゆみ ’I11川一一〇一■一■■’一■L−L■.1一川一一一一川I0■■■1一一1Io一■II■■■一I一一■1’II1’■■⊥u皿…一■1II」川一L L1’一’I」⊥一L Fig.1−o ST3の肯定的な関わり方の割合とZ児の離席回数 一163一
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