板金用CO2レーザー加工機 (58) 昭和58年1月 最近の発展と将来’ 板金用CO2レーザー加工機 吉田道男*・木村正雄* Michio YOSHIDA and Masao KIMURA 初めてルビーレーザーが発振されて以来,今日 械見本市の一つであるEMOショウに初めて板 金機械メーカーによる板金切断用CO2レーザー まで多種多様なレーザーが開発されてきた。た 加工機が出展された。アマダもそれ以前から実 とえばCO2レーザーについては1964年にBell 研究所のPatelによって赤外域10.6μmの波長 で12Wの連続発振が成功したのをきっかけに, 大きく分けて二つのタイプのレーザー発振器の 験・研究を重ねていたので,1980年にわが国に 大出力化の開発が進められた。一つは軸流タイ 光を浴びた。 プのレーザー発振器でCool,Tif{any,Deutch, 板金加工の中でのレーザー加工の特長は HiUらが1969年頃からさかんに活躍し始め,こ の時期のチャンピオンデータで放電管l mあた 1)自由形状切断ができる。 り100Wを出すまでに至った。このタイプで実 グできる。 用化されているのはCoherent社, Photon− 3)切断幅が細く,熱影響層が少ないため微 Sources社がある。最近ではさらに装置のコン 細加工ができる。 パクト化を追求した高速軸流タイプの研究も, 4)1kWクラス発振器で,鉄で板厚6mm迄 B.0.C社を元祖として活発化している。もう一 SUSで板厚3mm迄,きれいに切断できる つのタイプは放電とガス流とが直交した直交流 5〉騒音,振動がほとんどない。 タイプのレーザー装置で Eckbreth,Davis, Demariaらが1972年頃に手がけた。このタイプ で実用に供される形になったのは G.T.E Sylvania(現在Spectra Phycics)社のModel 6)材料分留りが向上し,製品コストの低減 971である。この様にCO2レーザーの大出力化 アマダCO2レーザー加工機LASMAC−644の が可能となると,金属への応用が考えられた。 概要を簡単に紹介する。Fig.1はその外観を示し, 1977年にはGMがlkWCO2レーザー15台を使 Fig.2はその概略寸法,Table Iはその仕様を示 って自動車のステアリングギヤハウジングの内 テムが主流であったようである。 す。CO2レーザー発振器から出力されたレーザ ー光は直接前方まで導かれ,1枚のベンドミラ ーで直角に下に曲げられてワークパスライン上 で加工する。ワーク移動タイプレーザー加工機 1979年にパリで開催された,世界3大工作機 である。1.2kWCO2レーザー発振器とX,Y軸 1960年にHughes研究所のMaimanによって 面精密局所焼入れを行ったのは有名である。こ の頃は溶接・熱処理・表面焼入れ等の専用シス おいてトップをきって板金用CO2レーザー加工 機LASMAC−644を開発し,同年シカコで開催 されたシカゴショウ(IMTS’80)に出展し,脚 2)容易にNC又はコンピュータとドッキン が計れる。 などの特長を世間の人々が認識できるようにな ったので,導入検討の関心は急速に広まった。 *株式会社アマダ大磯分室研究部 一58一 レ ザ 研究 第11巻 第1号 (59) Flg.1 LASMAC−644の外観 ,/ 1 陽 \. 「 一レーザ光O i,、スライン 10001唖多勤鍛》 ケ ⊆1暑§熱〔⊇ l 塗「 關圓 口 I」 850 690 ザー加工機を導入する事で大幅なコストダウン に成功した。(ある計量器メーカ) Table I LASMAC−644の仕様 Fig.4はSPC材12mmを切断した実例である。 1000×200脚(リポジシ日ニング) 60㎜SPCCSPHO3D闇ステンレス 大ワーク置費 50 0−12m劇n 早送リテー ル速 2軸ノmln 妓 一ノ ル 靭 ㍊ FANUO6MB この製品はコンクリート型枠に使われるもので 『06 ある。従来はパンチプレスのニブリング加工後 X棒Y同時2軸 アブソリュート インクリメンタル併 固購2翰 001圃 扱小位阻決め綱度 0,02晒 一一決’め・一 4r・一 位r 白ゆ』ひ 15r噌。▽ 品加工したものであり,展開にはアマダで開発 した特殊展開ソフトを用いている。従来は人間 ならなかった所を,自由形状切断の得意なレー Fig,2,LASMAC−644のシステム 釦F・工・寸’r Fig.3はSUS304(0.8t)を展開切断後,製 の手によって展開し,ハサミで切断しなければ 『1005一↓一 1920一雌555 F Fig.4 1200W レーザー出 脚 100−1∼00W }凌 .旦』り’, 一 〕ン簾} シスト ス㌧ 、評阜『r ±5% CO N Ho にサンダーがけが必要であり,また,タニを寸 220/200V ±10% 法とし,ヤマを削りとるため熟練も必要であっ 0 50KVA 電!桟 100ε/而n(コンブレツサー丹P) テ州= 7ヘ カ 57k/α甲 翼}ゼ 廼 30‘/mm3.5kg/ω た。しかし曲線形状のレーザー切断加工への転 パキューム鼓置、オートリポジシヨニング、レーザーシャッター戯能、H6・No可幌搬能 パワー衰示 角 、 P『曾・凪. 能 換によって,ニブリング加工の不要,工数低減, テーブル本体はコモンベース上に一体になって 精度向上,部品点数の削減等,大幅なコストダ おり,電源ユニット,N Cコンソール,操作盤 ウン効果と工程短縮が向上した例である。 (あ チラーは別置きが可能となっている。LASMA C喝44で実際に加工した加工サンプルの一例を るコンクリート型枠メーカ) 紹介する。 調 畷 このように,当社のLASMAC−644は発売以 来,現在まで板金加工メーカを中心にプレス加 工,機械部品加工,プラスチック加工,木材加 工,金型加工メーカに納入されており,全国で 約50社に納入稼動実績をもつに至っている。 現在,我々が抱える板金用CO2レーザー加工 機に対する問題点は大別すると二つある。一つ はレーザー発振器の保守・寿命の問題であり, 他はレーザー光の加工に対する時間的安定性を 含めた最適レーザー光の研究の問題である。 前者は通産省の大型プロジェクトでも,CO, Fl9.3 レーザーの消耗品の寿命を2000時間以上として 一59一 (60) 板金用CO,レーザー加工機 いるが,顧客にCO2レーザー加工機を提供する メーカとしての立場から言えば,機械という概 昭和58年1月 方には早急に大出力CO、レーザー用光学部品の 念から少なくとも10000∼20000時間はメンテナ 開発を期待する。次に後者の問題はレーザーか ら発振された光自体の特性をモード,出力,安 ンスフリーにしたいものである。しかし,現状 定性,偏光等の理論的・実験的追求をしていか は光学系の出力ミラーや集光レンズ等は保守品 なければならないという考えから,我々はこの であるし,また輸入品であるため,その入手に 方面にも調査・研究を行っている。そして我々 非常に苦労している。昨年,ある商社で集光レ ンズを注文した時,納期より半年近く遅れたと の願いは,早期に現在よりも加工に適した安定 したCO、レーザー発振器ができる事を希望して いうこともあった。そこでCO2レーザー加工機 いる。 のメーカーという立場から光学部品が必要な時 上述した,二つの問題点が解決される時に, には,即座に入手出来るシステムを作っていた CO2レーザー加工機はさらに大きく飛躍できる だきたい。商社の方には今後,増々CO2レーザ ー用光学部品の需要は高まると思われるので在 と信じている。ここに,レーザー関連の研究・ 開発に携っている研究者・技術者に,さらに一 庫主義の実践と,国内の光学部品研究技術者の 層の努力を御願いしたいと考える。 一60一
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