卒業証書授与式校長式辞 - 静岡市立末広中学校

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平成24年度 卒業証書授与式式辞
例年になく寒さ厳しい冬が去り、ようやく春の息吹が感じられるようにな
りました。未来に向かって希望がふくらむ、この良き日に、地域の皆様をは
じめ多くのご来賓、保護者の皆様のご列席を賜り卒業証書授与式を挙行でき
ることを、心よりお礼を申し上げます。
卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。義務教育の9年間を大き
な成果をあげ修了し、立派に成長しそれぞれの新しい道に進もうと、夢と希
望に燃えている皆さんを心から祝福します。
皆さんは末広中学校の生徒として多くのことを学んできました。その中で
特に印象に残っていることを話します。はじめは皆さんの生徒会活動をはじ
めとした特別活動の様子です。末広中の誇る「生徒憲章」には「より良い学
校生活を目指し、一人一人が集団の一員であるという自覚を深め、友人と協
力をして互いに磨き合い高め合う」という一節があります。これは、個々の
能力を高めるためには、生徒一人一人が学校づくりの主体者となり役割を分
担しよりよい学校をつくる志を持ち行動する必要があることを意味していま
す。皆さんはそれに応え、専門委員会活動や係り活動に精一杯取り組みまし
た。桜の花や葉が散る季節には朝早くから箒を手にする生活専門委員。部活
下校時には、時刻を守り安全に下校できるよう呼びかける部長会。こうした
様々な活動の先頭に立ち努力していた皆さんの姿が目に浮かびます。次は生
徒大会での皆さんの振る舞いです。秋の生徒大会は2年生が主体となっての
活動のスタートに当たります。慣れない会の運営、計画も完璧ではありませ
ん。しかし、皆さんは下級生の活動を終始活動を支え、応援をする姿勢を見
せ続けました。このように正しいこと、良いことをするために力の出し惜し
みをしない。これが皆さんの持っている素晴らしい点です。これは、これか
ら皆さんが生きていく上での大きな財産になるでしょうし、何よりも本校の
誇りであります。
さて、卒業に当たり二つの話をします。一つ目は失敗を恐れず、失敗はチ
ャンスでありそれをどう生かすかによって人生は変わってくるという話で
す。今年度の日本の喜びは山中伸弥さんがノーベル医学生理学賞を取ったこ
とです。iPS細胞の研究によっての受賞については皆さんも知っての通り
です。山中さんはノーベル賞を受賞したのですから人生の成功者といって良
いでしょう。しかし、山中さんの人生は、手術が下手で整形外科医を断念し
たことに始まり、留学先に断られ続けたり、出口の見えない研究で鬱病にな
りかかったりと挫折と失敗の連続といって良いかも知れません。しかし、決
してあきらめずへこたれず、やりたいことから少しはなれた研究、うまくい
かなった研究の中からiPS細胞は生まれました。研究の世界では立てた仮
説がうまくいく確立は10%以下が普通だと言われています。うまくいかな
いのが当たり前なのです。そして、何かを生み出す研究者はうまくいかなか
った一見無駄と思える現象から重要な発見を生み出すのです。これは研究の
世界だけではありません、皆さんが社会で生きていくのも全く同じです。う
まくいくことはまれです。やったことが無駄だったと思うこともあるでしょ
う。八方ふさがりで絶望的になることもあるでしょう、しかし失敗や無駄の
中にこそ豊かな宝が眠っているのです。山中さんが失敗と無駄の連続の中か
ら不治の病の人が希望を持てるようなiPS細胞を発見をしたように、あき
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らめずに挑戦し続ける気持ちを持ちこれからの人生を歩むことを望んでいま
す。
次は皆さんが義務教育を終える意味についてお話をします。
もう放映されなくなりましたが働くことの意味を象徴的に示したTVコマ
ーシャルがありました。はじめに停電となり電気が消え電話が使えなくり困
った表情の家族が写ります。次に夜悪天候の中鉄塔に登り電線を補修する人
の姿が映り、最後に、明るい電灯が灯り受話器を手にした笑顔の家族が写り
ます。私たちは今、便利で快適な生活をごく普通に享受をしていますが第2
のシーンにあるようにそれを支えている働く人を意識することはありませ
ん。しかし、このCMは普段意識をしない、見えないところで必死になり保
守をしたり、何かを造ったりしていること人がいることを我々に教えてくれ
ます。少し前ですが化学工場で爆発事故がありました。消防士は燃えさかる
炎と爆発の危険も顧みず,最前線で消火に当たり全身にやけどを負いなくな
りました。このように何か重大な事故が起きた時も普段は気に止めない、皆
のために働く人の存在に気づかされます。しかし、これは特別のことではな
く社会を支える多くの人々が様々な職種で責任を持ち仕事をしていることの
延長線上にあった一つの出来事なのです。私たちが普段、何も考えないで安
定した秩序ある社会生活を送れる陰には、自分の仕事に責任と誇りを持つ人
々の存在がいつもあることを忘れてはならないのです。日本が世界から尊敬
をされるのは国民の多くが社会の一員として、自分の損得を顧みず皆の幸せ
のために尽くしたいという意識を持ち日々の仕事によろこびと誇りとを持っ
ているからに他なりません。皆さんは義務教育を終えます。義務教育を終え
ると言うことは与えられ、保護された立場から、与え、社会を作り上げる、
社会の形成者としての立場に立つことです。みなさんは日本国憲法で保証さ
れている健康で文化的な生活を営む権利と教育を受ける権利を受けてこの1
5年間を過ごしました。しかしこれが可能だったのは皆の幸せのために働い
ている人々とそれらの人が納税するという義務によって支えられていること
を忘れてはなりません。卒業後すぐに仕事に就くという人は少数ですが、働
くことは義務であり、皆さんは日本を健康で文化的で豊かなとするための一
員に加わる準備が整ったことを是非自覚して欲しいのです。これが義務教育
を卒業するという意味です。
自分の可能性を信じ、困難にめげず、へこたれず、物事や事象の良い面を
いつも見つめ、うまくいかなかったことを人せいにせず、未来に向かって歩
んでください。皆さんの前途が幸多いことを祈り、私の式辞と致します。
平成25年3月19日
静岡市立末広中学校 校長 永田 研