演習問題1及び略解

ベクトル解析 演習問題 1
2014 年度前期
工学部・未来科学部 2 年
担当: 原 隆 (未来科学部数学系列・助教)
※レポートを提出したい人は、以下の注意点を守って提出して下さい。
(ⅰ) 必ず分かるところに学籍番号、学科、氏名を書いて下さい。
(ⅱ) A4 の紙を用いて、複数枚になる場合はホチキスや針無しステープラーで綴じて下さい。
(ⅲ) 提出期限は 次回の講義の開始前迄 とします。
問題 1-1. 空間ベクトル a, b, c が互いに線形独立であるとする。このとき、任意の空間ベクトル p
に対して
(∗)
p = xa + yb + zc
を満たす様な実数の三つ組 (x, y, z) は 一意に 定まることを示しなさい (任意の空間ベクトルが (∗)
の形で表されることは用いて良い)。
問題 1-2. xyz 直交座標系の基本ベクトル系 (e1 , e2 , e3 ) を用いて空間ベクトル xe1 + ye2 + ze3 を
 
x
xe1 + ye2 + ze3 =  y 
z
と列ベクトルを用いて表すとき、次の式が成り立つことを証明しなさい。

  
x2
   



(1)  y1  ·  y2 
 = x1 x2 + y1 y2 + z1 z2 .
z1
z2
    

x1
x2
y1 z2 − y2 z1
    

   

(2) 
 y1  ×  y2  = z1 x2 − z2 x1 .
z1
z2
x1 y2 − x2 y1
x1
1
【略解】
問題 1-1.
ベクトル p が p = xa + yb + zc = x′ a + y ′ b + z ′ c と二通りで書き表されたとする。移項して
(x − x′ )a + (y − y ′ )b + (z − z ′ )c = 0.
ここで a, b, c の線形独立性より (x − x′ , y − y ′ , z − z ′ ) = (0, 0, 0), 即ち
x = x′ ,
y = y′ ,
z = z′
(証明終わり)
が成り立つ。
【解説】 講義で証明した命題の 3 ベクトル版。証明は全く同じです。ポイントはどうやって
式変形をして「線形独立性」の定義に出てきた等式を導き出すか、といったところでしょう。
正答率は割と高かったです。
良く復習して「線形独立性」がどの様に使われているかをじっくり理解しよう。
問題 1-2.
(1)

  
x1
x2
 y1  ·  y2  = (x1 e1 + y1 e2 + z1 e3 ) · (x2 e1 + y2 e2 + z2 e3 )
z1
z2
= x1 x2 e1 · e1 + y1 y2 e2 · e2 + z1 z2 e3 · e3
+ (x1 y2 + x2 y1 )e1 · e2 + (y1 z2 + y2 z1 )e2 · e3 + (z1 x2 + z2 x1 )e3 · e1 .
ここで (e1 , e2 , e3 ) は基本ベクトル系 (即ち長さが全て 1 で互いに直交し、右手系を成してい
るベクトル) なので、
e1 · e1 = e2 · e2 = e3 · e3 = 1
e1 · e2 = e2 · e3 = e3 · e1 = 0
となる (各自確認しなさい)。これを代入して計算すれば、求める式 x1 x1 + y1 y2 + z1 z2 が得
られる。
(2) a × b = −b × a に注意しながら計算すると
   
x1
x2
 y1  ×  y2  = (x1 e1 + y1 e2 + z1 e3 ) × (x2 e1 + y2 e2 + z2 e3 )
z1
z2
= x1 x2 e1 × e1 + y1 y2 e2 × e2 + z1 z2 e3 × e3
+ (x1 y2 − x2 y1 )e1 × e2 + (y1 z2 − y2 z1 )e2 × e3 + (z1 x2 − z2 x1 )e3 × e1 .
2
となる。ここで (e1 , e2 , e3 ) は基本ベクトル系なので、
e1 × e1 = e2 × e2 = e3 × e3 = 0
e1 × e2 = e3 , e2 × e3 = e1 , e3 × e1 = e2
となる (各自確認しなさい)。これを代入して計算すれば、求める式


y1 z2 − y2 z1
(y1 z2 − y2 z1 )e1 + (z3 x1 − z1 x3 )e2 + (x1 y2 − x2 y1 )e3 = z1 x2 − z2 x1 
x1 y2 − x2 y1
が得られる。
※ 内積の記号 · 及び外積の記号 × は
絶対に 省略しないこと!!!
【解説】 ベクトルの内積、外積の成分表示を用いた計算は既に 1 年生の「線形代数学」の講義
で学んだと思いますが、その導出方法は至って単純で、分配法則 で式をばらして基本ベクトル
(基底) 同士の内積、外積に持ち込めば OK です。基本ベクトル同士の内積、外積が計算出来
なかった人は、もう一度内積、外積の定義にしたがってじっくり考えてみよう。
きちんと正解している人も多数いた一方、何を示せば良いのか分かっていなさそうな方も若
干目立っていました。間違えた人はしっかり復習しておいて下さい。
このように 基底ベクトルに関する計算さえ分かってしまえば、一般のベクトルに関する計
算が立ち所に出来てしまう(!) のは線形代数の醍醐味の一つです。しっかり復習して、基
底に関する成分表示の威力を存分に堪能しましょう。
3