補足資料 4

計量経済学 I
補足資料 4
2011 年 6 月 15 日
担当 原
ガウス・マルコフの定理の証明
重回帰モデルの最小二乗推定量のガウス・マルコフの定理の証明を与える.
βˆ = CY を β の線形不偏推定量とする. 不偏性から,
E[CY ] = CE[Y ] = CE[Xβ + ǫ] = CXβ = β
がすべての K 次元ベクトル β について成り立つことより, CX = IK .
OLSE は b = (X ′ X)−1 X ′ Y であった. 記法の簡便のため, A = (X ′ X)−1 X ′ とおく
と, b = AY と書き換えることができる.
また b も不偏推定量であることから, AX = IK .
ここで D := C − A とすると,
βˆ = CY = (A + D)Y .
また,
CX = (A + D)X = IK
より DX = 0.
ここで βˆ の共分散行列は,
ˆ = V [CY ]
V [β]
= CV [Y ]C ′
= (A + D)V [Y ](A + D)′
と書ける. V [Y ] = V [ǫ] = σ 2 IT であることに注意すると
(A + D)V [Y ](A + D)′ = σ 2 (A + D)(A + D)′
= σ 2 (AA′ + DD ′ + AD ′ + DA′ ).
ここで,
AD ′ = (X ′ X)−1 X ′ (C − (X ′ X)−1 X ′ )′
= (X ′ X)−1 X ′ (C ′ − X(X ′ X)−1 )
= (X ′ X)−1 ((CX)′ − (X ′ X)(X ′ X)−1 )
= (X ′ X)−1 (IK − IK )
= 0.
また DA′ = (AD ′ )′ = 0. したがって,
V [β] = σ 2 (AA′ + DD ′ ).
D = 0 のときが OLSE であることから,
V [b] = σ 2 AA′ .
これより
V [β] − V [b] = σ 2 AA′ .
となるが, これは行列の回で学んだように非不定値行列なので, 対角成分がすべて正.
これは b の各要素の分散が, β の各要素の分散より大きくはならないことを意味する.
すなわち OLSE b の各要素の分散は, 線形推定量の中で最小になる.
• 補足資料 2 で見た単回帰モデルのガウス・マルコフの定理の証明と比較してみる
とよい.
• この定理は ǫ の正規性の仮定には依存しないが, 等分散性, 無相関性には依存す
る. 等分散性, 無相関性の仮定を外した場合, この証明のどこが破綻するか考えよ.