総合職試験・一般職試験(大卒程度試験)共通 経済学

総合職試験・一般職試験(大卒程度試験)共通 経済学
(注) 解答は,解答用紙を使用し,問 1 と問 2 についてはそれぞれ 1 枚,問 3 については全
5 問で 1 枚,計 3 枚に記入すること。また,問 1 については,選択した問題番号を(
)内に
記入の上,解答すること。
問 1 以下の(1),(2)の 2 題のうちから 1 題を選択して答えなさい。
(1)
需要関数q = q(p)に直面している独占企業を考える。これは,独占企業が,生産財の
価格をp > 0と設定した時,q単位の需要量があると認識しているという状況である。この独
占企業が生産量q ≥ 0を生産する時の費用はc ∙ qで与えられる。但しcは正の定数である。
(a) 今,価格がp,生産量がqの状態から,価格をΔpだけ変化させた時の価格をp + Δp,それ
に伴う生産量の変化分をΔqと表す。これらの記号や適当に設定した記号を用いて,独占企
業にとって,限界収入と限界費用を一致させるように価格を決めることが最適であるのは
何故かを分かりやすく説明しなさい。
(b) 企業が想定する需要関数q = q(p)の背後にある消費者の行動を次のように考える。今,
各消費者は,この独占企業が生産する財を一つだけ購入するか,全く購入しないかの二つ
の選択のどちらかを選ぶ。より具体的には,消費者は,この財 1 単位がvの価値を有する時,
もしv − p ≥ 0なら,購入する
もしv − p < 0なら,購入しない
という選択を行うものとする。ここで,vは区間[0, v�]に分布しており,その分布関数をF(v),
対応する密度関数をf(v)とする時,v�未満である任意の正の価格pにおける需要の価格弾力性
を,F,f及びpを用いて表しなさい。
(2)
各期間t = 1,2, …において,消費ct > 0から効用を得る消費者の効用関数をu(ct )と書く。
ここで,u′ (ct ) > 0及びu′′ (ct ) < 0が満たされている。また,割引因子をβとし(但しβは 1
未満の正の実数)
,第t期における実質利子率をrt > 0とする。
(a) 任意のt期において消費者が消費をct からct + Δcに変化させることによる今期の効用の
変化分u(ct + Δc) − u(ct )はu′ (ct ) × Δcで近似されることを利用して,この消費者にとって最
適なct とct+1 が満たすべき条件を示し,その解釈を分かりやすく説明しなさい。
(b) 今,各t期において,ct = f(k t ) − k t+1が成り立っているとする。ここで,f(k t ) = k αt (但
しαは 0 より大きく 1 未満の実数)は,第t − 1期において決定された(労働者一人あたりの)
1
資本量k t を投入した際に第t期に生じる(労働者一人あたりの)生産量を表している。単純
化のため,任意のt期において,その期に用いられた資本は次期以降に使用されない(即ち、
完全減耗する)と仮定する。ここで資本市場は完全競争的であり,u(ct ) = −e−ct (但しeは
自然対数の底)とした時に,上の(a)で示した条件から,k t+1 ,k t 及びk t−1 の間に成立する関
′
係を導きなさい。ここで,関数h(x)に対して成り立つ微分公式�eh(x) � = eh(x) ∙ h′ (x),及びrt が
十分 0 に近い時の近似式ln(1 + rt ) ≈ rt を用いて良い(ここでlnは自然対数を表す)。
問 2 ある家計が自動車を保有するかどうかを決定するモデルを考えている分析者を考え
る。この分析者は,家計の問題を以下のように認識している。まず家計の効用関数は
u = u(c, y)
で与えられる。
ここでyは 0 か 1 の値を取り,
y = 0は家計が自動車を保有しないこと,
y = 1は
家計が自動車を保有することを意味している。また,cはこの家計の自動車以外の全ての消
費を「複合消費財」として表わしたものである。更に,この家計は
c+p∙y=I
という予算制約に面している。ここでp > 0は自動車の(複合消費財に対する)相対価格で
あり,I > 0はこの家計の所得である。
(1) 家計が効用最大化を行なっている際のyの意思決定ルールをcを用いずに表現しなさい。
(2) この分析者にとっては観察出来ないが家計は把握しており,この家計の効用関数に影響
を与える一次元の変数をϵとする。この分析者は,家計の効用関数を
u = u(c, y, ϵ ∙ (1 − y))
のように把握しているものとする。この場合におけるyの意思決定ルールを上の(1)で求めた
ように,cを用いずに表現しなさい。
(3) 分析者が
u�c, y, ϵ ∙ (1 − y)� = c + γ1 ∙ (1 − y) + γ2 ∙ (1 − y) ∙ c + ϵ ∙ (1 − y)
という関数形を設定するものとする。ここでγ1 とγ2 は,分析者がデータを用いて推定の対象
としたい未知のパラメータである。分析者にとってはϵが確率変数であり,その分布は平均0,
分散σ2ϵ の正規分布に従っているものと仮定される。この場合におけるyの意思決定ルールを
上の(1),(2)で求めたように,cを用いずに表現しなさい。
(4) パラメータγ1 とγ2 を推定するための方法を提案し,説明しなさい。
(5) 分析者は,家計が自動車を保有するかどうかに関する意思決定を行う上記のモデルをよ
り現実的にするためにどのような改善を施したら良いか。幾つかの考えられる論点を簡潔
2
に述べなさい。
問 3 以下の用語を説明しなさい。
(1) 金融危機(Financial Crisis)
(2) イングリッシュ・オークション(English Auction)
(3) トービンの q(Tobin’s q)
(4) 排出量取引(Emissions Trading)
(5) ヘクシャー=オリーンの定理(the Heckscher-Ohlin Theorem)
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