(特別号)9月発行その2・「対談 子どもたちへ おとなたちへ」

子どもたちへ、おとなたちへ!
1学期も終わりに近づいた7月10日(水)昨年度より本校にスクールカウンセラー
として関わり、子どもたちや保護者、時には教職員の相談にものってくださっている、
原三恵さんと、本校の森治雅子校長とが、十三小学校の子ども達について、あれやこれ
やと対談しました。「保護者の方々に、ぜひとも伝えたい!」 という話も…。
どうぞ、お読みください。
【森】…校長
【原】…原三恵さん
(構成:中谷教頭)
【森】
子ども達の明るさや素直さは、「安
心」から生まれていると思います。十三で
○
さっそくですが、校長先生は4月に赴任さ
は保護者や地域の皆さんが、子ども達に本
れて4カ月がたちましたが、十三小学校の子
当にあたたかくしてくださるんです。多く
どもたちや保護者について、どのように感じ
の方々が学校教育に関わってくださってい
ていらっしゃいますか?
るので、しょっちゅう学校に来られます。
そのことが子ども達の「安心」につながっ
【森】まず最初に思ったのは、みんなすなお
ているのでしょう。
で人なつっこいということです。4月当初
から笑顔であいさつしてくれるのが本当に
スクールカウンセラーの
原三恵さん
うれしかったですね。
【原】
私も校長先生のおっしゃったことに
同感なんですが、十三小学校の子ども達は、
森治雅子校長
まずあいさつができる。それも相手の顔を
見てあいさつができます。それから、人に
それから、これは高学年の子ども達なん
興味をもっています。
ですが、たてわり活動などでは低学年の子
これまで行った学校の中には、私を見て、
どもにいつも気を配り、リーダーシップを
「誰?」という怪訝な表情を浮かべる子も
発揮しています。男の子と女の子の仲もい
いましたが、こちらでは「アッ!また来た
いですね。
ん?」という感じで、興味をもって寄って
本校では「十三
五か条の心得」が設定
きてくれるんです。本当に人が大好きなん
されていますが、それが学校教育にしっか
ですね。
りしみこんでいると感じました。
私も、先生方やいろいろな人にみてもら
っているという感じが子ども達に伝わって
○
いて、安心感につながっているんだと思い
子どもたちの笑顔を生み 出している原動
ます。
力は何なんでしょうか?
○
安心感が、
子どもを育むのです !
逆に、十三小学校の子どもたちで気になる
子ってどんな子どもですか?
【森】
それぞれの教室を回ると、持ち物の
片付け、整理整頓ができていない子が見う
けられます。自分の持ち物を大切にしない
子がいるんですね。
それから、みんなで生活していれば、必
ずトラブルは起こるのですが、先生方はそ
【原】
子ども一人一人に合った言葉を使う
ということは、子どもからすれば、「ああ、
自分に興味をもって見てくれているんだ」
という安心感につながることですね。
の解決のために、どのように子どもに言え
ばよいか心をくだいています。でも、なか
なか納得できない子がいるんです。
【森】
そうなんです。忙しいからといって
「わかった、わかった」と、その場しのぎ
の対応ではだめで、後で時間をきっちりと
【原】 見守られているということが、逆に、
ってあげることが必要です。
学校への甘えになってしまっていて、ちょ
私は、本校の先生方が、放課後に時間を
っとけじめがつけにくくなっている子もい
とって、個別に話を聞いている様子を見る
ますね。それから、おとなに「見てほしい」
ことがあります。その時にしっかり話を聞
「見て、見て~!」っていう欲求が強くで
いてもらったり、納得いくまで話をしても
ている子がいます。
らったり、先生にじゃれたりして、スキン
もともと子どもは、親や周囲の人に見て
シップが図られているんです
ほしいと思っているのですが、それが強く
表れて、「絶対見て~!」「向こうへ行っち
ゃだめ~!」という態度になってしまって
子どもに興味を
もってください!
いるんです。気持ちが落ち着いてくるとそ
んな感じではないのですが…。
【森】
中には、ずっとしゃべっている子が
【原】
子どもが安心するというのは、時間
います。その子からは、甘えも不安も感じ
の長さ、つまり長く一緒にいるということ
られます。
よりも、一緒にいるときに自分に興味を持
しゃべることで自分の気持ちを落ち着かせ
ってくれているかどうかという「深さ」に
ようとしている。誰かと関わって、その人
関係しているんですね。
が反応してくれることで安心するのでしょ
うね。
これって、家庭でも同じで、保護者の方
にはもっとお子さんに興味をもってもらい
たいです。
【原】
確かに、自分を認めてほしいという
不安の高さの表れですね。
【森】
そうですね。家庭では、保護者の方
がお店をなさっていたり、夜、働いていら
【森】 そういった不安だらけの子ども達に、
どのような言葉をかけるのか、それを考え
っしゃったりすることもあり、子どもと向
かい合える時間は短いんです。
ることが私たち教師の使命だと思います。
だから自分の思いが出せないで未消化に
特に担任の先生は、その子どもに対して、
な っ た ま ま だ っ たり 、 怒 ら れ たと 言 っ て
どの場面でどんなふうに言えば心が落ち着
悶々としていたり、そんな状態で学校に来
くのかよくわかっています。だから、休み
ている子もいます。
時間には、子どもの思いをとことん聞いて、
とことん寄り添うようにするわけです。た
【原】
お母さんの中には、仕事をしてい
だし、甘いことばかり言ってもだめなので、
るから少ししか会えない、あまり構ってあ
毅然とした態度も必要なんです。
げられないといって、子どもに「わるいな」
と罪悪感を持っていると、きちんと見るこ
おとなが子どもに
ためされています !
とができなくなってしまいます。
「申し訳ない」という気持ちから、子ど
もに負い目を感じ、表面上取り繕って、ど
んなことでも「いいよ」と認めてしまった
【原】
り、子どもの要求をのんであげることで補
学校では、子ども達は先生のどんな
ところを見ているのでしょうか。
ったり、何か物を買い与えたりすることで、
その負い目を解消しようとしてしまうわけ
【森】 やはり先生の表情ですね。
「おこって
です。
いる」とか「今、ほめられている」といっ
た先生の表情をくみ取って、自分は何をす
【森】
こうなると、お母さん自身が楽しく
ればよいかを決めているんです。
なくて窮屈になってしまいますね。
だから、保護者の皆さんも遠慮しないで、
ありのままに、しんどい時はしんどいでい
【原】
そうなんです。しかも自分の負い目
いので、
「あなたのことは大好きよ」という
からいろいろなことを許しているのに、子
サインを送ってあげてほしいですね。
どもが自分の言うことを聞いてくれないと、
逆に腹が立って、変におこってしまいます。
○
忙しくて時間がないのは仕方のないこと
なるほど、親の表現力・コミュニケーシ
ョン力が試されますね。
なので、あまり負い目を感じずに、時間の
とれるときに、子どもに興味をもって接し
【原】
てあげてほしいですね。
お母さんは、子どもに対して、で
きないことがあって、そのことに後ろめ
たさを感じてしまいます。よい母親でな
【森】
私は、親が愛情をどんな形で表すか
ければいけないと思う人ほど、本人をき
が大切だと思うんです。
「物」や「お金」を
ちんと見ないで、「~してはいけません」
与えるのではなく、子どもの将来を見据え
というような、形式的な叱り方になって
て、そこにつながるような表情や表現をす
しまいます。そうすると、子どもは敏感
ることが必要だと思います。
なので、
「 お母さんは本気でおこっている
子どもは、親がいそがしいということは
のかな?それともうまくおさめようとし
わかっていますので、短い時間でもきちん
ているのかな?」と思って、よけい暴れ
と向き合ってもらえれば、きっちりと親の
たり、悪いことをしてしまったりするん
愛情を受け取ることができるんです。
です。
しかし、愛情の形が「物」や「お金」に
こういったことは、学校でもあるので
すりかわっていると、子どもも親に「物」
はありませんか。
や「お金」をねだるようになり、結果的に
親の願いがわからなくなってしまうんです
ね。
○
それは、学校でもありますね。教師が本当
に怒っているのか、それとも怒っているのは
形だけで、早く解決させてしまおうとしてい
るのか、子どもはよくわかっています。だか
ら、この先生は子どもがわかるまで、徹底的
にやろうとしているのか、試してくる子ども
はいます。
【原】 素直な子ほど試してくるんですよね。
○
うということを、知っておいてほしいですね。
試された段階で、「もういいです」と教師
子どもの気持ちをきい
てあげましょう !
があきらめてしまうことがあります。そうす
ると、その後しばらく子どもは言うことを聞
かなくなりますね。
【原】
【原】
先生をなめてしまうんですね。
そうですね。子
どもはその時の状況
に適応しやすいんで
【森】
そう、自分たちのことは本当の意味
すね。親の尋ね方や先
でわかってもらえていないと思ってしまう
生の尋ね方によって、
んです。言い換えると、本当に愛情を注い
子どもから発せられる答えが変わってきま
で叱っていたら、
「 自分のことを真剣に考え
す。やっぱり、子どもは周囲のおとなに認
ていてくれている」と、子どもはわかるん
められたいという気持ちが強いので、まわ
です。だから、4月・5月は先生が試され
りが求めている答えを言ってしまうんです。
ているんですよ。そこでうまく子どもと心
が通じ合うと、後はうまくいきますね。
【森】
以前経験したことなのですが、学校
でよくないことをしている子どもがいまし
【原】
先生も覚悟がいるんですね。家庭で
は親が試されていますね。
た。そこの母親は体調や心の状態が悪く、
あまり子どもの世話をしていなかったので
す。子どもは自分がやったことを全く言っ
○
最近よくあるのは、家庭内で子どもが学校
てなかったので、学校から母親に伝え、母
のことを言った時に、子どもから話を聞き出
親が本人に尋ねると、全く違うことを言う
して、学校へ電話してくるケースです。もち
んです。
ろんそういうことは以前にもありました。
そこで、この子どもを指導するときは、
ただ、以前と違うのは、「先生と子どもの
親子一緒に話をするようにしました。そう
言っていることがちがう」「親ですから子ど
でないと、子どもが事実と違うことばかり
もの言うことを信じます」と言って電話して
言って、しんどくなってしまい、それを見
こられることが、多くなっているということ
て、お母さんもよけい苦しむのです。お母
なんです。もちろん、その中には、学校の説
さんを学校が支えるためにもこうする必要
明不足や、教師に対する不信感もあるという
があったのです。
こともわかっていますが…。
子どもって、すべて自分の見方で話をして
【原】
子どもは、うそをつきたくてついて
います。だから実際のできごととは、言い換
いるのではないんです。あまり深く考えず
えれば「客観的事実」とは全く違うことをい
に行動してしまっている場合が多いので、
うときもあります。本来なら、それを聞いた
「何をしたの?」
「 どうしてそんなことをし
おとなが、想像力を働かせて場面を思い浮か
たの?」と問い詰められると、自分が悪く
べ、子どもにアドバイスしてあげることが必
ならないように、その場に合わせてうそを
要なのですが、最近はそれがとばされてしま
ついて答えてしまうんです。
って、すぐ「学校に電話!」になるんですね。
いずれにせよ、子どもはあたりまえのよう
保護者の方は、
「この子、うそをつくんで
に「客観的事実」とは違うことを言ってしま
す」とよくおっしゃいます。本人がうそを
つかなければならない状況があるわけで、
れない。学校にいる間は、先生がかばって
なぜうそをついたのかきいてほしいんです。
くれるのですが、働くとなると、自分で何
うそをついた時には、ただ叱るだけでな
とかしなければならない。これがいちばん
く、本人の気持ちもしんどいので、その気
たいへんになるんですね。
持ち・心に興味をもって聞いてあげてほし
いんです。
【森】
ある日突然「ひとりだち」と言われ
て、放り出されるんですから、子どもは戸
【森】
保護者の方にお願いしたいのは、も
惑いますよね。
う少しおおらかに子どもを育ててほしいと
いうことです。
【原】
事細かに学校のことを聞き、子どもが言
だからこそ、子どもを信頼し、少し
ずつ離れていってあげてほしいんです。
ったことにいちいち反応して学校へ電話し
てこられる方があります。でも、子どもも
【森】
例え失敗して、本人が苦しい思い、
すべておぼえているわけではありませんか
辛い思いをしようが、自分で乗り越えられ
ら、適当に言ってい
るようにしないとだめですよ。それを親が
ることもあるんです。
代わってやってしまってはダメです。
そもそも学校って、
どうしても親の力を借りないといけない
いやなことばかりあ
時になって、やっと親が登場すればいいの
るわけではなく、いろいろなことがあるの
であって、ある程度自分で乗り越えること
ですから、それを子どもに語らせる。
「 ウン、
が大切だと思います。
ウン」と、うなずきながら聞いて、その中
で、人の生き方として気になったことがあ
【原】
失敗したり、うまくいったりを繰り
れば、ワンポイントアドバイスする。後は、
返す中で、
「こうやればうまくいく」という
聞いてあげて「よくがんばったね」と認め
ことが身に付くんですよ。
て、励ましてあげることが大切なのではな
いでしょうか。
【森】
繰り返しますが、自分で経験するこ
すべてを鵜呑みにして反応し、学校に言
とが大切なんです。親がすぐ出てきて横取
っているようだと、そのうち子どもに利用
りしていては、子どもにチャンスがやって
されてしまいます。
きません。私は、小学校の間に、そんな経
また、自分が語らなくても、代わりに親
験を積ませてもらいたいと思っています。
がやってくれると思ってしまうと、自分で
世の中に対してきちんと表現することがで
きなくなってしまいます。
失敗を経験することも
大切です!
○
今日は、お二人からたいへん参考になるお
話をお聞きしました。ありがとうございまし
た。
【原】【森】
ありがとうございました。
対談を終えて
【原】
(就労のための)支援センターで相
談業務をやっていると、母親が連絡をとっ
お二人の、子どもを見る眼差しの柔らかさ
て、本人を連れてくることが多いんです。
が、強く感じられる対談となりました。
手はずは全部母親がしている。本人はとい
同時に、子育て・教育についてたいへん示唆
うと、対人関係のコミュニケーションがと
に富む内容であったのではないでしょうか。