ガスタービン高温部品保守技術の高度化 - 電力中央研究所

ガスタービン高温部品保守技術の高度化
ガスタービン複合発電は、熱効率が高く環境負荷が低いため、現在の火力発電の主流となっ
背 景
ています。ガスタービンに使用される高温部品は、高温の燃焼ガスにさらされることから部品
寿命が短く、また、複雑な冷却構造を有することから部品価格が高いため、頻繁な検査、補修
および新品への交換が必要とされ、これらの保守にかかわるコストの低減が重要な課題となっ
ています。当所は、ガスタービンの保守コスト低減につながる技術の開発および高度化に取り
組んできています。
(1)1100℃級および1300℃級の初段動翼に対して、数値流体解析および応力解析に基づく寿命
これまでの
研究と
主な成果
評価技術を開発し、実機動翼の評価を可能にしました。(図1)
(2)膨大な量の高温部品に対して、在庫および使用履歴の管理、ならびに部品の使用計画(ロ
ーテーション計画)の作成を容易にし得るソフトウエア(保守最適化支援システム)を開
発し、ローテーション計画の変更によるコスト低減を能率化しました。(図2)
(3)熱疲労によるき裂の発生、進展が顕著に見られる初段静翼に対して、疲労き裂の検査記録
を保存し、過去の検査記録の分析を可能とするソフトウエア(静翼き裂進展予測システム)
を開発し、き裂が補修基準で定められる許容限界に到達する時期の予測を行うことで、補
修計画の合理化を可能としました。(図3)
(4)遮熱コーティング(TBC)の遮熱性能劣化を非破壊計測可能な装置を開発し、実機燃焼
器のTBC熱抵抗(遮熱性能)の劣化状態を計測しました。(図4)
(1)解析的寿命評価技術を高度化し、使用中の動翼に対して、部品を切断することなく、かつ
今 後
短期間で余寿命評価ができるよう解析ツールの高度化を進めます。
(2)実際の使用経験を反映して、保守最適化支援システムの操作性の改善や機能向上に継続的
に取り組みます。
(3)静翼き裂進展予測システムを拡張し、動翼や燃焼器部品などの他の高温部品、およびき裂
以外の損傷(酸化減肉、コーティング剥離など)にも同様な検査記録の保存、分析を可能
とします。
(4)TBC遮熱性能等の劣化状態の非破壊計測技術を高度化し、TBC施工動翼の解析的余寿
命評価にあたって劣化状態を考慮可能とします。
高温酸化
動翼実部品概観
流れ解析モデル
流れ解析結果
温度解析結果
使用環境を再現
翼温度を精度良く推定
・実部品の寿命評価が可能 応力解析結果
高応力部を特定
図1 動翼の解析的寿命評価の流れ
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ガスタービン高温部品保守技術の高度化
・高温部品(燃焼器、動静翼)
のローテーション計画作成を
支援
・シミュレーションに基づく、
コスト最小化が可能
・パソコン上での効率的な操作、
部品管理が可能
自動計画
シミュレーション
データ入力
結果表示
シミュレーション
条件設定
部品状態確認
実績表示
コスト比較
図2 保守最適化支援システムの表示画面例
静翼実部品概観
二次元版および三次元版データ入力画面例
・実データに基づくき裂進展
傾向の予測が可能
・GUIを用いた効率的なデータ
入力方式を採用
・補修影響を考慮可能
データ収録
データベース
き裂進展傾向表示画面例
統計解析
図3 静翼き裂進展予測システムの表示画面例
TBC遮熱性能劣化状態(熱抵抗分布)の
計測結果例(燃焼器主室)
レーザー加熱を利用したTBC遮熱性能劣化計測の原理
図4 TBC遮熱性能劣化非破壊計測装置の概要
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