序﹁マグネシア﹂の不思議な魅力が

序
﹁マグネシア﹂
の不思議な魅力
けだ。
これを柿渋の主成分であるタンニン
は大幅に小型化でき、高性能でかつ
そして、また、新しい分野が拓か
を布に染色させた伝統的な染色法を
省エネルギー対応になる。この分野
れた。マグネシアが炎症関連大腸が
の技術開発で世界最先端を走るのが、 利 用 し た 吸 着 材 で 海 水 中 の ウ ラ ン
んを抑制することが実証されたので
︵ 含 有 率3 ・3p p b ︶ を 高 効 率 に 、
フジクラである。
ある。昨年︵2010 年︶春から岐 同 社 は 、 今 年 2 月 、 線 材 長 8 1
しかも低コストで回収する技術開発
阜大学医学部久野壽也准教授と東海
を進めているのが、電力中央研究所
6 ・4m 、臨界電流57 2Aの超電
細胞研究所田中卓二所長の研究チー
環境科学研究所のチームである。研
導線材の開発に成功した。イットリ
ムにタテホ化学工業が協力してマウ
究に携わる上級研究員の田中伸幸氏
ウム系酸化物では世界一の超電導特
スに有機マグネシウムを飲ませ、大
は﹁伝統的染色法とありふれた布が
性である。超電導特性の向上は超電
腸発がんへの影響をみる実験を実施、 導の応用製品の能力を高め、実用化
人工合成吸着材以上に高い吸着能を
明確に大腸がん細胞の増殖を抑制す
示しました﹂とする。
へ近づくことになる。超電導線材研
る効果が得られたのである。今後、
究開発の常に第一線に立ってきた、 全海水中には約 億t のウランが
この成果は国内外の専門学会に発表
溶存しているとされ、これは鉱山ウ
齊藤隆氏︵超電導事業推進室新規事
され、大きな注目を集めるのは間違
ランの1千倍もの数字である。原子
業推進センター︶は﹁実用化されつ
いない。細胞代謝にマグネシウムは
力発電を数万年使える量である。
つある段階に入った﹂とする。
深く関わる可能性が高く、がん抑制 高温超電導分野でのマグネシアの ﹁ 海 水 中 か ら ウ ラ ン を 回 収 で き る 技
だけでなく、メタボなど医療分野に
術開発が実用化されれば、海に面し
利用は、高温超電導体マイクロ波デ
幅広い応用が期待されている。病気
た国・地域のどこでも回収が可能に
バイス基板にマグネシア単結晶が本
の治癒あるいは抑制にマグネシアが
なる。資源ナショナリズムは起きな
命視されている。アメリカなど海外
日常的に使われる日も近いかも知れ
くなります。
﹂
では一部で実用化されている。熱損
ない。
失が少なく、超電導材と熱膨張率が 今後、海水から微量資源、リチウ
高温超電導技術は、エネルギー問
ムなどを回収する技術開発は様々に
近く、コスト的にも使いやすいとい
題から解放させるだけの大きなポテ
取り組まれるものと見てよく、マグ
う特性を持つ。
ンシャルを持っている。超電導電力 海は資源の宝庫である。レアメタ
ネシアという資源を実用化している
貯蔵装置が実用化されれば、在庫で
立場からも大きな関心があるのは言
ル、レアアースやウランなどの微小
きないとされた電気が貯められるの
資源も含まれている。しかしながら、 うまでもない。
である。超電導モーターが完成すれ
微量だけに回収技術の確立が難しく
ば、例えば、船舶や電車の駆動部分
実用化されてこなかった。ところが、
がん細胞増殖抑制から超電導線材開発まで用途は拡がり続ける
マグネシア ︵ 酸 化 マ グ ネ シ ウ ム ︶
は不思議な物 質 で あ る 。 苦 汁 ︵ に が
り︶成分とし て 古 く か ら 人 の 暮 ら し
と繋がりを持 っ て き た 。 そ し て 、 現
在、豊かな暮 ら し を 支 え る 産 業 分 野
に幅広く利用 さ れ て い る 。 鉄 鋼 、 化
学、ガラス、 電 気 、 電 子 、 製 薬 、 エ
ネルギーなど 様 々 な 形 で 利 用 さ れ て
おり、最先端 分 野 開 発 で も 利 用 さ れ
ることが多い 。
何故なのだろうか。μ ︵ミュー︶
では、様々な 分 野 の 学 者 、 研 究 者 、
企業人と取材の中で、﹁マグネシアを
何故使うのか ﹂ と い う 問 い を 行 っ て
きたが、それ ぞ れ の 分 野 で ﹁ マ グ ネ
シアは物質と し て の 特 性 に 最 も 適 し
ている﹂とい う 回 答 が 返 っ て く る 。
耐熱性、絶縁 性 な ど よ く 知 ら れ た 物
性だけではな い 。 制 酸 薬 な ど 製 薬 分
野にも用いら
れているわけ
だから特性は
ひとつではな
い。分子構造
は簡単なのだ
が、実はいく
つもの顔を
持っているわ
特 集
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