行政上の裁量による負担命令の適法性

原因者負担命令取消請求事件
のと 考 え て い る 。
のあ る訴 訟 であり 、今後 の動向 も 注視 に値す るも
道路局道路交通管理課訟務係
ー行政上の裁量による負担命令の適法性ー
○今回の訴訟事例紹介について
今 回 の訴訟事 例紹介 では、 一五年 一 一月号 にお
いて 一審 判決を 紹介 した北海道道 復 旧 工事 費 用負
担処分取消請求事件に係る控訴審判決を紹介する。
北海道道復旧工事費用負担処分取消請求
事件 (
控訴審)
札幌高等裁判所
本 件 は 、道 路法 (
以下 「
法」 と いう 。)第 五 八条
第 一項 に基 づ く 原 因者 負 担 金 の範 囲 (
「
費 用 を負
平成 ニ ハ年 三月 二五日判決 請求棄却
分金額 ⋮三 五 一万七 五 〇〇円 )。
2 原告の主張
法第 五人条第 一項 は、道 路 に関す る工事 又は道
路 の維 持 の費 用 に つ いて、 「そ の全 部 又 は 一部」
を 原因 者 に負 担 さ せ ると し て いる。 した が って、
被告 は、当 時 の現存価 値 の範 囲内 で本件 工事 に要
した費用 の 一部 の負担を命ず べき であ った。 それ
にも かかわ らず 、本件 工事 に要 した費 用 の全 額 を
命 じた本件 処分 は、道 路管 理者 に与え ら れた裁量
権 の範 囲 を 著 し く逸 脱 す るも の であ り 、 同 項 の
「
そ の全 部 又は 一部」 に違反す る。
3 被告の主張
法 第 五八条 第 一項 は 、 「そ の全 部 又 は 一部」 と
除 した額 が適当 と 判断 さ れ、機能 回復 に必要 な全
す る訴 訟 であ り 、 一審 判決 では、減 価償却 分を控
下 「
本件 装 置」 と いう 。) に衝 突 (
以下 「
本 件事
外に逸脱させ定置式凍結防止剤自動散布装置 (
以
道丸駒 線 にお いて、運転 し て いた普 通自 動車 を路
本件 は 、控訴 人北海道 の管 理す る千歳市 内 の道
き 必 要性 はな いと 判断 したため、全 額を負 担 さ せ
観 点 から み て、特 に裁 量 により負 担額を 減額 す べ
部 が道路 の機能 回復 に必要な限度 であ り 、衡 平 の
(
被控訴人上告)
担 す る者 にそ の全 部 又は 一部を負 担 させ るも のと
す る」)、す なわち、工事 の費用全額 に ついて、機能
回復 に必 要な全 部 が適当 であ る のか、減価 償却 分
部 の負担を命 じた処分 の 一部 が取り消され て いる。
故 」 と いう 。) し これを 損 壊 し 、控 訴 人 か ら法第
ることと したも のであ って、
何 ら 不当 な点 はな い。
規定 し ており 、道路管 理者 の裁量 によ って原因者
しか し、控 訴審判決 にお いては、機能 回復 に必
五八条第 一項に基づき復旧工事 (
以下 「
本件工事」
1 事件の概要
要 な全 部 が適 当 と判 断 さ れ、機能 回復 に必 要 な全
と いう 。) に要 した費 用 の負 担を 命 ず る処 分 (
以
を控 除 した金 額 の 一部 が適当 であ る のかを争 点と
部 の負 担 を 命 じ た 処 分 は 正当 な 処 分 であ ると し
て、 一審 判決 の 一部を取り 消 し て いる。
下 「
本件 処分」 と いう 。) を受 け て いた被控 訴 人
が、本件 処分 は必要を 生 じた 限度を 超え た違法 が
本件 処分 のうち当 時 の現存価 値を超え る部分を
︻
概要︼
判決
あ ると主張 し、 そ の取 消を求 めたも のであ る (
処
4
が負 担 す べき 額 を 減 額 し得 ると 考 え る余 地 が あ
る。 しかし 、本件 にお いては 、本件 工事 の費 用全
本判決を受けて被控訴人は最高裁 へ上告手続を
行 った と こ ろ であ る 。
本件 は 、法 第 五八条 の解釈 に影響 が及 ぶおそれ
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道行セ 2004 ,4
取り消 した原判決 は相当 ではなく 、控 訴 には理由
があ るから これを 認容す る。
︻
理由︼
道 路管 理者 が行 政 上 の裁量 により原因者 に対 し
て道路 に関す る工事等 の費 用 の全 額負 担を命 じ得
る こと は法 五八条 一項 の規定 上明 らか であ り 、ま
た 、本件 にお いて、控 訴人 が被控 訴 人 に対 し、本
○参考
請求 一部認容
北海
窄
北
、道道復旧工事費用負担処分取消請求
事件 (一審)
札幌地方裁判所
イ
本件装置 の損壊 は、原告 の過失 によ る事 故
原告 の故意 に基 づく行為 によるも のではな
によ って生 じたも のであ り 、
口
いこと 、
ハ 本件 装置 は、 そ の設置 か ら 三年余り が経 過
し て いる こと 、本件 装置自体 が相当高 額 なも
可欠 なも のであ ると考え ら れ る本件 装置 の設
平 成 一五年 一〇月 一〇日判決
のであ り 、本件 工事 によ って設置 さ れた新 装
1 判決
置費 及び 調整費 用を含 め ると相当高 額 であ る
(
被告控訴)
費 用 の全 額 の負 担を命 じた こと は正当 な処 分と い
︻
概要︼
、
こ シー
置自 体 の価格 や新 装置を 設置す る のに必要 不
う べき であり 、 それが控訴 人 の裁量権 を逸脱 した
原告 の請 求 は 、当時 の現存価値 を超え る部分 の
件 装置 の機能 回復 のた め に必要 であ った本件 工事
も のと 評価す べき事 情 は何ら見 当たら な い。
︻
理由︼
部分を 利得 させ る こと にな る のであ って、衡 平 の
件 装置 の現存 価値 を超え る高額 の金銭 の支払 を命
じ、道路管 理者 であ る被告 に、現存価 値を 超え る
を考え ると 、本件 工事 に要 した費 用 の全 額を 原因
と し ても 、 そ れだ け では法 五人条 一項 に反す るも
道路管 理者 の有 す る行 政上 の裁 量権も無 制 限な
観点 か ら許容 す る こと が でき な いも のと いわざ る
取消 を求 める限度 で理由 があ るため こ の限度 で認
のではな いと いう べき であ る。ま た、本件 装 置 が
も のではなく 、道 路 に関す る工事 又は道 路 の維 持
を得 な い。
機能 回復 に必要 であ る限り 、結果的 に原因者 に
本件交通事故時に経年劣化等により設置時 の機能
の費 用 が発生 した原因 や現 に発生 した費 用 の額 な
した が って、本件 処分 は、本件 装 置 の現存価値
者 であ る原告 に負 担 させる本件 処分 は、 原告 に本
を 保 って いな か った こと等 も 認 めら れな いか ら 、
ど の諸事 情を勘案 し、衡平 の理念 か ら み て許容 さ
を 超え る部分 に ついて原告 に負 担を命 じ て いる限
容 し、 そ の余 の部 分 は理由 がな いた め棄却 す る。
道 路管 理者 に必 要 な機能 回復 以 上 の利得 が生 じた
れ る限度 にお いて行使 す べき であ って、当該 処分
対 し て現存価 値以 上 の負 担を 課す る ことと な った
も のと も いえ な い。
が こ の範 囲を超え て いる場合 には、違法 と な ると
した が って、本件 処分 が違法 であ るとす る被控
度 で違法 であ る。
確定)
平成八年 一一月 一五 日判決 請求棄却 (
大阪地方裁判所
滋賀国道 一六 一号原因者負担金納付命令
取消請求事件
解 す べき であ る。 こ のこと は、法第 五八条第 一項
訴 人 の主張 は採 用す る こと が でき な い。
が 「
全 部 又は 一部」 と 規定 し て、道路 に関す る工
事 等 の費 用 に ついて、必ず しも全 部 ではなく 、 一
部だ けを負担 さ せ る こと が でき ると定 め て いる こ
と とも符合す る。
これ を 本 件 に つ い てみ ると 、
2004 .4
道行 セ
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1 事件の概要
国道 の路面凍結 により 、 スリ ップ事故 を起 こし
て道路施 設を 損傷 し、道路管 理者 から法第 五八条
第 一項 に基づく 原因者負 担金 納付命 令を受 け て い
○ 「
道路法解説」 (
大成出版社) (
第五人条部分よ
り抜粋 )
減 額 の可否
E 負担金 の範囲
1
撤 去 計 画 があ る場 合 や老 朽 化 し た も のに つ い
て、減価 分を考慮 す べき だ ろう か。
た原告 が、事 故 の原因 は路 面凍結 によ るも のであ
り 、凍 結を 引き起 こした こと は道路 の管 理 の瑕疵
本条 が定 め る のは価値 の復 元 ではなく 、機能復
旧 (
効 用 の原状 回復 ) であ るか ら、たとえ 老 朽化
に当 た るも のと し て同命 令 の取 消を求 めたも ので
一〇九 九円 )。
させ てよ い。 これ が社会通念 上 不当 と 目され るよ
⋮一四三万
2 判決
う な場合 は 「
全 部又は 一部」 の運 用 で対応 す る の
ある (
処分金 額
︻
概要︼
が適 当 であ る。ま た 「
必要 に生じた」 も のであ る
し て いるも のでも 、機能復 旧 に要 す る費 用 は負 担
本件命令 に違法 があ ると は いえ な いた め、原告
るよう な場合 は、応 急措 置費用を 限度 とす べき で
必要 があ るから 、近 日中 に具体 的 な撤去 計 画があ
︻
理由︼
あ ろう 。
の請求を棄却 す る。
法 第 五八条第 一項 は、道 路 に対す る損傷 があ っ
た場合 にそ の機能 を 回復 す るた め に要 した費用 の
負 担 を そ の原 因 者 に命 じ て いるも のと いえ る か
ら、 ここ で いう 費 用 は損傷行為当 時 の価 値 の賠償
ではなく、機能 復 旧 に要す る費 用 の趣旨 であ ると
解 され る。 したが って、 そ の費 用 が損 傷当時 の物
件 の価値 を超え るも のであ ると し ても 、通常 の復
旧 工事 の範 囲内 と認 められ る限り 、 これをも って
必要を 生 じた限度 を超え たも のと いう こと は でき
な い。
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2004 .4
道イ
テセ