ドン ト法の実質的意味について

I
SSN 03
87
-1
7
89
大阪市大 『季刊経済研究』
γol
.1
6,No.4,Mar
ch1
9
9
4,pp.25
-31
ドン ト法 の実質 的意味 につい て
藤
Ⅰ は じめに
Ⅰ 代表選 出問題
Ⅰ は
じ
め
井
輝
明
Ⅲ 単純多数制下 の帰結
Ⅳ 結
論
に
藤井 (
1
9
9
0a)で私は,逐次追加比例配分法を 「疑似統計的方法」に よって形式的に評価 して,
サ ン トニラゲ法が擬似的に不偏かつ有効であることを示 し,現実的な整数制約 の下では定数配
Re
pr
e
s
e
nt
a・
分の方法 として採用で きると表 明 した。他方 また,実質科学的には,代表選 出 (
Appor
t
i
o
nme
nt
) 問題 とは評価基準が異なるべ きであるとの要請
t
i
on)問題には定数配分 (
もあ りうることを示唆 した.
本稿では 「多数 に よる支配」 とい う代表選出の一般的前提か ら,単純多数制の下での合理的
競争戦略が ドン ト法に帰結す ることを示 し,代表選出問題に適用 され る逐次追加比例配分法 と
して ドン ト法は合理的であることを述べ る.
Ⅰ
Ⅰ 代 表選 出問題
代表選出問題は形式的には整数制約付 き資源配分問題であるが,それが発生す る実質科学的
な メカニズムは,た とえば定数配分問題 と比較 して も固有の ものがある.
い くつかの範噂 に区分 され る大 きさ N の集団に,合計 k個 の定数が与え られ る.k個の定数
は範噂 ごとに配分 され る. ここで定数配分法では次の ような特徴がある.①集団を構成す る単
位は,資源獲得を 目的 としてほ範噂を移動で きない.他の単位 と結託 して新 しい範噂をつ くる
ことは許 されない.②各単位の k個の資源への平等なアクセスが,直接的に配分の 目的であ る.
これに対 して代表選出法は次の特徴を持つ.①単位は 自由意志に よ り結託 して範噂を構成す
る.単位は範噂 に結合 し,範噂 の間を移動 し,場合に よってはすべての範噂 か ら離脱す る (あ
るいは資源獲得を 目的 としない範噂 に属す ることになる).②単位の行動 日的は資 源 の獲得で
あ る.一般にそのための有効な手段は多数の結託である.配分 に当た っての単位あるいは範噂
〔キー ワー ド〕資源配分問題,比例配分法, ドン ト法,代表選 出問題,比例代表制.
26
季刊経済研究
第1
6
巻
第 4号
の間の秩序は, 目的を持 ってデザインされ るとい うよ りもむ しろ,資源獲得の競争の結果 とし
てつ くられ るものである.
すなわち代表選出法は, 自由意志 に よる範噂の形成 と目的論 なき配分法か ら生 まれ る,結果
としての秩序形成である.そ うした意味で代表選出における 「望 ましい配分法」は,社会意識
との整合性や, コンフ リク トの回避などの効率によって経験的に知 られた もの と言 うことがで
きる1
)
.
Ⅰ
Ⅰ
Ⅰ 単純多数制下の帰結
本節では単純多数制 2)の もとでの合理的な行動が導 く性質を追 ってい くことに よって, ドン
ト法がその均衡状態 の制度化 として理解で きることを示す.
定理 1 (ドループの定理)
単純多数代表制では,投票総数を
P,選出され る議員定数を k とお くと,
k+1 (ドル ープ基数, または 「絶対 当選基数」)
を越える得票であれば,必ず当選す る.
証明
仮に, ドループ基数を越 える得票を した候補者が k を こえ る m 人存在す るとす る.
m
>
k,または, 自然数であるか ら,m≧k+ 1である.それ らの候補者の得票数 (
ai
)は
P
P
αl
> k+1'叩`
′ k+1'
,a
k
> A+1'
,αm> k+1
である.辺 々足 して,
u
L
a
mP
E ai
-al
+a2
+・
・
・
・
・
・
+a
k
+・
・
・
・
・
・
+a
m>
k+1
f
-1
となる.
1
)参政権 の平等 とい った定数配分問題 におけ る 目的 もまた, あ る意味 では人類が経験 的に獲得 した知恵
であると言 えるが, ここで の意味は,代表選 出法はそ うした 「大理念」か ら直接的に演緯 され る もので
はない とい うことであ る.
2
)単純多数制 とは,定数 を越 える候補 者 の うちか ら定数以下 の候補 者 に一回限 り投票 し,獲得 した票 の
多い順 に定数 までを当選 とす るものであ る. ここで重要 なのは投票す ることので きる候補者 と定数 の比
である. 1:1の場合 (
完全記)は (
連記であ って も),相対的 に一票 で も多 い 1
)ス トが全議席 を 独 占
す ることにな り (いわゆ る小選挙区制 (
完全単記) と同 じ結果),制限が強 いほ どそれ とは ことな る 結
果を示す.定数そ の ものにはあ ま り意味がない.以下 の議論では単純化 のため, 1名 に投票 し,定数は
2以上であ ること (制限単記制)を想定 してい る.
ドン ト法の実質的意味について
27
F
L
i
j
P≧∑ ai
z
'
-I
で あ るか ら,
mP
P>A+ 1
すなわち,
k+ 1>m
となる. これは仮定m≧k+1に反す る.
よって,得票数が ドル ープ基数を越える候補者は k 以下である. すなわち, ドループ基数
を越 える得票であれば,必ず当選す る.
1
実際には,最下位当選者の得票数は ドループ基数 よ りも小 さ くなるのが普通 である3). よ り
現実的に,次の定理が成立す る.
定理 2
投票総数をP, 選 出され る議員定数を k, 得票数が ドループ基数を越 える候補者の数を ]
'
(
<k
)
,それ らの候補者の得票の合計を
Z とお くと,
pZ
●
k
1
+1 (ここで仮に 「相対 当選基数」 と呼ぶ ことにす る)
を越 える得票であれば必ず当選す る.
,残
得票数が ドループ基数を越える候補者は当選す るか ら,対象 となる残 りの定数は k-j
りの候補者の得票数の合計は
p-Zであることを考慮すれば, 証 明は定理 1と同様であるか
ら,省略す る.
「相対当選基数」は ドループ基数 よ り小 さい.
証明
定理 1よ り
Z-垂
l
a
i
>j
l
五㌔ ]
3) このように,単純多数代表選出法の出発 となる基数は, ピソ トン法 (
単純比例配分法)で用い られ る
P/k) ではな く, ドループ基数 (
P/(
k+1
)
) である.単純多数制を とる 日本の公職選挙
-ア-基数 (
法で,法定得票数や供託金没収 となる得票数が, ドループ基数ではな く-ア-基数を基礎に して,その
何分 の 1 (もっとも大 きいのは参議院をのぞ く選挙の法定得票数で 4分 の 1, もっとも小 さいのは地方
0分の 1) と定め られているのは,代表選出の数理を
の議会 と首長の選挙の供託金没収 となる得票数で1
無視 していると言えよ う.
2
8
季刊経済研究
第 4号
●
ナ
ノ
だか ら,
第1
6巻
言 > k+1
で ある. この とき,
1i<
変形 して,
p-Z /k+1-i
P ー k+1
両辺分母分子は正だか ら,
p-Z
P
k-j+1\k+1
_
すなわち, 「相対 当選基数」は ドル ープ基数 よ り小 さい. I
ところが,ある候補者が 「相対 当選基数」の整数倍の力を持つ よ うな場合,それが,専 ら侯
補者個人 に依存す るもので ない限 りは, 「結束」 した複数の議員を当選 させ よ うとす るであろ
う. この とき,当選 に必要 な票をいわゆ る 「票割」 に よってわ りふれば,それが,当選者最大
化行動 となる.
仮に,そ うした行動 の結果 として, ドル ープ基数 の整数倍以上 の票を均等 に分割で きれば,
相対 当選基数」は以前 よ り大 き くなる. こ うした
定理 2に言 うノが増加す ることになるか ら,「
過程が定数が埋 まるまで繰 り返 され ると,次の よ うな結果になる.
単独 または, 「結束」 した複数 の候補者 の集団を 「リス ト」 とし,それを支持す る人 々と一
体化 して一つの範噂 とす る.以下,実質的な感覚で表現す るため, これを 「党」 と定義すれば,
以下の定理が成 り立つ.
定理 3-a (--ゲソバ ッ- - ビシ ョフの定理)
各党が専 ら自党の当選者最大化を 目指 して行動す るとき,すべての党につ いてその試みが成
功す るな らば,① 「各党 の得票数を ドル ープ基数で除 して得た数の整数部」 と,② 「各党 ごと
に①で得た整数 に 1ずつを順に加 えた数で得票数を除 して得 られた商を,全体で大 きい順 に並
べて,定数か ら① の総計を引いた差 までに入 った回数」を加 えた ものが,各党が獲得す る議席
数 とな る.
1
)
説明
定理 1よ り, ドル ープ基数だけの得票があれば 1名 当選 させ ることがで きるか ら,その
「
得票数/ ドループ基数) の整数部」
整数倍以上の力を持つ党は,合理的に分割す ることで, (
ドン ト法の実質的意味について
29
だけの議席を得 ることがで きる.
2
) 残余議席 については定理 2が成立す るが,追加的議席が決 まるごとに残余議席は k-i
か ら 1つずつ減 る.他方で,当選 に要 された得票数の合計は, もはや ドル ープ基数を越 える候
補者の得票の和 ではな く,追加 された最後の 1議席を得 られ るのに必要な基数 にその時点 まで
に既 に決 まった議席数の合計を乗 じた もの となる. したが って 「党」 の合理的行動についての
この前提 の下では定理 2は次の よ うに読み換 え られ る.
「投票総数を P,選 出 され る議員定数を k,合理的分配に よ り既 に当選が確実 となった候補
者 の数を j(
<k),「そのために最低必要な得票 × j」を Z とお くと,
p-Z
■
k-1+1
を越える得票があれば必ず 当選す る。」
3) ところがいずれ の党にあ って も合理的に配分す ることにな っているか ら,追加的議席を
)で修正 された基数を得 るのではな く,その党 の得票数を 「既 に確実に した議
得 るには結局,2
席 プラス 1」で割 って得 られ る基数が,他党に比較 して大 きい ことが条件 にな る. これが残余
議席の数だけ繰 り返 され る.
ところで, この追加的議席を得 る条件その ものは一般 に成立す る.それ に注意すれば簡単に
次の ようにあ らわす ことがで きる4).
定理 3-b (ドン トの定理)
各党が専 ら自党 の当選者最大化 を 目指 して行動す るとき,すべての党についてその試みが成
功す るな らば,各党の当選者数は,その得票数を整数で除 した商の大 きい順にその党の当選者
として,定数に達す るまで配分 した ものに等 しい.
説明
・
,現時点で確実に得 ることが期待 され る議席を hi とお く. その時
1
) 各党の得票数を Vl
<k である.
点では ∑hi
V ,
..
i
..
i
h.
_
.A
.A_
⊥一
.
J ^.
A ^ Vi
を上回るな
が 自党 以
す
党の
hg +11
`Hノ】〝'
ー ノノ】ー
ノhi
+1
らば, g は候補者を 1だけ増やす .g以外のいずれの党 も候補者を 1増や した ときに候補者一
2) い ま,任意の党 (
第 g党) について
g
外
の
′ ' ーノ
べ
ノ
て
の
一
一
人あた り得票数で g を上回 ることがで きないか ら,仮定に したがい,gが合理 的得票配分に成
功す る限 り,追加的 1議席はgが得 る.
3) 最初の 1議席 は,最大の Viを持つ党 (第 1党) が獲得す るが, これ は2)ですべての
4
)定理 3- bは定理 3- aのケースを包含す る一般的なものだが, 「各党の得票数を ドループ基数で除
した数の整数部」 までの議席獲得が確実になることは,定理 1か ら必ず成立す るか ら,定理 3- bに含
実は 2つの定理は同値である.
まれて定理 3- aに含 まれない領域 とい うものは存在 しない.したが って,
30
季 刊経済研究
第1
6巻
第 4号
につ き,hi
-0とおけば よい.
hi+1
4
) 合理的に予測 して ∑h
i
≧k になった とき, どの党 もそれ以上候補者を追加 しないか ら,
この過程は終了す る.
この決定 のアル ゴ リズムは,実は議席配分法 としての ドン ト法 と全 く同 じである5). すなわ
ち ドン ト式比例代表制は,単純多数制の もとでの結果を基礎 に してお り,各党 の得票数 自体以
外 の偶然的要因6
)を まった くな くして,各党が議席 シ ェア最大化 に成功 した状態を制度的に保
証 す るよ う,選挙制度 (
代表選出法) として定めた もの と言え る7).
Ⅰ
Ⅴ 結
請
以上 見た よ うに, ドン ト法は,あ くまで単純多数制を基礎 に した比例代表制であ り,議席を
得票に比例 させ る ことを第一義 に保証す るものではない. ドン ト法が相対的に大 きな リス トに
よ り大 きな議席 シ ェアを与 えることは既 に広 く知 られている8). 地域選挙区- の定数配分問題
の よ うに平等がなに よ り要求 され る場合には,従 って, ドン ト法は用 い られ るべ きではない.
しか しなが ら,代表選出の方法 としては,多数に よる支配をめ ぐる合理的競争 の均衡を保証す
るもの,単純多数制か ら偶然性を除いた もの として, ドン ト法は肯定的に理解 で き る の で あ
5
) ドン ト法 の配分方法 につ いては,茨木 (1
9
80
),p.
5
4,藤 井 (1
99
0a),pp.
3
7
-3
8を見 よ.
6) ここで単純多数 制 の持つ 「偶然的要 因」 とい うのは,実質科学 的 には偶然 で片づけ られ ない次 の よ う
)に言 う記名 の制限 の強度 とな り,代表選 出に結果 す る有効
な ものを含 んでい る.①定 数が その まま注 2
な母数 (つ ま り代表 を持 ち うる範噂 の全体 に 占め る割合 )が これ に左右 され る こと.② 同 じ党 で も 「人
物」 に よって,得票が左右 され る. (
別 の見方 をすれば, 同 じ党 の中での票 の配分 (棄権 も含 む) の出
方 に よって,獲得議席数が変化す る, とい うことであ るが, これ は候補 者個 人 の利 己的行動 に即 せ ば,
いわゆ る共食 いを誘 う原因 とな る).
7)注 6
)に例示 した偶 然的要 因 とは別 に単純多数制が持つ厄 介な問題 として, コン ドル七 の パ ラ ド ク ス
(原理 的に過 半数 の不信任 を受け る候補者が当選す る可 能性)が あ る.単純 多数制で は コン ドル七のパ
ラ ドクスは避け られ ない.完全記制 (その一種 としての小選挙 区制)で これ が回避 され る と主 張 され る
場 合が あ るが,全 く誤 って い る. (多数制で これを避け得 るのは 2回 (
正確 には候補 者が 2人 にな るま
で の多数 回)投票 制であ る.西平 (1
9
81
)
, pp.6
2
-6
6.
) 単純多数制では否 定的不支 持 は明示 的 には考
慮 されず に肯定 的支持だけが考慮 され, それが代表選 出に結果す る可能性 は,制限記 の強 さと偶 然 に依
存す る. ドン ト法 は これ らの影響 をな くすので あ る.
8)I
bar
akiand Kat
oh (1
98
8) では この ことを母数/順位関数 を尺度 に とった空 間の中で (よ り大 きい
または小 さい)母 数-偏 りので る亀城 の広 さで示 してい る (
I
barakiandKat
oh(1
98
8
),pp.11
3
-1
21
.
)
.
藤井 (1
9
9
0a)紘,各種 の逐次追加比例配分法 を比較 して ドン ト法 に見 られ る配分比 の母比率 に対 す る
偏 りとして これ を記述 してい る. また,有効性基準で見 て ドン ト法 の効率の悪 い ことも指摘 してい るが,
母比 率回 りの分散 を もとに してい るので,平均 その ものが母比率 とずれ てい る ことが大 きな原 因であろ
う.
ドン ト法の実質的意味について
る o'・
31
(
1
9
8
8年 6月2
5日, 1
990年 1
0月, 1
99
4年 1月)
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3
-1
9
6
.
茨 木俊秀 (
1
9
8
0
)
.議員定数 の最適配分法, 「数理科学」2
0
9
,
5
2
-5
9
.
西平重菩 (
1
9
6
9
)
. 「選挙の国際比較」,日本評論社.
(1
9
7
7
)
.比例代表制の具体的提案, 「数理科学」1
6
7
,61
-6
8.
(1
9
81
)
. 「比例代表制」, 中央公論社.
(1
9
9
0
)
. 「統計でみた選挙 の しくみ」,講談社.
藤井輝 明 (
1
9
9
0a)
.逐次追加比例配分法の疑似統計的性質, 「統計学 」5
8,3
6
-4
9.
(
3
)
,1
-1
7
.
(1
9
9
0b)
.逐次追加比例配分法 の数値計算, 「松 山大学論集 」2
(1
9
9
4.1
.
2
0受理)
9)偶然性がな くな る分,一般的には最下位当選 ドン ト基数は単純多数制におけ る最下位当選基数 よ りも
暗証 :総和 ∑a`が与 え られた とき,最小値 Mi
n(
ai
)を最大化す るには レンジ Max(
a`
)大 きい. (
Mi
n(
ai
)を最小化すれば よい.)
ここか ら, ドン ト法は制限単記単純多数制 よりも小政党 に不利であ るか ら,民意を汲み上げ るべ き比
例代表制 として採用 され るべ きでない とい う議論がある.現に比例代表制を とる ヨー ロッパ諸国の多 く
が現在 ドン ト法 を採用 していない (
北欧諸国は修正サ ン トニ ラゲ法, ドイツは ビン トン法 である.西平
(1
9
9
0)
, p.
5
2,pp.8
2
-8
3
.
)
. 日本で参議院全国区を比例区に変 える法案が審議 された ときも, サ ン ト
ニ ラゲ法が修正案 として検討 されそ うになった.
しか し,配分法の種 々のバ リエーシ ョンが採用 され ていることは実際には もっぱ ら妥協 の産物であ り,
資源配分法 として不偏性等ほ もちろん形式的には考慮 され るべ きだ として も, ち ょうど定数配分問題で
単調性を犠牲に してで も最大格差 の最小化をはか るべ きとの要請があ り得 るよ うに,代表選 出問題で単
純 多数制下の 「
多数 に よる支配」か らの論理的帰結が尊重 され るべ きとの要請 もあ り得 よ う. ドン ト法
は この点で根拠があ り,その 「偏 り」 に も関わ らず代表選 出法 として批判 に耐 え うる合理性がある.
(日本の議論で問題 とされ るべ きはむ しろ, ドン ト式比例代表制が選挙制度 の基 本 とな っていない こと
で ある.
)
代表選 出におけ る平等,あるいは少数意見の尊重 とい う点か ら真 に重要 なのは,選 出単位の定数であ
る. (
「例えば,定数 2
0
0
前後 を都道府県単位 に割 り振 った ときにで きる, 2とか 4とかい う定数」 (
蘇
9
9
0b)
,pp.1
4
-1
5,注 1
5
).
) では比例代表制の意味はほ とん どない.) これは既 に広 く知 られて
罪 (1
ていることである (た とえば西平 (1
9
9
0)
,pp.7ト7
7を見 よ). 藤井 (1
9
9
0a)では この点 について,
擬 似的漸近性の問題 ととらえて, シ ミュ レーシ ョンか ら 3つの逐次追加比例配分法すべ てにおいて配分
此 は定数を増やすにつれて母比率に収束す ること,それは逐次追加比例配分法 の順位関数におけ る Pi/
Xt(
母数/配分比率)以外の部分が漸近的に 0になる ことか ら理解で きることを述べた.